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夕食のあと,N山くんちからいただいた「白い恋人」と「マルセイバターサンド」でお茶にする。至福。
N山くんの奥様と英ちゃんのお蔭で,本当,我が家では「マルセイバターサンド」と「さが錦」にはことかかない。
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以下は,96.07.02に奥さんに送ったメールぶんからのサルベージ。
あろうことか「創作」である。タイトルには「雨の時間」とある。こんなもの,すっかり忘れていた。
本来は全く手付かずの「西瓜的再見」に置かれるべきテキストの気もするが,此処で紹介しておく。
「雨のひとしずくが生まれる物語を知っていますか」
17歳の誕生日を迎えたばかりの天体物理学者は,ストロベリイ・ハイボオルの入った背の高いグラスをからんと揺らした。
勿論,彼女は僕にそれを聴かせたくてやったのだ。
彼女の口許のほのかな苺とアルコオルの芳いが,僕の鼻孔を甘くつねった。彼女のグラスの氷をかき分けるようにして,ベビイ・ピンクのゼブラ・マナティが僕を覗き見る。炭酸のあぶくをお腹いっぱいに浴び,たゆたせながら,彼は僕と彼女をせわしく見比べている。
僕はエビアンの入ったグラスを軽く傾げてそれに応えた。
ついでにこれ見よがしに小さくかぶりも振ってみせた。
「たとえば,きちんと締めていない蛇口の水滴を考えてみてください。
その水の珠(たま)は,下へ落ちていこうとする重力と,内側に抑え込もうとする表面張力との狭間で延々と産みの苦しみを味わいます。
近付いてごらんなさい。その小さな海は落ちる力と受け止める力のせめぎあうバランスによって対流しています。
落ちていく流れはいちばん下で零れ落ちてしまうのを阻止され,後に続く流れの後押しで上へ押し上げられていきます。
水滴は,蛇口にしがみついたままぐるぐると転がります。
ねずみが籠の中を走り続けるよう,子供がキャタピラの中ではしゃぐよう,中で程良く溶けたチョコレイトを冷たく固めてしまわないよう。
そうして宇宙は,蛇口が手を放す,その今際の時まで対流を続けるのです」
ひと呼吸置いて,マナティがグラスから顔を出した。
ぷはっと息を吐く気配がした。アルコオルで普段よりも赤くなった縞模様が珊瑚礁に棲むテナガエビみたいだ。
天文物理学者はくるりとルウプを描いたストロオの腹で,マナティの首筋を撫でた。
残っていたエビアンを一気に呑み干すと,僕は背の低いグラスをテーブルに置いた。銅メッキのコオスタアの上で,たんと音をたてた。
僕は彼女にあわせて至極丁寧に訊ね返した。
「蛇口が手を放すと,その宇宙はどうなるのですか。対流をやめるのですか」
「表面張力がなくなる訳ではありませんから。しずくがしずくのかたちであり続けるのは,表面張力がしっかり自分の身体を守っているからです。
ただ,水滴が蛇口から離れる,そのけしつぶ程の時間,対流はやみ,宇宙には凪が訪れます。そう,ほんのけしつぶ程のあいだです」
「雨の話でしたね」
「ええ,雨のひとしずくが生まれる時の話です」
「それは凪の話なのですね」
「ええ,それは宇宙の総べてを覆う凪の摂理なのです」
僕は天文物理学者のおくれ毛をひとさし指と中指とでなぞった。
彼女はかすかにまばたきをして,グラスの氷とマナティを見た。
「それはいまの『僕ら』の話なのですね」
「いえ,それは私たちの『いま』の話なのです」
短い沈黙があった。
天使が通りすぎた。別段,気まずいことでもない。
マナティが小さな飛沫をたてた。グラスに浮かぶ氷のあいだをぬうように,まろみを帯びたやわらかな同心円が広がった。
「さしあたり僕はどうすればいいでしょうか」
天文物理学者はそれに応える替わりに,素早く僕の鼻の頭に接吻した。
あまやかな反乱は,とれたての苺の芳香で鼻腔を刺すかのように突然だった。
うわんうわん。僕は耳鳴りがした。誰に弁解する猶予ももらえなかった。
不意に,マナティが重たい上唇をめくって笑ったような気がした。
次の刹那,僕は夜明け間近の苺畑の真ん中に立ちすくんでいた。
頬に触れる空気こそ冴え冴えとしていたが,朝凪で視界の捉える何もかもが穏やかだった。
空は紺碧に少し苺色を溶かした感じ。三六〇度,ふわりとコンパスを廻すように其処はストロベリイの大海原だった。
潮風のかわりに苺の香りが霜柱を踏むように僕を包む。
無論,彼女もひざの上にグラスを乗せたまま,隣にいる。嗚呼,彼女にはスツールもある!
ベビイ・ピンクのゼブラ・マナティもだ。
さしあたって僕のグラスだけない。確かに空にはなっていたけれどどうにも悲しかった。
「もうしばらく私の話を聞く必要がありそうです」
遅れ馳せながら彼女が長閑な口調で云った。
「せめて身体を預けられるカウンターが欲しいのですが」
それが僕に出来る精一杯のいらえであった。
つづく(笑)
「つづく」とあるが,それから2年半たって,続きが書かれたという話はついぞ知らない(全く他人事)。
でまた,これで物語が閉じていたってそれはそれでいっかななどと思う。
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夜遅くまでyahooページャーにて,瀬戸口くんと夏コミ出品予定の電子会誌の編集会議(会議と云うのもおこがましいけど)。
昔試したチャットツールよりはダウンしにくく使い勝手も悪くなかったが,マック・ユーザーが参加できないという難点もある。
おそらくyahooページャーでの会議は定着しなさそうだ。
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