9月のにっき(2)

僕にとってものを書くことは、自分というものを、
たとえ一行にせよ、二行にせよ、結果としてさらけ出してしまうことなんです。
だからエッセイが下手な作家は、もう一行読んだだけで私の中からは抹消ですね。
文章というものは恐ろしいものなんです。

宮本 輝「ものを書くということの持つ意味について」

9月23日() 8時だョ!全員集合伝説
9月22日(水) 10分間の呪縛
9月21日(火) ヘテロ
9月20日(月) 酷暑
9月19日() こっちこい!UFO
9月18日() 亜細亜電影梯子観賞行2
9月11日() 亜細亜電影梯子観賞行


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9月23日()「8時だョ!全員集合伝説」

秋分の日と云えば,藤子・F・不二雄こと藤本弘先生の命日でもある。
F先生が亡くなられたのが96年の事だから,あれからもう3年にもなる。今日,高岡入りするコアなファンも多いと聞く。
自分もいつか機会があれば巡礼したいんだけど。墓前にどら焼きとチューダーを添えて,じゃ,ちょっとベタかなあ。
という訳で「いしむら」におはぎ各種ともち入りどら焼きを買いにいく。どら焼きはそのままカフェでお茶請けに。合掌。

その後,ぶらぶらと中間ダイエー方面に向かう。
ブックチェーン・アシーネにて,F先生を偲んで,藤子・F・不二雄「ドラえもん〔ジャイアン編〕」(小学館コロタン文庫),そして居作昌果(いづくりよしみ)「8時だョ!全員集合伝説」(双葉社)購入。奥さんは川原泉「バビロンまで何マイル?」(白泉社)川原泉「事象の地平」(白泉社)を。僕はまだ手を染めるに到っていないが,彼女は古くからの熱心な川原泉ファンらしい。「事象の地平」というのは読み物っぽいので,ちょこっと読んでみようかな。

「ドラえもん〔ジャイアン編〕」はその名に違わず,ジャイアン・エピソードを主軸に編纂した好企画。ジャイアンを主人公に据えている以上,自然とジャイアン・リサイタルに端をなす,歌い手ジャイアンの足跡と,のび太たちの攻防の歴史を辿る一大ファウンデーションになっている。時折リンケージする,ジャイアン・グルメの挿話も愉しい。勿論,解説は「もはや年金を貰える年齢に達してしまった」たてかべ和也である。〔ドラミ編〕も同時発売されたが(未購入),こちらの解説は勿論よこざわけい子。個人的にはジャイ子の少女漫画家史を辿る〔ジャイ子編〕も刊行して欲しいが,さっすがにエピソードが足りないかもしれない。青木和代さん解説というのもインパクトに欠けるし(勿論,オレ的大歓迎ではある)。


処で「8時だョ!全員集合伝説」(双葉社)の話である。
居作昌果というのは当時のTBSの敏腕プロデューサーで,僕らの少年時代を形成したと云っても過言ではない怪物バラエティー番組「8時だョ!全員集合」16年の歴史の中で前半13年を受け持ったひと(因みに「飛べ!孫悟空」もこのひと)。云わば歴史の生き証人が語る全盛期のドリフ史。尚,当時の美術の設定資料や,空の舞台写真は掲載されているものの,当時,現在を問わずメンバーの写真が載っていないのがたまにキズ。ドリフが当時所属していた渡辺プロ(今はイザワオフィス)との版権のからみか。或いはドリフやイザワオフィスの了承が取れなかったのかもしれない(どうも後者っぽい)。

長さんと志村(呼び捨てにするのは幼少時の習慣からで実際は深く愛しているのである)の確執,ドリフにおいての永遠の命題みたいな処があるのだが,直接はっきりとは触れないものの,居作さんの分析には成程と膝を叩ける側面がある。即ち,コントグループにおける,メンバー構成の不幸。ツッコミとボケということで云えば,長さんと志村は紛れもなくツッコミなのであり(尤も志村けんというひとは「対・長さん」で培ったすぐれたボケの素養も併せ持つ。),ボケの覇者としての加トちゃんと並ぶ時,ツッコミがふたりいる事は誰かの資質を殺すのである。つまり同じグループ内で共存共栄出来ないのだ。

荒井注脱退・志村けん新加入にまつわる「史実」についてもドリフ外にい乍らドリフに近かった第三者の証言だけに信憑性が高い。
いつぞや,ある男性誌で志村けんのロングインタビューが掲載された時に志村サイドからのスタンスでドリフ加入秘話が語られた事があった。うろ覚えなのでアレなのだが,曰く,ドリフ・ボーヤ時代にはちっとも機会を与えてもらえず,マック・ボンボンというコントコンビで世に出ようとした時も大反対され,ようやくコンビが軌道に乗り始めた時に,荒井脱退事件が起こり,長さんに半ば無理矢理呼び戻された。自分は本当はドリフに入る気なんてなかったんだ,というもの。
勿論,これはインタビュアーの恣意・憶測が入り込んでいるものであろうし,志村当人のゲラ稿チェックも定かではないから,100%字義通りに受け取って良いかは疑わしい(実際,著書「ヘンなおじさん」ではそこまではっきりと書かれていない)。
でも,くだんの証言の中にコメディアン志村けんの持つ現在の屈託と当時の「若気の至り」を美化した自己正当化が紛れていないとは断言できない。加入後「東村山音頭」までの鳴かず飛ばずの苦節2年という苦い記憶もある。だから実を云えば,僕はずっと長さんサイドが語るコトのいきさつを待望していた。
少なくとも,居作Pの語る真相は違う。
長さんがマック・ボンボンのテレビ進出を反対したのは,ネタのストックもままならないうちにテレビに消費されて使い捨てられるのを苦慮してのことだったし,また事実,マックボンボンは長さんの憂慮通り,レギュラーから干され,肝腎の相方・井山淳も失踪してしまうのである。新しい相方・福田正夫ともしっくり来ず,ついに志村はマック・ボンボンを閉めて,再びボーヤとして出直す為に長さんを訪ねたのが,折りしも荒井脱退問題の渦中だったというのである。
以前から自分が唱えている親父(師匠)への反抗期みたいなもんだというのが真相にいちばん近い気がする。仲良くケンカしな,である。

その他,停電事件を始め,往時のファンには応えられない本である。
特に英ちゃんは必ず読むように。

夜は奥さんのたっての希望で,余り気が進まなかったのだが,「マトリックス(99・米)」
作品自体は鑑賞計画に入っていたのだが,並ばなきゃ入れないのは目に見えていたので,身重の奥さんが果たして持つかどうか気がかりだったのだ。
明日が平日だろうが,台風が近づいていようが何処吹く風と来場者は引きも切らず,案の定,30分程並ばされるが,彼女はどうにか持ち応える。
本木雅弘がやはり身重の内田哉也子を「双生児」の試写会に連れてって,話が話,監督が監督なだけにショッキングなシーンが続出で,奥さんがのけぞる度にはらはらしたと聞いたが,僕も全く同様で,シーン毎に奥さんのリアクションが気になって映画以上にはらはらする。

処が,当の奥さんはゲーマー魂をいたく揺さぶられたようで上映後は至極ご満悦のご様子。
帰ってから,N山夫人とポスペで四方山モードに突入する有様で,アホらしい事このうえなし。心配したオレがぶぁかだったぜ。



9月22日(水)「10分間の呪縛」

中間にてレイトショウ。瀬戸口くん大絶賛の「金融腐食列島〔呪縛〕(99・日)」

まあまあの入りで21時40分予告篇開始。処が本篇が始まって5分と経たずに,ちょうど若村麻由美扮するアンカーウーマンの登場シーンで画面が切れた。
「へっ」と思う間もなく,瞬時に場内の間接照明がライトインして,AMC特有の洋楽BGMが流れ始める。
客席のざわめきを待たずに,場内が暗くなり,銀幕に若村麻由美が帰ってくる。
しかし,音声はOFFのままである。いや,正確に云うと,BGMの洋楽がそのまま垂れ流されていた。時折,癪に障るナビのイングリッシュMCもしっかりインサートされる。ドラマはずいずい進んでいくが,スタッフが飛んでくる気配も無い。業を煮やして,数名の客が場外に出て行く。全くシャレにならない。いちばん最悪なのは,中途で音声が復活してそのまま何事も無かったように映画を流されてしまうこと。既に観客達(ぼくら)はドラマの行方と観賞意欲を失っている。

話はそれるが,昔経験した中で最悪だったのは,ダスティン・ホフマンとウォーレン・ビーティ共演の「イシュタール」(ま,あれは作品自体も最悪だったのだが)。砂漠でヘタレ漫才師のふたりが襲われるシーンから,TVでいう処の垂直同期がイカれて,其処から延々30分程,銀幕の中央を境に上下が反転した映画を観るハメに陥った。あの時は「ごめんなさい」の場内アナウンスしかなかった。今思い出しても腹が立つぞ。
「月とキャベツ」(レイトショウ・オンリー)の時はドラマが完全に終わって,タイトルロールが始まるまさにその瞬間に映画が終わってしまった(スタッフが間違えちゃったらしいんだけどね)。山崎まさよしの「ワンモアタイム・ワンモアチャンス」がイヤーンな処で途切れたからよっく覚えている。考え方によっては本篇は確かに終わっていたが,そういうもんじゃない。スタッフに聞くと一旦巻いたフィルムを少しだけ巻き戻して,お見せするのは不可能なんですとのこと。しかもレイトで22時半を廻っていたから尚更であろう。その時は支配人が現れて丁寧に詫びながら招待券を配って廻った。いや,その時出来る限りの誠意ある対応だったと思う。納得いかずに最前列でいつまでも座り続けた高校生3人組を説得するのにいちばん骨を折っていた。ちなみにシネテリエ天神での話である。

ついに其処いらのおやっさんが怒号を上げ始めたと同時に映画が途切れ,再び場内が明るくなった。
黒タキを来た若い女性スタッフと中堅の男性スタッフが謝罪と説明に現れた。
早速フィルムを最初まで巻き戻して再上映を行わせていただくが,その際10分程度かかるので,ご迷惑をかけたお詫びに優待券を進呈するとの申し出。
いきなり客席から拍手が起こったもんね。おじさんおばさん層多かったし(若いひとは「マトリックス」「ノッティング・ヒルの恋人」のあぶれ組か椎名桔平狙いのファンが殆どだったのだと思う)ゲンキンなものである。
いや,僕も心の中で快哉を叫んだけど。ま,僕の場合,優待券というよりは上映をやり直してもらえる事に対してだけど。

かくして呪縛の10分間のうちに「AMC.THEATRES優待券」を頂く。
有効期限が2000年12月31日で,しかも映画館の指定がないから,AMCなら全国共通のゲストパスという事である。しかも週7日例外なく有効のマイティパス。何だか,999の乗車券を貰ったような気分。印刷ではあるが,ちゃあんとAMC社長フィリップM.シングルトンのサインが書き込まれている。
この隙に,入場前は激混みで並べなかった売店でパンフレットも買ってこれたし(終映后は売店もクローズする),瓢箪から駒だった。鶴亀鶴亀。

映画の出来の方は聞きしに勝る快作で,瀬戸口くん云う処の伊丹の後継者云々の話も充分頷ける。今後とも原田眞人から目が放せない。
でも,オレが原田さんの作品をきちんと映画館で観たのって,あと「おニャン子・ザ・ムービー 危機イッパツ!」だけだったりして。
ゴメンナサイ。せいぜい自己批判します。


処で奥さんは今日,区役所で母子手帳と山のような副読本をもらって満足のご様子である。
勿論,つわりのひどさに少しも変わりはないんだけど。今も蒲団で転がって唸ってます。



9月21日(火)「ヘテロ」

久々に種ともこ非公式ウェブサイト「"HARVEST"Web Server」を覗きに行ったら,「遂に」と云うか「とうとう」と云うか「ようやく」と云うか,まあ何でもいいのだが,種ちゃんのニューアルバム情報が告知されていた。


 種ともこ『ヘテロ』 1999年12月1日 Release! MAGL-5005 \3,000 (販売元:SME・インターメディア)

 01.かえして (詞:種ともこ/曲:保刈久明/編:エレクトロ・ビアンキ)
 02.DOWN (詞・曲・編:直枝政広)
 03.CUT THE FRUITS (詞:サエキけんぞう/曲・編:桜井鉄太郎)
 04.アメとガム (詞・曲・編:阿部義晴)
 05.メモリア (詞・曲:林邦洋/編:松林正志)
 06.No Joker (詞・曲・編:直枝政広)
 07.かけっこ (詞・曲・編:阿部義晴)
 08.影の中の影 (詞:サエキけんぞう/曲・編:桜井鉄太郎)
 09.抱いててほしい (詞・曲:杉林恭雄/編:益子樹)
 10.Tree (詞:上田現/曲・編:桜井鉄太郎)


詳細はこちらを参照のこと。

いやあ,SONYのオフィシャルサイトがもう長いことうんともすんとも云わなかったから,レコード会社移籍したんだろうなぐらいには思っていたのだが,2年振りに出るものがヴォーカリスト専念アルバムとは…。種ともこ安則まみ化計画とゆーか(あ,安則さんってのはチャカのこと。いや,今ではデリシャスヒップか。因みにNOKKOの本名は山田信子なのだが,皆さんはご存知だろうか)。
「ヘテロ」ねえ…自作自演をホモと考えるなら,他者とのコラボレーションはヘテロなんだろう。シンガーソングライターがヴォーカリストに専念する,つまり他人の楽曲を歌う,カヴァーするアルバムで珠玉の名盤というのを僕は体験したことがないので,不安な部分がないではない。あ,マッキーの1枚前のヤツは出来が良かったなあ。ただ,これまで彼女が参加したトリビュートアルバムや,レゲエ童謡のいくつかは完全に自分自身の「うた」にしていたので,その点で歌姫としての実績は充分過ぎるくらいあるんだけどね。作家はサエキさんにコーザノストラとクセもの揃いだし…しかし,どーして小西さんがいないのだっ。あと,吉良さんとか…。

いや,何はともあれめでたい。僕は暮れまで胸を熱くして待つことにする。



9月20日(月)「酷暑」

週末の停電の後始末(工場への説明回り等々)やシステム切替で,何だかんだと慌しい一日を過ごす。
処で停電の原因はシロアリによるケーブル絶縁体の食害と判明した。
賊は事故点地表付近にあった枕木を根城に侵入したらしい。
これがシロヤギさんならお手紙しか食べなかったのにと思うと悔やむことしきりである。ウソだけど。

帰りに戸畑サティで土産にツナマヨネーズ入りのたいやきを買う。
ちょっとタイトルは失念したが,立ち読みした本に「男はつらいよ」最終作と晩年の渥美清を偲んだものがあって,其処で柄本明笹野高史が,渥美さんの観劇友達(というかお供というか)だったことを知る。渥美さんが大の観劇マニアで良い評判を聞くとどんな小劇場でもふらっとひとりで小屋に入っていたのはつとに有名な話だが,渥美さんが乾電池や自由劇場の芝居に顔を出しているうちにいつしかこのトリオ・ザ・観劇が出来上がっていたらしい。「面白そうな芝居があったら教えて」と常に渥美さんから頼まれていたふたりが,各々,例えば柄本明が渥美さんに電話すると「あ,そ。じゃ笹やんに連絡とっといて」となったのだそう。
「オレ,渥美さんと風呂入ったことがあるんだぞ」「何をオレだって」と個人を懐かしむうちにいつしか自慢のしあいっこになっている,大俳優のくせに少年のようなふたりが微笑ましく,またそんな風な仲になってまでいつだって彼らの雲の上にいた渥美さんの孤高を思う。オレ,この本,買おっかな。

処で秋が来たとは思えない暑さである。残暑というよりはバリバリ現役の酷暑である。
おかげで幾らも触っていないというのに,我が家のPCがすぐ熱暴走を起こして困る。日記の更新もままならん。

犬山のおかあさんから電話。子供が生まれる4月には一ヶ月ほどウチに来てもらえることになりそうで安堵する。個人的には,もしもの時に自分がずっとついている訳にもいかないことを考えると奥さんが犬山に帰省して出産するのがベストだと思うのだが,これが頑として首を縦に振らないのだな。


夜更け,寝苦しくて目が覚めたら,雷鳴と共に僕の首を締めようとする奥さんの顔が闇の中で浮かび上がるのが見えた。
「う,うわァ」って,ただ単に雷が怖くてしがみつかれていただけだった。窓の向こうは豪雨である。
寝苦しかったのは,彼女が雷を恐れてエアコンを切ったのと,殆ど寝技をかけるように締められていたからだった。い,息が出来んわ。

時計を見ると,2時50分だった。
翌朝のニュースでちょうどその頃台北で大地震が起きていたことを知る。



9月19日()「こっちこい!UFO」

昨夜は会社の停電による計算機ダウン対応で眠れぬ夜を過ごしたので,えらく寝不足である。

海援隊繋がりの友人である青春流れ者くんに送付すべく物色してた武田鉄矢主演ドラマの1本「こっちこい!UFO」をほぼ10年振りにチェックする。
これは1989年7月TBS系「火曜ドラマワイド」枠でオンエアされた夏休み子供向け難病もの。時期的には「金八先生PART3」放送半年後にあたる。当時の名子役・伊崎充則くん(最近だと白井さん演出の「銀河鉄道の夜」など舞台での活躍が目立ってます)が,一攫千金を夢見る父親(武田鉄矢)に愛想を尽かして家出した母親(岡本麗)恋しさの孤独を埋めるようにUFOへのコンタクティ熱をあげる白血病の少年を好演している。緒形直人と結婚して引退した仙道敦子がヒロインとして花を添えていたり(これが掛け値無く可愛い!),今は尾羽打ち枯らして行方も杳として知れぬ黒木香が地元のスナック「ルフラン」のママとして脇を固めているあたり,10年の歳月を強く感じさせるが,UFOに纏わる表現はともかく(笑),キャストの配置,後半の展開共に今観ても遜色の無いウェルメイドな作品だと思う。
本作のプロデューサーは大岡進だけれど,柳井Pつながりが明確なドラマでもある(何しろ,伊崎は長渕剛主演「親子ゲーム」で頭角をあらわしてきたのだ)。因みに武田・伊崎初共演は石井ふく子P独占から解放された最初の「東芝日曜劇場(勿論,単発ドラマ枠の頃)」で,柳井Pもので初めて親子を演じている。これは奥さん(原日出子)に先立たれてしょげ返った父親を,小学生の息子がけなげにも叱咤激励する話。
武田ファン以外には全くどうでもいい話であるが,彼のソロアルバム「我田引水」に収録された佳曲「こっちこい」のモチーフをこのドラマで目の当たりにする。少年がUFOを呼ぶ時に歌う歌が,かつて母親から教わった種子島の島唄「こっちこい」なのである(勿論,武田さんの楽曲とは同名異曲)。武田さんの種子島熱は此処に別荘を建て,伊丹十三の如く自分の映画にも使用し,ついには島の教習所で自動車免許を取るにいたるのだが,いや,迂闊であった。「こっちこい」の島唄島唄したアレンジも今ならば合点がいく。
という訳で,送付ビデオの1本はこいつで決まりだが,もう1本くらい選びたい処。
豪華キャストというポイントならば,加山さんと共演した「兄貴に乾杯!」あたりなのだが(恐ろしいことにあの森繁久弥が加山・武田兄弟[!]の父親として特別出演している)いかんせん話がちーともおもろない。もう暫くサルベージを続ける事にする。

ついで,鷺沢萠「過ぐる川、烟ぶる橋」(新潮社)を読了する。
先に読み終えていた奥さんは浅田次郎の短篇みたいな話だと感想をもらしていたが,物語の構成だけを取り上げれば,過去と現在を自在に去来させつつ,各々の交差する処で物語を閉じる手法は名作「大統領のクリスマス・ツリー」を彷彿とさせる(断っておくが映画と小説はそのシノプシスから一切合財が異なるので,チーム・オクヤマの映画を想起しないように)。
物語の現在が置かれた舞台が意外にも中洲界隈なので,こないだのリブロでのサイン会に得心が云ったのだが,那珂川沿いの街並みの描写といい,御国言葉として用いられる博多弁といい,鷺沢のリサーチは綿密であり,その表現は半ネイティヴである僕らが安心して読めるほどに確かである(彼女自身,九州の出身ではないし,九州を舞台にした作品も,僕が知る限りこれが嚆矢である)。
物語の前面に押し出されたテーマはオーケンの隠れた名曲の如く「がんばったけれど駄目だったよ」
運命だとか業だとかで片付けるには少々空々しく,徳育から零れ落ちた自堕落の因果応報を嘯くには少々公平さを欠く。かつて裸の自分を許した友にだけは必死で誠実であろうとし乍らも,堕ちてゆかざるを得ない友に「自分に出来ることは何もなくなってしまった」と腹の底で呟かなければならない,閑かなる慟哭。決しておもてに出すことのない咆哮。友をいつくしむ互いの気持ちには一点の曇りも揺らぎもないだけに「もうどうしようもない」という慨嘆の溜息ばかりが其処にある。極限の「救いの無い」状態を其処に見る。
鷺沢さんのハッピーエンド不知は相変わらずだが,人間関係において取り返しのつかないギリギリの断面においても,誰もがこのうえなく優しく,あたたかい。故に身を切られるくらい痛く切ない。今回もお薦めしたい一冊になった。

夕方,奥さんの希望で「いしむら」で珈琲をしばく。
此処には,窓辺に面した無料の珈琲と緑茶を供するティーラウンジがあって,買ったばかりのお菓子を愉しむことが出来る。結果的に喫茶店でケーキセットを頼む市価の半値以下になるから,名古屋系の奥さんはコストパフォーマンスの高さを大いに買っている。
処で先週初めて来店するまで不覚にも知らなかったのだが「いしむら」は「ホンサンク」と同系列のお店らしく,「ショコラボア」や「ショコラもち」も,「鶴の子」や「塩豆大福」の脇でしっかり販売されている。しかもダイエーが勝った翌日の値引き特典もある。
今日食べた秋栗のカルディナールだが,栗の渋皮煮は美味しいのだが,生クリームが少しどぎつくって胸焼けを感じる。此処らへんがフランチャイズの限界か。ふと「16区」や「サントノーレ」の上質なクリームを想ふ。すこぶる高いけど。

深夜,Y田さんから電話。昨夜とは別件のシステム障害。
明日はどっちだ!



9月18日()「亜細亜電影梯子観賞行2」

久し振りに一週間も日記を休んだ。
仕事が忙しかったのは半分本当である。ま,ぼちぼちと書いていくつもり。
さて,アジアフォーカス福岡映画祭'992回目の参加にして最後の参加。

…てへへ,いきなり只今執筆中である。



9月11日()「亜細亜電影梯子観賞行」

アジアフォーカス福岡映画祭'99初日。
今朝はゆっくりめに9時半頃家を出て,12時半に天神着。運良く常駐駐車場に空きを見つける。
マクドナルドでCMで観てずっと気になっていた牛鍋パンに舌鼓を打ってからすぐソラリアシネマ1へ。

13時「玻璃の城(98・中=香)」
上映30分前に余裕で乗り込んだら,既に立ち見状態。土曜昼イチ,という時間帯,監督メイベル・チャン/主演レオン・ライというネーム・ヴァリューと正調・亜細亜電影が「未だに」時流に乗っている(近頃は斜陽入ってるけど)のが原因か。否応無く通路にしゃがむ。こんなことは数年前の「釣りバカ日誌」以来である。いや,この春「温水夫妻」観劇で経験したわ。爽やかに微笑むレオン・ライのバスト・ショットで若干名が奇声(歓声)をあげるが,場にそぐわず。「宗家の三姉妹」よりはぐっといいが,女を小莫迦にする台詞を独白く男がまったくの莫迦に見える演出というのは女流監督メイベル・チャンのオトコに対する悪意以外の何物でもないと思うのだが,これは下衆の勘ぐりってヤツですか? それにしても此頃,香港返還をクライマックスに持ってくる映画の多いこと多いこと。

16時「としごろ(99・イラン)」
ゲストにアリ=レザ・ダウドネジャード監督,主演したレザ・ダウドネジャードくん(このふたりは実の父子),そしてプロデューサー氏。字幕翻訳兼通訳はすっかり此処の「顔」になったショーレ・ゴルパリアン女史。司会はこの映画祭のディレクター,お馴染み佐藤忠男さま(因みにイラン映画を世界のイラン映画として知らしめたのはこの人の功績による処,大である)。今回は6〜7割の入りなので,ゆったりと座って鑑賞出来る。
上映前に監督から一言。「この映画をどうぞ楽しんでいってください」
続けて主演のレザくんから一言。「この映画をどうぞ楽しんでいってください」
最后にプロデューサーの挨拶。「この映画をどうぞ楽しんでいってください」…もうええわ!
監督たちも日本の観客との間合いに戸惑っている感じ。
終映后のティーチイン。兎に角,監督長広舌の巻。「イランで流行っている映画を教えてください」との質問に(イラン映画)革命前後の業界の状況と,政府やハリウッド映画との格闘の歴史,それから今後の展望を延々と講義してくださる。「誰か私を止めてください」…自分で落とすんだもの。
因みに質問への直接回答は「イランのひとは嘘の無い映画が好きです。私たちは嘘の物語を好みません」
次に「イランに優れたドキュメント映画はないのですか?」
「ちょっと待ってください。さっきよりも長くなるので考えさせてください」
すかさず佐藤さんが「あります」。場内爆笑。監督「代わりに答えていただいてどうもありがとう」
続けて佐藤さん「ドキュメント映画は地味だからね。でもやった方がいいんですよね」と独りごちてから「そう云えば」と,通訳のショーレ・ゴルパリアン女史から「実はキアロスタミ監督が40年前の佳いドキュメント映画を発見したんですけど,福岡市総合図書館は買ってくれないですか」と相談を持ちかけられた話を披露してくれる。「聞いてみればァ」の余りにすげない返事に客席は再び笑いの渦に。
「好きな映画監督は誰ですか?」という問いかけには「イランではキアロスタミ監督。あと,スタンリー・キューブリック監督を強く愛しています」に思わず客席がどよめく。

「腹減った」を繰り返す英ちゃんと合流,大丸地下で食料を買い込んでからエルガーラホールへ移動。
本日ラストは「ミステリー・オブ・ザ・キューブ(99・韓)」
ゲストにジョナサン・ユー監督。通訳はこれまた韓国映画の字幕翻訳に欠かせない根本理恵さん
本映画祭でいちばんのオレ的期待作…だったのだが,鑑賞後に残ったのは,まあ,韓国もこういう「インディー・ジョーンズ」的娯楽大作を撮るようになったのね,という感慨くらい。「建築無限六面角体」という切り口を見つけて「しめた!」と思ったのは分かる。でもね,ナチスが日本軍に置き換わっただけで,永遠の生命とか黴の生えたキーワードもアレなら,後半,洞窟内の破天荒なクライマックスもアレと,全くのアレアレ尽くし。一応,冒険娯楽活劇の定石は皆んな押さえてあるんだが,思わせぶりの導入部はちんぷんかんぷんなだけで鼻につくし,謎が解明されていく際のカタルシスも薄ければ,「ハムナプトラ」のようにいっそ突き抜けちゃってる訳でもない。あくまでも努力賞狙いだね。大作感はあるのでよしとしてもいいのでは。
という訳で,実り薄そうなティーチインはパス。

英ちゃんに誘われて,汗だくになり乍らKBCシネマへ。エルガーラを出たのが上映8分前。いや,走った走った。
予告編のあたり,間一髪で飛び込む。「君を見つけた25時(98・香)」
僕が観た返還後の香港映画で,これがいちばんバカ度が高かった。宣伝のチラシではビビアン・スーとトニー・レオンの胸キュンラブストーリーみたいな紹介のされ方をしているが,はっきり云ってそんな映画では無い,とだけは断言出来る(処々,擬態は施してあるようだが)。第一,これはトニー・レオンの映画であって,ビビアン・スーの映画では決して無い。というか,これはまごうかたなきマージナルな男たちの物語なのである(確かに女たちは可愛らしさを前面に出して,物語に花を添えてはいるのだけれど,あくまで男から見た女の映画なのだな)。
はい,告白します。今日観た中でこれがいちばん面白かったです(おいおい)。

別れ際に英ちゃんに「伊藤潤二読む?」と聞かれ,妹さん所蔵の伊藤潤二「屋根裏の長い髪」「地下室」「布製教師」「墓標の町」「画家」(以上,朝日ソノラマ)5冊を借りうける。ハロウィン少女コミック館を手にするのはこれが初めてだ。何か奥さんの胎教にひどく悪そう(笑)。
24時半堂々帰宅。今日はたっぷり遊ばせてもらいました。



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