10月のにっき(1)

シャルロットが私の母の処で一週間過ごすためにイギリスへ行った時,
私はとても寂しくて泣いていました。
彼(セルジュ・ゲンズブール)はそれが美しいと言って、
私が泣いているのを録音していたわ。

ジェーン・バーキン
「君に私が去ることを言いに来た」の啜り泣きについて

10月10日() 車海老,ふためく
10月09日() 今夜は今夜しかないのさ
10月07日(木) だいじょうぶマイフレンド
10月06日(水) CTスキャンあります
10月05日(火) 師匠がプリンを食べた理由
10月04日(月) 大竜界
10月03日() 友,遠方へと帰る
10月02日() 友,遠方より来たる
10月01日(金) ミチニマヨッタココハドコ


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10月10日()「車海老,ふためく」

昨日買った手づくりかぼちゃジャム,朝食のチーズ乗せトーストで早速試す。
なるほど,甘夏が効いてる。でもカボチャ特有の餡(あん)な食感だからして,決してマーマレードというのともちょっと違う。
明日は普通の新食感で試してみよう。

さて,今日は親父の58回目の誕生日という事で,宇佐にいるハハには申し訳ないが親子3人,薬院でお食事会。
尤も,福岡在住だが僕に輪をかけた偏食家の長妹は辞退して自宅待機。
行きしなに,昨日注文しておいたバースデーケーキを受け取りに「16区」に立ち寄る。
ちょっと行かない間にお店の内装が一新していて吃驚する。また,初めてオーナーパティシエの三嶋さんをお見かけする。店内に飾ってあるダックワースの絵そのまんまなプロフェッショナルの険しい顔だち。「いらっしゃいませ」まで怖いよう。このひとが頑固一徹のケーキ職人か…て,本当に頑固そうである。何だか昔観た「天皇の料理番」でマチャアキの師匠を演ってた財津一郎を思い出す。
「徳蔵,この玉菜の刻み方は何だっ。おまえは俺から一体何を盗んできたんだ」
「16区」の水準の高さはひとえにこの三嶋さんの鋭い眼光にかかってると云ってもいい。

親父を拾ってから,薬院に取って返し,江戸前天麩羅の店「天孝」へ。
寡黙だが誠実そうなご主人と,しっかり者の奥さんは相変わらず。今回は更にスーツ姿の若い給仕係が増えていた。
此処は去年の父の日に行って以来だからおよそ1年半振りか。カウンターの上に乗った松茸の籠に一同ざわめく。
一番乗りだった。コーナーを挟んでカウンターに3席。いちばん奥(角席)から僕,親父,そして奥さん。
ボリューム面での反省と,後にケーキが控えている事を考慮して,今回は前回よりワンランク落として「桃」のコース(一人前4400円)。
とは云え,結果的にその物量に大差はなかった気がする。

  サラダ
 これは普通のグリーンサラダ。ま,はやる想いをまずは鎮めて(笑)。

  刺身「ヒラマサ」
 大振りのぷりぷり(怒っているのではない)で肉厚の身が3切れ。これは疑いなく素材の勝利。
 いきなり,親父の顧客満足度高し。

  車海老
 初めて来た時,いちばん狂喜したのが,この「車海老」だった。
 カウンター内側の厨房のいちばん奥に,車海老の入った一抱えほどの水槽が置いてある。
 ご主人がおもむろに二の腕を突っ込むと,水槽の中は宛ら阿鼻叫喚の地獄絵図になる。海老にとって。
 蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う海老の中から活きのいい処を数匹押さえ込んで,そのまま俎板へ直行するのだ。
 まずは身を抜き取った上半身が素揚げされて出てくる。「お塩だけでどうぞ」おお,香ばしいぞ。
 次に殻を脱ぎ捨てた側の下半身が2尾。「酢橘とお塩で召し上がってください」至福の瞬間とはこの事だ。

  アスパラガス
 こんなぶっといアスパラガスなんて見た事ないぞ。スーパーで売ってるヤツの3,4本を束ねたくらいはある。
 ほくほくしてもう少しで芋とまがいそうな食感。

  帆立の貝柱
 笑っちゃうくらい巨大。肉厚なのは勿論のこと,直径が輪切りにした檸檬くらいある。
 ミディアム・レアとでも云おうか,切った断面の芯が外側の白に比べてほんのりローズピンクをしている。
 いちいち断るまでもなく旨い。食べても食べても減らない。

  蓮根
 もう決して驚かないつもりが,厚み2cm程の大車輪が出てきて度肝を抜かれた。
 そのしゃりしゃり感がたまらない。


 配膳担当の(お店の)奥さんが「ごはんはどうされますか」と訊ねるので是非もなくお願いする僕たち私たち。
 炊き立てのごはんはやわらかく,ふんわりと丁度いい塩梅。茶碗が空になった頃を見計らってお代わりに気を配ってくれる処もポイント高し。
 一夜漬けの白菜,胡瓜,牛蒡も丁度いい塩加減。
 蜆汁は赤だしだったので(ウチの)奥さんが嬉しそうに小さな悲鳴をあげる。

 さて,天麩羅の旅はまだまだ続く。

  メゴチ
 今が旬の白身魚なのらしい。
 熱々なんだが,ふわっと口の中で溶ける淡雪みたいな食感。何てやわらかい肉なんだろう。

  朝鮮人参
 籠の中にえらく小振りの大根が置いてあるなと思ったんだ。大根卸し用にしては心許ないなァと。
 春に来た時はたらの芽をいただいたが,秋の目玉はこれか(流石に松茸はもっと上のコースらしい)。
「今が旬なんですか」と訊ねたら「ええ,今ぐらいから12月頃までですね」とのお答え。
 人参独特の風味は残るが,暫く口の中で噛んでいるとお芋系の甘味が出てきてなかなかの美味。
 舌触りもお芋系のそれである。珍品度も高まってか親父にもなかなか好評であった。

  穴子
 2切れ。ひとつはカレー粉で食べると美味しいですよと(お店の)奥さん。
 はいはい,美味しいですとも。

  獅子唐
 これまた巨大なのが一本出てくる。僕が両手で包んでもはみ出しそう。
 残念乍ら獅子唐は鬼門なので奥さんにトス。呆れ顔で親父が笑う。

  かき揚げ(車海老&朝鮮人参&まいたけ)
 前回の時はごはんに乗っけてお茶漬けにした記憶がおぼろげにあるのだけれど,奥さんどうだったっけ?
 それともアレはそういうコースだったんだっけ。
 さしもの奥さんも,かき揚げの1/3を残して挫折。無念そうに皿を睨んでいた。
 でも流石にアナタ「お持ち帰りを」とは云いにくいじゃない。

  お茶(お口直し)
 此処ではコースを終えるとカウンターからテーブル席に移ってデザート或いは口直しをいただく。
 ちなみに前回はフルーツ付のコースだったので旬の枇杷をいただいた。
 茶請けは蕨餅。餅の甘さがちょうど口の中をゆすいでくれる感じ。
 ふぅ…。ご馳走様でした。

前回は上に付け加えるようにして烏賊だのペコ玉だの小茄子だのオクラだの更なるプラスアルファがあった。
こないだはよくも食べ切ったものである。

処で奥さんは,最後のかき揚げこそ少し残したもののこれだけの量を食べても全然平気だった。
佳い油を使ってある事もあるが,やっぱり旨いものの前にはつわりも息をひそめるのだろう。
(尤もこれを書いている今〔23時頃〕は気持ち悪いと云って死んでおります。ま,毎晩のことなんだけれど)

心をこめて「ご馳走様」を云って店を出た後,親父んちで長妹と合流して,バースデーケーキをいただく。
ケーキカットの直前にハハから親父に電話が入る。途中で変わる。

「天麩羅,美味しかった?」
「うん。詳しく説明しようか」
「よして」
「それで今からケーキ切る処」
「え…ケーキも切るの?」

ハハはかなり意外だったようである。何だか気の毒になってくる。やっぱ宇佐の片田舎にいると損だよね。
「今度はあいつも何処か連れていかなきゃな」ってそれはあーたのシゴトでもあります,おとーさん。

ケーキは巨峰をあしらったシンプルなホワイトケーキ。勿論クッキーの「58さいおめでとう」のメッセージプレートが効いている。
此処のバースデーケーキは基本的に季節の果物しか使わない主義である。だからこの時期に苺が乗ることはまずない。
以前,奥さんのケーキを頼んだ時は(6月)マスカットがフィーチャーされていた。

長妹が,こないだねだった藤子・F・不二雄「チンプイ(4)」を探して買っておいてくれた。



10月9日()「今夜は今夜しかないのさ」

秋晴れの空,何だか久々の天神映画行(レギュラー)。
まずシネリーブル博多駅のモーニングショウで待望の「洗濯機は俺にまかせろ(99・日)」を観た後,天神に移動して「リトル・ヴォイス(98・英)」

まず「洗濯機は俺にまかせろ」は備忘のため,シティ情報ふくおかの496号に載った富田靖子のインタビュー記事を採録しておく。

「この映画は、本当に出来のいい子なんです。私なんかが何も言わなくても、みんなが誉めてくださって。
 この仕事を始めて、16年になりますけど、その中でもこの作品は自信を持ってオススメできる1本です。
 ハードカバーの立派な単行本ではないけど、ずっと大切にしたい手のひらサイズの文庫本のような存在というんでしょうか。
 この映画に出てくる人たちは、みんなどこか傷ついていて、それでもなんとか生きてる。
 そんな彼らの姿は、見に来てくれた人たちの心の傷もちょっとだけ癒してくれるんじゃないかなと思います。
 決して傷は治せないけれど、お風呂に入る時、染みないようにちょっとだけ傷口を塞いでくれるバンドエイドみたいに」。

演技派女優として国際的に活躍する彼女だが、大きな仕事の前には、役づくりのため福岡の実家に帰ってくるのだそう。

大体,篠原作品のキーワードとして「癒し」とか「ヒーリング」とかいう言葉がすぐ浮かぶのだけれど,そういうラベリングも本当を云えば鬱陶しい。例えばオレ的たれごよみとかさ。あ,これもラベリングか。とりあえず「月とキャベツ」くらい好きというか,たいせつな作品ですね。それでいて,あれよりも到達点が高い。

「リトル・ヴォイス(98・英)」はミセスEが「期待はずれだった」とゆってたので,少しどきどきして観たのだけれど「悪くてなんぼや」という覚悟のスタンスだったからか,充分面白かった。第一役者が旨すぎる。ブレンダ・ブレッシンのバイタリティの方向が何処か間違っている母親と云い,マイケル・ケイン(最后にブーの店の舞台でフルバンドで歌う「転落の歌」が泣かせる)と云い,勲章ものの芝居である。
ラストは確かに食い足りない,というかカタルシスに欠けてる。見せ場はジェイン・ホロックスのショービズの王道を往くようなエンタだからね。「アルジャーノンに花束を」みたいに彼女の十八番を萎ませてオワリってのは,客の好悪が分かれる処。ハハとの確執を上手にからめて,彼女の心情を爆発させたりするあたりは旨いんだけど。「私の名前はエルヴィじゃない。ローラっていうの」

映画が終わって,1Fに降りると屋内イヴェントで白井貴子がアコースティックライヴを行っていた。
ギター1人に,コンガを含むアフリカンパーカッション3人(1人ネイティヴのジョンさん含む)の編成。
勿論,東洋の魔女じゃない,ライヴの女王だった方の白井貴子である。
このひとは渡辺美里よりいっちょ前のひとにあたるから,全盛期は僕が高校生の頃の筈だが…でも当時とまるでお変わりなくおウツクしい。
確か火曜の深夜3時,オールナイトニッポンの2部を受け持っていた。試験中になるとよく聴いた。
「今夜は今夜しか無いのさ,白井貴子のオールナイト・ニッポンッ」分かったような分からんようなご本人のジングルは今も耳に残ってる。
僕が来た時はもう殆ど終わりで,大ラス2曲だけだったのだが,往年のパワーは一向に衰えていない。もうオーディエンスが全員笑顔の手拍子。
客の巻き込み方も堂に入ったもので,皆んな歌う歌う。最后の「元気になあれ」は良かったなァ。

すっきりした処でZ−SIDEに行き,丁度フォションのミルクジャムが切れていたので,代わりのジャムを探す。
ミルクジャム・ヘイゼルナッツ入りなんてのもあったが,まずはお試しで手づくりかぼちゃジャムを買う。水俣の福田農場ワイナリーとある。
原材料に甘夏みかんとあるから柑橘系フレーバーらしい。とまれ明日の朝食で試してみます。

細野不二彦「ギャラリー・フェイク(17)」(小学館)を購入。



10月7日(木)「だいじょうぶマイフレンド」

武田鉄矢映画物件の中でも,1,2位を争う珍品「だいじょうぶマイフレンド(83・日)」を英ちゃんにダビングしてもらってやっと観る。
監督は小説家としての名声を欲しいままにし,映画作家としての悪評を一身に背負う村上龍。僕はこのひとの映画は学生時代に英ちゃんとビデオで「トパーズ(92・日)」ハル・ハートリーはこれを観て主演の二階堂ミホを自分の映画にキャスティングし,挙句結婚してしまうのだから世の中はワカラナイ事だらけである)を,会社に入ってから映画館で「KYOKO(96・日)」を観ている。本の方は縁が無くて未だにエッセイを一冊読んだきりだ。
つまり本作も原作は未読で,僕にとって事前のテキストは「映画秘宝・底抜け超大作(1996)」(洋泉社)のP.228古地道夫「本当に大丈夫?村上くん」しかなかった。3年前に先のムック本を読んだ時には,いくらトンデモないとは云え,これはライターがオーバーに書きすぎてると思った。

「宇宙人ゴンジーが,マスターベーションをして,44マグナム弾よりも早いザーメン放出でロケットを命中・大爆発させる」
「トマトの前では青息吐息になるゴンジーの為に果物をジュースにする『ジューシーキャンキャン』でトマトを全てトマトジュースに変えてゴンジーを救出する」
「悪の組織ドアーズの手によって大勢のロボトミー手術を受けたひとたちが歌と踊りで人間性を取り戻す

そーんなワケの分からない映画があるもんか…って3年間ずっと思ってた。この映画を観るまでは思ってた。
嘘や誇張が何処にも無い映画評だと解った時の衝撃たるや…て,演出が冗長で本当におもろないので,さほどショックではなかったが,これで14億円はあんまりでしょ。世の中にはどんなに優れた作家でもカネの問題で1億の資金が用意できずくすぶってるひとだっているというのにィ。くらいは云いたくなる(笑)。
そりゃ,ピーター・フォンダは文句も云わんとギャラ分の仕事はしているし(ってオーソン・ウェルズじゃないんだから),サイパンロケも堂々敢行だ。音楽は桑田や教授や高中や加藤和彦が惜しげも無く楽曲を提供している。無意味なミュージカルシーンも陳腐乍ら結構カネかかってそうだし。
でもこれは片手間仕事と云われても仕方無い。もしくは「才能がないんだよ」と罵倒されても。
やりたい事(理想)とやれる事(実力)のギャップが此処まで甚だしいと,これは原作の小説を読んでみる必要がありそうですね。

さて,肝腎の武田さんであるが,映画も後半にさしかかった84分あたりになって,ロボトミー手術を受け,無感情な労働機械になってしまった渡辺・コマンダー・裕之に喝を入れるドアーズの工場長の役でワンシーン,15秒くらい顔を見せる。映画始まってすぐにも名前は出るが,完全に名前貸しのカメオ出演である。俺はこれが観たくてこのテープを待ちわびたんかい…。あと,タモリ(歯痛の刑事)に小松政夫(トマト畑の農場主)とゲストが博多出身者ばかりなのは,村上が長崎出身だから同郷である九州人に声をかけたということなのか。考え過ぎかな。
ま,広田玲央名もデビューしたてでエッチ度も中途半端だし(何故かオープニングで全裸を披露しているが,何のこっちゃよう分からん),あの破天荒な展開も余りにも退屈極まりないショットの連続で観客の方がロボトミーにされそうだし,「だいじょーぶマァイフレーンドォ」と歌い上げるエンドロールまで,全然「だいじょうぶ」でもなければ「マイフレンド」でもない。いや,確かにめったに観られないものを観せていただいたのは認めるが,これを銀幕で観たお客の貴重な体験を羨ましいとは決して思わない。「北京原人」の人っ子ひとりいない試写会に行ったと聞いて羨ましくない程度に。
せめて日記のネタにくらいしなければ。

処で,レオス・カラックスの「ポーラX」は大丈夫か。今朝の「めざましテレビ」のインタビューを観てたら不安になったぞ。
血の河を流されていく男女のイメージが鮮烈と云うけれど,鮮烈な絵なら「ポンヌフの恋人」にだってゴマンとあったのだ。

さて,「噺の穴『天狗裁き』」,ようやく公開したので是非読んでください。



10月6日(水)「CTスキャンあります」

出勤前の慌しい時間に「ブースカ!ブースカ!!」の初回を観る。キー局は土曜の朝だが,TVQは火曜の朝放映なのである。
まず,フィルムじゃなかった。低予算が偲ばれると同時に後のビデオ回収をさほど見込んでないって事か。
あとは監督に,原田昌樹と連名で満田〈円谷プロ専務兼ウルトラマン・ランド館長〉済御大の名前があったが,一体どんな風に演出を分担したのか。案外,現場に顔出してたらついつい口も出してただけだったりして(だといいな)。
毎朝,旧作の高橋和枝さんに起こしてもらっている身としては,2代目の性別不明なファルセットボイスにはかなり違和感を感じるが,手垢のついていない声を使った判断は褒めるべきだな。雄作が夢想するミラクルミラーキング『ミラーマン』が使ったのはオールドファンへのファンサービスですか?
屯田大作役の増田由紀夫と榊原るみ的渡辺典子は適材適所の配置だが,警部役の宮川一朗太は「本当に」それでいいのか。てっきり服部半平太に扮するうえだ峻かと思った。器用貧乏なんだな,このひと…「未来の想い出」の時の宮川クンのヒールは本当に良かったぞ(て,ずいぶんマニアックな引用だな)。
毎週観るだけの吸引力は少なくとも「僕には」無い(「燃えろ!ロボコン」もそうなんだよな)が,もう1回くらいは観てみる。

来年,2000円札が出るそうである。妙に重宝しそうで何だか悔しい。
「2000年はミレニアムに当たり,2000円銀行券を発行するにふさわしい」とうれしげなオブッチ発言は喜久蔵師匠並みのオヤジギャグだが,ま,云いたい気持ちは分からんでもない。…て,まさか,本当に2000年だから2000円を出すっていうんじゃないだろうな。
それから,今日ようやく東海村入りしてメロンとマグロを旨そうにお食べになったそうだが,「総理と呼ばないで」のしらたき娘を思い出したのは僕だけか。

月曜・火曜と会社を休んでたIくんが午後からでも出社してきたのでほっとする。
何でも「眩暈がした」そうなのだが,大概の体調不良では会社を休まないひとなので,少々心配していた。
で,Iくん,内科で診てもらおうとS病院に行ったら「ウチは首から上は全部『脳神経外科』なんです」と脳神経外科に廻され,いきなりCTスキャンにくぐらされてしまった。保険使って4500円也。「脳腫瘍の心配はありませんでした」って,をいをい…。
普通,眩暈だけでCTスキャン行きはないだろうと思うのだが。貧血とか,脚気とかを調べた形跡も無さそうだし。料金が料金だけにインフォームド・コンセントくらいやっても良さそうなものだが…そんなにCTを見せびらかしたいのか(違うって)。結局,別の病院の内科に行って,血液検査までしたものの原因は解らず。
という訳で,Iくんは未だにフラフラするそうだ。

「噺の穴『天狗裁き』」の原稿,今日もタイプ出来ず。
楽しみに待ってくれている皆さん,ごめんなさい。



10月5日(火)「師匠がプリンを食べた理由」

昨夜,やっさんに電話で文治師匠の好きなお菓子を尋ねた。
宇佐での凱旋公演の際,僕ら夫婦は楽屋お世話係を任命されているのだが,お茶っ葉とお菓子は事前に師匠方の好き嫌いをリサーチして予め用意しといてくれと,とんくんから要請があったもので,話のついでに訊いてみたのだ。
やっさんが云う事には,師匠は甘いものが駄目で,しかも高座の前には何も食べないのだという。

甘いものが駄目…2年前に北九州で開催された「桂平治独演会」がありありと蘇る。
会は黒崎・小倉と2日間あって,僕ら夫婦は2日ともお邪魔した。
皆さん(文治師匠,伸治師匠,快治さん【当時,束治さん】)は僕らの為に2日目の演目を変えてくれた。
しかも,文治師匠に到っては「毎日追っかけて聞こうなんていうモノ好きなお客がおりますもので,今日は絶対にテレビやラジオではかけられない噺を演ります。あんまり面白くないんですけど(場内爆笑)」と,ひどい訛りで話す馬子と,梅毒で鼻が欠けて言葉が聞き取りにくい侍の暗号のようなやりとりに,やがては客席までも「わっちゅうせい?」の嵐に呑まれていく珍品「鼻ほしい」をかけてくださった。あの夜の僕らは果報者であった。
話は高座の前にお邪魔した楽屋でのことである。
師匠のお好きなものがちーとも判らなかった僕らは(今考えると先からやっさんに訊いておけばよかったのだが)あろうことか「さかえ屋」の「石田プリン」「あんみつどら焼き」を持って行ってしまった。いや,当時「石田プリン」は僕ら夫婦の間でひどくブームだったのだ。午後には売り切れてしまうという希少性も,ひょっとして師匠に喜んでいただけるんじゃないかと大いに勘違いさせた。
あの時師匠はイヤな顔ひとつせず,即座にどら焼きとプリンをたいらげてくださった。
「甘いものが苦手」「高座の前にはものを食べない」師匠がである(しかもご高齢でもある)。
しかも僕らが一押しのプリンを「うん,こっちはなかなか美味しいね」などとお褒めの言葉まで添えて。
あの時のことを思い出す度につくづく申し訳なかったなあと頭を垂れると同時に,師匠のやさしさがありがたく身に沁みてくるのである。
あんなステキなおじいちゃんはそうそういないぞ。

余談だが,伸治さんは大の甘党で,あの方は「本気で」喜んで食べてくださっていた。後日,国立劇場の楽屋で伸治さん用に「佐賀錦」をお渡しした時もたいそう喜んでいただき,顔もしっかと覚えていただいた。奥さんは甘いもの好きなひととはタマシイで会話が出来るので,伸治さんは大好きなのだそうだ。
「ま,適当にみつくろっといてよ」というのが,やっさんの返事。「僕も小文も甘いものは好きだから」

お囃子のちあさんから,やっさんのタレコミ写真が届いたので,今夜もやっさんと色々話す。
「噺の穴『天狗裁き』」の原稿もFAXで送られてくるが(また大層面白かったのだが),もう眠いのでテキスト起こしは明日にするね。



10月4日(月)「大竜界」

ドラゴンズの熱狂的ファンのハハから,熱狂的ファンのムスメへと小包が届く。
ちなみに実名は伏せるが,おかあさんは名前からしてドラゴンズの申し子である。
何を隠そう,亡くなられたおばあちゃんも…(以下略)。

(左上から時計回りに)
・ドラゴンズ・チキンラーメン
・ドラゴンズ・ティッシュペーパー
・ドラゴンズ・メリーのチョコレート詰め合わせ
・ドラゴンズ・即席味噌汁「恋女房」
・ドラゴンズ・カッとばせーカツカレー
・ドラゴンズ・みりん&しょうゆ(サンビシ)
・ドラゴンズ・ウェットティッシュ
・ドラゴンズ牛乳石鹸。

それと或る日の,投手陣を褒め称える中日スポーツが一部。
ムスメは更に舟木一夫のCDをも乞うていた。
さて,舟木の喉笛は大丈夫であろうか。


明日の組閣前から,何故だか閣僚が内定する。
ま,そんな塩梅だから,オブッチの東海村入りはまず当分ない(大体あるのか)。
カイワレ大根は食べてみせても,慰問に行く暇はないと見える,対策委員長殿。
それくらいパフォーマンスやってみせてもバチはあたらんぞ。



10月3日()「友,遠方へと帰る」

昨夜いっとう夜更かしした(金八先生のサイトを隅から隅まで舐め廻していた)自分がいっとうお寝坊さんであった。
知らぬ間に奥さんは社宅の一斉清掃から帰っており,日頃の習慣とかで英ちゃんもほけーっとしていた。
朝飯は奥さん渾身の炒飯,デザートは玉東梨でお口をすすいで,昼食は久し振りに近くのブッフドールへ。

前菜のカップスープ,メイン一皿,ライスにコーヒーで1200円のコースはファミレスに行くよりうんとお徳。
今日のスープは紫芋のポタージュ・カプチーノ仕立て。薄紫色が美しい一品。思ったほど粉々しておらず,美味しい。
メインは牛肉のグリル・グラタン風。ホワイトーソースをかけて焼色を入れた一皿。絹さやでエックスを模った盛り付けも綺麗。ミディアム・レアの肉にナイフを入れる毎に,ホワイトソースに肉の血がまざって,ブラウンソースになっていくのだが,肉汁とソースの組み合わせが美味しさを引き立てる。何より,英ちゃんが喜んでくれて良かった。奥さんは此処のステーキ・サラダがお気に入りなのでまたしてもそれを注文する。ほぼ一皿たいらげる事が出来たので,よほど美味しかったのか,具合が良かったのか。彼女がこんなに肉を食べたのは,何ヶ月振りかしら。

一息ついてから,奥さんはお昼寝,僕は英ちゃんと中間で「秘密(99・日)」を観る。
「お受験(99・日)」では,正直云って自分の中の滝田洋二郎神話に少し首をひねってしまったのだけれど,本作にて復権。滝田作品はやっぱり面白い。あれはきっと一色脚本の問題だったんだな(今回は斉藤ひろし)。何より,ヒロスエの仕草に幾度となく岸本加代子の面影が重なる。これはヒロスエが巧いかどうか以前に滝田演出の勝利だと思う。この映画はちっともヒロスエ映画などではなかった。本作はまごうかたなき小林薫映画である。下手に原作を読んだりせずに,先入観を持たずに行ったのも良かった。予定調和では決して終わらないその痛さこそがひどく僕好みだった。だからこそ,小林の最后の台詞「おめでとう」が活きる。いやあ,冒頭のバスの転落事故のCGも丸バレ乍ら頑張ってたと思うです。

夕方,英ちゃん帰宅。今回は奥さんがつわりだったので,アレかなとも思ったが,気は遣っていたがくつろいでもくれていたので助かった。
お土産に置いてってくれた「だいじょうぶマイフレンド(83・日)」のビデオ感謝します。
未見なのでどきどきするが,あまりの悪名高さにきっとヨカッタ探しが出来る筈だ。大丈夫です。



10月2日()「友,遠方より来たる」

午前中は雨だったのでだらだらして,お昼から廃品回収用の新聞や雑誌の荷造りと,パソコン部屋の大掃除。
今夜は約半年振りに英ちゃんが泊まりに来るので,ひとまず客室スペースをつくる必要があったのだ。
久し振りに床の見えたパソコン部屋に感涙する。たまにひとが来るぶんには部屋が片付いていいなあ。

16時頃,英ちゃん来訪。ほとんど迷わずにウチの棟まで来る。優れたマッピング能力である。
高速道路を通ってきたらしいが,例の雷雨と,にも拘らず煽ってくる大型トラックに生きた心地がしなかったらしい。
暫くして,小雨そぼ降る中,英ちゃんと小倉へ。

18時,女性センター「ムーヴ」。
今日のメインイヴェント,ナイロン100℃ 17th SESSION「テイク・ザ・マネー・アンド・ラン」
北九州演劇祭招聘劇団にして,ナイロン100℃,九州初上陸である。
犬山犬子みのすけもさること乍ら山崎一西牟田恵にひかれてふらふらやってきたのは事実だが,以前プロットを聞いて以来,俄然,自分の中で無限大に育ってしまった「ウチハソバヤジャナイ」伝説というのも,重要なウエイトを占める。その自分の期待値の高さがそのまま不安材料でもあったのだが。
ロビー付近をきょろきょろするが,KERAさんの姿見当たらず。明日,ワークショップをやるのは確かなので,この会場に居るのは疑いがないのだが…まさか,一目見たくらいじゃ一般人と区別がつかない無個性な容貌などでは決してないし。などと軽い失望を覚えていたら,140分の長丁場の本公演の後,カーテンコールで役者が舞台に出揃ったあと,船の2階からヲタク臭い小汚い普段着のままケラリーノ・サンドロヴィッチ登場。
ひとの事を偉そうに云々出来る立場でないのは敢えて承知で云う。「一体いつの間にあんなに太ったのだ」
「有頂天」の頃と同じ体形が維持出来るとは思わんが(元々兆候はあったし),熊のようであった。ジーパンの尻ポケットが不細工に膨らんでいる,その構わなさがすっかり裏方クリエーターと化してしまったのだなあとカンガイを覚える。確か,オーケンにナゴム復活させようって誘ってたんじゃなかったのか(て,何年前の話だ)。尤も本人も表に顔を出すのは本意では無いらしく(テレもあるのだろう)そっけなく会釈して,即座に退場。逃がしてなるものかと,会場が明るくなるのにも構わず再度アンコールの拍手を繰り出せば「もう勘弁してください」とばかりに土下座で挨拶。それでも決して喋ってはくれないんだから,結構冷たい。
でも,僕の隣に座っていた女の子の二人連れは涙を流して感激していたから,KERAさんの威光侮りがたし(て,侮ったことないんだけどさ)。
お芝居はまずまず及第点って感じかな。沢山笑わせてもらったが,物語のしめかたがちと強引過ぎたか。
これについては,元気があれば,そのうち「舞台のタマシイ」に感想を書く。

23時頃帰宅するが,奥さん食欲が無いとの事だったので,英ちゃんと「ココ壱番」でカレーを食らい,帰りに奥さんにサラダを買って帰る。
奥さん,サラダ食べて少し元気を出す。英ちゃんは昨夜の呑み会の寝不足が祟って早々にバタンキュー。
僕ひとり眠いくせして,3時過ぎまであちらこちらと電網空間を彷徨う。



10月1日(金)「ミチニマヨッタココハドコ」

会議中,ポケベルのバイブが鳴った。
メッセージを見ると「ビョウインノカエリミチニマヨッタココハドコ」とあった。勿論,奥さんである。
確かに今日は時間的な余裕があれば,お産をする折尾の某産院で顔見世してくるなどと云っていた。
だからこないだの休みに付近まで車で連れてって道を覚えさせたばかりであった。
「ミチニマヨッタ」は分かるが「ココハドコ」と聞かれても困る。思わず声に出して笑ってしまい会議室内のヒンシュクを買ってしまう。

会議が終わってからすぐに電話する。奥さんの第一声は「此処,何処?」…知るもんか。
病院の付近で迷っている訳ではないらしく,耳馴染みのある「萩原団地」行のバスに乗って,「萩原団地」のバス停に降りたまでは良かったが,単に聞き知っているだけで「萩原団地」は彼女の生活圏からうんと外れていた。で,とりあえずてくてくと歩いてみたらしい(をいをい)。行けど戻れど見知った道には巡り会わず,そうこうしている内に陽もとっぷりと暮れ,遂には西も東も分からなくなったらしい。
だからって「ねえ,此処何処なの? 分からないよ?」と云われてもだな。
それから電話を繋いだまま,ネットで地図のサイトを探して,ひどく頼りない奥さんのヒントを手がかりに(だってねえ「3ナンバーの車が沢山走ってる」「ポッカの自動販売機がある処」なんてのが有効な手がかりと呼べますか?)更にはY田さんとS山さんに多大な協力をしていただいて,彼女が青山小学校脇の「青山2丁目」という信号前に居る事を突き止めるのにどんだけかかった事か。しかも彼女の足跡を辿るとどうも何か魂胆があるんじゃないかと勘ぐりたくなるくらいに家とは反対方向に向かって歩みを進めている…お約束,お約束。
正しい道筋を説明しようとすると「待ってるから迎えに来て」と云う。会社からじゃどんなに急いでも40分は軽くかかるぞと一旦は口をとがらせてみたが,身重でバテてるだろうと思い直して,車を急がせた。きっとエコーで子供の元気な絵ェ見てハメ外したに違いないとあたりをつけたら,案の定そんな処だった。しかも,僕が抱えても充分にしんどい買い物袋まで抱えていた。とんでもない大バカ者である。


処で,東海村の臨界事故はやはり人災の疑いが濃厚である。
沈殿槽に入れる際,2.4キロ以下に抑えなければならないウラン溶液を16キロ入れたのが「臨界」の引き金になったのは否めない。
被曝したJCOの作業員のひとりはチェレンコフ光(「青い光を見た」と証言しているのがおそらくそれ)を目にしたらしいから,もうアナタは助かりませんと宣告を受けたようなものだ。実際,治療にあたっている医師も「第5福竜丸の患者より重症」と話しているらしいし。4シーベルトの放射線を浴びると1ヶ月以上の生存率は50パーセントだと云うが,今回の事故はその倍の線量等量なのだ。因みに一般人の被曝限度は年間0.001シーベルトとされているから,その重篤さは推して知るべしである。きっとそのうちに訳知り顔でノストラダムスの予言と結びつけるバカが出てくるんだろうな。嗚呼。

奥さんを迎えに行く車の中でずっとニュースを聴いていたのだが,その中で屋内退避が解除後に,コンビニに買い物に来た主婦がインタビューを受けていた。
「見えない訳でしょ。だから,なるべく息を止めるようにして此処迄来ました」…て,マジですか。
でまた,それを裏付けるように「各地のコンビニで食料品やマスクを買い込む情景が見られ」って…見られたんかい。
目に見えない,イコール「気体」って考えちゃうひとは多いんですかね。赤道直下を歩くと,空から赤い粉が降ってくるとか(おらんおらん)。
また,NHKもくだんの主婦のコメントになーんの注釈もしないんだ,これが。こーゆー人心を惑わす誤解は率先して番組内で晴らすべきだろうに。
被災者だって聴いてるんだから。怖いのは放射能もそうだが,無知の蔓延だろう。そんなの報道機関がいちばん身に沁みて分かってなきゃいけないのに。



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