根性でもぎ取った大輪 〜エイシンサニー〜

性別 生産地 北海道 浦河町
生年月日 1987.03.29 生産者 栄進牧場
毛色 鹿毛 馬主 平井 豊光
ミルジョージ 調教師 栗東・坂口 正則
エイシンナツコ 通算成績 20戦4勝
母の父 ダイアトム 出走年 1989〜1991

「エイシン」という冠号は、競馬ファンならまず一度は耳にしたことがあるに違いない。そこで、エイシンの代表馬を一頭頭の中に思い浮かべてみて欲しい。最近のファンなら現役のエイシンプレストン、もう少し前ならエイシンワシントン、エイシンバーリンといったところが上がってきたのではないだろうか。中にはそれら以外の馬を思い浮かべた方もいるだろうが、それにしても、頭に浮かんだ馬は外国産馬ではないだろうか。

もはや、「エイシン・・・」と聞けば、条件反射的に馬名の前に(外)がつく馬が思い浮かんでくるのは私だけではないだろう。しかし、当然のことながら、外国産馬ばかりではない。それどころか、「エイシン軍団」に待望のGTタイトルをもたらしたのは、エイシンサニーという地味な内国産牝馬だったのだ。

エイシンサニーは、2歳8月の夏の小倉でデビューという仕上がりの早さがウリのはずだった。400キロに満たない小さな体で、2歳時だけで9戦をこなし、月に一走しかしなかったのは10月のみ。あとはきっちり月2回のローテーションをこなすハードスケジュールである。しかし、それでも2勝をあげ、現在では阪神ジュベナイルFに相当するGVラジオたんぱ賞3歳牝馬Sで5着と、素質の一端は見せていた。しかし、2勝以外は全て着外(4着以下)という成績が示すとおり、順風満帆とは言い辛い成績ではあった。

3歳になってからは、少しゆとりのあるローテーションを組まれるようになった。とはいえ、あまりぐずぐずしていると目標であるクラシックに向かえなくなる。2勝とはいえ未勝利戦と400万(現500万)条件特別が勝ち鞍では、確実にクラシックへの舞台にでることは難しい。

クラシックに進むのに最も手っ取り早いのは、重賞を獲ることである。もちろんそう簡単に事が運ぶほど甘くはないが、休まず真面目に走ってきたエイシンサニーという叩き上げという異色のヒロインは、デビュー12戦目にして見事に桜花賞トライアル・GU4歳牝馬特別(現フィリーズレビュー)を制し、堂々とクラシック第1弾、桜花賞に向かった。

しかし、これまで3番人気が2度あるだけで、あとは12戦して平均5.3番人気。トライアルの時も6番人気だったエイシンサニーは、どこまで行っても穴馬でしかならなかった。その年のクラシックで人気を集めたのは、それまで4戦4勝、デビュー戦(2番人気)を除けば全て1番人気、母にクラシックホース・アグネスレディーを持つ超良血馬、アグネスフローラだった。かたや、まさに競馬界のプリンセス、かたや、地味なお手伝いさん(失礼)という、エイシンサニーとアグネスフローラはまさに対極に位置する存在だった。

クラシック第1弾、GT桜花賞で、この2頭は初めてぶつかった。結果は、アグネスフローラの圧勝劇だった。エイシンサニーは後方から追い上げにかかったものの4着が精一杯。しかも、3着のハリケンローズからさらに6馬身(1秒)遅れてのゴールイン。トライアルの勝ち馬にもかかわらず5番人気の支持しか得られなかった彼女は、結果的に人気を上回る着順を残したのだから、そのバランスだけをいえば健闘した、とさえ言えなくもなかった。少なくとも、エイシンサニーがアグネスフローラのライバルである、との認識が僅かでも残っていたファンも、この桜花賞で消えただろう。

しかし、競馬とは分からないものである。続くGTオークス、桜花賞で子供扱いされたはずのエイシンサニーが、あのアグネスフローラを2着に沈めて勝ってしまうのだから。

エイシンサニーの手綱を取っていた岸滋彦騎手は、その前年のエリザベス女王杯を単勝430.6倍という超人気薄サンドピアリスで勝った。今回のエイシンサニーは単勝5番人気とはいえ、アグネスフローラとは大きく離れていただけに、5番人気以上の人気薄感はあった。「また岸か・・・」半年前のリプレイを見るような直線一気に呆然としたファンも多かっただろう。あるいは、血統からくる距離適性の差とも考えられなくはない。アグネスフローラの適性は明らかに1600メートル前後で、2400メートルには向かなかったこと、逆にエイシンサニーは2400がむしろ向く血統であることも、レース後に取り沙汰された。

しかし、これはエイシンサニーの執念が実ったのだと思う。それなりの実績を残しながら、隣に眩し過ぎる存在があって、彼女までスポットライトが当たることはなかった。それなら、自分で照らし出さないと誰も気付いてくれない。道中最後方から直線一気に賭け、見事に嵌まったオークスで、彼女はまさに主役の座を自らの手で勝ち取ったのだ。

その後、アグネスフローラは故障を発生して引退。エイシンサニーは秋以降もしばらくは走り続けたものの、目立った成績を残すことなく、一世一代の激走を見せたオークスの余韻も冷めやらぬうちに、現役生活に別れを告げた。オークスで、彼女の仕事は終わったのだ。
年分 主な実績
1990 優駿牝馬(オークス)(GT)
4歳牝馬特別(GU)

現状 主な産駒
繁殖牝馬 エイシンマンノオー(3勝)

ライバル、アグネスフローラが母としてアグネスフライト、アグネスタキオンのクラシック兄弟を送り出して大活躍しているのに対して、エイシンサニーからはまだこれといった産駒は出ていない。でも、もともと彼女はアベレージヒッターではないだけに、忘れた頃に大物を送り出してくることもあるはず。そして、その子供が母を彷彿とさせるような大舞台での激走を演じてくれることを、少しだけ期待して待っていたい。

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