万惣フルーツパーラー
まんそう
千代田区神田須田町1-16

03-3254-3711
休日/日曜

焼き方にもよるだろうが、万惣のホットケーキは、最高の小麦粉、卵をえらびぬいてつくられる。そこがちがう。果物店として、世に知られている誇りが、そうさせるのだ。
『東京のうまいもの散歩のとき何か食べたくなって』
池波正太郎著 平凡社(1996年)1553円 ISBN4-582-63308-0
万惣は八階だてのビルです。一階が果物のショップ、中二階がフルーツパーラー。二階が喫茶と軽食。五階がフランス料理のサロン・ド・テ(レストラン)になっています。
フルーツパーラーでは、やはりホットケーキが人気です。昔のままの造りの大理石と茶色のモザイクタイルを基調にしたティールームの入り口にすぐ小さな厨房があり、コック帽をかぶった数人のシェフが果物を切り分けたり、容器にバターを詰めたり、大きな鉄板の上でホットケーキをせっせと焼いておられます。客席のまわりを見渡すと大半の方がホットケーキを注文されている様子です。やわらかく練ったバターと、黒蜜がはいった容器が添えられたあつあつのホットケーキが運ばれてくると、みんな、それはうれしそうです。お皿の上にのったホットケーキを切り分けて口にはこばれている様子は本当にしあわせそうです。きっと通りがかりに偶然寄られたいうよりこのメニューめあてに何度も通っておられる常連の方ばかりなのだと思います。看板には“焼き続けて70年。万惣のホットケーキ”とありましたから、ざっと70年同じレシピで焼き続けられているのでしょう。
私もいただいて見ましたが、私はどちらかというと少し酸味のある発酵種を使った薄いパンケーキに慣れていたので少し違和感を感じました。素朴で表面がカリカリとして厚みのあるホットケーキは私には合わなかったけれど、お好きな方にはこたえられない逸品なのだと思います。前の席のビジネスマンの方があまりおいしそうにパンケーキを食べていらっしゃったのでそのおいしそうな様子を思わずイラストに書いてしまいました(汗)。
まず、運ばれたばかりのあつあつのホットケーキの上面に、バターをペタペタとたっぷりと塗り、上の一枚も持ち上げてここにもたっぷりと塗ります。バターがとけだしてジュンジュンしみ込むぐらいになったらここに黒みつのシロップをなみなみと注ぎます。そして目を細めながらナイフとフォークをつかってホットケーキをぷっくりと十字に切り分けます。ビジネスマンの方は(ちょっぴりお行儀がわるいけれど)ここで英字新聞をひろげ、くつろぎながらナイフでぷっくりとした大きな三角形のホットケーキを刺してはおいしそうにほおばっておられました。その姿が小さな子どものようでとても可愛いい。きっと大人も子ども好物の前では本当に無防備に心からくつろいで無心になるのだなとなんだか楽しくなりました。
フルーツパーラーのショーウィンドウに赤いジュースが入ったグラスがたくさん冷やされていました。前々から先の池波正太郎の本の写真にのっていて不思議でしかたなかったものなので急いで注文しました。赤いジュースのようなものはオレンジジュースとざくろの果汁とグランマニエというオレンジのリキュールで出来ているそうです。中にはフレッシュな果物が数種類はいっていました。フォークとスプーンが添えられてきます。(800円)
大正十二年頃から、新しいものが好きな人々の間で爆発的なヒットをとばしたというフルーツポンチ。その全盛を極めたデザートも昭和四十年代ですっかり姿を見せなくなってしまいました。ここでその時代のデザートが味わえたことは私にはとても興味深いことです。
ホットケーキと並んでよく目にするものがこのフルーツサンドです。やわらかくて薄いサンドイッチ用のパンの間にフルーツと生クリームがたっぷり挟んであります。生クリームといってもとても軽い甘さで口どけがいいさっぱりしたおいしさです。生クリームと合わさって完熟のパパイヤはとろけるようですし、甘いバナナや甘酸っぱいいちごなどが口の中で甘酸っぱく様々なおいしさとなってとけていきます。
かなり量があると思うのですが、女性が1人でぱくぱくおいしそうに食べておられることもめずらしくありません。私は一皿を2人で分けて食べてみましたがそれでもなかなかのボリュームがありました。(1000円)
その他、一階にはテイクアウトのデザートも揃っていて特に有名なものにマンゴ−プリン(550円)、オレンジオリエンタル(800円)があります。どちらもテイクアウトできます。オレンジオリエンタルはグランマニエとざくろのシロップに漬け込んだオレンジのデザートです。オレンジの実はつめたく冷やしていただいたり、シロップはお酒と割っていただきましょう。
果物のジャムやコンフィッツ(フルーツのシロップ漬け)もあります。
2002年6月9日(日)