2002年9月2日(月)
 芝生の校庭、ついに完成。

             
川淵氏の言葉、校長先生の言葉。
セレモニーはまず、京都経済同友会「校庭芝生化プロジェクト」の細見委員長の祝辞があった後、テープカット が行われ、市田ひろみさんのスピーチ、児童代表からのお礼の言葉と続き、次に川淵氏からサッカーボールの寄贈 が行われました。私はセレモニー時は後ろに控えテープカット終了後テープカット設営の撤去をした後、この川淵 氏からのサッカーボール寄贈の際に川淵氏にボールを渡す役を他のボランティアスタッフの人と共に担当しました。 寄贈されたボールは3個で、それぞれに川淵氏からの直筆メッセージが書かれており、それぞれ「夢は大きく」・ 「継続は力なり」・「シューとなくしてゴールなし」と書かれていました。その3つのボールが嵯峨野小サッカー クラブの児童に渡され、そのボールを児童がキック・オフしたのを合図にこのレポートの最初の写真のように児童 全員が芝生に初めて入りました。このサッカーボールの寄贈の際に川淵氏もスピーチされたのですが、その中で氏 は「この芝生の校庭からサッカー選手やラグビー選手、野球選手を目指す少年少女たちが育ってほしい」と言う言 葉を述べられました。私はこの言葉を聞いて安心するとともに非常に嬉しくなりました。それは川淵氏が「サッカ ー選手が育ってほしい」と言われなかったからです。複数のスポーツのプレイヤーが育ってほしいと言われたとこ ろに、川淵氏が10年間引っ張って来られたJリーグの姿勢と目的がこもっていて、また川淵氏のその事が大切で 重要なことであるという思いにいささかも変わりがないという事を生の声で、間近で確認出来たことが嬉しかった のです。また、自分の大好きなスポーツのトップにいる方が、こういう言葉を言える方であることにサッカーとい うスポーツの幸せも感じました。

児童はしばらくの間芝生の上で遊んだあと整列し、最後に校長先生から締めの言葉がありました。その中で、既に 芝生の効果が出ていますということで3つの点を挙げられていました。まず1つ目は『土埃が立たなくなったこと』。 これは給食調理員の方が最初に気付いたそうなのですが、中庭が芝生になった後は給食室の窓を開けて調理するこ とが出来るようになったそうです。また、中庭に隣接する校舎の教室の机の上に土埃がかぶることも無くなったそ うです。2つ目は『心がホッとすること』。これは子供たちだけでなく、先生の方がむしろ感じられているそうです。 3つ目は『教室内の室温が下がり、より快適な環境(涼しい教育環境)で勉強出来るようになったこと』。これは 中庭を芝生化することによる中庭の表面温度の低下が隣接する校舎の教室の室温の低下に繋がっているということ です。今回の校庭芝生化プロジェクトでは同志社大学と共同で芝生が子供たちに与える影響について科学的に研究 ・調査することになっており、校長先生が挙げられた2つ目の効果である『心がホッとする』というような効果に ついても科学的実証が取られ科学的意味付けが出来るようになることが期待されます。教室内温度の低下などはも う既に科学的実証が取られているわけで、こういった実証の積み重ねがグラウンドの芝生化を推進する大きな力に なればと思います。校長先生の言葉はそういった芝生の効果についてと、感謝とお礼を述べられました。その中の 感謝、お礼の言葉の中で『こんな素晴らしい芝生の校庭をプレゼントして下さって・・・』という言葉を述べられました。 その言葉に他意など全く無いし素直な言葉であると思いました。しかし今日この日からは"プレゼント"されたもの ではなくて、"自分たちで作り上げたもの"という意識を持ってもらってこの芝生の校庭を大切に守り育てていって もらいたいなと思いました。勿論それはNPOの一員としてこれからもこの芝生の校庭を守り育てていくことに関わってい く自分自身も持たねばならない意識でもあります。




『柔らかくて、気持ちいい!』

     

さて、時間軸としてはちょっと戻るのですが、上で書いたように川淵氏からサッカーボールの寄贈があった後に 初めて子供たちが芝生に入った時、自分も一緒に芝生の感触を楽しみました。私もこれほど綺麗な芝生というの は初めての体験で、今日の日の最大の楽しみはこれでした。まず一番に感じるのは何と言ってもそのクッション 性、柔らかさです。走ってみると足、腰にかかる負担がほんとに軽く、転んでも痛くありません。また寝転んで も泥だらけになることはありません。裸足にもなってみましたが、それもまた気持ち良いものでした。子供たち に感想を聞いてみると『柔らかくて、気持ちいい!』という声が多く返ってきました。私が寝転んでいると、『痛くな いの?』と聞いてきた低学年の女の子もいましたが、慣れないうちは裸足で遊んだ時や、寝転んだりした時に芝 生の葉がチクチク感じる子もいると思いますが直ぐに慣れると思います。自分自身も芝生の良さを実際に体で感 じることが出来て大変良かったです。個人的希望としてはもっと思いっきりサッカーでも出来れば良かったので すが(そうすればある程度の時間スポーツを行った時の疲労の違いや、思いっきりプレー出来るという点をもっ と感じることが出来た)、それでも収穫十分といったところです。これから子供たちだけでなく、地域の大人の 方にもこの芝生の上でスポーツ等してもらって実際に芝生を体感してもらうような機会を作れたら、よりグラウ ンドの芝生化への理解を得られるのではないかなと思いました。

時間軸をまた元に戻すと、芝生完成式は校長先生の締めのことばで終了し、子供たちは通常の授業に戻り、私た ちNPOスタッフは設営の撤去、後片付けをした後、お昼前には解散しました。ただ午後6時30分からPTA 主催の川淵氏の特別講演会があったので私は一旦家に戻ったあと、夕方再び嵯峨野小に向かいました。次はその 講演会で川淵氏が話されたことを少し紹介したいと思います。




遊びに行きたくなる場所としての"芝生のグラウンド"。

     

川淵氏の特別講演会は午後6時30分から午後8時まで、嵯峨野小学校体育館で行われました。体育館には校長 先生や、来賓の方々、PTAの方々、そして子供からおじいさん、おばあさんまで地域の方も集まられ、講演は スタートしました。色々な話をされたのですが、ここでは芝生に関する氏の話をご紹介したいと思います。ちょ っと話をまとめたり、補足を入れたりしていますがお許し下さい。川淵氏がされた話は、

小学生という時期は心身ともに一番色々なものを吸収し成長する時期であり、特に8〜12歳の年代は『ゴール デンエイジ』と呼ばれ、またもう一つ若い6〜7歳の年代は『プレ・ゴールデンエイジ』と呼ばれています。 ゴールデンエイジの年代は人生で一度しかない『即時の習得』期間であり(直ぐに身に付ける事が可能な期間)、 スポーツの場合この期間をいかに過ごすかがその後に大きく影響してくるのです。しかし、この即時の習得期間 もプレ・ゴールデンエイジの年代から沢山体を動かし、遊ぶことをしていないと効果的ではないのです。それは 『大脳の可塑(かそ)性(柔らかさ)』(※可塑・・・固体に圧力を加えたとき、形が変わること)というものに 比例していて、人間は生れてから神経系、筋・骨格系は大人になるにつれて右肩上がりの曲線を描き成長しま すが、大脳の可塑性は生れたときから大人になるにつれて右肩下がりの曲線を描き、その可塑性を失っていきま す。だからこそプレ・ゴールデンエイジ、ゴールデンエイジの年代にどれだけ体を動かし、遊び、大脳に色々な ことを覚えさせることが出来るかということは子供たちの成長にとって非常に大切で重要なことなのです。しか し、現在を見てみると、遊び場の減少やTVゲームの出現、また遊ぶよりも勉強といった風潮の中で外で遊ぶ機 会は減り、それが身体機能の低下を招いてしまっています。30年前では幼稚園児が一日に歩く歩数が16000 歩だったのが現在では11000歩まで減少しているといい、またその子供たちの足型を30年前の子供たちと 現在の子供たちとで比べてみると、30年前の子供の足型は5本の足の指がはっきり付くのに対し、現在の子供 たちの足型には真ん中の2本くらいしか指の跡が付かなくなっているといいます。それは足の指にほとんど力が かかっていないということを表しています。また、きをつけが出来ない子供たちもいて、原因が何かと言えば、 肩甲骨がずれてしまっているからきをつけが出来ないと言うのです。これはもはや身体的危機であり、だからこそプレ ・ゴールデンエイジ、ゴールデンエイジの子供たちが十分に外で体を動かし遊ぶことは今、極めて重要なことな のです。しかし、だからと言ってTVゲームもある、エアコンの効いた快適な部屋もある子供たちに『外で遊べ』 と言ってもすぐに遊んでくれるわけではない。だからこそ『行きたくなる場所』、『遊びたくなる場所』が必要 で、それが『芝生のグラウンド』であり、『芝生のグラウンド』の役割であり、『芝生のグラウンド』を作る 大きな意義であるのです。

という内容でした。子供たちには難しい話だったと思いますが、保護者の方や、大人の方は頷きながら真剣に 聞かれていました。講演が終ると花束が川淵氏に贈られ、そして拍手の中、嵯峨野小を後にされました。川淵 氏はこの講演会の講演料を『校庭芝生化プロジェクト』に全額寄付して下さり、それはこれからこの芝生の校 庭を維持していくことに少なからぬ金額であり、大変ありがたい出来事でした(川淵氏としては当然の行為だ ったと思いますが)。これで今日、朝からのスケジュールは全て終了。同じく講演を聞きに来ておられた京都 経済同友会の方と食事をしてから帰途につきました。6月からこれまで、私自身はセレモニー的な事にしか立 ち会って来ませんでしたが、これからこの芝生の校庭を維持・管理し、ずっと『継続』させ守り育てていくと いう最も大切なことに関わっていくことになります。今日はそのスタートの日と言うべきでしょう。芝生完成 式で川淵氏が寄贈したサッカーボールに書かれた『継続は力なり』という言葉が、改めて強く、また重く感じ られました。        

    

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