なぜ「地域に根差したスポーツクラブ」なのか。(中編)


では、具体的に地域に根差したスポーツクラブとは?
では、具体的に、私が考えている「地域に根差したスポーツクラブ」像を提示したいと思います。 箇条書きにしてみると、

(1) 複数のスポーツが楽しめる。

(2) 子供から、大人、お年寄り、そして体に障害のある方まで誰もが日常的に楽しめる。

(3) スポーツを楽しむ人の目的・レベル・希望にあったカテゴリー分けがされている。

(4) どのスポーツのどのカテゴリーにおいても、そのカテゴリーの指導に適した優秀な指導者がいる。

(5) それぞれのスポーツに適したスポーツ施設(芝生のグラウンド・体育館・プール等)がある。

(6) ミーティングルーム・更衣室・シャワールームなどのスポーツを快適に楽しむための最低限の設備がある。

(7) ビギナーからトップレベルの選手までが同じクラブでスポーツをする。

(8) 安い利用料金。

(9) 多くの人が時間的、距離的に参加しやすい場所にクラブがある。

(10) クラブに参加する人々の憩いの場となるクラブハウスがある。

と、まずはこんな所でしょうか。大きく10件挙げてみました。勿論、全ての要件を満たすのは一朝一夕で 可能な事ではありません。これを満たすクラブを時間をかけて目指すという意味を持たせています。次の段落 で私が考える、上の10件の要件の持つ意味をもう少し詳しく提示して、「なぜスポーツクラブなのか」という 理由をお話していこうと思います。


スポーツを楽しむ要件として。地域に根差す要件として。
上に挙げた10の要件は贅沢な要件を並べたつもりはありません。スポーツを楽しむための十分な環境というもの を考えたら、最低これくらい達成出来なければと思います。そうでないとクラブに人々が集まらないし、集まらな ければクラブが永く存在し続けることは出来ないと思うからです。

ではまず、(1) から説明していこうと思います。(1)については、絶対に複数のスポーツ種目がな ければならないとは思っていません。単一のスポーツのクラブであってもいいと思います。でも私はやっぱり複数の スポーツが出来る環境の方が良いと思います。各人がやりたいスポーツは様々です。そのニーズに出来るだけ応えた 方が良いし、自分のやっているスポーツ以外のスポーツ自体からから受ける刺激、他スポーツの競技者とのふれあい から受ける刺激というものも良いものだろうと思います。多くの異なったスポーツの楽しみに触れることが出来ると いうことは、豊かにスポーツを楽しめるということです。また多くの人のニーズに応えることで、クラブにも多くの 人の参加が見込め、それはクラブ運営という点においても、クラブが地域の中心的存在になるという点においても最 も重要なことの一つだからです。よく言われる「総合型地域スポーツクラブ」という言葉の「総合型」とは「複数の スポーツができる」と言う意味です。私の考えとしては、やはり「単一型」ではなく「総合型」が良いと思います。


次に(2)についてです。これは絶対条件だと考えています。地域に住む誰もが気軽 に自由に日常的に参加できること。これは最も基本となる要件です。この要件の意味するところは、生まれた時から 死ぬまで同じ町で人生を送る場合に、生まれてから死ぬまで自分の町のクラブでスポーツを楽しむことが出来る環境 、または、転勤などで居住地域が頻繁に変わる場合でも転勤先の町ですぐにその町のクラブで以前の町でやっていた スポーツを楽しめる、そういった環境のことです。学校を変わったとか、会社を変わったとか、そんなことですぐに スポーツをする環境が無くなるようなことを無くしたいのです。またただ単純に、多くの人が気軽にスポーツを楽し める環境をということでもあります。だからこそ、スポーツをする場を「学校・企業」から「地域」へと移し、市民 ・行政・企業が一体となって永続的にスポーツを楽しめる環境を構築すべきだと思います。それが、豊かに、幸せに 生きてゆくために必要不可欠なものだと私は考えています。


(3)(4)はスポーツを楽しむためのシステムで す。具体的に例を書いてみると(私が考えた一例です。スポーツの上達のためには正しくない区分けかもしれませ ん。そこはシステムの解説を目的としているのでご容赦下さい)、1つのスポーツにおいて、「幼児」・「小学校低 学年」・「小学校高学年」・「中学生年代」・「高校生年代」・「2、30代」・「40代」・「50代以上」くらい にカテゴリー分けされ、さらに「トップレベル」を目指すコースと「日常の楽しみ」として行うコース、そしてスポ ーツ・カテゴリー・コースによっては「男性」、「女性」、「障害者スポーツ(男性・女性・男女)」に分かれます。 そして、それぞれのカテゴリー、コースにあった指導者がいて、ちゃんとしたトレーニングが受けられます。例えば 、私自身の希望を例に出すと、『私はサッカーを楽しみたいですが、トップレベルを目指すのではありません。日常 の楽しみとしてサッカーをやりたいです。しかし、現在までちゃんとした指導を受けた経験が少ないため、基本的な 技術からまた習いなおしたいです。そういった基本的な技術指導が受けられながら日常の楽しみとしてサッカーを楽 しみたいです。』という希望があり、これは先程書いたカテゴリー・コースに照らし合わせればスポーツは『サッカ ー』で『2、30代・日常の楽しみ』コースで実現されることになります。このような細かなニーズに対応できるシ ステムを持つことで、多くの人がスポーツを自分の目的・レベルにあった環境で長く楽しむことが出来ます。それは 万年補欠や球拾いといったスポーツを楽しむことにとって弊害でしかないものを生み出さないことであり、運動が苦 手な者もスポーツの楽しみを享受でき、スポーツ嫌いといった人間を生み出さない効果も期待出来ます。それは特に 子供達の場合に、彼らが成長する過程において、心理的に良い影響を与えると思います。また、大人がスポーツを楽 しんでいる姿を子供達が見ることにも大きな意味があると思います。「楽しい大人」の姿を子供が見ることは重要な ことです。大人がこのようなスポーツクラブでスポーツを楽しめる社会になることは、「ゆとり」と「豊かさ」を持 った社会になるということであり、私はそういう社会を目指すべきだと思っていますし、スポーツクラブはそういう 社会の中心的な存在になりえると思っています。


(5)(6)はクラブの施設面における要件です。 クラブが人々にとって「スポーツをやりたくなる場所」になるために施設の充実は欠かせません。クラブのグラウン ドが緑いっぱいのふかふかした芝生なら、子供も大人もそこで思いっきりプレーしたくなるし、また来たくなるでし ょう。(6)の要件はその「また来たくなる場所」になるために最低限必要なもので す。今まではトップレベルの者にしかこのようなシャワー(温水)・ミーティングルーム・更衣室という環境は与え られ来ませんでした。自分の大学のサッカーサークル時代を考えても、グラウンドの端でこそこそと着替え、コンク リートのような堅い土のグラウンドの上で泥だらけになってゲームを終え、その泥は水道で少ししか落とす事が出来 ず、殆ど泥だらけのまま帰るということが当たり前でした(女性の場合を考えたらこの状況がひどいものであるとい うことがもっと良く分かると思います。もし女性サッカーチームが試合をする場合だったら、男性のようにグラウン ドの端でこそこそ着替えることも出来ないのだから、一体どこで着替えろと言うのでしょう?着替えてから来ればい い?車の中で着替える?それは決してスポーツを楽しむ環境とは言えないはずです)。それでもサッカーは楽しかっ たですが、そのグラウンドに再び来たいという気持ちにはなるはずもありませんでした。スポーツをする前にミーテ ィングルームでしっかりと作戦を練ったり、練習方法のレクチャーを受けたりし、更衣室で気持ちを高揚させながら 着替え、スポーツを楽しんだ後は、その汗や汚れを温かいシャワーで落として満足感、達成感、解放感に包まれ、家 路につくことが出来る。そんな風になってこそ、真にスポーツを楽しめると言えるし、クラブはそのような施設を提 供することでクラブを支える地域の人々にスポーツを快適に楽しむ環境を提供し、地域の人々はそういうクラブで日 常的にスポーツをすることで、肉体的・精神的健康を保ち、豊かで充実した生活を送ることが出来ます。また日常的 に多くの人々がクラブを利用することによって永続的にスポーツを楽しむ環境(スポーツクラブ)を維持していける のです。また体に障害のある方が不便なくスポーツを楽しめるために、スポーツクラブの施設はバリアフリーの観点 から設計される必要があります。それは「誰もが自由に気軽にスポーツを楽しむ」ために必要不可欠な要素です。そ してそのような豊かな施設は地域のシンボルとして存在出来ると思います。そしてその存在が地域に求心力を生み、 地域の人々の繋がりを深めてくれる場所になるはずだと思います。


(7)の意味について。トップレベルの選手はクラブの象徴的、代表的存在であり、 一般の多くのクラブ員にとって憧れの存在になります。特に子供達にとってはまさにそうであり、トップ選手が練習 している横で自分たちも練習すれば、技術的な良い影響があることは勿論、それ以上に彼らの心に「将来、ああいう 選手になるんだ!」という気持ちを起こさせ、彼ら心に大きな夢を持たせることが出来ると思います。またクラブに とってもトップレベルの選手がいることで、クラブへの新しい参加者を多く集めることが出来るし(優秀な指導・環境 があるということだから)、現在いるクラブ員に対しても彼らのクラブに対する求心力を高めることが出来ます。それ はクラブが地域において求心力を持つことに繋がり、トップレベルの選手の存在は、高いレベルのプレーを見ることが 出来るというスポーツの一つの大きな楽しみを提供するとともに、クラブが地域の人々の繋がりを深める場所になると いう点においても大きな力になると思います。また、そのようなクラブと一般のクラブ員とトップレベルのクラブ員と の関係は3者それぞれに互いにスポーツに対する良いモチベーションを生み出すことが出来ると思います。そしてそれ はよりスポーツを楽しむ、楽しめることに繋がるはずです。


(8)(9)は、いくら今まで書いてきたような環境 があろうと、この2つの要件がある程度達成されなければ現実的にクラブに多くの参加者を集めることは出来ないでし ょう。スポーツクラブで永続的にスポーツを楽しむためには、クラブへの参加者が自発的に、受益者負担でスポーツを 行うということが当たり前の意識にならなければならないと思います。そういう意識を持つことで参加意識、目的意識 が高まり、それが参加者自身にとってはより積極的なスポーツへの取り組みに繋がり、クラブにとっては参加者が「ク ラブがちゃんと運営されているか」ということに関心を持つため、常に厳しい目を受けることになり、それがしっかり したクラブ運営に繋がるでしょう。しかし、いくら受益者負担が基本と言っても、それが高いものであってはスポーツ を気軽に楽しめるとは言えませんし、多くの参加者を集めることも難しくなるでしょう。ドイツのスポーツクラブでは 大人でも月会費は10〜20マルク(約600〜1200円)ほどの安さであり、それが施設面だけでなく、ドイツで 多くの人が日常的にスポーツを気軽に楽しめる大きな要素です。この金額は現在の日本のフィットネスクラブ等の会費 を考えたらいかに安い料金であるかが分かると思います。しかも、現在の日本のフィットネスクラブ等とは施設面でも 段違いの素晴らしさであるにもかかわらずです。日本でこの金額は非常に難しいと思いますが、それでも月2000〜 3000円の料金でスポーツを楽しめることが重要だと思います。金銭的な問題ももちろん「スポーツを気軽に楽しめ るか否か」に関わってくるからです。同じように、クラブがある場所もそうです。いかに素晴らしい施設、環境を誇ろ うと、そのクラブのある場所が遠くて、また行きにくい所であれば意味がありません。またドイツを例に挙げれば、ド イツには約8万5000以上のスポーツクラブが存在します。もちろん、規模の大小はありますがどの町に行ってもス ポーツクラブが存在します。それは誰にとっても、身近にスポーツクラブがあるということであり、そのこともドイツ ではスポーツが気軽に楽しめることの大きな要素です。クラブまで物理的に近いかどうかということも「スポーツを気 軽に楽しめるか否か」の大きな要素です。個人的にはクラブは30分で行ける距離にはあることが理想的だと思います 。


最後に、(10)の意味についてです。「クラブハウス」って何?と思われる方もいると 思います。「クラブハウス」とは、その名の通り、クラブの「家」です。クラブハウスには、私の考えで一例を挙げれ ば、前述したシャワールーム、ミーティングルーム、更衣室があり、トレーニングルームもあり、食事を楽しめるレス トラン、クラブに集まる人が談笑できるレストルーム、練習や試合の風景を展望できる展望室、クラブの歴史や戦績な どを知ることが出来るような部屋、またスポーツに関する技術・知識を得れる図書室等があるような施設です。それは上 でも挙げたようにクラブに参加する人々の「憩いの場」であり「交流の場」です。ひとしきりスポーツした後、クラブ ハウスでシャワーを浴び、そしてゆっくりと仲間や家族とレストランで食事をとる。その食事を楽しみながら、今日の プレーを振り返ってみたり、良かったプレーを思い出して自慢してみたり、クラブのトップチームの成績に花を咲かせ てみたり。また子供達がクラブハウスに勉強に来たっていい。クラブハウスに来ている近所のお兄さん、お姉さん、お じさん、おばさん、おじいさん、おばあさんをつかまえて分からないところを教えてもらったり。そして勉強が一息つ いたらクラブの芝生の上で思いっきり遊べばいい。どうでしょう、「クラブハウス」というもののイメージが少し想像 していただけたでしょうか?それはとても豊かな風景に思われないでしょうか?クラブハウスとは「クラブの家」であ り「地域の家」です。スポーツを豊かに楽しむため、そして、クラブに参加する人々の憩いと交流の場となるクラブハ ウスは「地域に根差したスポーツクラブ」の中心に位置する存在です。クラブが「地域に根差した」存在になるために 欠かすことの出来ないものなのです。良いスポーツ施設と憩い・交流の場となる「クラブハウス」、その2つがあって こそ「地域に根差したスポーツクラブ」となるのです。ここでは意味を明確にするために言葉を分けましたが、もちろ ん「クラブハウス」も「スポーツ施設」です。なぜなら、「クラブハウス」もスポーツを豊かに楽しむために欠かせな いものだからです。私は"そのような"スポーツの楽しみ方をこれから是非実現させていきたいと思っています。


後編に続く・・・



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