弱い心 2

 

控えめにコンコンとノックの音がして「アニキ・・いいか?」と啓介の声がした。

少し前に自分のFCの音が聞こえたから啓介が戻ってきたのはわかっていた。

いつもなら「アニキ!」と同時にドアが開くのに今日は随分違うんだな・・・・お前。

階段を騒がしく上ってくる音もしなかった。

 

「ああ、起きてるから・・入って来い」と返事をした。

普段と変わらずに言えただろうか?・・・自分の沈んだ心が気づかれないように。

 

静かに啓介は中へ入ってくると「ありがとう」とFCの鍵を机に置いた。

「ただいま アニキ。もう終わったのか?」

「お帰り。何とか終わったよ」 重い身体を動かすこともできずにベッドに横たわったまま答えた。少し落としてある照明のおかげで血の気のない顔色まではわからないだろう。

「オレもちゃんとお礼して、きちんと話してきたよ」

「そうか・・・」

「アニキ・・・」

啓介はベッドに腰を降ろし上半身だけ俺に覆いかぶさるように抱きついて胸の辺りに頬を押し付けて「疲れた・・・」とかすれた様な声で言った。

「大丈夫か?」 

「うん、なんとか・・。こうしてアニキの心臓の音を聞いていると安心できるっていうか、ああ、ここがオレの戻る場所だなって・・生き返るって感じかな」

可愛い事を言うから重い腕を何とか上げて抱きしめて頭をなでてやる。

「送って帰る時、ずっと泣かれて困ったよ・・・・・・きつかった」

「お前はやさしいからな」

「いや、オレさ、前は全然平気だったんだよ、女に泣かれても。なんとも思わなかったって言うか、勝手に好きになっておいて拒絶されたからって泣かれてもオレには関係ねぇーみたいなとこあってさ。けど、アニキとこうなってからは、わかるようになったんだそういう気持ちが」

「じゃ、大変だったな」

「うん、でも曖昧にするのは返ってひでぇーだろ。仕方ないんだけどさ・・・・とにかく、きつかったよ。アニキ・・・・疲れた・・」

「そうだな・・・」

「でもさ、オレは幸せだな・・。帰るところがあってちゃんと受け止めてもらえる・・家の事を言ってるんじゃないぜ・・・アニキのことだぜ・・」と少し照れくさそうに啓介が言う

「わかってるよ。それじゃ、俺も幸せだな。お前が重たく乗っかっているのに、不思議と鉛のように重たかった身体が軽くなった気がするよ」

「あっ、ごめん。重たかったか?アニキ」

「平気さ。でもこのまま横になってしまえよ・・そうすれば、抱いたまま寝てやるよ」

「うん」

ぴったりと背中から啓介を包み込むように抱きしめて手を繋いで、今夜はこのまま二人で寝てしまおう。

 

一人だと弱くなる心は、この心地よさを知ってしまったからなのか・・・

 

余程疲れたのかすでに啓介からは規則正しい寝息が聞こえてくる。

そして、啓介のぬくもりで暖かくなった心と身体は急激に睡魔に襲われた。

今は、あれほどうるさかった時計の音も気にならない。

 

きっと目覚めるころには二人とも元気になっていることだろう。

俺は啓介に、啓介は俺によって生かされているんだから。

END


最後は決まってラブラブで。

横であんなにワンワン泣かれたら誰だってきついと思いますよ・・。

涙でFCにシミでも作ったら許さない・・と思った私です(怒)

そして、次の日、きっと啓介はアニキにファブリーズを持たされてFCへ向かうのだと思います。

2005.10.29