松本 真澄

『カナダで感じた日本との相違』           (記)

 


もくじ

1.成田VSモントリオール

2.モントリオール市街

3.日本人!ここが違う

4.ケベックを走り回る

 


1.成田VSモントリオール
 1999年9月4日、カナダへ出発!!!
 今回は、モントリオールで開催される”IFA高齢者会議”でスピーチをする工業デザイナーHさんの「金魚の○○」である。

 とにかく「行きたい!」の一念で一緒に出かけた。彼女と一緒にいると「パワー」が乗り移りそう。だから大好き。「目」は彼女だけで、私と友人Nさんの「できない部分」をカバーしてくれる。彼女のいいところは、「できることは自分で。私は手伝わないわよ」というところである。
 そして今回のもう一つの「目的」は、デトロイトに住む小さなBFと彼らのパパに、デトロイト空港で会うことである。出来るだけ彼女に負担をかけないようにと考えて出した結論は、空港内での移動をお願いしようということである。まず飛行機会社に電話・・・

 「私たち2名は視覚障害者です。成田→デトロイト→モントリオール(タクシー乗り場)までの移動をサポートしていただけないでしょうか。座席は、トイレの近くにお願いできますか?そうすれば、機内の移動は大丈夫ですから。」
「見える方が1人ご一緒なさるのなら、私どもは1人分のアシストをさせていただきましょう。空港の移動には、車いすをご用意させていただきます」これがN社の回答である。
「車いす?!いいえ、車いすは必要ありません、歩けますから」


 このようなやり取りがあったのは、出発1週間前のことである。断ったものの、ひょっとしたら車いすが用意されているかもしれない。その時は、「車酔いしますので、遠慮させていただきます」と答えまで用意した。
 なぜ?視覚障害であって下肢障害ではない。見えないものの、歩くことには不便を感じてはいない。そう言えば、ある病院で、胆のうの検査を受ける私に、病院側は車いすを用意したことがあった。障害は百羽一からげ?安全?のためなのかなぁ・・・


 果たして車いすは?空港ロビーには車いすは用意されてはいなかった。ああ、よかった(ホッと一安心)。
 お願いした通り、座席はトイレの近くで、しかも帰りも全く同じだった。レイアウトが同じというのは安心感がある。
 空港内でのサポートの比較をしてみよう。


●日本側のサポート
 確かに丁寧で、かゆいところに手が届く。しかし、かゆいところは自分でかくほうがいいに決まっている。「エスカレータには乗れますか?エレベータの方がいいですか?あっ、足元にお気をつけください」
 ここでつまづこうものなら、彼はドキドキしてしまう?だろうな。彼のために慎重に歩いた方がいいらしい。よそ見なんてしてられないな。緊張してしまう・・・。

●デトロイト、モントリオール側のサポート
 にこにこ顔でとっても感じがいい。鼻歌なんか歌っちゃって、君!仕事中なんじゃないの?でも、ラフな感じには好感が持てる。私の足元を気づかっているそぶりもないし、腕を組んでお散歩をしているみたいだった。
 エレベータで行こうね。さりげなく彼は言う。私の杖にぶら下げてあるドラエモンの鈴を、「可愛い!」と言って、チリリンと鳴らしてみたり。でも、やっぱりVIP待遇だったかな?
日本側の対応と違い、「特別な人たち」的な扱いは決してない。単に、「不慣れな人たち」には誘導を!かな。

 

2.モントリオール市街
 モントリオールは、地下鉄と地下の連絡通路が整備されている。
 地下鉄運賃は安いし(1日乗り放題乗車券400円ぐらい)、地下通路を使っていろいろなところに行くことができる。冬に備えて?出入口のドアは頑固で重い。またドア。あっ、開けてもらっちゃった。ありがとう。なーに、あの時計!?時間が全然違うわよ!正確な時計なんてないわ」とHさん。日本では駅の時計は正確なものと決まっている。これもお国柄?なのかな。

 電車に乗るとすぐに座席を譲ってくれる。そのスマートさは日本にはないなと感じる。ホームには危険を知らせる(と思うが)黄色のラインがある。日本の点状ブロックのような立体感はないが、ある意味では車いすユーザーにも不都合がないかもしれない。
 日本のそれは、確かに杖での確認は容易だが、車いすユーザーにはどうだろう?ホームは静かで整然としている。

 カナダの街を歩きながら感じたことは、狭いホームでおしゃべりをするおばさんたち、母親の制止を無視して走り回る子供たち、車座でしゃがみ込む高校生ジベタリアン・・・などはいないんだなぁ。

 ある時こんなことがあった。乗り換えのため階段を下りた。何人かの「ジベタリアン」が小声でおしゃべり。まさかこんなに階段の近くにしゃがみ込んでいるなんて・・・。杖で突っついてしまったが無言。「どこを通ったらいいの?」それにも無言。方向を失った私は、ホームぎわの点状ブロックを超えてしまった。幸いにも転落を免れたが、その直後に電車が・・・。おいおい君たち!そんなところにしゃがみ込むもんじゃない!!モントリオールには「ジベタリアン」はいなかった。

 モントリオールの街中を歩いた。決して歩きやすい歩道ではないが、日本と比べたらメインストリートも静か。車の数が少ないようだ。映画祭が行われていてにぎやかだったが、1つ角を曲がると人影はまばら。レストランの店名もフランス語で書かれている。とりあえず、きょうの夕食はこの店にしよう。

3.日本人!ここが違う
 ホテルのロビーや駅で友人を待っていると必ずお声がかかる。「何かお手伝いをすることはありませんか?」「友人を待っているんです。彼女はすぐにもどってきます」何度となくこのやり取りをした。

 エレベータに乗っても、「下に行きますよ」「何階?」と聞いてくれる。ロビーでHさんを待っていると、またしてMay I help you?”いつもの「友人を待っています。彼女は、すぐに戻ってきます」そう答える私たちに、座って待つよう薦めてくれた。ソファーに座っていた人々は、私たちのために2人分のスペースを作ってくれた。居合わせた人々は、当たり前のように、May I help you?それもニコニコしながら。

 確かに、最近は日本でも多くの方々が声をかけてくれる。初めて声をかけてみようと決意(?)した人は緊張している。怪我をさせては大変と私の腕をとる。実は歩きにくいんですけど。私の杖を持って、「ここから階段だよ」などと教えてくれる人もいる。その人の好意はうれしいが・・・ちょっと違う。

 いつも思うことは、なぜヨーロッパにしてもアメリカにしてもカナダもそうだが、見知らぬ人に声をかけるのが上手なんだろう。さりげなくにこやかに、さも当然そうに声をかける。もっと気のきいた返事をしたいと思うがなかなかうまく返答ができない。そんな私にも終始笑顔で接してくれる。エレベータの中で、見知らぬ女性に声をかけられた。襟を直してあげるわと。

 

4.ケベックを走り回る
 帰国の前日、電車でケベックに出かけた。ケベックまでは3時間ほどの旅である。ナイアガラの滝まで行けなかったので、モンモランシーの滝で我慢。

モンモランシーの滝

緑の中でその滝は、神々しくさえもあった。遊歩道を通って滝に近づく。吸い込まれそうな迫力があり、なかなかの写真が撮れた。紅葉にはまだ早い木々は美しく空に伸びている。やっぱり日本とは空気が違うなぁ。街の中心部は歴史の重さを感じさせる。
 地図を頼りに買い物をした。皮細工のお店、ガラスの小物、メープルクッキーやシロップを買い込んだ。19.99ドル。約20ドルねと店員さん。にこやかで親切な感じは人柄かなぁ。

 心地よい接客は古今東西同じで、特別なテクニックではなく、店内でのより快適な環境を作るということに尽きる。しかし、カナダドルもアメリカと同様、紙幣はすべて同サイズである。財布の中を4〜5に分けてお札の仕分けをした。
 コインは面倒(と私は思う)なので、ある店では、カウンターの上にジャラジャラと置いた。彼は笑いながら、「1ドルもらうよ」と言って残りを私に返してくれた。日本円なら間違えずに識別できるが、まあ、旅の恥はかき捨て?しばらく滞在すれば区別できるのかも知れないが、当地の視覚障害の方々は不便さを感じてないのかなぁ。


 最後に立ち寄ったお店から駅まで走った。約20分かかるという。私たちの乗る予定の電車は、モントリオール行きの最終である。乗り遅れたら明日の飛行機にも間に合わなくなる!!
 Hさんは駅まで真っ直ぐよ、がんばってね!私はHさんの腕を借り、Nさんは必死で後からついてくる。彼女の歩行能力には頭が下がる。段差よ!!左にポールが・・・・コッチも必死・・・駅が見えたわ!!どこから入るのかなぁ。
 がむしゃらに走る3人は、カナダの人々にはどのように映ったのだろう。「間一髪」間に合った!!ドタバタと走り込む私たちを、駅員さんは笑顔で迎えてくれた。
 Nさんは、駅員さんと手をつないでの乗車。ここに座りなさいと示してくれた座席は、緊急時の脱出口になる。いざというときは、ここから真っ先に逃げなさいっていうことかな?


 こうやって、私たちのカナダの旅は無事終了した。そうそう、デトロイトで、小さなBFと彼らのパパにはちゃんと会えましたよ。めでたしめでたし。
小さなBFとともに

 

 


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