ちょっと目をつぶるのとは大違い

白杖体験

 

1.歩き方の練習
2.階段の練習
3.道路に出る
4. バスにのる - 優先席
5. モスバーガー - 接客と食べること
6. 点字図書館 - 商品を使ってみる
7. 銀行 - ATM
8.JRにのる


日にち;1999年12月2日場所;高田馬場周辺
天気;雨
先生;加藤明彦氏

[プロフィール YOKA2製作所 代表 バリアフリーアドバイザー。弱視 網膜剥離のため視覚障害となる。手術により視力はある程度回復。現在は墨字が読める。手術前の視力が弱い時は点字・白杖の生活であった。専門はデザイン。網膜剥離のため職場は断念。独立しバリアフリーアドバイザーとなる。]

目的;

視覚情報以外でどうやってまわりのできごとを把握するのか???まずは何ごとも経験。
ベテランの視覚障害者は階段など難なく歩けるが、初心で体験することで例えば高齢者や説明が読めない幼児や外国人通ずる経験にもなるのではないかと思いました。

感想;

白杖の感覚が敏感であることと、『わからない』ってどんな事かを実感!!
いろいろな場面で、視覚を使わないでも『わかりやすく』するための、工夫ができそうだなと思いました。


1. 歩き方の練習

 広い場所のある営団地下鉄高田馬場駅地下通路で歩き方練習。
 杖の拡げ方、たたみ方(今回は折り畳み杖を使用。白杖には棒状の直杖と折り畳み杖がある。)を習う。周囲の人に杖があたらないように配慮してひろげる。これは折り畳み傘と同じ。また指を鋏まないように注意が必要。杖は右手で持ち、グリップは脇下に向ける。決して身体の正面に向けない。これはつまずいた時お腹にささらないようにするため。)肩幅+少しの幅 で左右に振る。
 点字ブロックと壁を使って伝え歩きの練習。 点字ブロックはゴツゴツ感が強く、心地よいものではないと思った。壁を使ったほうが、杖がなめらかにすべり楽。ただし壁が、障害物やでっぱりなしに続いている保障は、全くない。

 はじめに周囲の景色を見てからだったので、ロッカー、曲り角、などあらかじめ予測して歩けるが、突然出現したら怖いだろうと思った。
 階段下のゴミ箱等危ない。置くのなら、もう少し階段から離したところがよい。
地下鉄の階段下、手すりの端に灰皿

 

2. 階段の練習

 杖を蹴上げ面にあてながら進む。杖は垂直ではなく腕を右前方に出し右上から左下に杖を斜めにする。下りは杖を前方におろし、次の下の段をトンと確認するようにしておりる。はじめてなので杖の長さの感覚がつかめず次の段なのかその下の段なのかわからない。ゴツイ底の靴だったので踏み面からはみだしていても気がつかない。そのせいか斜めに進んでしまう。
 手すりはとても安心。身体を支えるためにも方向を知る手がかりとしても重要。
 蹴上げにそって杖をすべらし、進行方向と直行する方向をさぐるがピンとこない。方向を知ることは難しい。壁面、あかり、水の流れ等が役にたちそう。 とにもかくにも下りは怖い。「ダイタンだね」と呆れられても、本人は怖い。

 

3. 道路にでる

 階段を上って駅の外に出る。周囲の様子は地下鉄におりる前に「見て」いるので判る。
 バス停留所が続く歩道を点ブロにそって歩く。途中バスの乗り口へ向かうために点ブロの分岐がある。そのまま進み交差点へ。交差点が近付いたことに全く気づかず道路に飛び出しそうだった。

バス停近辺。自転車が点ブロにはみだしそう 点ブロの分岐

 点ブロの分岐や、路面や点ブロの仕上げ材の違い、マンホールなどいろいろな物を杖で感じて非常に騒がしい状態である。交差点の点ブロもパっとあらわれたのではなく「何かわからない」感じのものの一つとして現われた。点ブロの状態が変わったことは判るのだが、何がなんだかわからない。他の情報(車や人の流れなど)に気づくゆとりは、全くなし。

 点ブロがマンホールでさえぎられている場合、方向を見失うことはないが「あれ?何?」ととても気になる。目が見えないということは状況を確認するのが大変困難であり、「これまでと違う状態」になると混乱することをあらためて感じた。
小さなマンホールで点ブロが1枚分途切れている
 線状ブロックか点状ブロックかは区別ができないのだが素材の違いはとても良く判る。杖にあたった音の他に杖の先の滑り具合なども素材を感じるポイント。ちょっとした凸凹もよくわかる。触覚は視覚の何倍も細かい違いがわかることを実感。杖が手になると良くいわれるが杖触りもよくわかる。

ラバーとタイルのブロックの切替え部分

 はじめての私でもこんなに区別ができるのだから白杖のプロには大切な情報であろう。
 触覚はこんなに敏感なので、インターロッキングの中の点ブロは大音響の中で大声をだしているような感じでかなり騒がしい触感であるし弁別しにくい。  

 交差点を知らせるチャイム音あり。ポールの上方から音が出ている。上から聞こえる音は音源の方向を特定するのがむずかしいと感じた。
 人の声は通常は高さの範囲が狭いし声の大きさもまあある程度口調とともに判断しやすいので距離をつかめやすい気がする。その点人工音はむずかしい。しかしバイクや車の音にすぐにかき消されてしまう。またチャイムの音と音の間隔も大切だとおもった。間があいていると、まず音に気づいたあと、次ぎの音を確認する前にとおり過ぎてしまいそうだ。
テャイム発生装置、日点のそば

 『?の時は立ち止まる』原則はむずかしい。こういうことが身につくことがベテランの視覚障害者ということか。 自転車をよける度に身体の向きが狂ってしまう。

4. バスにのる

 

都バスの乗り口 

目隠しの状態でバスにのる。料金を投入するのはむずかしくてできない。見えていてもおつり方式か両替え式か即座にはわからず戸惑うので、見えないとさらに何もわからない。

 ニューヨークのバスは均一料金で、支払いは釣り銭なしのコインかトークンという5円玉のような専用コインかプリペイドカードのみで、とてもわかりやすい。

 手引きをしてもらって乗り込む。手引きをしてもらうと安心ですっかりお任せになってしまうのでちっとも訓練にはならない。最初は進行方向をむいた普通の席、次ぎに通路に向かって座る優先席に移った。
 優先席はからだを横すべりにする必要がないので腰掛けやすい。手すりに降車ボタンがあり、位置がわかりやすい、など座りやすかった。降り口を見つけるのはむずかしかった。

バス停留所。すぐ近くに点字ブロックがとおっているのに、バス停にはつながっていない。

 降車したバス停の附近の歩道は点ブロがつながっているがバス停への分岐はない。高田馬場駅のバス停は分岐があったのに。ないと位置がわからない。

 

5. モスバーガーへ

 バスを降りてバス停の目の前のモスバーガーへ。店頭のメニューボードと鉢植えの間にはまりこんだ。自分が来た方向がわからないので後戻りもできず混乱していくばかり。

モスバーガーの入口扉右手にメニューボードとその足元にベゴニアの鉢植え2つ

 玄関マットは入口の位置がわかり嬉しい。

 行きつけのモスとはカウンターのレイアウトが異なるのでとまどった。

 点字メニューはない。読み上げてくれるが、気の毒なのと、パパっといわれても印象が残らないのとで、なんだかいちいち理解するのが面倒。
 最初のメニューにした。手に持っていた千円札で支払う。硬貨も時間をかければ多分識別して支払うことができると思うが面倒くさい。これは海外の不馴れなコイン使用の場合と同じ感じ。

 ごぼうサラダに何がはいっているかわからず、カップに口を近付けたら鼻がレタスにあたった。ごぼうは細くて固いので見えないとうまくフォークにさすことができない。

 ポーションミルクとスティックシュガーは計量がいらず便利。ピッチャーで注ぎ入れるという動作はピッチャーとカップのサイズの相関関係大。ということをはじめて知った。

 加藤氏の話しを聞きながら紅茶の香りがプーーンとしてのんびりした気分になった。目をつぶっているせいかもしれない。

 

6. 点字図書館へ

点字図書館の入口

 店を出て歩いて点字図書館へ向かう。入口の自動扉は風徐室の有無がわからず、またこの建物の自動扉の反応がとても遅くガラスにぶつかりそう。

 用具部で白杖を見せてもらう。

 加藤氏がもっている折り畳みの杖のメーカの製品がグリップがすべらず嵌め合い具合も良くできている。職員の声のとおりがよいので感心した。以前たずねた職能訓練所でも声の気持良さを実感。

 次は電磁調理器。

 シートキーに点字表記あり。点字が読めないしボタンの区別がつかないので使いづらい。キーの形状がくっきりしていれば配置がもっと覚えやすいのにと思う。今の設定を音声で通知要求するキーがありこれはべんり。

 プレストーク(デイジーという視覚障害者用の音声読書システムの再生機。CDプレイヤーのようなもの。)をさわる。天面のキーは凸のエンブレムかと思った。これはキーの材質が固かったためである。もっと手触りをデザインすべきと思った。またハンドルのところにあるやや開いたL字の2面のところからとびだしているキーは下に押すのか向こうに押すのかキーの動作方向がわからなかった。

 電卓をためす。キーの配列、テンキーとそれ以外のキーとのピッチ、キーの形状、キートップの傾きなど区別のための手法はたくさんありそう。

 押す前にふれるだけでキーの機能をよみあげてくれると良いなと思った。

7. 銀行へ

 高田馬場駅前の東海銀行とサクラ銀行にいく。サクラの盲人用ATMは窓口側にある。営業時間外だったのでシャッターをあけて入れてもらう。はじめて音声でATMをつかってみた。
音声内容が無愛想なのでおどろいた。

 「○○してください」と指示の音声はでるがそのキーがどこにあるかといった説明はない。点字がよめることが大前提になっている。残高照会をしたが読み上げが一回きりなので聞きそびれるとまた一番最初からやりなおしになる。また2社で残高マイナスの場合のいいまわしが異なっていたり、位読みと数字読みとの違いがあったりして大変不便であった。

 

8. JRにのる

 

 切符を買う。タッチパネル式のアスタリスクを押すところから始めることを知っているので買える。音声はATMと同様、アスタリスクを押してくださいとかシャープを押してください、との指示だけなので、それはどこかの説明がほしい。

JR券売機

電車にのる。扉の位置はわからなかった。扉の端のほうから乗車したとおもったので手すりを探したが空をつかんでしまった。

次駅名のアナウンスはとても重要であった。弱視の芳賀さんの本の中で、ある国の鉄道で芳賀さんたちがおりる駅に到着した時だけ2度くりかえしてアナウンスしてくれたとあったが、ありがたみが解った。

 

9. むすび

 慣れたり覚えたら、今日の体験で不自由だと思った多くのことが、何でもなくなるのかも知れない。しかし券売機ひとつとっても色々なタイプがある。いちいち意識し確かめ記憶するのはとても負担が大きいとあらためて実感した(頭の訓練にはなりそうだが)。

 ちょっとした工夫で、いろいろ楽になりそうだと思った。例えば、モスでメニューを読み上げる場合に、まず「セットメニュー」「単品メニューの食事系」「単品メニューのデザート系」「のみもの」のように大項目を言ってから、詳細に入ってくれるとか、、、再確認ボタンを押すともう一度くり返してくれるATMとか、、、、

見る表示は、多くの場合、見ていたいだけ見る事ができるし、同時に見比べることができるが、聞く場合は、音は常に流れ去ってしまうことを、意識して作って欲しい。

 


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