『ベテルギウスの
  色指数の観測報告』

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                     ベテルギウスの光電測光
       自作の5色測光器                           フォトダイオード使用の5色測光器


1.光の波長による感度の違い
     肉眼で感じる光(可視光線)の波長は0.38μm(紫)〜0.77μm(赤)の範囲にあるが,その中でも0.5μm
    程度の黄色の光に最も良く感じやすい性質がある。一方,天体の明るさを測るために用いる感光材料や素
    子は,肉眼 とは異なる波長域を持っているのが普通である。例えばフォトダイオードやCCDは赤や赤外線
    の感度が大きいものが 多く,昔の写真観測で用いていた写真乾板は青い光に感じやすく赤には感じにく
    い。
     こうした波長による特性がことなる素材を用いて星の明るさを測ると,星の色(表面温度に影響されている)
    が異なるものでは異なった等級と判断してしまう。例えば,赤い星であるベテルギウスの明るさを写真観測
    によって求めると暗い星と判断するし,青い星のリゲルは肉眼で感じる以上に明るいと判断してしまう。
     このような誤りを防ぐため,フィルターを使って同一の波長域だけを使って星の等級を測定することが行わ
    れている。
     20世紀終わり頃まで天体の明るさの測定(測光)に使用されていた光電子倍増管は一般に青や紫外域の
    感度が大きく,赤や赤外域には感じない。そこで波長0.38μm前後の紫外域をUバンド,0.44μm前後の青い
    可視光の領域をBバンド,0.55μm前後の肉眼の特性に近い領域をVバンドとして観測していた。

2.5色測光とは?

     1980年代から光電子倍増管に代わってCCDが使用されるようになると、U・B・Vの三色の測光に加えて,
    赤色光(0.69μm前後)のRバンドや赤外域のIバンド,さらに赤外域も波長によって細分化されるようになっ
    てきた。
     ひかり天体観測所でのベテルギウスの観測では感光素子としてフォトダイオードを用いているので,測光
    に利用できる波長域が紫外から近赤外の広い範囲に及ぶので,U・B・VあるいはB・V・Rの3つの波長域の
    三色測光ではなく,U・B・V・R・Iの5つの波長域を測定する5色測光を行っている

3.色指数とは?

     もともとは青い光に感じやすい写真乾板を用いた写真によって求めた写真等級(B等級)と実視等級(V等
    級)の差として定められた値,つまりB−Vを色指数と呼んでいた。
     そこで,高温の星(青い星)ほどB等級が明るくなる(等級は小さくなる)ので色指数は小さくなり,逆に低温
    の星ほど色指数が大きくなることがわかる。

4.5色測光の概要
   (1)観測の方法=
         実視等級(Vバンド)の観測(ベテルギウスの光電測光参照)と同時に,U・B・R・Iバンドの等級を測
        定し,隣接したバンド間の差をとり, U−B, B−V, V−R, V−I の色指数を求める。
   (2)観測誤差 =
         Vバンドの測光と同様に比較星として選んだ標準星10星前後の測定値と星表の値との差の標準偏
        差を誤差とすると,その平均値は  U−B, B−V, V−R, R−I  がそれぞれ
                              0.046, 0.014, 0.022, 0.034等 であった。 

4.観測結果
  (1)色指数の変化のグラフ = 〔図−1〕・〔図−2〕

       〔図−1〕      2001年10月20日〜2004年4月22日


       〔図−2〕       2004年10月1日〜2007年4月5日


       〔図−3〕       2007年3月21日〜2008年9月23日


        横軸目盛りは日心ユリウス日(HJD)の下位4桁を示している。
        HJDと現行のカレンダーの日付との対応は下記のとおりである。

  〔図−1〕  2200,  2300,   2400, 2500,  2600, 2700,   2800, 2900, 3000, 3100,  3200
      '01年10/17,'02年1/25, 5/5, 8/13, 11/21,'03年3/1, 6/9, 9/17, 12/26,04年4/4, 7/13,

  〔図−2〕  3300,   3400,   3500, 3600, 3700,   3800,  3900, 4000, 4100,   4200 
      '04年 10/21, '05年1/29, 5/9, 8/17, 11/25,  '06年3/5, 6/14, 9/22, 12/30, '07年4/10

  〔図−3〕  4200,  4300, 4400,   4500,  4600, 4700,
      '07年4/10, 7/19, 10/27, '08年2/4, 5/13, 8/22,


5.観測結果から
 (1) U−B の減少 =
        2003年春の減光時に U−B の明確な減少が認められた。同時に B−Vもわずかながら減少している
      ように見受けられる。これらは短波長域が減光していないことを意味しているので,単純に考えるとαOri本
      体とは別の高温光源の存在を意識させるのだが説明困難である。波長域によって大気層の深さの異なる
      領域が観測されているらしいので,この辺が鍵となりそうだ。
       2003年春の減光以後、'07年までの観測ではではおよそ400日の周期となり、Vバンドの変動と連動して
      いるらしい。
       <Dupree, Baliunas, Guinan, et al. 1987 ApJ 317 L85-L79>によると,400日周期でUバンドの変動があ
      るということであるが,この変動が今回確認できたとみられるが,観測高度が低い4月にU-Bが減少してい
      て、365日周期のようにも見えることが気にかかっていた。しかし,'07年2月にはU-Bの減少からの復帰が
      観測できたのことから,地上での季節的な変動の影響ではなさそうだといえる。
       この U−B の減少は周期400日程度でくり返されて,5周期程度でVバンドの変光(約2000日)と連動し
      ているとも考えられるので,今後も長期にわたって経過を見守りたい。
      「参考」http://www.mrao.cam.ac.uk/telescopes/coast/astronomy.html   のページの下の方にある
             Surface imaging of Betelgeuse の中の    More infomation on these Betelgeuse results
           に非常に興味のある報告が提示されている。4素子の光赤外干渉計によるベテルギウス本体の
           画像である。700nmのバンドでホット・スポットが見られ、これは星周殻(circumstellar shell)に穴が
           できて、本体深部の高温の領域からの放射が見えているとしている。
 (2) R−I の乱れ =
       2003年春の減光の際,その半年ほど前から R−I の値が激しく変動している。2006年・2008年の減光時
      には同様なことが観測されなかった。

6.今後の課題
       Vバンドの変動とU-Bの減少の周期がどのように連動しているのか?それらの変動の周期はどうかなどの
      確認が必要。

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