
『ベテルギウス
の光電測光』
'08年3月初旬まで光度が復帰に向かっていましたが,その後ふたたび
減光に向かって、今期の観測シーズンを終えました。
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1.ベテルギウスとは?
ベテルギウスは冬の夜空で代表的な星座・オリオン座で赤
く明るく輝く1等星です。厳密にいうと,ふだんは0.4等程度だ
が,およそ2100日ほどの周期で1.3等ほどにまで暗くなると云
われています。変光星としては,半規則型と呼ばれている仲
間で,恒星の一生の中ではかなり終わりの時期に達していて,
超新星として最後の爆発をする一歩手前の時期の星といわれ
る。
変光星の明るさを正確に観測するには,その近くに色や明
るさが似た標準の星が必要だが,ベテルギウスのように明る
く赤い星では近くに適当な標準星がないため,大変観測が難
しい変光星だ。
国分寺市光町の夜空は明るい
2000年以降,約400日の周期で減光する傾向が見られる。
2.はじめに
(1) 観測地 = 東西に長い形の東京都のほぼ中心に近い国分寺市の西部にある。武蔵野段丘と立川段丘の境界
となる国分寺崖線の肩にあたるため,南方が開けていて空気の透明度の良い日にはカノープスが見え
る。しかし,新宿副都心から20km余り離れてはいるが,市街光の多い地域が連続しているため空の状
況は悪く,天頂付近で3等星を肉眼でどうやら確認できる程度で,暗い星の観測には不向きな地域だ。
(2) 観測機器 = 光電観測の計画を立て始めた1980年代には,冷却CCDが非常に高価でアマチュアには手が届
かなかったため,フォトマルチプライヤー(光倍増管)かフォトダイオードだけが対象であった。費用節減
を最優先して自作を前提とすると,高圧安定電源がネックとなって結果的にフォトダイオードに落ち着い
た。その後冷却CCDが比較的入手しやすい価格で発売されるようになったが,廉価な物は霜が付着し
やすい上,広い面積がとれず,適当な標準星を同じ画像にとりこみにくいため,焦点距離2m(現在は
4.8m)の自宅の望遠鏡を生かすことができない。(フォトダイオード使用の5色測光器参照)
また,高価な裏面照射型を除いて,一般のCCDでは紫外域の観測ができない。
(3) 観測対象 = フォトダイオードは感度の直線性が良く、大光量受光後の劣化もないが、低感度であることが最大
の欠点である。したがって、観測対象としては減光時の光度が5等より明るいことが要求され、観測対象
はかなり限定される。また,東京では光電測光が可能な空になる確率が小さく、冬季でも数日間連続し
て観測できる状況とは思えない。
このようなことから,減光時でも明るく周期が長い変光星が多い半規則変光星を対象に選ぶこととし,
その中で冬季の観測がしやすいベテルギウスが選ばれた。
3.観測と整約ほか
(1) 明るい半規則変光星の近くには、色・光度ともに近い比較星がほとんど存在しない。そのため次の@・Aの観測
方法をとる。
@ 光度が4等台までの標準星のうち、天頂距離とカラーが異なる10星前後を順次観測し,その間に目的の半
規則変光星(αOri,ρPer,ηGem)を観測する。
A 標準星の観測値を重回帰によって、大気減光補正とカラー補正の係数を一気に決定し、観測対象の観測値
を補正する。
(2) 観測誤差 = 標準星の観測値の重回帰によって得られた補正係数を標準星に当てはめて,その差の標準偏差
をとって観測誤差とすると,その平均値が0.020等であった。誤差が予想以上に大きいのは、3時間ほどの
観測時間の間に天候(特に透明度)が変化することが最大の原因と思われる。
〔図−1〕 2001年10月20日〜2004年4月22日

〔図−2〕 2004年10月1日〜2007年4月5日

〔図−3〕 2007年3月21日〜2008年4月14日

横軸目盛りは日心ユリウス日(HJD)の下位4桁を示した。
HJDと現行のカレンダーの日付との対応は下記のとおりです。
〔図−1〕 2200, 2300, 2400, 2500, 2600, 2700,
2800, 2900, 3000, 3100, 3200
'01年10/17,'02年1/25, 5/5, 8/13, 11/21,'03年3/1, 6/9, 9/17,
12/26,04年4/4, 7/13,
〔図−2〕 3300, 3400, 3500, 3600, 3700, 3800, 3900, 4000, 4100, 4200
'04年 10/21, '05年1/29, 5/9, 8/17, 11/25, '06年3/5, 6/14,
9/22, 12/30, '07年4/10
〔図−3〕 4200, 4300, 4400, 4500
'07年4/10, 7/19, 10/27, '08年2/4,
4.観測結果
1997年以降観測を継続してきたが、ここでは2001年秋から現在までの観測結果について報告します。
(1) V等級の変化 =
2001年12月に0.3等と上昇したが、2002年になって減光し0.7等まで低下してシーズンを終えた。
2002年秋には再び0.3等へ回復し、2003年2月以降本格的な減光をはじめ、1.1等台まで減光して再びシー
ズンを終えた。
2003年秋には0.4〜0.5等台で安定していたが,2004年秋から0.3等台に一時増光し,2005年春にはふたた
び0.4等台で安定している。
2006年1月0.3等を越える明るさとなったが,4月には0.6等までに下降した(図−2 参照)。9月になって,さ
らに減光の傾向となっている前回の本格的減光から1100日程度しか経過していない。
(2)V等級の変動の周期性=
約2000日周期といわれる1.2等程度までの減光のほかに0.5〜0.7等程度の小規模な減光が約400日周
期で起こっているように見受けれられた。
2007年の減光の期間を見ると2000年以降の上記の減光が5月〜8月の観測のオフシーズンに重なってい
たとみても不思議ではなくなった。もしこの仮定が正しければ、周期320〜440日で変光している可能性が
ある。その意味で2008年秋〜2009年春に予想される減光が楽しみだ。
「参考」 = 2335日(The Bright Star Catalogue, NORTON'S STAR ATLAS)
2110日(CAMBRIDGE STAR ATLAS)
2070日(下保茂)
(3)2006年秋・2007年秋の減光 =
2003年4月の減光から1650日程度で1等程度までの減光が観測された。これは上記の短周期的変動では4
周期目であって,周期2000日という旧来の変光周期は完全に崩れている。
2007年秋は減光の初期から復帰まで観測ができそうだ。
(4)眼視観測との比較 =
東亜天文学会会誌「天界」にベテルギウスの眼視観測の結果が示されているが,2002年秋および
2003年秋のいずれも上の光電測光の結果より暗くなっている。特に2003年秋の眼視観測では春の減光
から徐々に復帰したように観測されているが,これらはいずれも未明のベテルギウスの高度が低いことに
よる大気減光の補正がされていない結果かもしれない。当光電測光の結果では,2003年春の減光後
の復帰の状況は観測されていない。つまり,夏の間に復帰してしまったと判断できる。
なお、'07後半〜'08はじめの減光では、当光電観測の結果よりも0.3等ほど暗い結果を報告されている
眼視観測者が多いことに気づいた。今後、原因を解明する必要がありそうだ。
(5)UBVRI各バンドによる5色測光の結果 =
ベテルギウスの色指数の観測報告 をご覧下さい。
5.今後の課題
(1) 観測効率の向上 =
変光星と標準星10星ほどを観測するのにほぼ3時間を要する。この間に大気の透明度が変われば観測
精度に大きく影響するため良好な結果が得られない。そこで,空の状況が変化しない間に短時間で観測を
終了させる必要に迫られ,観測機器と観測環境の改善に努めてきた。2006年2月に東京大学理学部から
三鷹光器の30cmカセグレイン望遠鏡が移設されたので,観測能率が格段と向上したが,メンテナンス
や修理での苦労は大変なものだった。
(2) 別システムによる検証 =
変光星と標準星が同時に観測できれば空の状況の変化の影響を低減できる。例えば、冷却CCDとカメ
ラの広角レンズの組み合わせが考えられるが,2004年夏以降デジタルカメラによる検証の試行を始めた。
デジカメによる測光を厳密に行おうとすると,測光システムや系統的な誤差の問題がつきまとい,単純に
従来のシステムとの比較が難しい。また、現行の観測方法では所要時間が長く,他の検証をする時間がな
かなかとれない
”デジカメでも測光ができる”参照
(3) 観測対象の増加 =
現在は半規則変光星3星の観測のみだが、観測能率が向上できればその他のタイプの変光星にも観
測対象をを広げてみたいが、観測時間が長引くため、その間の天候変動が気になり難しい。
ベテルギウスの色指数の観測報告
フォトダイオード使用の5色測光器
デジカメでも測光ができる
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更新記録;'05.4.4,10.28,12.12,12.30(4)
'06.3.23, 5.1, 9.5,10.8,11.9,12.1,12.21
'07.1/2〜12/20(14回)
'08.1/5,2/2,3/2,