駒大苫小牧 夏の連覇
2005年・夏。
高校野球の季節が今年もやってきた。 この夏の甲子園は怪物辻内・平田擁する大阪桐蔭高が大会開幕前から注目され、開幕後は明徳義塾高の不詳事による
開会式後の出場辞退という前代未聞の出来事によって、かつてない程の注目を浴びる大会となった。
そんな中、前年度夏の王者・駒大苫小牧も甲子園に帰ってきた。
前年夏、第八十六回選手権大会は史上初の初出場春夏連覇を目指す高校と、かつて「史上最弱地区」と呼ばれ、上位とは
無縁の北海道代表校が覇権を争い、壮絶な打撃戦の末、深紅の大優勝旗は津軽海峡を渡った。
この夏の駒大苫小牧はその次の年代チームである。
北海道中が歓喜した全国制覇。それもそのはず。
何せ90年越しの夢の達成である。 優勝翌々日のスポーツ紙一面に踊る活字「さぁ夏春連覇だ!!」
このチームのスタートはそんな中から始まった。
「道勢初の全国制覇を達成した駒大苫小牧」とは言っても「その次の年代」とは中々言ってくれない。
道民誰もが夏の再現を期待する。 それは恐ろしいプレッシャーだったろう。
そんな中、直後の秋季全道大会を勝ちあがり、センバツ甲子園出場切符を手にする。
高まる夏春連覇の期待。 結果は2回戦でまさかの1安打完封負け。
8回までノーヒットのおまけ付き。 直後の春季全道では初戦で完敗。
「どうした?駒苫?」 「やっぱり昨夏の優勝は・・・」
それでも夏はやってくる。 前年制覇のメンバーは言ったという
「後輩達にとても重たいものを残してしまったかもしれない」
それでも春季全道初戦敗退後、このチームは変わる。
「優勝旗を全員で返しに行こう」という重圧から「野球を楽しむ」
駒大苫小牧はたくましく変わった。 夏の予選を無失策で勝ち上がり、3季連続甲子園出場を決める。
優勝旗は駒苫ナインの手によって、甲子園に帰ってきたのだ。
初戦は前年同様大会6日目で三季連続の初戦九州勢。
創部4年目の聖心ウルスラ学園。 前年のような強打のイメージは無いものの、ジワリジワリと加点していく。
どんどん引き離されていく試合展開に、相手チームは点差以上の開きを感じただろう。
エース・松橋が甲子園で始めて好投を見せ、5−0の完勝。
続く日本航空戦は香田監督の采配が的中。 振り回してくる相手打線には制球に難あり直球頼みの松橋に変わり、センバツで好投した田中を起用する。
縦に落ちるスライダーで三振の山を築くゴジラ・田中
打線も16安打で13点。 13−1と駒苫初の甲子園圧勝。
2年連続8強入りだ。 続く準々決勝は強打の鳴門工。
好投手・田中暁は、落ちるスライダーを持っている。
苦手な左投手。 先発・松橋が早々と捕まる。
主将・林の先頭打者ホームランで1点返すも1-3のまま試合は淡々と進む。
田中暁に手も足も出ない駒苫打線。 漂う王者の敗色ムード。
そんな中、懸命に全力プレイを見せる選手がいる。
主将・林だ。 前年夏、大会屈指の右腕・涌井からサイクルヒットを記録したスーパー高校生。
重圧の中、チームを引っ張ってきた「ナイス・キャプテン」だ。
平凡な遊ゴロも、ヘッドスライディングすれば内野安打になる。
派手さがなくてもいい。 泥臭くても次の塁を狙って行けばチャンスは来る。最後まで諦めない。
そんな林の背中に、王者が目を覚ます。 7回裏。1−5。
先頭の岡山は右前打を三塁打に変える。 オーバーラン気味の走塁が、相手のミスを誘い、チャンスがキタ!
鳴門工内野陣、そしてそれまで完璧に王者を封じ込めていた好投手・田中暁が徐々に追い詰められていく。
王者・駒苫が火を吹く。 失策と5長短打で一挙6点!
試合をひっくり返し、7−6で奇跡の大逆転勝利!!
「奇跡!奇跡っす!」試合後の林主将のコメントが微笑ましい。
そして準決は、「本命・大阪桐蔭」 前日、あの清原以来となる1試合3本塁打を放った平田。1試合19Kの大会タイ、2試合連続全員奪三振の辻内。
王者・駒苫の連覇が霞む。 試合前の林のコメントがいい。
「辻内君を崩します」 その言葉どうり、立ち上がり不安定な辻内投手を攻め2回に一挙5点!
守っては先発・ゴジラ田中が桐蔭打線を5回まで無安打に抑える。
前日3本塁打の平田は田中の縦スラにすっかりタイミングを外されている。
「いける!!」 道民がそう確信する。 だが、甲子園は甘くない。
田中が辻内に2点本塁打を浴びる。 ジワリジワリと王者を追い詰める「本命」
8回にはついに同点となる。 頼みの打線も、本塁打ですっかり復調した辻内に三振の山。
試合は延長戦へ。 それでも落ち着いているのが主将林。
怪物の148キロストレートを左前打すると、今大会のラッキーボーイ・辻が右線二塁打で勝ち越し。
それでも10回裏、桐蔭は二死一塁で、四番・平田。
一発で逆転サヨナラの場面。 結果はハーフスイングの三振で試合終了!
連覇へあと一つだ! 決勝の相手は二戦続けて近畿勢。
京都代表・京都外大西。 駒苫が連覇を賭けた決勝なら、外大西は名将・三原監督最後の大舞台。
甲子園はその全てのチームにドラマがある。
下馬評は投手力の余力から見て駒苫の圧倒的な有利。
それもそのはず。ここまで4試合無失策(地区予選からあわせて11試合連続無失策)の堅守に加え、圧倒的な投手力。
派手さは無いが隙の無い打線。 それを取っても今夏の駒苫はずば抜けている。
対する外大西は強打が売り、そしてスーパー1年生・本田拓人投手が生命線。
その本田君もここに来てかなりお疲れとあれば駒苫優位は揺るがない。
しかし、試合開始直後、信じられない光景を目の当たりにする。
鉄壁を誇った駒苫ナインが、失策から先取点を与えてしまう。
直後に追いつくも、打線は繋がらず。1−1のまま試合は進む。
連打で3−1にするも、今度は主将・林のタイムリー失策から同点に。
それでもこのチームは逞しい。 簡単だ。 取られたら取り返せばいい。
5−3となり、試合は9回表。 マウンドに上がるは五回途中エース松橋からマウンドを譲り受けた2年生・田中。
一球一球、渾身を込めた力のあるボールで打者を三振に討ち取る。
恐ろしい2年生だ。 初戦こそ、松橋の完封だったが、3回戦からは田中劇場で4連投。
疲れと連覇のプレッシャーでのマウンドながら、直球は冴え渡る。
9回二死。伝令が走る。 林主将を中心にマウンド上のナインは人差し指を高らかに突き上げる。
1年ぶりに甲子園で見る光景。 今夏の駒苫が封印してきたポーズ。
さぁ連覇だ! ラストバッターは追い込まれてもなお田中の直球をカットする。
響き渡る「あと一球」コール。 歪む田中の表情が振りかぶる腕によって大魔神に変わる。
ラストボールは外角高めの直球。 田中自己最速の150キロを計測。
空振り三振! 試合終了!! 連覇だ!57年ぶりだ!!優勝だ!!!
やった!やってくれた! 凄い、何て凄い選手達なんだろう。
初制覇からの一年はまるで結末が決まっていたかのような一年じゃないか。
これ以上ドラマティックなドラマは無い! 優勝後の林主将は言った。
「誰が見ても、僕らが最高の夏だと思います。みんな最高だ!!」
最高の夏を、ありがとう。 感動しました。 追伸。
駒大苫小牧高の夏連覇という大偉業が、その後の野球部部長による部員への暴力行為発覚によって
水をさされる結果となった事が非常に残念でなりません。
ただ、今夏の(も)甲子園優勝は駒大苫小牧高であり、駒苫の戦いぶりは連覇するにふさわしく、今年もファンを
熱くしてくれた事には変わりません。 こころから感謝し、王者に敬意を表し、心から拍手を贈りたいと思う今日この頃です。
みんな!最高だ!!
2005年 9月 T.Hiraizumi
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