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(盛 岡) 古澤貞夫
漆黒の磔像ひかる薄暑かな 一瀑の音万緑をつらぬけり 搦手になだれ咲きけり花卯木 昼どきのチャイム鳴り出す麦の秋 朴の花旧道忘れられゆきぬ
(三 島) 石井淳子
薄暑光ステンドグラスに祈り満ち シュークリームの正面はどこ青時雨 さみだれや骨きしきしと音たてて ぴかぴかにピアノを磨き走り梅雨 橘の花や老いには逆らはず
(花 巻) 桜井登美
山菜の苦味を添へし花見膳 うぐひすの谺に山の朝が来ぬ 日は永し坐つてゐろと云はれても 老斑に加へて蚋のさされ跡 花りんご二時間待ちの路線バス
(花 巻) 川村住子
緑から生れ来る風六地蔵 佛前の牡丹少々大きかり 花りんご花びらすべてふるはせて 囀の中にとりのこされてゐる あめんばう大き水輪の生まれゆく
(横 浜) 斉藤加代子
旧道も新道も雨桐の花 みづいろの栞八十八夜かな 葱坊主一列淋しさとも違ふ 短パンのポケットあれもこれも入れ アネモネ挿し今日の夕空傾ぎけり
(川 崎) 堀江野茉莉
観音の巨いなる背や花時雨 春昼のもの言ひたげや観世音 花散りて空の湿りて来たるかな おかめ桜とあり葉桜でありにけり 孕み雀らしきが跳んでみんな飛び
(福 山) 榊原素女
万緑へ開け放ちたるレストラン 花みかん匂ひカーテン揺れてをり 決めごとはいつもじやんけんさくらんぼ 片隅に苺の匂ふ会議室 それなりに似合うてゐたる宿浴衣
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