「谺」創刊10周年


「谺」十周年大会開催


「谺」十周年大会が5月24,25日、江ノ島の「ニュー向洋」にて開催された。
24日の「十周年を祝う会」には来賓に平柳草子先生(横浜俳話会会長)、岨静児先生(天平主宰)、松尾隆信先生(松の花主宰)、大関洋先生(時同人)、佐藤公子先生(松の花同人)のほか衆議院議員で「谺」の表紙絵を描いて頂いている大森たけし先生を向え、大いに盛り上がった。
25日は記念俳句大会。30人の句会は「谺」にとって始めてのこと。募集句と当日句合わせての大会賞は小林比奈子に贈られた。二日間を合わせた出席者は述べ34人。「谺」の会員総数の過半を超える盛会であった。

大会入選句抄(募集句)


山本一歩主宰 選
◎ しつかりとぬすびと萩を括りけり  堀部 真
◎ 日に躍り出でて放蕩めける蝌蚪  森しず子
◎おぼろ夜の脈をとられてゐたりけり  妹尾圭子
○ 贅沢に咲いて一本だけの薔薇  小林比奈子
○ 水温み水の速さとなりにけり  吉田善一
○ とろとろと春の日のあり母のあり  小林比奈子
○ 雲は雨こらへてをりぬ芽落葉松  古澤貞夫
○ 春雷やあつけらかんと死を語る  宮澤千恵子
  来る人も去り行く人もかぎろへり  有馬五浪
  寺親し花三椏に灯ともして  蓮見澄男
 おほでまりこでまり父母の声聴かな  木村とき江
  春の灯や使ひ慣れたる皿の彩  有馬五浪
  城門に非常口あり四月馬鹿  秋山幸子
  よくばつて活けし菜の花明りかな  妹尾圭子
  本当の夢は語らず花を浴ぶ  榊原素女
  芽吹かんと山ときめきの色兆す  坂本キミ子
  話したいことがたくさん春の月  山本一葉
  春逝くや礁は潮を打ちかへし  古澤貞夫

岨 静児先生・「天平」主宰 選
◎ 春雷や丸めて捨てるメモ用紙  榊原素女
◎ 雲は雨こらへてをりぬ芽落葉松  古澤貞夫
◎ 原稿の〆切近し蜘蛛の糸  田中ひろし
  来る人も去り行く人もかぎろへり  有馬五浪
  夕ぐれに少し間のあり椿落つ  和田順子
  春コート上野駅いま通過駅  桜井登美
  木々芽吹き海を遠くへ押しやりぬ  田中ひろし
  花冷えやくづさぬやうに豆腐煮る  妹尾圭子
  城門に非常口あり四月馬鹿  秋山幸子
  吊橋を揺らす子のゐて山笑ふ  秋山幸子
  歳のこと今さらなにを青き踏む  吉田善一
  初桜戦争知らず老いたしや  妹尾圭子
  眉と口尖らせて剥く夏蜜柑  渡辺時子

大関 洋先生・「時」同人 選
◎ いきいきと雛の箱に母の文字  榊原素女
◎ 話したいことがたくさん春の月  山本一葉
◎ 城門に非常口あり四月馬鹿  秋山幸子
  蕗味噌や好み似て来しふたりなり  宮澤千恵子
  とろとろと春の日のあり母のあり  小林比奈子
  うぐひすのどうやら声の調へり  堀江野茉莉
  時間てふ良薬三寒四温かな  小林比奈子
  木々芽吹き海を遠くへ押しやりぬ  田中ひろし
  春の夜のボディ・シャンプーかへにけり  山本一葉
  春の灯や使ひ慣れたる皿の彩  有馬五浪
  みづからの重みゆらりと寒の鯉  坂本キミ子
  ゆつくりと山空暮るる花林檎  古澤貞夫
  原稿の〆切り近し蜘蛛の糸  田中ひろし

佐藤公子先生・「松の花」同人 選
◎ ケーブルの先端に坐し花の天  山本みよ子
◎ 古民家の敷居の高き端午かな  木村とき江
◎ 兄弟のランドセル鳴るさくらかな  蓮見澄男
  畑を打つ老人大学実習生  田中ひろし
  花散るや豚舎に流すシュトラウス  木村とき江
  初蕨声を集めて摘みとらる  木村多美子
  春コート上野駅いま通過駅  桜井登美
  花の昼誰とも言葉交はさざり  秋山幸子
  春の雪喪の帯解きて今日終る  今井昌子
  氷川丸前方左舷かげろへり  堀部 真
  寝返つて重なる双子四月馬鹿  和田順子
  みづからの重みゆらりと寒の鯉  坂本キミ子
  物言ふと胸あつくなる桜かな  小林比奈子


大会入選句抄(当日句)


山本一歩 選
◎ 江の島の巨いなる岩したたれる  有馬五浪
  久闊の歩を江の島へ花卯木  木村とき江
  武者震ひして鎌倉の青葉かな  小林比奈子
  緑立つ谺の十年祝ぎの風  今井昌子
  島を見て多く語らず風五月  吉田善一
  江ノ島は風の通ひ路夏兆す  岨 静児
  海を見る人を見てゐる夏帽子  妹尾圭子
  江の島を涼しく巡りもう日暮  榊原素女
  島の名の駅に降り立つ青葉風  岨 静児
  ヨット尚群れて夕陽の波がしら  桜井登美

岨 静児先生 選
◎ まぎれなき五月の風でありにけり  大関 洋
◎ サングラス外せば海に染まりさう  小林比奈子
◎ 湘南の海の青さも五月かな  妹尾圭子
  柿若葉江の電大きく曲りけり  芦田みさを
  江ノ島行きバスの通りて風薫る  山本一歩
  延命の鐘つよく撞く樟若葉  蓮見澄男
  祝ぎ歌やとうとう渡る青葉潮  吉川みつ子
  日焼の子砂さくさくと歩きけり  木村多美子
  さざゑ焼く女と交はす浜言葉  田中ひろし
  海を見る人を見てゐる夏帽子  妹尾圭子

大関 洋先生 選
◎ 花海桐空ひろびろと朝の島  大山誠二
  江の電の大きくカーブ夏燕  渡辺時子
  海を見る人を見てゐる夏帽子  妹尾圭子
  螢袋ほつこりゆるぶ猫の坂  和田順子
  輪に列に白帆の殖ゆる卯波晴  蓮見澄男
 ヨットの帆沖にまぶしさありにけり  田村ふみこ
  潮騒の夜に入り行く薄暑かな  古澤貞夫
  枝豆や甲論乙駁きりもなく  木村とき江
  サングラス外せば海に染まりさう  小林比奈子
  鐘鳴つて江の電とほす辻薄暑  蓮見澄男

十周年大会


 「谺」は15年4月で創刊10周年を迎えました。これを記念して、下記のとおり俳句大会を行います。多数の同人、会員諸氏のご出席を頂き、ぜひ成功させたいと思いますので、ご協力方、お願い致します。

            記

○日 時
5月24日(土) 「10周年を祝う会」 18:00〜
              (受付開始17:00)
 25日(日) 「俳句大会」  10:00〜16:00

○会 場   「ニュー向洋」
        藤沢市片瀬海岸1-7-23
        п@046-623-7704

○俳句大会
募集による句会、並びに当日句会(互選)を行います。

特別選者
岨 静児(天平主宰)
大関 洋(時同人)
佐藤公子(松の花同人)

募集句選者
山本一歩、有馬五浪、蓮見澄男、平田雄公子、上林松代、木村とき江、久保川輝昭、古澤貞夫、隅田晶子、妹尾圭子、田村ふみこ、堀江野茉莉、吉田善一

「俳句四季」5月号


「十二句」  山本一歩

朝靄の居座つてゐる雉子かな
つばくろの勢ひ貰ひ損ねたる
消しゴムの丸し蛙の目借時
松風も杉吹く風も春深む
百千鳥戸袋へ戸をしまひたる
春惜しむ鳥のゐる木もゐない木も
聞き役に疲れ八十八夜寒
運は天に任せることに桐の花
力抜きたる郭公の去りたる木
白靴の音のつまづきゐたりけり
人混みにひらりと乗りて梅雨曇
ペナルティエリアに入りし夏の蝶

「谺」の60人

渡り来て戻れぬ橋の朧かな  有馬五浪
登頂の杖をひとまず雪に刺す  秋山幸子
満月に太らせてゐるこころざし  芦田みさを
白詰草撫で休憩の運転手  梅津大八
レモン厚切り忘れたきこと忘るべし  尾崎せつこ
錆しるきアメリカ橋へ赤とんぼ  上林松代
偶数といふやさしさよ枇杷六つ  木村とき江
待宵や稲村ヶ崎影絵めく  久保川輝昭
螢酔ひしてゐし足のおぼつかな  小林比奈子
稲架越しに大きな声を掛けらるる  榊原素女
木の葉散る御廟所菊の透かし紋  坂本キミ子
子つばめに膨らんでゐる話かな  作田和子
鈍行を乗り継ぎ春を惜しみけり  桜井登美
百歳に百歳の見栄秋袷  隅田晶子
拾ひたる落葉の色のみな違ひ  妹尾圭子
深呼吸して早春の堤かな  高山宏和
夏休み終はる三和土の泥掃いて  田村ふみこ
明治座のビルののつぺら冬晴るる  蓮見澄男
黒鳥や風に色なき日比谷濠  平田雄公子
梟の森ことだまをはぐくめる  古澤貞夫
物を干す指先に冬立ちにけり  堀江野茉莉
筍を包みし紙の湿りかな  宮澤千恵子
黄落や昨日に今日の色重ね  森しず子
喉ごしに嵯峨の秋なる豆腐かな  山口正男
春一番喧嘩のあとのやうな髪  山本一葉
四分の三拍子なり春の雪  山本みよ子
五つある帽子の一つ秋はじめ  吉田善一
文学の小道につづく胡瓜畑  和田順子
爽やかや七草紋の壷に耳  渡辺時子
もの想ふ頃のむらさきしきぶかな  家田あつ子
松籟か落葉しぐれか夜の深む  大段博利
雲ひとつなき日の不安枯野行  大山誠二
ひむがしの空に早池峰秋桜  川村住子
かぶと虫骨董市に出されけり  北川寿惠女
初大師五臓六腑を清めけり  木村多美子
くちなしの錆びて夕べを香りゐる  佐藤久子
寝癖つきたる枯萩を抱き起し  田中ひろし
鯉の背のきらりと光る十三夜  中島かおる
葱のぞく女医の買物袋かな  長瀬 雅
いい加減を通して元気寒の晴  似内慶子
瞬間を生きて七十秋の風  羽多埜ふじ江
行列に並ぶと決めし紙懐炉  堀部 真
馬鈴薯の盛上がる葉の上に花  皆川千代子
残り菊和尚は留守であられけり  村田弥寸女
雨傘をすぼめ茅の輪をくぐりけり  森 竹美
雪嶺を沈めみづうみ穏やかに  伊藤弘子
急行に乗り損なひし春の月  今井昌子
旅先の地蔵に手向く野のすみれ  大関千枝子
朗読の一葉時雨きたりけり  太田敏子
秋近し人の気配のやうな風  川辺芳江
折々の花の画集や梅雨ごもり  北川君子
元日や昨日に続く卒寿みち  田代ふき子
木下闇風に人間臭さあり  谷内レイ子
冷まじやアンモナイトの黒い壁  中村洋子
月かげに白萩ゆるる百花園  土方カズヱ
鼻曲鮭吾弖流為の末裔ぞ  松本賀久也
粟飯のむすびを配る神楽宿  村田ヤス
話先のかぼちやの焦げてしまひけり  吉川みつ子
腕白の正座してゐる涅槃かな  吉田朱実
主住まぬ厩の奥も冬日和  両川典子




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