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てのひらに出して大きな枇杷の種 松過ぎの箒あらあらしく使ふ 空落ちて来るやうな雨枇杷熟るる 風鈴の蛇笏の音を吊りにけり 空軽くなりしと思ふ沢桔梗 耳ふたつあればふたつの寒さかな 雪道へ出るための雪掻きにけり 畦道のどこもやはらか祭笛 枇杷の種枇杷の形をしてをりぬ 大き石に大き影ある端午かな 炎天といふ水色の空があり 茸山父の匂ひのしてをりぬ 水澄むや浸して指の美しき ゐのこづち父の背中に移しけり 坂道の木の実転がり始めけり 鉛筆を置けば転がる師走かな 数へ日の日の当りゐる机かな 整然と歌留多を並べ姉を呼ぶ 大寒や外して重き腕時計 白鳥の羽ををさめてより大き かたつむり少し大きな葉に戻す 吊革を握る十一月あたたか 咳一つ二つ両手よりはみ出す 卒業の日の靴揃へられてあり 鳥雲に母の誕生日でありし 紫陽花を力いつぱい見て清し ふつくらの穴子を食べて出れば雨 向う側からも金魚を覗きゐる がちやがちやや勝手口から母が来て まだ売れぬ南瓜が楽しさうに待つ
(平成10年11月1日 谺発行所刊 1,500円)
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