谺諸家1


蓮見澄男


明治座のビルののつぺら冬晴るる
餌台に大鳥小鳥日脚伸ぶ
浜日和ひとつ穴より蟹ふたつ
行者にも似て炎天の亀ひとつ
ジーンズの穴へ台風一過の陽
法螺の音を滝が掻き消す滝開き
北窓閉づ来し方隠すには非ず

吉田善一

たつぷりとある短日のいとまかな
ひねもすをラジオかけおく室の花
家中の時計を正す入り彼岸
吊橋のどこにもふれず夏の蝶
サングラスかけて大きな袋かな
沢水のぞつこんうまし濃山吹
帆船のいま帆が上る端午かな
あづかりし鈴虫五泊六日かな

芦田みさを


若草のはや川風に意に添へり
独活の香の拡がつてきし忌の厨
花ざくろ夕日重ねし色ならむ
凌霄花の火照りをさます夜の雨
人肌のぬくみありけり稲架の径
冬座敷まづは忌明けの風通す

渡辺時子


包丁を当つる決心大海鼠
買物のメモに胃ぐすり花曇
ハンカチを折目正しく旅に出ん
パセリ摘む朝のオムレツ焼き上げて
あの人も猫背寒夜をすれ違ふ
大寒の真正直といふ寒さ

古澤貞夫

遣水の潺々と寒明にけり
喨々と満月のぼる松の花
三伏の闇に水音かよひけり
虹消えて無聊の顔にもどりたる
貞任の柵寒禽の声尖る
凩の木となり星を咲かせたる

宮澤千恵子


冬桜ひそかに期すること胸に
ばら色の電話ボックス薔薇咲いて
ふぞろひの貝の箸置祭笛
秋麗やけりへとにほと眼の検査
割烹着きて左義長の酒を受く
さざんくわの散る山茶花に触れて散る




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