No.27/平成14年9月21日
本日の横変慕






●本日のお題●

赤い椿(つばき)白い椿と落ちにけり

作:河東碧梧桐/新訂 俳句シリーズ人と作品6『河東碧梧桐』1989年3月発行より

 10年ほど前。私が「仕事に人生を賭ける女」だった頃。同じ職場にすご〜〜〜く嫌いな先輩がいた。 そいつは私より5つほど年上の男性で、とにかく自分の仕事のやり方に過剰なまでの自信を持っており、しかもそれを他人にも押しつけるような奴だった。

『私だって自分のやり方で、アンタに負けない成果を上げてるわ!』
 当時そう思っていた私は、何かにつけそいつに逆らった。
 犬猿の仲……。水と油……。同僚たちからは、そう言われていた。
 もちろん、そんな2人だったので上司の配慮から別チームで仕事をする機会がほとんどだった。がしかし、 時に大がかりな仕事の際には、どうしてもそいつとチームを組まねばならず、そんな時は職場内で連日怒鳴り合い繰り広げ、同僚や上司を引きまくらせていた。
 そして当然、それほどまでにウマが合わない奴と、一緒にお酒を飲む気などありゃしない。仕事後の職場仲間揃っての飲み会も、そいつと私は相手と一番離れた席につくのが常だった。仕事を離れりゃ、顔も見たくねぇ! 声も聞きたくねぇ! 嫌い!!嫌い!!嫌い!!

 不思議なもんで、それほど嫌いだった奴と今、夫婦をやっている。私が個人的な都合でその会社を辞めた直後、「ま、あんな奴でも先輩だったから…」とお礼状を送ったことがきっかけになった。

 結婚するまで間、2人の間柄を元の同僚や上司には内緒にしていた。あれほど仲の悪かった2人だ。何となく話しづらいじゃないか。入籍後に簡単な結婚報告ハガキつくり、そのハガキで初めて皆に知らせた。

 元同僚たちから、バカスカと電話がかかってきたのは、そのハガキを送って数日後のことだ。
 私と仲の良かった同期の女性は、電話口で私にこう言った。
「なんで相談してくれへんかったん!」
「ごめん。アンタもあの人嫌いや言〜てたから、話し辛かってん……」
「それで、ちゃんと考えて決めたん!?」
「うん、まぁ。私にしては割と粘って考えたと思うで。だって『結婚せーへんか』て言われてから半年くらい返事引き延ばしてたから……」
「そんな半年くらいでええの! 2年くらい考えて決めた方が良かったんちゃう!」
 言いたい放題であった。

 また、私より一つ年上の元同僚(男性)は、私が新居の電話に「もしもし」と出た途端こう言った。
「うあ〜、Otafukuちゃんが出た〜」
「あっ!もしかして○○さん?」
「そうや。Nさんと結婚したってホンマやってんなぁ」
「うん……」
「信じられんな……」
 そう言ったきり、相手は絶句した。

 そんな中、2人の上司であった、私が誰よりも尊敬する女性だけが唯一、電話口でフツーに祝福の言葉を投げかけてくれた。
「おめでとう。あなた達なら、きっとうまくいくよ。水と油って言われてたけど、今何を大切にすべきかっていう基本的な価値観は、二人ともよく似てたから……。大丈夫。ええ夫婦になるわ」
 とても温かく、うれしい言葉だった。

 先日、久しぶりにその元・女性上司と食事をともにする機会があった。元・女性上司は、かなりお酒を召された後、私に言った。
「Otafukuちゃん、結婚してどのくらいになる?」
「はい。お陰様で今年で8年目になります」
「そう。もうそんなになった。すぐ別れると思てたけど、すごいねぇ」

 みなさまの予想に反し、ウチは今もつつがなく夫婦を続けている。



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