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華奴の「短歌あの日この日」 バックナンバー

2003年6月

             6月30日(月)   

      満月は薄荷の匂いサングラスはずしてごらん確かに匂う
                 小守 有里 歌集 『素足のジュピター』
   
 
    今日は 新月。どんな匂いがする、だろうか。きょう せっかく さわやかおしぼりを作って 冷やしておいてあげたのに、薄荷の匂いが要らん、とぬかしおる。汗ぼとぼとで帰って来るもんだから、気持ちよかろうに。洗面器に水を半分入れて、重曹を小さじ1〜2杯混ぜて溶かし、ハッカ油を 一滴落としたもので、タオルをしぼって冷蔵庫で冷やす。(作り方は赤星たみこの本より) これが ワンランク上をゆく夏のさわやかおしぼり! なんだけどね。おもてなしには いいと思うんだけど、うちのヤツみたいなのもいるのねー、がっかりよ。ぷんぷん。♪あ、ちっちゃいことちっちゃいこと、気にしない、っとお。
    サングラス、日焼け予防には かけたほうがいいそうだ。なにしろ、目は紫外線センサーでもあり、紫外線を感知して、メラニン色素をつくらなきゃって脳が反応しちゃうそうだ。よおーし、サングラスかけよう。(◆へ◆)


             6月29日(日)   

      ためらひとそそのかしとは同時に来ておなじつよさに吾を揺さぶるよ
                 斎藤 史 歌集 『うたのゆくへ』
   
 
    迷う。 


             6月28日(土)   

       髪五尺ときなば水にやはらかき少女おとめごころは秘めて放たじ
                 与謝野 晶子 
   
 
    髪のコンディションだけで なんと気分の変わることか。最近 自分でつくったオリーブオイル石鹸で髪を洗っていて、髪がバシバシごわごわぎしぎしでどうしようかとちょっと憂鬱に思っていた。予約していた赤星たみさんの石っけん生活の本がきて、劇的に問題解決! 髪のキューティクルは アルカリでウロコが開いてしまって、ばしばしにひっかかるようになるそうで、酢やクエン酸でリンスすれば それが閉じるそうだ。で、さっそく クエン酸を最後のすすぎに入れてみた。すると、まあ、なんとなんとさらさらのふわふわのつやつやのイイカンジ。ほんまにカンドウモンですわ。ふとふれる自分の髪がしなやかつるつるしてるというだけで、ああなんとしあわせな気分になることか。洗うときに蜂蜜を頭にすり込んでからせっけんをつけると、泡立ちもよくなるし、保湿にもなってフケ防止にもなるそうで、これもしっとりでイイカンジ。バシバシの髪の毛、どうしようかとほんとちょっとしたストレスだったのが 一挙解決、めでたし! 


             6月27日(金)   

      こめかみを打つたる雨の一滴もたちまちにしてひとつの過去
                 小池 光 歌集 『静物』
   
 
    今というその今はもう今でなし、すでに過去。ぽつっと来たら、あ、過去!
いまに降りそうだなというとき、決まって先に 「お、来た!」というのは ダンナの方だ。ぽつっと来たって。おまえ、わからんやろ、と得意そうに言うのだ。頭頂部の地肌で まっさきにわかるんだそうだ。


             6月26日(木)   

      そら耳か聞きとめて人語にもあらぬ なべてかそけし夜動くものは
                 斎藤 史 歌集 『ひたくれなゐ』
   
 
    夏の夜 床についていると どこからか六甲颪の合唱が聞こえてくるような気がして眠れないことがよくあった。ほんとうに誰かが唱っていたこともあったかもしれないが、そら耳だろう。窓を開けていても閉めていても聞こえるときには聞こえる。どこかのクーラーとか何かの低周波なのか。阪神がエキサイティングな勝利を得た日、ほらほら、唱ってるってば、と。どうも六甲颪に聞こえて、うまい具合に一緒にうたえるようなくらいに聞こえるのだ。そうとう妙な具合で、寝付けない。そんな夜があった。今年は まだ聞こえない。なんだか余裕なんぞ出てきて、だんなもあんまり意気が上がらない様子。ぜいたくなもんだ。
六甲颪が聞こえてきて、一命をとりとめたという人がいる。腰痛持ちで毎週病院に通っているだんなが 去年出会った患者さんの話。脳梗塞で倒れ、意識不明の危険な状態が続いていたが、どういうわけか六甲颪が聞こえてきて目が覚めた、意識を取り戻した、というのだ。奇跡的に回復し、リハビリに精をだしているところだという。元々阪神ファンでもなんでもなかったそのおっちゃん、その後は家族揃って阪神を応援し、信心しているそうだ。


             6月25日(水)   

      耳もちてぶら下げしとき家兎いへうさぎあはれあはれ葱のごときしづかさ
                 小池 光 歌集 『静物』
   
 
    今日 だんなが 自家製だという玉葱をもらって帰って来た。昨日 甲子園に行くというにわかファンに 阪神の応援バットを貸してあげたから。始めて行った甲子園に土砂降りの雨で中止になったのに、たいそう満足して帰ってきたそうだ。奥さんお気に入りの藪投手を間近に見られた、と。 今年の虎はほんまに強い。兎を耳もちてぶら下げる、ああ あはれ。 


             6月24日(火)   

      なに喰わぬ顔して猫が戻りくる角度できみのメール届きつ
                 島田 幸典 歌集 『no news』
   
 
    犬派か、猫派か。わたしはずっと長い間、犬好きで、自分は断然 犬派、絶対 犬よ!! と信じて疑わなかった。顔もネコ科だし、きまぐれなとこもネコやのにね、と言われながら、犬派だった。飼ったことがなく にゃんことお近づきになったことがなかったからだ。にゃんこもだいすきになったのは たまちゃんと出会ってからのこと。たまちゃんは 中宮寺にもらわれてきた仔ねこちゃんだった。(ヒマラヤンの雑種で、大人になって尻尾と足元にすこうしうすく縞が見えてきた。)御前様のかわいいかわいいたまちゃん。御前様がお泊まりでお出かけの時、たまちゃんひとりじゃかわいそうだから 一緒に寝てあげて、とわたしは たまちゃんのお相手役を任ぜられての宿直となった。ちいさなちいさな たまちゃんと夜更けてからも走り回って遊んだものだ。庭のもちの木や藤棚に登って、下りて来られなくなったたまちゃんの救出に大騒動したこともあったなあ。たまちゃん どうしてるかなあ。


             6月23日(月)   

      「きみはきのふ寺山修司」公園の猫に話してみれば寂しき
                 荻原 裕幸 歌集 『青年霊歌』
   
 
    今日の写真、ぐーっと 惹きつけられて 見つめ合っちゃうでしょ。か、か、かわいい。saranさんちの絵夢吉くんと靴下と新聞チラシ、マンションの広告。この脱ぎたての靴下が イイ!! とーっても イマジネーションがふくらみませんか。 猫と靴下と広告で 三題噺 創れそう。お笑いより、メルヘンなおはなしがいいね。絵夢吉くんは 靴下フェチ、だったりして。


             6月22日(日)   

      夏至の日のながき日暮にゆく道の額紫陽花(がくあじさゐは雨に(あたら
                 上田 三四二   

 
    今日は神戸で親戚の結婚式。チャペルから出てきたとき 少し雨がぱらついていたけれど、チャペルの廻りの噴水とスモークとあたりの白さは 純白なドレスを溶け込ませて 雨もそれはそれで綺麗だった。ジューンブライドであるということに加えて、夏至の日の結婚は北欧ではとくに幸せになれると祝福されるそうだ。きれいな新婦と、かわいい新郎だった。学生時代グリークラブにいた新郎とその友達がずらりと並んでのコーラスは なかなかよかった。グリークラブOBって こういうときいいなあ。 


             6月21日(土)   

      しぶとく生きるより(ほかなしと決めてより箸にからまる夏の納豆
                 斎藤 史   

 
    だんなは納豆嫌い。私が納豆を食べるときは 扇風機も回せない。風でにおいがだんなのほうに行くと、クサイクサイクサイーと言われるから。納豆の話はさておき、今日はお箸のちょっと変わった使い方の話。
    あるとき どないしたんや、コワイ顔して、とだんなが言う。こーんな顔してるぞ、とひょっとこのように顔をゆがめてみせるのだ。鏡をみると、ほんまにえらいコワイ顔しているので、おどろいた。自分ではそんなつもりもなかったのに、えらいこわい顔してるもんや。にっこり笑わなくっちゃ、と窘められる。そう言えば、あまり化粧もしないもんだから 鏡もあまり見ない日常であった。それで、最近キッチンのカウンターの上に鏡を置いて、洗い物をしながら自分の顔を見ることにした。そして このごろは 割り箸を銜えて、顔の筋肉の筋トレをしながら 炊事をしている。割り箸一本を 横に銜えて 口角が割り箸にふれないように にーーっと 口角をあげる。だんなが 帰ってくるころも、ちょうど 夕飯の支度時、割り箸を銜えて にっこり出迎える。満足げに頷くダンナもだんなだ。 
    この頬の筋肉を緊張させると 脳には不思議な作用をするらしく、いい刺激になるようで、笑いたい気分になる。鬱気分で 笑えないでいるときにも、エエ方法らしい。そういえば、お寺にいるとき 御前様に「笑いなさい。和顔、笑顔をこころがけなさい。」と言われた。「顔から先で 気分がかえられるよ」と。来るべき更年期にも これで切り抜けましょう。
筋トレの次には、弛緩のええ方法はないかな。鈴木重子みたいな ぽーっとぬけた顔になるには 常人には修行がいるよなあ。 
ちなみに この割り箸筋トレをしながら 鉛筆を鼻に挟むことはできません。


             6月20日(金)   

      かんがへるをりふしの時えんぴつを耳に挟みまた鼻の下にもはさむ
                 小池 光 歌集 『静物』
 
 
    「えんぴつを挟む」 おもしろい生態だ。きっとだれもがやったことあるだろう。考える、頭をつかう、だいじなことだ。ちょっとさぼると 怠け癖はすぐつく。最近 みんななんでも電卓や機械に頼るばっかりで 自分で頭使えへんから、相当 弱ってるなあと つくづく実感することがあった。こないだ阪神百貨店で買い物をしたとき、続けざまに なあんにも考えてへん売り子さんにあたって、考え込んだ。わたしも 売り子さんのバイトしたら きっとこれ こんなあほするだろうなあ。日本人 だいぶあほになってんのやろな。一人目の売り子さん、「こうなります。」と電卓で提示した額は なんと倍額。そんなあほな、これふたつで、9000なんぼになりまっか? あ、すみません、、、と電卓を打ち直す。5000円ほどの買い物に 9000なんぼですって、平気で言うんだからあ。で、また 地下で買い物したら、今度は、半額。700円と740円とふたつ 買ってんのに、レジを一生懸命打ったあと、「735円頂きます。」 おいおい、そんでほんまにええのんかい? 「あの、これとこれ」  売り子さんも それはわかってて入れたつもりなのにね、操作ミスで 700円だけになっちゃったわけよね。素うで考えても、気いつくはずなんやけど、馴れへんもんやから 操作のほうに気がいって、そんなことには頭が働かない。 わたし、算数弱いから、あんまりなんも考えてなかったけど、ちょっと計算もしてみなくっちゃ、言いなりのお金払ってたら エライ目にあうねんな。えんぴつ鼻に挟んで、頭つかうこと思い出しましょっと。
    かといって、頭を信じて手帳を確認しないと昨日のように失敗する。朝にはまだちゃんと3時の約束だと思っていたはずなのに、いつどこでどうなったか3時半の思い込みに陥っていた。数日前の約束が半だったので、それが蘇ったのか、ともかく奇妙な動きをしてしまうわたしのこの頭、要注意なのだ、やっかいなの。  


             6月19日(木)   

      地の底のヒエラルキーを出できたる兵士が被る霧キンチョール
                 小畑 庸子 歌集 『梧桐』
 
 
    そういえば うちには霧のキンチョールはない。キンチョーリキッドはあります。あのコマーシャル おもしろいよね。…… 途中ですが、これにて失礼。タイムオーバー。ぼかん。


             6月18日(水)   

      みじろぎもせず食卓にゐる蠅は枇杷のたねくらゐにも大きくなれり
                 小池 光 歌集 『静物』
 
 
    蠅が枇杷の種くらいになるって たいへんだあ。まるでごきぶりじゃないの。蠅を目の前にして、一瞬息を止めるように、動きが止まってしまうようすが浮かんでおもしろいな。視点はぐ〜っとズームアップして蠅が大きくなってしまいました。わかります、これ。
うちは 部屋に蠅が入ってくることは ひとつの事件で、外に追い出すまで しばしひと騒動する。ベランダ側の窓に追いつめて 外に追いやるのが常套手段だ。たいていは こっちの意志が通じるのか、(まさか)思うツボ。早々に出てって頂くことに応じてくれる。うちの中にさえ 闖入しなけりゃいいの、どこへでも行くがいい、とっとと出ていきやがれー!
今年 初めての枇杷を食べた。だんなさまは 枇杷はこちらで剥いて差し上げなければ 召し上がらないので、難儀なフルーツのひとつだ。でも、八朔とか伊予柑とか柑橘類は いつもだんなさまに剥いて頂いているので仕方あるまい。みかんはいつも 剥いたものを半分横取りするのがならわしである。


             6月17日(火)   

      ごきぶりをみればかならず撲殺し女になりてゆくむすめたち
                 小池 光 歌集『静物』
 
 
    幸いなるかな。私は ごきぶりさんとの対決はしないまま今に至っている。実家では 母さまのスリッパ攻撃はりっぱなものだったので、きゃーと叫ぶだけでよかった。結婚してからは 新築マンションであまりお目にかからない。(というのも、けっこうコワイ話だ。ごきくんも シックハウス症候群になるから いやだって?!)何度か出てこられた日には だんなさまがなんとかしてくれるので、きゃーと叫ぶだけでよかった。その後 ホウ酸団子を置いただけで、私は自らは手を下さない、汚さない。ベランダに ぺたんこの脱水状態ごきくんがいたことがあった。外への締め出しには成功したらしい。うちから退散したごきくんは、隣にいくのかもしれない。罪なき吾と思いて良しや。

黙殺の後にホウ酸団子置き黒き弱音を街に放ちぬ /華奴


             6月16日(月)   

       剥がされしマフィア映画のポスターの画鋲の星座けふも動かぬ
                 荻原 裕幸 歌集『青年霊歌』
  
 
    パソの画面 ずいぶんと汚れてますねん。おや、甘夏の果汁でもとんだのか。北斗七星!


             6月15日(日)   

      二十分冷房電車に立ちをれば弓張月がくるぶしにひそむ
                 多田 零 歌集『茉莉花のために』
 
 
    今日は 吹田市短歌大会の講演を聴きに行った。 阪急吹田駅前のメイシアター。クーラー効きすぎて さぶかったのだー。休憩のときに 口々に寒いね、足冷えたわー、と言い合っていた。弓張月がくるぶしにひそむ。 ぱりんと割れそうな ちべたーい ほそーい月。
講演は とてもおもしろかった。タイムリミットゆえ明日に。 


             6月14日(土)   

      思い出を確かめながら渡る橋バックシートにCDなげて
                 江戸 雪 


    同窓会の時の写真が CDに編集されて送られてきた。なるほど気の利いたことをやってくれるじゃないの。あーしかし。いつも「ほんまに写真映りはええなあ」、と言われるのに、こりゃだめだ。しっかり そのまんまの河童かびゃこ ぶっこちゃんが映ってました。やだねったらやだね。


             6月13日(金)   

      「酔ってるの? あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」
                 穂村 弘 歌集 『シンジケート』


    ふらここ 見てるよって うれしいメール。どれが華奴の素顔かいな、って。そうやねん。ブーフーウーのブーだし、フーだし、ウーやねん。桃尻滅裂。あなたの知っている華奴は ブーですか、フーですか、ウーですか、ピーですか、ポーですか、パーですか? カーカーカーキーキーキー 和歌山のかき〜。 


             6月12日(木)   

      水無月の光を曳きて雨は降る水から生まれしものたちのため
                 今野 寿美 歌集 『若夏記』

 
    建物の中にずっといると 雨が降っていたことにだれも気が付かなかった。夕方 作業が終わって下に下りたとき、みんなくちぐちに言った。えー、雨降ってたん。わーどうしよ、洗濯もん。わたしもおどろいて叫んだ。 「あ゛ー 洗濯モンどうしよ!! あ、今日 洗濯してないわ。」(^_^;) 


             6月11日(水)   

      箸先に蟹の身挟みふたり子のあけたる口へ交互におとす
                 間瀬 喬子 歌集 『緋の尾』

 
    今日の夕食、広告の品 香住産蟹身だったもんで。この歌、かわいいね。雛のようにならんで待ってる。蟹身のふるふる細く白いのを箸で挟んでいるあやうさ繊細さ、乳児のちいさな口とか乳臭いガーゼとか浮かんでくる。
    蟹で思い出した話がある。南方熊楠の話。「一匹の蟹が 脚がとれた別の蟹を助けて連れ去った」という『互助論』を読んだ熊楠は、あるとき それを確かめる機会が訪れた。自室の前の小川の蟹に礫を投げて負傷させた。すると 本当に別の蟹が現れて、負傷の蟹を親切げに抱えてそぞろ歩むのだ。その友愛の様に これはこれはと いたく感動した。ところが、ところが、よお見たら、そいつ食うとるやないかい! 半死の蟹の傷に口つけて、食いながら巣に運んどるやないかい!なんと共食い。
    『互助論』を書いた学者は シンパセティック・ファラシー(感情移入による誤謬)に陥っていたということ。自分の気に入るように解釈してしまったら真実に遠くなるわけやね。
    誤解でも そのほうが幸せということもあるけどな…。幸せな誤解が 自分だけでなくて万人が幸せならいいかな。いや待て、ほんまにそんなんあるんかいな。真実が曲げられるのは やっぱりどこかで誰かが痛いに違いない。
話は いったいどこへ行きますやら……    (参考 )鶴見和子の『南方熊楠 地球志向の比較学』


             6月10日(火)   

      誰をらぬ夜の校庭の月光のおのれ見失ふほどに明るし
                 伊藤 一彦 歌集 『柘榴笑ふな』

 
    毎日新聞の今日の夕刊に「公立中学校で 校舎ガラス割り急増」の記事。
80年代は 教師に不満 ツッパリが集団で
現在は   自分に不安 孤立化映し単独で
という見出し。

校舎のガラスを割るというような歌が確かあったのだけれど、ちょっとインパクトがあったなあという記憶はあるんだけど 誰の歌だったのか思い出せないもどかしさ。どこで見たのか。いつ頃のどんな歌だったのか見たいのになあ。 


             6月9日(月)   

      身を細めささやきあひてゐるやうな自転車置場雨の香はする
                 永井 陽子 歌集『小さなヴァイオリンが欲しくて』

 
    今日 マンションの駐輪場に放置されていた自転車9台が回収されていった。撤去の告知後も放置されたままの自転車。管理組合の理事長さんが骨を折って、あちこちに問い合わせたり手続きをして、ついに お迎えの車が来たのだ。私は たまたま 向かいのポストにはがきを出しに下りたときに、理事長さんが自転車をひっぱりだして回収に備えているところに出会した。ご苦労様です。「あ、来たきた、あの車ちゃうか。」と 理事長さんの奥さんが言った。私はすぐひっこんでもいいようなものだが、なんとなく 見届けなくちゃいけないような気がして 一緒に見送った。ずいぶん長い間ほったらかしにされて 埃をかぶってはいるけれど、まだまだしっかりした自転車も多い。もう乗れないようなポンコツもあるけれど、まだ新しいこども用のマウンテンバイクもある。みんなみんな 置き去りにされた天涯孤独のみなしご達。警告の赤紙つけられて片寄せられたみなしご達は 夜々に囁き合っていたに違いない。ぼくたち どうなるんだろう、って。とうとう、環境事業局の職員さんに抱えられ 車に乗せられて行っちゃった。なんだか 無縁仏を見送るここちだったよ。どこかにひきとられてまた風をきって走る 新しい生活が始まるといいね。
しかし なんでやねん! なんでかわいい自転車くん ほっとくねん! 人任せかい!?
あー しかし ちょっとスッキリしたわ、駐輪場!!



             6月8日(日)   

      はっとペニスを抜くとこなんかあいやその歌舞伎俳優めいて、泣いちゃう
                 加藤 治郎  「スプーンフル」

 
    幸ちゃんの童話「賽の河原の午下がり」に出てくるお地蔵さんのセリフに「その心残り、地蔵が当ててみしょうか」というのがある。知らざあ言って聞かせやしょう とか あいや待たれい、とかの歌舞伎のせりふを思い出して、そっから このおもろい歌があったのを思い出した。こんな歌 そうそう出るチャンスがないから ここで出しておこう。


             6月7日(土)   

      児童図書に読めるかなしきものがたり象つかひゆゑ象に踏まれぬ
                 小池 光 「春片々」

 
    幸ちゃんの童話「賽の河原の午下がり」をアップした。赤ちゃんは 確かになんでも知っている。この物語の赤ん坊のように。昨日、バスで会った赤ちゃんは ますますそう思わせた。とてもかわいい赤ちゃんだった。ふっくら西洋画の天使のようにぷくぷくで、ベビーカーに手足をばたばたして。見つめると きゃっきゃと 機嫌良く笑ってくれる。なあんてかわいいのだろ。ずっと なにか 語りかけてくれる。神々しいような存在感。惹きつけて離さない。じっと目が離せなくなる。なんかすごい教祖さまの教えを ひかりを頂くような 敬虔なこころもちにとらわれる。すごいなあ、こういうのをオーラっていうのかな。その子のお母さんとおぼしきひとは、外国人。アジア系なのか、ラテン系なのか私はそういうの弱いので、わからないけれど、ブラジルとか中南米っぽい気もする。ふたりの女の人が、何語なのかこれまたわからないけれど、けっこう声高にしゃべっていた。かなりおおらかに笑ったり、気が付くと感情失禁というか涙しながらであったり、ふたりは激情に任せて語り合っていた。ベビーカーの赤ちゃんは そんなことおかまいなく わたしに説法をつづけ 愛を放っていた。でも赤ちゃんは お母さん達の涙するようなかなしみをなんにも知らないんじゃなくて なんでもわかっていそうだった。 


             6月6日(金)   

      空壜捨場に下りゆきし看護婦がつぎつぎに思ひきり叩きつけてゐる音聞ゆ
                 上田 三四二

 
    今日は 義母について病院へ行った。きのうの話の流れから医療過誤を思い出す。私が日々繰り返すうっかり事件は ナースの仕事に置き換えたなら、いったい何人殺しているだろうか。あなおそろし。幸いナースになりたいなどとだいそれたことは一度も思ったことがなくて本当によかった。
血液内科の廊下にゴミ箱が据えてあった。「針のみを入れてください。」と書かれてある。男の人が、歩み寄って 紙袋からざざっと注射器を放りこんだ。あ、そうか、インシュリン注射。ちょっと衝撃的な光景だったわ。義母も「用心しないと 注射になりますよ」、などと言われることもあるという血糖値なので、ぎょっとした。骨と皮のどこに毎日針を刺せというのか。


             6月5日(木)   

      あなと思ふとたんに中身破れ落つ紙の袋をいだき来つるに
                 林 安一

 
    このごろいよいよぼけちゃって…、なんて話題もよく盛り上がる。ボケ自慢は楽しい。ちょうど母くらいの年齢の人が、スーパーで買ったものを置き忘れてきて、翌日のお昼にさあ食べましょうという段になって気が付いたという話。私のように そんなこと日常茶飯にやってきたようなひとではないから、「あらまあ、ほんとうにどうしましょ、私としたことが」と それはきっとショックだろうな。でもでも、みんなくちぐちに あんなことこんなこと言い始めるの。子どもになにか言って、「え?なに?」と聞き返された時点ですでにもう「え?かあさん なに言ったんやろ。」と 自分の言ったことに覚えがないというショックを訴えたり。知っているはずの単語が思い浮かばないとか。それ、最近大ありですわ。メモリに残っていることはわかるんだけど、どうしてもアクセスでけへんのんよ。「若いあなた達でもそんなことあるのねえ。」大アリでんねん。こんなんええんかい?! ちとはやすぎると思うんやけど。そのへんは 問題ありやなあ。
それに こんなことは常習。きのう阪神のデパ地下で だんなの好物いか焼きを買うのに 長い行列に並んだ。ようやく先頭に辿り着いた私は お金を払って立ち去ろうとしてしまった。おっと〜、なにしてんねん、募金するためにならんでたんちゃいまんがな。よくぞ、自分で気が付いた、エライ! ほかほかのいか焼きを受け取って帰りました。めでたしめでたし。このしっとりほかほか、これ紙袋だったら やぶれるよなあ、、、と思いつつ。


             6月4日(水)   

      思出の中にたふとく金色こんじきすロダンとりしアトリエの秋
                 与謝野 晶子

 
    今日は 兵庫県立美術館に行った。秋野不矩展。会期のぎりぎりセーフ、見に行くことができた。「アフガニスタン風景」の空の色。「カミの泉U」の泉の色。「雨雲」「渡河」の迫力。どれもやっぱり画集とはちゃう。ことばにできない。


             6月3日(火)   

      五線紙にのりさうだなと聞いてゐる遠い電話に弾むきみの声
                 小野 茂樹

 
    電話をかけるとき、緊張しながら声のトーンは幾分上がる。相手が何者とも知れぬでんわを受けるときは 緊張しながら固くこわばってトーンがうんと下がる。昔は 家庭の電話に出るときも 「はい、○○です」とみずから即答で名乗るのが常識だったが、只今の常識は 受け手は安易に先に名乗ってはいけないことになっている。というのは、悪意を持った相手からかかってくることがあるから。○○さんですか、と言われてから ハイそうです、と答える。わたしが こんなに電話嫌いになったのは、いくつかの悪戯電話にほとほと懲りたからということもある。いまなら こっちがなぶってやるのもおもしろいだろうが、当時は純真でコワイ思いもした。笑えるスケベ電話もあった。引っ越して電話番号が変わったときのこと。
「お宅の番号 オ○ニー!!オ○ニー!!」と叫ぶ電話。
そう。よく考えると、うちの番号 0721 だったのだ。 ひー、こら かなわん、と思って、すぐ番号替えに行ったよ。 お金かかったわ。ひー。 


             6月2日(月)   

      そんなこと言われたかて全然思い浮かべへんやからしゃあないやん
                 大阪府 長迫 真平 大阪府立久米田高校
                  第九回「与謝野晶子短歌文学賞」青春の短歌 益田青年会議所賞


    選者 今野寿美氏の評
「国語の卒業課題で一首詠むはめになり、うんうんうなって苦し紛れに発したぼやきがそのままほほえましい短歌になった。飾らず気取らず率直で、こんなところで意外に心をとらえる大阪ことばがなんとも楽しい。」

ほんま これええわあ。「そんなん言うたかて、せんせー、なんも浮かべへんわ。なんでもええっちゅうたかて、なんも出てけえへん。」とかなんとか、もうほんっとにこまったんだろね。おもろいわあ。青春の部は 学校から応募するケースが多いから、ほんとにこんなふうに困ってしまう子も多いんだろうけれど、これはやったぜ、おもろい。賞なんかもらっちゃって、本人がいちばんびっくりしたかもしれないね。でも、はからずもこれこそが 短歌ってこれでいいんだよ、これなんだよ、って短歌の真髄を示すことになったのね。この長迫くんにとって、この受賞はどんな意味を持つことになるだろう。短歌に興味を持って、関わっていくだろうか。たとえそうでないとしても とても大きなことに違いない。

昨日は 一般の部の受賞作を掲示板に書いたけれど、青春の部受賞作をここに紹介します。
青春の短歌賞
(大学生の部)
ブランコを大きくこいで離した手あの頃僕は天才だった
    宮城県 高橋晃 東北大学大学院

(高校生の部)
すぐ捨てる現代いまでも私のこのうたは因数分解されても消えぬ
    京都府 鈴木あゆみ 立命館宇治高校

(中学生の部)
真冬の夜〇.二秒の流れ星恋を願うには少々足らぬ
    静岡県 富山芽衣子 富士宮市立大富士中学

大阪府知事賞
試合前ほどけてもいないくつひもをギュッと結んで 恋にピリオド
    沖縄県 池村真理野 宮古高校

産経新聞社賞
剣道場毎朝開けに来る僕をいつもより寒く待っている今日
    千葉県 大崎郁臣 佐原市佐原中学

堺歌人クラブ賞
坂本のその顔見ると元気出る死んだ親父にうなじがそっくり
    長野県 佐藤雄亮 松本市立丸ノ内中学

天草町賞
助走をつけてハードルをひとつひとつと飛び越えていけばいいのだと春
    東京都 萩原慎一郎 私立武蔵高校

山城温泉観光協会賞
図書館の2階窓ぎわ6番目見おろす桜は全て私の
    埼玉県 渡邊 恵理子 跡見学園女子大

「城崎百人一首」姉妹賞
笑顔足す冷めた会話の公式を黒板無視して解いている午後
    北海道 石田真衣

全国万葉協会賞
負けた時泣いていたよねそんな時いつも一緒に泣いてくれたね
    奈良県 里川 由貴 立命館宇治高校


             6月1日(日)   

      図書館の扉をひけば外は雨セルバンテスを抱へて走る
                 東京都武蔵村山市 薬師寺 陽子
                  第九回「与謝野晶子短歌文学賞」文部科学大臣奨励賞


    今日は 第九回「与謝野晶子短歌文学賞」の大会で、太閤園へ。またこれも あやうく 忘れかけていた。ぎりぎり前日に思い出すというあぶないあぶない。こないだは 島津先生の講演聴きに行くって言っておいて 夜になって思い出して、たいそう悔しい思いをしたのだ。あとから、よかったよおお、って聞いて、ああ、しくじった、と。
    「与謝野晶子短歌文学賞」全国4092首応募の中から選ばれた文部科学大臣賞 選者賞 産経新聞社賞等 各賞の表彰と選者 篠弘 河野裕子 伊藤一彦 各氏のお話、永田和宏氏の短歌ワンポイントアドバイス、尾崎左永子 安永蕗子 両氏が晶子を語る。この豪華メンバーに惹かれて私も応募した。どの歌をだしたのかもすっかり忘れていたのだけれど、わたしの歌も入賞はしないが入選を果たしていた。産経新聞に載っていたらしいが、私は、向こうに着いて選歌集を見るまで、ちっとも知らずにいた。水甕のお仲間何人かも入選していたが、入選した人は みんな電話がかかってきていたそうだ。え?
    よくよく考えると、あれだったのだ。うちの電話、いつも留守電にセットしっぱなし。いたずら電話と勧誘電話、間違い電話にこりてるので、登録以外の電話番号は たいてい放っておく。ほんまになんか用があったら留守電にひとことなんか入れるやろ、と。カンにたよって これは、というのだけをとるのだけれど、たまに はずれてとるべきでない電話をとってしまう。なにかの名簿でかけてきた業者のセールスの電話。マンションどうや、とか、いろんな通販とか。そういうときは
「おかあさんいますか? 」
「だれもいませーん。」
「何時頃お帰りですか?」
「わかりませーん。きりんさんもぞうさんもアリさんもすき!」とか言って切ってまうの。しーっつこいしーーーっつこい通信教育勧誘の電話をほんとに何十回と根比べのように「決して取らない」ということでようやくのりきったこともある。ナンバーディスプレイは 重宝だ。そういう番号は 控えておいて、とらない。で、最近の着信履歴を見てみると そうだ、これだ、産経新聞から何度かかかっているじゃないの!!
    太閤園に向かうとき、JR東西線の大阪城北詰駅の階段近くで伊藤一彦氏がおひとりで歩いていらっしゃるのをお見かけした。わたし 伊藤先生の選で入選してるって知ってたら、ぜったい思い切って お礼のご挨拶させてもらったのになあ。奈良の講演もお聴きしましたと、太閤園までの数分間お話できるチャンスだったのになあ。なにもないと なかなか踏み込めないけど、選に入れていただきました、というのはめっちゃ ええきっかけやのになあ。あーあ、チャンス君は やっぱり つるっぱげ。

    で、思った。何かを拒むということは、何かを逃す ことでもあるのだ。そういえば、以前にこんなことがあった。落語のチケットがあるのに、たしかダンナが急に用ができて行けなくなって、慌てて誰か行けへんかーと電話をかけまくった。そういうときは 留守電だとなにも言わずに即切って次をかける。そういうラーッキーチャンスの電話ってこともあるんだよなあ。

ちなみに わたしの入選歌は これでした。 
満々と水泳帽に水満たし水ごと被る玉のおのこは