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華奴の「短歌あの日この日」 バックナンバー

2003年11月

             11月30日(日) 

      みづうみに鴨はねむりてこの夜の星の眉引まびきの荒くありけり
                 山中 智恵子


     地球外文明探査(SETI)計画はなぜ行われているのか、とその意味を問われるならば、
(1)未知のものを知りたいという純粋、素朴な好奇心
(2)戦いの歴史である地球文明を自己破滅の危機から救うためのヒントの模索
(3)そして、すでに宇宙への進出をはじめてしまったことへの責任
 佐治晴夫著 『宇宙はささやく』より

この地球上に存在するすべてのものは 私たちのこの肉体も例外ではなく すべては星のかけら、星のひとかけらなんだって。そうだよなあ。昨日テレビで見た少女。13年間父親に ひとつの部屋に閉じこめられていた少女が救い出されてのち、プラスチックの物に異常な執着を示したという。プラスチックの箱と糸巻き、それがその部屋にあった唯一の物であり、好奇心や慰めとなる対象物だったからという。なんというせつない思いだろう。今まで わたしにとって プラスチック って いちばんチープでつまらなくて、無機的で、海岸に寄せるプラスチックのゴミの山も、忌まわしいものにしか見えなかった。物の価値、概念なくしてものを見ることができないからなんだよな。


             11月29日(土) 

      おおぞらの芯澄みてゆく二日三日仰げと柿の実りは高し
                 三枝 昴之


     今日は 雨。今うちの窓からいちばん目立つもの。向かいのお寺の柿の木が たくさん実をつけていて そのあたりが雨の下にもとても明るい。柿の実りを見下ろしているわけだ。
柿を皮を剥かずに食べる方法。そんな横着な方法、斑鳩町法隆寺在住のおばちゃんが教えてくれた。おばちゃんといっても親戚ではないが。りんごのようにかじれ、というのではない。ぷにぷにになるまで熟してから、スプーンで食べるのだ。このジャムみたいになった柿をヨーグルトに入れて食べるのもおいしいよ。しかし 柿の好みは 固いのがお好きという人も案外多いようだ。


             11月28日(金) 

      われの内部の妬心覗いてしまいたる蛇苺踏みても踏みても紅し
                 平井 弘


    ちょっと洗濯物を畳む間だけ、のつもりがとうとう見入ってしまった。いつ録画したのかも忘れていた映画のビデオ。
「スターリングラード」。ラストに近いシーンで、ダニロフが語る。

わたしは愚かな男だ。人間は変わりっこない。変わるなんてありえない。
我々は隣人をうらやむことのない平等な社会を築こうと努力してきた。
でも、羨望は人の常だ。
微笑み。友情。
人は自分にないものを欲しがる。
人の社会では このソビエトでさえ、富める者と貧しい者がいる。
才能のあるもの そうでないもの
愛される者 愛されない者

ターニャはもう戻って来ない。彼女は死んだよ、ヴァシリ。
砲弾の破片にやられて即死だった。感じるひまもなかっただろう。
フィリポフさんを舟に乗せ、引き返そうとしている矢先のことだ、
君のところへな。
ターニャは正しかった。君はいい人間だ。
最後に君のために役に立たせてくれ、せめてもの償いだ。
ケーニッヒの居所を探る。

       止せ、やめろ!! ヴァシリが叫んだが、
       ケーニッヒの撃った弾は ダニロフの額を撃ち抜いた。


             11月27日(木) 

      ふるさとの訛りなくせし友といてモカ珈琲はかくまでにがし
                 寺山 修司


こないだ 私の愛車 ちゃりんこちゃんの様子がおかしいので 診てもらいに行った。ちょうど2年経ったくらいでまだ新しいのだけれど、ブレーキがヘン。ブレーキかけてから、それが元に戻らなくなる。で、今日は メーカーからブレーキが届いたので、交換に行った。交換には時間がかかるというので、近くの国道沿いの喫茶店を教えてもらってそこで時間をつぶすことにした。その喫茶店、まさに20年以上前にタイムスリップしたような空間だった。奥行きがある。奥に行くほど暗い。壁は煉瓦で、椅子はゴブラン織りのような布張りで、そして、テーブルは なんとテレビゲームなのだ。うわあ、こんなとこまだあるんだ。さすがに、インベーダーゲームではないけれど、こういうの健在なんだなあ。音楽は モンキーズのナンバーとかビージーズとかかかっていて、なんちゅう懐かしさ。昔は こういうとこに 高校生なんかが屯してたんだよなあ。煙たい鬱屈の巣窟。あのころは珈琲は苦かったなあ。今は 定年退職後らしきおっちゃんらが数人くつろいでいた。


             11月26日(水) 

      月のおもて寂しき隕石のかげ曳くを思いて眠る
                 近藤 芳美 歌集『流星群』


今日は 月齢2.2 細い月。もう見えないと思ったら 月の入18:50 


             11月25日(火) 

      今地上のいずくの深夜一瞬の死に襤褸のごと土嚢のかげの死
                 近藤 芳美 歌集『流星群』


先日「未来」の真鍋三和子さんのお話を聞く機会があった。 近藤芳美氏の身近なエピソードを伺うことができた。その話はまたこんど。 詩のボクシング がんばってね、なんて言っていただいたんだけどもね、はは。

     近藤芳美 未来 2000.9「作歌机辺私記」より抜粋
「詩」が何かをいうため、わたしはそれを「こころ揺らぎ」のようなものとして語ったことがある。或いは、もの、ことに触れ、子のよろこび、悲しみであるものに、人にまして痛みやすく、揺らぎやすい魂の、その表出であるのかもしれぬ。それは当然ナイーブであるものであり、究極には単純であるべきものかもしれぬ。そうしてわたしたちは、多くの場合、本来は少年少女の日に、自覚するか否かは別として、一度は分け持ったことがあったのかもしれぬ。 以上引用

そんで、ちょうどこんなのに出会いました。

             「アリくん」    まど・みちお
         アリくん アリくん
         きみは だれ
         にんげんの ぼくは
         さぶろうだけど
         アリくん アリくん
         きみは だれ
         アリくん アリくん
         ここは どこ
         にんげんで いえば
         にっぽんだけど
         アリくん アリくん
         ここは どこ


             11月24日(月) 

      太陽がほそる日の暗がりにアステカ文字の破片散らばる
                 小林 幹也 歌集『裸子植物』


     今朝は 南極での天体ショー、皆既日食。太陽と月と地球が一直線に並んだ。ペンギンたちが 鳴いた。いつか生で見てみたいもの。オーロラと皆既日食。壮大なる出逢いに立ち会いたい。
昨日のいろいろな人や作品との出逢いにも乾杯。作品にもふれなければとは思いつつ、初参加で実を言うと どきどきのまま作品を楽しむ余裕もあまりなく、、、、。 詩のボクシングって、座の文学連歌みたいに その場の参加者、観客、審査員、レフリー、スタッフみんなの ライヴなこころ揺らぎ 緊張感 が醍醐味ともいえるんかもね。楠コミッショナーは 負けてどう感じるか、悔しいと感じろとばかりに焚き付ける。負けることによって、また自分を、自分の作品を考えるおおきなチャンスでもあるのだと。人はかわってゆく、変われるものである、と。そう、地球も月も刻々と動いているように、人はみんな いろんな関係性の中で刻々と動いているんだもんね。わがことのように一緒にどきどきしてくれた友達が たいそう悔しがってくれるが、私はまだピンときてない。が、ちょっとしばらく詩ボクのことはおあずけ。なにしろ、また次のことでお尻に火がついた。よその支社からお声掛けいただいた原稿の締切が!! いざ 急転換モードチェンジ!


             11月23日(日) 

      ゆるされてわれは生みたし 硝子・貝・時計のやうに響きあふ子ら
                 水原 紫苑 歌集『びあんか』


     詩ボク敗北!
今日は 貝塚コスモシアターにて 詩のボクシング 大阪大会。朝から キモノ着て、頭セットして、気合い入れてノリノリでのり込みましたがな。ほんで、一回戦 判定4−3で負け〜! きゃん(>_<)  え? こんで終わり? こんだけテンション上げて来たのに、もう終わりかいな。 敗者復活戦出場のチャンスが与えられるか否か、に望みをかける。会場の観客によって選出されるのだ。どきどき。祈る。「大丈夫。わたしは地球。いつもツキがついてくるわ。」と言い聞かせる。そして……。ヤッター! 敗者復活戦 出場権獲得。みなさん おおきに〜。しかし、しかし、対戦相手は、、、、、、よりによって一番避けたかったボクサーだった。、、、、、負けた。結局彼女が勝ち残ってチャンピオン、だもんなあ。黒星ふたつ まっくろくろすけ。ツキは 確かにあった。せやけど、よお考えたら 今日は大潮 新月まっくろだったのだ。月に願かけてもあかんはずやわ。

詩のボクシングとは 16人のボクサー全員でつくりあげるもの、という楠コミッショナー。なるほどなあ、ほんまやなあ。それぞれに色とりどりのボクサーがいて、観客はその対戦を楽しめるが、勝ったからと言って、チャンピオンだからと言って、チャンピオンが独演会を開ける力があるというわけでもない、という。なるほど、全員でつくる。ということで、わたしも しっかりそれなりの役所を果たせたのではないかと思う。観客それぞれのこころの中で、それぞれの作品が響きあい、詩のボクシングという場が成立する。

     詩のボクシング、このふざけた、大のオトナが大まじめに真剣に遊ぶゲーム。ボクサー16人と観客とで創る世界。参加することに意義がある、なんてそんなくらいの気持ちでやるんじゃなくて、やるからには真剣勝負で 勝ちたい勝つつもりのファイターにならなければおもしろくないし、さりとて ボクサーは勝ち負けとかルールとかへんなところにこだわるような了見では 望ましい場は創れないもの。さて、今日のヒーローは だあれ? レフリーの都んぼさん? だったりして。ゴングが鳴ってリングを下りるときの その後ろ姿に現れた人間性に感銘を受けたという、楠コミッショナーの名言。芸も後ろ姿に出るんやろなあ、と。「そうかあ、後ろ向いて 落語せなあきませんね。」と都んぼさん。まだまだ いっぱい書きたいことあるけど、とりあえず、いろいろ あーおもろかった。見にきてくれたみなさま おおきにい。


             11月22日(土) 

      うまとのわかちを聞き知りて驢来り騾来りうま来り騾と驢と来る
                 土屋 文明 歌集『山下水』


     Joba がやって来た!

今日ついに わが家に Joba がやって来た。松下の乗馬フィットネス機器。人気商品で入荷待ちだったの。ダンナが腰痛治療のために購入。わたしも バックシャンをめざすのだ。それに ぽっこり下腹の腹筋を鍛えて はけなくなったパンツをはくために、がんばるぞ。なんかけっこう楽しいのだ。昔スーパーの入り口とかデパートの屋上によくあった、コインを入れて乗る動物みたいなもんで、なんか楽しいの。これが、けっこう効くー。なめとったらあかんなあ。さっそく筋肉痛。最初から ちょっと速めでやってみたら、すぐに腿がだるうなってきた。ゆっくり ぽっくりぽっくり歩かせても しばらくやってると こたえてくる。ちょっと乗っててこんなにしんどいのに、三蔵法師はすごい。


             11月21日(金) 

      何の鳥の落羽おとしばひとつてのひらにたかき詩片のごとく賜る
                 斎藤 史 歌集『渉りかゆかむ』


    今日は 落ち葉の降る中 義父ちゃんとふたりで座っていた。バス停のベンチで 公園の欅が胴震いするのを見ていた。 帰りは 血糖値が高いし 運動せんとあかんと言われたので、歩かなあかんで、とひっぱって平野公園の築山に上った。「こんな山登り もう長いことしてないで。」 たまには 変わった景色も見たらええねん、とひっぱる。リハビリ、リハビリ! 「こんなんワシ よう登らん。」 いけるいける。ちょっと階段あるだけやん。無理矢理やなあ、はは。ひきずって登る。上のベンチで 「休憩や」と言って、タバコをふかす義父ちゃん。鳩がいっぱいおるなあ。あ、なんの木やろ、これ。青い実 銜えていったで。なんか鳥がいっぱい鳴いてるで。鳥の声 聞こえてる? 「あほ、そんなん聞こえるわい。耳はええねん。」 うそや、あかんわ、お医者さんの話し聞こえてへんかったやんか。適当なこと言うてたやん。
だいぶ、耳は遠くなっているから、どんなふうに聞こえるのかな、とふと思って聞いてみたのだけれど、鳥の声は聞こえる周波数なのだろうか。結局 私もそのときにならなければ わからない、よな。そのときになって、誰かが、鳥がいっぱい鳴いてるよ、と教えてくれなければ またそれもわからない、か。 下りるとき、「こっちの階段 こらまたコワイなあ。わし、あっちから下りるわ。」 いけるいける、ゆっくりまたいだらええねん。たまにはな 緊張感味わわなあかんで。 「こら、わしには緊張しずぎるわ。」 はは、無理矢理フォークダンスしながら下りていったのでした。


             11月20日(木) 

      佐保・富雄・高田・葛城・蘇我・飛鳥・寺川初瀬川吾がまちで合う
                 植村 朝子 (花野 第17号)


    クイズ! 全部 川の名前です。吾がまちは  どこでしょうか?


             11月19日(水) 

      ひめゆりの塔のましたの洞窟に涙のやうな水たまりをり
                 片山 節子 (花野 第17号)


三線さんしんに「すべての武器を楽器に」と喜那省吉のつづく熱唱

「武器溶かし平和の塔を作る」とふ喜那省吉と熱き握手す

                                  片山 節子 

今月のML歌会で 音楽の題詠の宿題をもらったけれど、なかなかこれというのができなかった。この「音楽」の歌 とっても共感。こういうアプローチもあったのね。 明日、郡山の花野の反省会にお邪魔させていただくので、ぎりぎりになってから一夜漬けのお勉強。今から、がんばりますう。


             11月18日(火) 

      沈めおく言葉再び燃え出して南京黄櫨の木より飛び出す
                 佐々木 則子 歌集『萌黄の鳥』


    奈良公園には 南京黄櫨(ナンキンハゼ)が多い。表紙の写真でも、少し紅く色づき始めているのがそうだ。この紅葉は ほんとに燃えるように紅くなる。色変わりの途中の赤はまた りんごのようにかわいい。なんとなく、「ニッポンの紅葉」の風情とはどこか違うような気がしている。うちの実家の近くの坂にも 南京黄櫨の街路樹があって、馴染み深い。ハート型のような 愛らしい葉っぱ。鬱期には 木枯らしにまとわりついてくる血糊のような落ち葉が忌まわしくもあった。


             11月17日(月) 

      金色こんじきのちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に
                 与謝野 晶子


    昨日の写真の景色を広げると 今日の写真です。大仏殿も入ってます。写生している人 三脚で写真を撮っているひと ほけーっと見ているひと いろいろ。 


             11月16日(日) 

      水皺みしわかすかに池の面にあり銀杏じゅのいまか崩れむ鬱金うつこんを盛る
                 葛原 妙子


    二月堂の茶店で善哉を食えという夢のお告げがあった。などと夫がわけわからんことを言うもので、今日は奈良公園をお散歩。よいお天気じゃった。正倉院に近い大仏池の銀杏がきれいに色づいていた。銀杏を拾っている人達はすれ違うだけで クサイ! あれで電車に乗る気かい?!


             11月15日(土) 

      ラ・フランスのぬめり愛しく月の夜はふらこここぎてもぎに行かんか
                 高嶋 純


    そう言えば、ラ・フランス ここ数年食べてないなあ。
    ワインに浸してもおいしいんだよね。
    食べたくなった。
    ちょうど半月に見えるとき、月は 地球の軌道上にいるそうだ。
    そのとき月のいる地点、
    右半分の半月の時、そこは地球が4時間前にいた地点なんだって。
    左半分の半月の時、そこは地球が4時間後にいる地点なんだって。
    動いてるんだ、月も地球も。



             11月14日(金) 

      秋に痩せ月に痩せたる魚焼くになほにじみゆく無色のあぶら
                 斎藤 史


    川魚でなくて海のお魚の それも切り身でない塩焼き。今日の献立はこれだ、と決めていたのだけれど、残念ながらいいのがなかった。今朝のNHKのほっとモーニングでやってたことを試したくって。 身離れのよい食べやすい包丁の入れ方と振り塩。包丁は 表裏各5カ所に。振り塩は さらさらにするために乾煎りして、塩の2割の量の砂糖を混ぜる。その砂糖が おいしそうな いい焦げ目をつくって、実際に美味しいんだって。


             11月13日(木) 

      油煙たつランプともして山家集を吾は読み居り物音たえつ
                 斎藤 茂吉


    ほんとに静かだろうなあ。石油ランプならばまだ明るい。ランプ以前の灯りは もひとつほの暗くさらに静けさが増しそうだ。夜咄(よばなし)の茶事の明るさだ。菜種油の灯り。手燭や行燈、短檠(たんけい)の灯り。静かなんだけど、あんなにわくわくするのはなんなんだろうね。短檠は 時代劇なんかでも出てくるような、油の入った小皿から紐のような芯が垂れ下がっているようなアレだ。あの紐のようなもの、灯心は 一体なにでできているか。知らなかったなあ。スポンジ状の不思議な感触の紐。あれは 藺草の茎の芯というか髄の部分だそうだ。畳になる藺草よりもっと太い種類の藺草だそう。先日行った安堵町歴史民俗博物館でわかったこと。昭和43年までは安堵町の特産だったのだ。始めこの紐の束は何、何? って 感触に覚えがあるはずなんだが思い出せなかった。灯心だったのだ。そう言えば、お寺にいた時、一抱えほどの束で納めに来てはったなあ。お灯明の芯でもあるのだね。お寺で夜咄の茶事のとき、水屋のお手伝いをさせてもらったときのあのわくわく、思い出すわ。 そして、油の灯りの油煙の煤を集めたものが墨になるのよね。灯心は えらい。 


             11月12日(水) 

      祝婚のここより見えて隧道(トンネルに入る貨車つひのすみかのひかり
                 塚本 邦雄


    幸ちゃんは 今頃まだ能登半島か。能登は数年前に旅したところ。いいところ。「猿蓑」の俳諧連歌で凡兆が言ってた 能登の七尾の冬は住み憂き、なんて印象がこびりついているが、ピンと来なかったなあ。なにしろ夏だったから。

青田戦ぐ能登の七尾の夏に来て冬住み憂きと思いがたしも
早口にななおななおななお ファンファーレのように告げられ駅に降り立つ

そして、ここから。能登鉄道 恋路号 という列車に乗って 蛸島まで行ってみた。これがいいのよ。遠くへ来たぞ、ってかんじ。すぐ先の見える小さいトンネルがたくさんある。よく見るとトンネルの入り口に「いろは」で識別記号がついている。それほど たくさんあるの。

七尾から恋路まで行くトンネルはイロハであさきゆめみシまでよ
トンネルの先に見えてるトンネルをくぐってくぐってアリさんになる
恋路号入れ子のようなトンネルをくぐり続けて身の細りゆく
トンネルの先にずんずんズームインあっとまたもやはぐらかされる/華奴

夜は 恋路が浜で 恋路火祭り。キリコも出ていた。


             11月11日(火) 

      あ、と(へばねずみも思ふやしばしばも我と目の合ふかまどのあたり
                 齋藤 史


    うちは四階なので、窓から顔を出すとちょうど屋根の上の猫と目を合わすことがしばしばある。目が合うと、目をそらすと負けだと思うのか、あっちもじっと固まってしまって振り向いたままの猫が動かなくなることしばしば。こっちも負けられないと思うけど、ええ加減しんどなって負けることが多い。目と言えば、ねずみより もっとちっこい目の尺太郎のことを思い出した。数年前、ベランダにいた尺取り虫の尺太郎。どこから来たのか、プランターのわたの葉っぱを食べてた。尺太郎と「ぼんさんが屁をこいた」をやって遊んでん。「だるまさんが転んだ」の代わりに 大阪じゃ「ぼんさんが屁をこいた」と言うの。尺太郎は わたしが振り向くとぴたっと止まって、去ろうとするとまた動き、振り向くと止まるんよ。気配、というより、ちゃんと動きを見てるんよ。どんなちっこい目やろ。


             11月10日(月) 

      月光の市電軋みて吊革に両掌(かれしわれの磔刑(はりつけ
                 塚本 邦雄


今日は冷たい雨。せっかくの満月も見えません。
市電に乗ったわけではありません。
わたしの足は自転車。
雨の日の移動は難儀なこってす。
こないだ吊革のようで吊革でないものを見たんです。
それは 楠の枝からぶら下がっていました。
緑色で、んーっと 吊革よりはひとまわり大きい、
首を吊るには少し小さい輪っかなんです。
いえ、輪っか、と思ったら 輪っかではありませんでした。
それは まあるく曲がった二本の豆の莢でした。
いったい何の豆? 
それは 楠に巻き付いた定家葛(テイカカズラ)の莢実なのでした。
白い巴型の花を咲かせる定家葛。
こんな実が生るなんて知りませんでした。
そして、その莢の中に またまたびっくり。
莢をこじ開けると、
それは真っ白でつやつやの羽毛のような種。
耳掻きについている綿くらいの大きさで、ふわふわ細く白い絹糸のような羽根のような。
なんと きれいなこと。びっくりですよ。

    宙に浮く定家葛の莢二本 金環食のごとき輪を描く


             11月9日(日) 

      挿し木してうさぎが殖えるものならばその耳を挿せ月夜の浜に
                 小池 光


    今日は投票日。雨上がりに 近くの小学校へ行った。投票を終えて体育館を出ると、夫が校門と反対方向に歩き出した。どこ行くの? 校内をうろついたらあかんやん、不審者! と言いつつもついていく。いつも見ている弁天池をこのチャンスに反対側から見てみたかったんだという。あ、それなら わたしも見たーい。もちろん なんてことはないに違いないのだけれど。そう、いつものように アヒルが暢気そうに浮かんでいただけ。でも、永年ののぞみがかなったようでふむふむと満足そうにうなずく。傍に ウサギ小屋と鶏小屋があった。ウサギ小屋は 周りを赤い円錐とビニール紐で囲われていた。 やはり不審者の不審な行動を警戒しているのか。ウサギになにかあったら、わたしら疑われるやんか。大きな鶏がいる小屋の方は ビニール紐はない。ウサギさんはデリケートだからかな。あまり接近したらあかんのかな。ウサギ小屋の大きな金網のケージの中に 犬小屋のような小屋があって、その屋根の上に ウサギがのっかっていた。ええっ? あの上に ウサギは自分で ジャンプしたの? ♪ぴょーんぴょーんピョンピョンピョン! っていうけど、そんなに飛ぶの? しかも 垂直飛びするの? ? ? ? 見たーい!!  ウサギの思い出といえば 確かレオポンを見に行った阪神パークで ウサギさんに餌をやっているスナップ写真が残っているが、そんな垂直跳びは見たことない。


             11月8日(土) 

      あをぞらの高みに指を差し入れて秋の繭解くをんなあらずや
                 武下 奈々子


    安堵町 富本憲吉記念館にて
秋の空に浮かぶ 雲のような真っ白い繭、
ではなくて、今日発見した繭は とても変わった形状の繭。淡褐色の編み目状になっている。使われてはいないらしい井戸があって、錆びた滑車に小さな網籠のようなものがへばりついていて、これはいったいなんなの、なんなの、と叫んでいたら、記念館の人が樟蚕(クスサン)だと教えてくれた。まあ、こんなところに、と館の人にも気づかれずに 樟蚕は マユっていたのだ。3つも。ヤママユガ科のけっこう大きな蛾らしい。青白い毛虫で 白い長い毛があって、白髪太郎とか白髪太夫とか言うそうだ。携帯電子辞書が教えてくれた。楠、銀杏、栗の木を探したら見つかるかも。
錆び付いた井戸の滑車に白髪太夫 透俵(スカシダワラ)の繭に眠れる


             11月7日(金) 

      「あきぃ」とふ季節についと涙ぐむ黄金色の本を抱きて
                 紀野 恵 


    今日は図書館の防音室で録音作業。開館前に着いて 開くのを待っていた。すると 中央図書館の車がやってきた。図書館の中から 職員さんが 台車で本が入っているらしいケースを運んできて、車に積み込む。そして、今度は車から台車に新たなケースをつぎつぎ載せる。ケースには 生野とか東住吉とか書かれている。パンのケースとは違って、本は相当重いだろう。けっこう たいへんな肉体労働だ。腰 気ぃつけんと、あぶなそう。うかっと持ち上げたら ぎくっていきそう。 そう言えば、わたしも中央とか市内のよその図書館の本を予約して借りることのほうが多い。インターネットで簡単に家で検索して予約できるようになったから、図書館も大いに利用するようになった。ってことは、職員さんにとって、この作業が劇的に増えたに違いない。たいへんなんだねえ。いつもごくろうさまです。   


             11月6日(木) 

      仮借なき罪の意識におびえつつ砂の乾きし舗道をゆきぬ
                 三国 玲子 


    昨日 処理研でMさんが狂言を習っていると耳にした。どきっ。わたしの罪深き過去が蘇った。10年前か。茂山あきらさんの狂言の教室に数回通って、その後 事情により行けなくなって、それきりになっていた。狂言の扇を注文しておきながら、そのままになってしまった。なんてことをしたんだ。きっと誰かの分にまわって、結果的にはなんてことなかったかもしれないけれど、非常に不義理なことであったのは確かだ。懺悔。あのころ どうしても声を出せなかった。出したくて、行ったのに。今なら もっと声を出せるかもしれない。声を出したい。声を出すって、わたしにとって、できないものねだりのあこがれなんやな、きっと。


             11月5日(水) 

      傷痕に風吹くごとくわたくしの芯がささめく月の光に
                 米山 千恵子 (水甕 2003.3) 


    今夜は雨が降るという。曇っていてほんとうは月など見えない。こないだから晴れているときは ちょうど中空に部屋に居ながらにしてきれいに半月が見えていたものだから、今日はぱらっと見つけたこの歌にくらっと来たわけだ。


             11月4日(火) 

      動物の中で笑いを知っている人間が哀しい顔ばかりする
                 浅井 和代  


    また哀しい事件。大学生に殺された母親は 私とおないどしなんだな。
商店街の飾りは もうクリスマスバージョン。アーケードには雪の結晶のデザインの電飾が吊られている。商店街のひったくり撲滅運動の標語ポスターが 貼られている。パソコンで手作りだろう。これがけっこうおもろい。
「気ぃつけや、あんたのことや」
「笑いはとっても 物は盗ったら あきまへん」


             11月3日(月) 

      はるかなる銀の器のかたむきて夢のひたひに雨ふりかかる
                 鳴海宥  


    阪神タイガースリーグ優勝記念御堂筋パレード。結局行かずに家で見ていた。ちょうどパレードの始まる頃から降り始めて、えらい雨や。うわあ。かわいそ。どしゃぶりの雨のなか、市中ひきまわしの刑。こらまるで 罰ゲームやがな。さすが阪神やわ。他とはちょっとちゃうでえ。せやけど、雨でちょうどよかったくらいだろう。あの雨であの人出やからなあ、晴れてたらえらいこっちゃったわ。40万人とな。無事にすんでよかったよかった。
雨の日は スーパーの入り口にも傘を入れるためのビニール袋が置かれている。いつもだれかが使ったあとの袋を使う貧乏性のわたし。だって、一回こっきりでゴミの山にするのは エネルギーも何ももったいなくて。人の使った傘袋に自分の傘を入れたからって、エイズになるわけでなし。そこで思い出すのが 数学者 秋山仁の「コンドームの定理」。男女二人ずつ4人が だれもエイズに感染することなく 男女ふたりのすべての取り組み4回戦を行うために必要なコンドームはいくつか。ふつうに考えると4つ必要なのが、この定理では 2つでそれが可能なのです。


             11月2日(日) 

      口にしてはならぬ事柄並べたて露店で全て売ってしまおう
                  杉山 幸子 (水甕 2003.3) 


    今日は 出店料無料のフリーマーケットで店開きして、5000円ほどの実入りがあった。パッとしない天気で 雨がパラパラするものだから、早々にきり上げて、結果2時間ほどで決着つけて、実に効率がよかったなあ。ほとんど売れてめでたしめでたし。私の自転車だけでは ちょっと無理があるもんで、ダンナに頼み込んで、運ぶのだけはムリヤリ手伝ってもらったもんだから、決して売れずに持って帰るわけにはいかんのだ、と案じていたが。ばかにされずにすんだ。ところが、どや、みてみい、と鼻をふくらませて、稼ぎを報告したが、なんと、ちっとも成果に感心してくれない。なんや、そんだけかいな、って。がくっ。おこづかいできてよかったね、とは言ってくれたが。
    買いに来たおばちゃんが あれこれ教えてくれた。常連さんらしい。「あんた、下手やなあ。こんなん最初から500円言うたらあかんわ。700円て書いといて、手に取りはったら、まけとくで、言うねやんか。ほんだら、わ、買おかな思うんやんか。」「タダにならんか 言うてくるやつおるからな、そんなん何ぬかすねん、言うたらなあかんでえ。」
なるほどなあ。せやけど ほんまは わたいタダでもええから 持ってってほしいくらいやねん。とは 言えまへんな。この雰囲気。かけひき勝負は なかなかむずかし。やっぱ商売向いてないみたい。せやけど、みんな 得した気分でご満足して帰ってったみたいだから、お互いに幸せ、よかったよかった。


             11月1日(土) 

      柿の木の葉中のヘタ虫イラ虫を逃げのびたる実が空に浮かびぬ
                   小林 良子 (水甕 2003.2) 


    かーかーかー きーきーきー! 摂津小学校でリハーサルの後、梅田で食事。富有御膳、とかいう名だったか、柿をデザインした器。あしらいのちっちゃなもみじと、柿の葉も あんまりきれいなので、本に挟んで帰って来た。阪神のいか焼き、行列に諦めて帰った友達に、並ばずに買える冷凍を買って持ってったら、富有柿をもらっちゃいました。そして、今剥いてみたのは 島根の西条柿。スターフルーツみたいにでこぼこの柿。へこみが4本だから 星にはならないけど。 ♪かーかーかー、きーきーきー、島根県のかきー。