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二十世紀の戦士逝きたりシベリヤの後はシャープの勇士たりし人
最後まで逃げない戦士でありました延命治療拒み逝きましぬ
でで虫の亡骸ぽろり病む妻を残して召され遺影は笑まう
父に似た人の詠みたる句に泣きぬ「琵琶湖に鬱を捨てに来し」という
喪服着てスーパーの籠提げ歩くこの疚しさに塩を振りたり
刺身選る脇を通りて少年の連行さるるせつなき夕べ
葬れんの鉦の音響く漁師町いかとせんたく並べ干したり
旅立ちは栄螺の殻を出でてゆくバスターミナルに夜を残して
木の小枝 草の細茎顕わして天網恢々雪は降り積む
しゃくかくと堅き雪踏むかじか橋 歌碑書き写す指はかじかむ
「累々と人はかなしい」海鳴りの迫りて止まぬ鳴り砂を踏む
三つめの杯になみなみ注ぐ屠蘇の波の凪ぐ間に世紀をわたる
青空のかけらのような葉書を友は印刷「離婚しました」
はかなきは八坂に遭うて四条にてさらばと言えり二千円札
俯いて擡げて捩って振り向いて誰に会いたいポピーの迷走
封印を噛むとき即ち自爆するシャルトリューズの秘酒七十一度
今日のことは鋏でじょきじょき切り離し決して拾えぬ窓から捨てる
現身は列車が運ぶ ジシバリの黄色にわれを貼り付けしまま
田一枚植えても去らず傘さして見つめていたり七歳のわれ
嗤われてマツヨイグサの又萎む吾のうちなるチャーリーブラウン
どの吾に帰ればよいか連結にディーゼルエンジン切れた静けさ
蛾がひとつ床に止まりて銀鼠のみづからよりも濃き影落とす
高らかにベルが鳴ります峠道 桐の花から聞こえる香り
藤の花散れる山路に啼く鳥が「焼酎一杯ぐいー」と誘う
谷道にしゅわしゅわ降るよ微炭酸かろくやさしくつくつくしぐれ
緋の滝ののみど涼しく滝壺はサイダー壜のような水色
蒼天に左右より近づく山の雲何事もなく行き違いたり
f 分の一のゆらぎに包まれて六根清浄飛騨の森行く
飛騨の森に陽射し一筋苔つたい縷るルと零す滝の玉のれん
貝ボタンぴろぴろほつれテインパニー轟き始めた寝耳に驟雨
やわらかき水に抱かれ眠りたる夢のつづきに泳ぐ一マイル
われ残し盗塁のごと出でゆきて必ず雨にさされる男
菊の香のがつんと眉間に届きたり つぎ蛸竹輪大根蒟蒻
ぽっちりと天道虫の迷い来て瞳を得たるオフィスのマウス
金盞花の種のSOSつちこいし混凝土にへこぺのへのじ
軒深き寄せ棟造りの平屋建て萩に溺れる夢を十階で
読点のひらり飛びたつまぼろしにかなもじ追いつ草書の遺墨
「旅人の木」を探す森 図書館に薄荷のように満つる沈黙
魚も葉もゆらり流るる澄む水の外に閉じこめられている吾
穴あきの影を伴い流れゆく落ち葉はゆらり瀧へと向かう
枕辺に聖書を閉ずるごとく置き分厚い歌集の浅瀬に眠る
丑三つの月齢二十六・七どんと海鼠板を踏み鳴らす猫
眠れぬ夜の胸より放れる黒き蝶追いて何処へ迷いゆくかな
囚われの蟷螂になる3分の視力トレーニングメガネの視界
パソコンのファンが吐き出す溜息に飴の包みがくるりと回る
天空の鳶職の声聞こえ来る換気扇あり異界へ通ず
光浴みなんぞわらわら身をめぐる今日われの春立つ二月尽
花陰にめじろひそめる白き午後ほたりほたりと花ごと降れり
「明日は御座無候」と蓮如上人 吾は米研ぎ今日を終えたり