■ 農民に告ぐ


農民に告ぐ

一 今からでも遅くないから農業をおやめなさい

ニ 農業を続ける者は野垂死にする

三 農民のために生命を賭す者はいない

四 農民を食い物にする政治家、農水省、農協、農学者 そしてマス
   コミがいるだけである  



全国の農民が見たら暴動が起きそうなこの “農民に告 ぐ” は、
「農業に明日はない」 (小笠原裕著 学文社) という本の冒頭の一
文である。
東北学院大学の経済学者である彼の主張は、農産物は全て海外
の安いものを輸入し、国内の高い農産物は作るのをやめてしまえと
いうものだ。 今の日本農業はたくさんのチューブがついてやっと生
かされている植物人間か末期患者で、今後の国内農政の課題は
この末期患者の日本農業を安楽死させることだともいう。

誰でも自分の仕事をボロカスに言われて気分のいいものではない
が、これほど胸クソの悪くなる本は初めてだった。 なんといっても冒
頭の文がこれだから、読みはじめから怒りに体をブルブル震わせな
がら、それでもなんとか読んでみた。 私も随分丸くなったものだ・・
数年前ならこんな本、読み始めてすぐにブン投げていただろう。
この本は元々経済学をベースに置いて書かれおり、農民全廃論等
どう考えても読者を農民には設定していない。 それにしても彼の表
現はあまりに過激で、ページをめくる毎に私の怒りは増長していっ
たのだが、、だが、だが、だが、、、 悲しいことに彼の言っていること
は嘘ではない。 私から見ても日本の農業は末期的だ。

先日、新潟から私と年も同じ、お米専業百姓になった時期も同じ秋
山さんがうちにやって来た。
「お米どころ新潟なら、なにもこんな岐阜の山奥まで来なくても情報
交換できる仲間は周りにたくさんいるで しょう?」 なんて彼に聞いて
みたら、お米どころ新潟でもお米専業で新しく始めた百姓は彼一人
しかいないという。 彼によると驚くなかれ、お米専業の新規就農者で
一番近くに住んでいるのが岐阜の私だと言う。何という遠いお隣さん
だ。。 そういえば私も岐阜県内で新たにお米専業で始めた人を知ら
ず、一番近いお隣さんは車で5時間の京都だったりする。 廃れた伝
統工芸の芸術家でもあるまいが、「お互いこのままお米作りで生き
残ったら人間国宝だね〜!!勲章もらうまでがんばろ〜。」 なんて
訳のわからない励まし合い方をしつつ、苦笑してしまった。
・・・日本中に田んぼはあるのに、一体この国はどうなっちゃったん
だろう?? 東大がいくら難関でも僕らの方が明らかに稀少だ (笑)。

それもその筈、稲作農家の平均年齢は65歳を超えた。 高齢化で今
後益々農家は減っていく。 他に平均年齢が65歳を超えた業種なん
てあったろうか? 探すのも一苦労だ。 そんな末期的産業に追い討
ちをかけるように、輸入自由化での農産物価格下落により農家はこ
れまた減っていく。 これはグローバルスタンダードであるWTO (国
際貿易機関) の協定に日本が乗っかったお陰で、 私個人の予想だ
が、日本の専業農家の多くは稲作に限らず近い将来壊滅する。
例えば韓国からの生鮮トマトの輸入は5年前たった320トンだったの
が昨年9800トンに急増し、 中国からのネギは2年間でなんと9.1倍
の増加、聖域だったお米の輸入量も既に国内生産量の8%になっ
てしまった。 これら輸入農産物のこの勢いはもう誰にも止められな
いだろう。 いや、止めるどころかむしろこの流れが急速に加速してい
くのは明らかで、クイズダービーで、 「はらたいらさん に1000点」 か
けるより硬い。 それは簡単に言うと、日本が「WTO協定」=どの国
もどの農産物でも輸入制限してはならない  という国際的な協定を
約束してしまったことによる。 一部の農家が生き残りをかける有機栽
培の認証制度も、 実は元々海外の農産物を輸入しやすくのために
導入された側面を持つ。
先日、農協系の講演会に行き、恥ずかしながら初めてその実情を知
リ、私自身本当に驚いてしまった。 東京から来た農協の講演者が、
「日本の農業は安い輸入農産物増加で本当に危機的状況です。そ
んな巨大な流れに今は個人農家で戦っている時ではありません。皆
さん農民の力を農協に結集して何とか輸入農産物がこれ以上入っ
て来ないような運動を展開しましょう!」 と熱弁していた。
農民の間で農協批判を耳にすることもあるが、確かに安い輸入農産
物に対して個人では戦えない。 やっぱり農協は農民の将来を考え
てくれる味方なんだ・ ・と妙に納得した。

この講演会で大いに触発された私は、帰って早速WTOや日本の農
業についてちょろっと調べてみた。 ところがこれが、知れば知るほど、
調べれば調べるほどヤバイことだらけだ。
まず、私たち稲作農家を苦しめてる、安い外国産米を輸入する業者
とはいかなるものかを見てみて唖然とした。 丸紅や三菱商事、カー
ギルなど巨大資本はある程度予想 していたが、私が驚いたのは、
(株)組合貿易という商社だ。 この商社は全農 (全国農業協同組合
連合会) の100% 出資による会社だ。 つまり農協の子会社である・・
・・・って何だこりゃ〜?! ?!?!
一方では 「安い輸入農産物を阻止する為には農民の力を農協に結
集しよう!」 と呼びかけている農協の全国組織 が、 もう一方で外国
(アメリカ) から3万トンもお米を輸入 しているではないか!
いったい何を信じてよいのやら。

こうなると、 「農業に明日はない」 の本も俄然真実味を帯びてくる。
著者は元々貧しい専業農家に生まれ育った経済学者だ。 この本を
読んでいて、ただただ頭に来ていた私も、最近少しだけ彼の気持ち
がわかるような気がしてきた。
でも私はお米作りをやめない。 数少ないお米専業新規就農の仲間
達と一緒に 「人間国宝」 になって勲章をもらわなきゃいけないから
(笑)。 お米作りで人間国宝なんて・・・勿論冗談だが、そんな冗談が
笑えない日が来るかもしれない。 それほど日本の稲作農家に、かつ
てないほどヤバイ時代がやって来ているのは確かだ。


さて、次回は引き続き輸入米の問題点、それにまつわる遺伝子組み
替え作物についてなるべく分かりやすくまとめます。
ご意見ご感想などお待ちしています。
それでは、また 「本音のページ」 でお会いしましょう。