調布駅南口の変

(98/9/16)

 私が住んでいるところは,東京都調布市ということろである。
 調布といえば,「田園調布に家が建つ」というコントを思い出させるが,田園調布は大田区にあり,似て非なるところというより,似ても似つかぬところなのである。
 「調布の田園に家が建つ」でも,それはそれで凄いことではあるが・・・・

 で,我が調布であるが,世田谷区と府中市に挟まれたところにあり,府中市との境には調布飛行場があり,ユーミンの『中央フリーウェイ』の中でも歌詞で歌われているが,正確には調布離着陸場と呼ぶらしく,法的には空港と呼ぶことは出来ないらしい。

 その調布飛行場の南(甲州街道・国道10号線)には,東京オリンピックのマラソンの折り返し地点があり,ということは,都心の代々木から約20kmということになる。


 調布出身の有名人といえば「近藤勇」この人をおいて他はない。
 説明するまでもなく,新選組局長近藤勇その人である。

 新選組といえば近藤・土方・沖田が有名で,近藤は局長という代表者であるにも係わらず,土方に比べると陰が薄い。
 方や土方というと「ひじかた としゾぉ〜」という発音の響きからして,なにやら怪物のようで,ヒエェ〜ッ!と思ってしまうのは,私が山口出身で,高知にも10年住んでいたという特殊な事情からだけではあるまい。

 そんなこんなで,土方は,調布より更に西の日野市出身であるが,隊長格,代表格の近藤の出身地が,上記の調布飛行場のすぐ近くということで,調布市で何かイベントをやるとなると,「新選組」の登場となる。

 登場だけならいいが,殺陣をやる。要するに,チャンバラごっこのアトラクションだわな。
 で,相手は勤王側の浪人・・・。

 一昨年だったか,たまたま駅前に行ってみると,やっぱり,南口の広場でこれをやっていた。

 新選組側は近藤・土方・沖田の3人組。例の白と水色の出で立ちも見るからに美しい。役者も二枚目ぞろいを投入して,見るからに正義の味方。
 方や,勤王浪人側も3名。こちらは,無精ひげもマダラマダラで,いま,三池炭坑から出てきたと言わんばかりの真っ黒い顔で,見るからに人相が悪い。服装と言えば,いかにも不潔そうなネズミ色をヘドロにつけて乾かした様な感じ。全体的に,新宿当たりにいるホームレスの様といえば,ホームレスの方に失礼かなと思うぐらいの見るからに憎悪を感じてしまうタイプの3人組。

 で,チャンバラが始まるのだが,近藤・土方・沖田の構えは見るからに美しく上品で堂々として凛々しい。
 こいつらは,元もとは,多摩地域の田舎剣法(天然理心流)で,見た目は悪いが実戦には,めっぽう強いのが売りだったはずなので,このあたり史実に反していると思うが,なにせ地元であるので仕方ない。

 一方,浪人側。構えからして姑息風,堂々さ全くなし。

 こんな風であるから,勝負は圧倒的に新選組の勝ちである。

 勝負がつく途中,浪人の一人が斬られて死にそうになったとき,仲間を呼んだ。
 「宮部さ〜ん!!!」

 なるほど,呼ばれた浪人は,肥州浪人で,今や勤王の長老,宮部鼎蔵(ていぞう)であるはずだ。

 とするまに,宮部もぶった斬られて,メデタシメデタシで一件落着。
 「調布駅南口の変」は幕となる。


 いや待て待て,池田屋の変がモデルであろうが,宮部がやられたのは池田屋だったっけ?
 まぁ,「宮部さ〜ん!」と呼ばれていたから,一人は宮部鼎蔵に間違いないが,じゃ残りの二人は誰だ?
 一人は,吉田稔麿(としまろ:長州浪人))の可能性が高いが・・・。

 不審に思った私は,演技が終わって,傍らの控え室用のテントで一息ついておられる浪人の方に聞いてみた。

 林:「あの〜,済みません。聞いていいですか?あなたが宮部鼎三だというのは,分かったのですが,他のお二方は誰役ですか?」
 宮部:「え?私が宮部?どうして?」
 林:「だって,こっちの方が,あなたのことを『宮部さ〜ん!』と呼びかけながら絶命されたじゃないですか?」
 宮部:「あ,そうか,そう言われればそうですね。み・や・べ・・・ですか,私は・・・・」
 林:「そうです,で,それは分かったんですが,あとのお方がどなたか分からなくて・・・」
 宮部:「いやいや,名前は無いんです」
 林:「え!名前がない?だって台本があるんでしょ。台本では・・・」
 宮部:「台本ですか?台本には,彼が浪人1で,こっちが浪人2で,私が浪人3ってことになってまして・・・」
 林:「・・・・・・」

 宮部鼎蔵が,ここでは浪人3・・・・


 この調布駅南口の変以来,私は調布でやっているこの手のアトラクションは見ない事にしている。


参考文献(より詳しく知りたい人の為に・・・)

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