『感染 劇症!殺人ウイルス』読み中です。
図書館から借りて来たものの、読み出す段になってどうも迷いが生じた本。
基本的に併読はせず、かつ一度読み出した本は余程不愉快だったり退屈だったりしない限りまえがき・あとがき・解説に至るまで全て読み通す主義の私なので、1冊の本を読み始めるまでには少しばかり決心が必要。とにかく数日間・数時間をその本と過ごすことになるわけだから。
一度は冒頭部分を読んだだけで閉じてしまったのだけど、やっぱり私の好きなウイルス・バイオものという誘惑に負けて読み始めました。
そろそろ中盤にさしかかる頃なんですが…。
ここまでで起きたことと言えば、主人公(…というわけじゃないかもしれないな)の8歳の女の子がブリュッセルとか箱根とかを観光に行って、猫がいなくなったり謎の組織に家を荒らされたり…序章以外感染者が出て来ない…! 騙された!?(衝撃)
悪趣味と言われようが、謎のウイルスに罹患した感染者の描写を読むのが好きなのだ。そのウイルスなり何なりについて医学的な説明が施されてゆく過程も好きだし、説明はついても「まったく打つ手がない」と医師達が絶望する中患者が死んでゆく場面を読むのが好きなのだ。自分で書いてきてどんな人間だよと思ったよ今。
なのにこの『感染〜』にはそのようなシーンが全然ちっとも出て来ないではないか…!
『モスキート・パニック』みたいなのも嫌だけど(トラウマかよ)こんな観光案内のパンフレットの文章みたいなのばっか読まされるのも嫌だー!
でもまぁ投げ出したくなるほどつまらんわけでもないから、後半に期待。そろそろ感染源(ネタバレのつもりはないのにバレてるような気もするが)と接触した人間が発病しかけてるっぽいし!(悪趣味だ!)
それに先読みしたところではかな〜り嫌な終わり方してるっぽいよこの話。もしかしたらこの手の話では一番嫌な終わり方してるかもしれない…。
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『感染 劇症!殺人ウイルス』読了致しました。
…当初の予想通りものすごく嫌な終わり方をされて愕然です。
この話に出て来るW熱ウイルスというのは、元がバイオの技術を尽くし、弱毒ウイルス漬けにされて人為的に誕生させられた新種の花、光る蘭『カグヤマ』の持っていた植物ウイルスだそうです。
あるとき、その花を猫のワンサウが誤って食べてしまい、その後ワンサウを通して数人の人間がこのウイルスに感染し、医者達は案の定成す術もなく、致死率99%以上というものすごい殺人ウイルスが世に出てしまうことになったわけですが…。
W熱ウイルスの引き起こす症状というのは、初期段階では非常にインフルエンザによく似ているけれども、それが急速に進行し、女性は2週間程度で全身の臓器をウイルスに食い破られどろどろに溶かされて全身の穴という穴から血液を垂れ流して死亡し、男性の場合では心不全にも似た症状で瞬時にその生命を奪ってしまうというものです。
感染者からの二次感染というのは作中ではなかったから(患者の嘔吐物をまともに浴びた医師もいたけど、結局平気だったし)、狂暴なだけで案外弱いウイルスだったような印象が残ってしまいます。
が、CDCのコンピュータが判定した危険度はやはり最高レベル。治療法が全くないのだから無理もない。感染源たる『カグヤマ』のカルスを納めたカプセルも、猫のワンサウも即刻処分、完全に焼却すべきものという結論が出されます。
が。
…どっちかと言うと、W熱ウイルスそのものより、それを取り巻く人々の対応っぷりの方が恐ろしいという新しい種類のバイオホラーに突き当たっちまったようです。
なんだか、とっても、危機感がないんです。コイツら。
物語中盤で行方不明になったワンサウはとうとう見つからないままラストを迎えてしまいました。
しかも、もはや誰もワンサウを探そうとしていない。
待て。
ちょっと待て。
ワンサウの体内にはW熱ウイルス、致死率99%の化け物ウイルスが今もひしめいているんですよ?! これまでの患者は全員ワンサウに引っ掻かれて、その傷口から発情期の猫の尿を浴びたことで感染してたわけですから、ワンサウを保護しない限りまたどっかで同じような感染者が発生する可能性があるわけですよ!? ワンサウは非常に危険なんですよ!?
なのに。
終章。
ワンサウをあんなに可愛がって、片時も離さず、行方不明になったときはとても悲しんでいた飼い主の少女(このコ、『カグヤマ』のカプセルを海に捨てちゃいました)は昔通ってた日本人学校の先生宛に「ワンサウがいなくなったのはとても悲しいけれど、もう私はワンサウがいなくても平気です」なんて無責任な手紙を送っているし。
てめぇが平気でも付近住人の皆さんの生命が危険だよ! 必死で探せ! 完結させるな!! つうかお前の親父が色々細工を施して蘭を光らせて金儲けなんてバカなことを考えたからこんなことになってるんだろうが! もっと自覚しろーっ!!
W熱ウイルスの危険性を十分に知っているはずの、それを警告し続けていかなければならない立場のはずの、CDCの日本人エリート医師は、猫が見つかってないことを知ってるはずなのに同僚の黒人女性といい感じになってこの件を葬ろうとしているし。
アンタ研究者の資格もないよ! 黒人女性も「あなたとならどこまでも頑張っていけそうだわ」とか言ってる場合か! お前らも事件を過去にするつもりか!!
しかし、この二人を上回るほどにひどかったのが、少女を引き取った家の、大学生の一人娘。
彼女、ラストで友人の一人から「ワンサウらしい猫がうちの庭に遊びに来た」という情報を受け取っているんです。
もちろん彼女はW熱ウイルスの恐ろしさも、ワンサウの危険性も熟知している。なのに。
「ワンサウの首には新しい首輪がついていて、誰かが飼っているようだった」とまで言われてるのに。
探さないんです。この女、殺人ウイルスを持った猫を探さないんですよ!?(衝撃)
それどころか、庭の木を縁側で眺めながら、「ワンサウは今5歳…これからもこの鎌倉で生きてゆく…発情期が来たらまた感染者が出るのかもしれない…」とか語っちゃってんですよ?! まとめに入ってますよこの女!! もうまとめに!!
待て! 何故そこで諦める?! 諦めるなよ! 探そうよ!
張り紙でも何でもして探そう!? つうか、事が事だけに自治体の協力を仰ぐとか保健所なり警察なりに届け出るとかしよう!?
感染した人間は例外なく死亡してるんですよ?! 放置するな。頼むから放置するな。もうちょっと動いてくれ。何でそこで終わるんだよ。
大体、「また感染者が出る可能性がある」って、少なくともこの大学生の娘は理解してるんです。
なのに、何もしない。しようとすら思ってない。
…もしかして、誰か感染すればいいと思ってるのかこの女。
W熱ウイルスが再び新たな犠牲者を屠ればいいと?
だからワンサウの目撃情報を自分のところで握り潰すと?
…怖っ!!(愕然)
この女ホントは精神異常だ! ソシオパスだ! ひとでなしだ!!
W熱ウイルスより周囲の人間のこんな反応の方がよっぽど怖いよ! 何だよこの話!!
ホントに、全く新しいタイプのバイオホラーだと思います…。