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オンライン書店ビーケーワン:アンダー・ユア・ベッド

『アンダー・ユア・ベッド』 大石圭 角川ホラー文庫

 現在『アンダー・ユア・ベッド』読み中。
 「角川ホラー文庫は私にとって当たり」説を裏付けるような作品。
 いや、これ、ホラーじゃないです。ええ。怖くないもん。
 むしろ、恋愛小説。純愛小説。歪んだ純愛。歪みまくった愛情!
 かなり好き。

 主人公は三井直人、30歳、熱帯魚店の経営者。
 彼は学生時代に一度だけ一緒にコーヒーを飲んだことのある女性に、十数年たった現在でも盲目的な愛情を抱いている。
 彼女のものと同じ洋服やアクセサリーや香水をつけたマネキン人形に彼女の名前をつけて共に暮らし、彼女が現在住んでいる場所を調べ出し、わざわざ引っ越して来てその間近にビルを借り店を開き、彼女の住居に忍び込んではベッドの下やソファの下に隠れてたり、彼女のいない間にグッピーの水槽の世話をしたり、盗聴器を仕掛けたり。
 三井直人の想い人、千尋は今では浜崎健太郎という男性と結婚していて、二人の間には木乃実という1歳ぐらいの娘がいる。
 浜崎健太郎は零細企業のサラリーマンながらも社内での成績は優秀、周囲からの信頼も厚く、女性からの人気も高く、容姿も整っていて一見非の打ち所のない素晴らしい男性に思えるが、一旦他人の目の届かぬ家庭の中に入ってしまうと、妻である千尋を『奴隷』呼ばわりしての暴力・凌辱三昧。彼女に大量の家事を毎日完璧にこなすことを要求し、千尋の生活を細かく管理している。
 三井直人は千尋が健太郎の暴力に晒され続けていることに胸を痛めながらも、弱気で自分に自信のない性格が災いして、彼女に対して具体的な救いの手を差し伸べられずに悩んでいる。

 てな感じのストーリーです。

 なんつうか、やっぱりまず、この千尋の夫・浜崎健太郎のキャラクターが最悪。外面良くて、同僚や他人、自分の両親とかには良い顔見せることだけを考えているんだけど、その反動のように妻の千尋に滅茶苦茶な仕打ちをする。
 初期に健太郎が吐いた罵りの言葉が「百姓の娘!」ですよ…!? 何が起きてるのかと思いました。駄目ですこの人。
 どうも彼の父親も健太郎と同じく、自分の妻を暴力でしつけた人みたいで、健太郎自身は「自分の妻をどこに出しても恥ずかしくない良妻」に育てることは当たり前のことであり、感謝されるべきことなのだ、と本気で考えているようなんですけど…。
 それにしても、私、女性に一方的に暴力振るう男性はたとえ小説の中でも許せない。コイツが出て来る度に気分が悪くなる。まぁ、娘の木乃実ちゃんには手をあげていないのが救いです。児童虐待モノは駄目。絶対駄目。

 しかしそんな健太郎の駄目っぷりを補って余りある、主人公三井直人のキャラがまた良い!
 三井君は子供の頃から存在感が薄く、彼の兄を溺愛する両親からは無視されまくっていた可哀想な少年なのですが、子供と生き物を愛する穏やかな性格が非常にチェックポイント?(訊くな)
 熱帯魚店のオーナーだけあって魚の世話には非常に詳しく、まめに世話をします。無口かつどもりがちだから商売上手ではもちろんないんだけど、そんな彼が誠実に世話をする質のいい魚にはちゃんと固定ファンが存在します。
 で、彼は千尋の娘である木乃実ちゃんに非常に優しい。
 木乃実ちゃんも三井君に非常に懐いています。何故って木乃実ちゃんが生まれたばかりの頃から家に忍び込んでいた三井君がしょっちゅう遊んであげるからですね。千尋は健太郎に言われた家事をこなすのに精一杯で、赤ちゃんをかまってあげる余裕がない。代わりに三井君が、千尋ちゃんをあやしたりオシメを替えたりしてあげてたのです。つまり木乃実ちゃんにとっては三井君こそパパも同然なわけですね。
 木乃実ちゃんは忍び込んでる三井君の気配を敏感に察知して、「なおちょ…なおちょ」と大喜びで名前を呼ぶのです。バレるよ三井君。
 家人の移動する隙をついて部屋から部屋へ、ソファの下からテーブルの下へと姿を隠しながら帰って行く結構忙しい三井君、木乃実ちゃんを撫でてから出て行くシーンが多くて、子供に優しい男性ってのはそれだけで非常に高得点を獲得しているとは思いませんか(趣味)。

 最終的にはそんな三井君があの健太郎を殺して千尋と木乃実を救い出すという展開だそうなので(また先読みしたよコイツ)…これはホラーじゃないでしょうもう。愛です。つまりラヴです(脳が腐ってますね)。
 中盤終わりまで読みました。
 続きが楽しみです。

+++

 『アンダー・ユア・ベッド』、昨日読了。
 すごくいいところで終わってて、驚き。
 きっとああいう話にとっては、ものすごくいいところ。だからとても救われた。
 幸福を予感させる、けれども暗い影の拭えない、切ない終幕。
 とてもいい作品でした。オススメ。

20030407

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