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『神様のパズル』 機本伸司 角川春樹事務所
いつかジュンク堂の棚で見かけて黄色い表紙とコミック調のイラストにどんな内容の本なのか興味を持ってはいたのですが、先日おもさんからオススメをいただきまして今が読む好機かと図書館で借りて来ました『神様のパズル』。パラパラとめくってみると何だか物理っぽい理系っぽい単語が満載で読み始めるまでに少し躊躇してしまいましたが、一旦読み出してみると物語の中にぐいぐい引き込まれて一気に読了してしまいました!
「宇宙は”無”から生まれた」と、彼は言った。「すると人間にも作れるんですか? 無なら、そこら中にある───」
この質問には、さすがに穂瑞もちょっと驚いたようだった。老人は続けた。
「たとえばある人が試験管の中に”無”を入れて……いや、そこに在るものを抜き取って”無”にしたとして、それから宇宙を作ってしまうことも可能なんですか。”無”から生まれたというのなら、そこから宇宙が生まれてもおかしくないわけでしょう」
主人公の青年に一人の老人が投げかけたこの質問の答えを見つけるために、人工受精で誕生した天才児穂瑞沙羅華が『宇宙をつくること』に挑んでしまうお話です。
「作るって、宇宙をか?」
「それがテーマだろ」
「本気で作る気なのか?」
「卒業したくないのか? ”むげん”でもリトルビッグバンぐらいは起こせる」
「仮に実験して、それが成功するとどうなるんだ。太陽も生み出すことになるのか?」
「もちろん。星の数ほどね。それがビッグバンだろ。一旦開闢が始まると、光速でそれが広がっていく。制御などできない」
「それはつまり、光速で僕たちのこの宇宙が、つぶれるということか?」
紆余曲折あって天才少女はコンピュータの中に『創世宇宙』を生み出すことに成功しますが…。
「宇宙の年齢が、有限ということではないのか?」
「それでもメモリーが余り過ぎている。ほら、これがこの創世宇宙の”果て”だ」穂瑞が指したディスプレイの時間表示は、十の十乗年───つまり百億年の桁数で止まっていた。
「それより先へは進まない。この創世宇宙の寿命は、百億年ぐらいしかないことになる」
穂瑞はエンターキーを押し、そこへプローブを飛ばした。
しかしウインドウには、何も映らなかった。
「このあたりはもうピーピングできない。創世宇宙が消えて無くなっている」
「小惑星か何かと衝突したんじゃないのか?」
「馬鹿馬鹿しい。それで創世宇宙が丸ごと消滅するわけがない」
「じゃあビッグクランチとか……」
「直前まで膨張していたのにか?」穂瑞は抹茶スティッキーをまた一本取り出して口にくわえた。「思い当たるのは、やはりビッグバンだな。”セカンドビッグバン”とでもいうか───」
「セカンドビッグバン?」
「創世宇宙内に、別な創世宇宙ができたんだよ。そのため、ピーピング可能な方の宇宙が消えていったんだ」
創世宇宙人達は創世宇宙の中に新しい宇宙を生み出す実験を行って自滅してしまう。
「しかし一体どうすれば”彼”に会える? ひたすら何かに祈り、『会えた』と信じられる人はそれでいいだろう。けど私には、それもできない。思いついたのが、宇宙創世だ。宇宙を作れば、必ずそこにも”彼”がいるはずだ。宇宙創世は、解決できない私の疑問に対する解決策だったのだ。シミュレーションに成功すると、私は創世宇宙の中に”彼”を探していた。このどこか───誕生の瞬間、あるいは終末に”彼”がいるのではないかと思って。”彼”が見つかれば、私は自分の生まれた意味を問うつもりだった。しかし、あの中のどこにも”彼”はいない。逆に私は、創世宇宙から問いを突きつけられたように思えてならない。つまり『何故』と───。『何故我々を生み出し、何故我々を苦しめるのか』と。彼らが作った超巨大加速器は、”創造主”───つまり私にそれを問うための機械だったのではないだろうか。けどそれは、私が”彼”に聞きたかったことなのだ。私に答えられるわけがない。彼らもその答えを知ることなく、自滅してしまう。”無”に帰することを実験的に追認しただけだ。無から生まれたものは、無でしかない。やはり生きることなど、何もかも無意味なのだ。私もいずれ死んでしまうし、人類だって、どうせ絶滅する。それに一体どんな意味がある……」
なんだか引用まみれになってしまいましたが全体を通して実にスリリングなお話でした。
断るまでもなく物理学の専門的な知識など皆無の私ですので最初から最後まで作中で交わされる専門的な会話の内容はまったく全然これっぽっちもそれが正しいのか正しくないのかさえわからないような状況でしたが、不思議とそういう台詞を読むことが苦痛でない。むしろそういう自分には全然わからない単語が飛び交って議論されているのがぞくぞくするほど面白くて夢中で読みふけってしまう状態。
受け付けないヒトは徹底的に受け付けない作品のような気がしますが私はとても楽しめました。
機本氏の他の作品も読んでみようと思います。
作品の内容とは関係ないのですが作中で穂瑞沙羅華がイチゴとかバニラとか色んな味のものを食べてるスティッキーっていうお菓子がやけに気になったり…何だか結構おいしそうだ。ヨーグルト味とかもあって興味深い。ポッキーとかプリッツみたいな感じのものなんだろうけど…。
20050817
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