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『キノの旅III −the Beautiful World−』 時雨沢恵一 電撃文庫
第3巻から第6巻までをまとめてすずか嬢にお借りしましたのでまた読んでおります、『キノの旅』です。
パースエイダー(注・銃器のこと)の名手・キノ(女の子)と言葉を喋るモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)・エルメス、この二人が旅の途中で立ち寄る国や出会う人々、出来事について連作短編形式で書かれた作品。
『城壁のない国』の残酷さときたら。
旅先でキノとエルメスが遭遇する残酷さには別の選択肢も重大な意図的欠陥もなくて、すべてが必然の中で破滅するその感覚にやり切れない想いにさせられます。反面、キノとエルメスの淡々とした反応が負の感情を上手い具合に中和してくれるところがあって、完璧に陰鬱な気分には落ち込まずに済んでいるのが不思議な気分。
ほとんど感情を表に出さないキノと無責任なこどものようなエルメス、二人の視点を通して見ている限り、どのような国からもどのような結末からも読者は切り離されていることが出来ているのかもしれません。
『終わってしまった話』は実に小気味良くまとまってて好きなお話です。ああ、そうか、そうだなあ、へえー、とすごく短いお話の中できっちりと納得させてくれるし驚かせてもくれる。
とにかく面白いし次が気になるのでどんどん読み進めてしまいあっと言う間に読了して、すごく美味しい料理が入っていてお鍋の底をスプーンでひっかくような気持ちでパラパラと読み直す。いいですねぇ、すごいですね、キノは…。
「───と、いう訳さ」
「なるほど。でも捨てちゃうなんてもったいない」
「ああ。危うく、”ください”ってしがみついて言うところだったよ」
どんな状況でも食べられるときに食べられるだけ食べようとするキノの姿勢が潔くて好きです。出て来る料理の描写もおいしそうだなぁ。
キノが言って、エルメスは倒れたまま、少し気取った口調で、
「そう。それはどんな人間にもある、いわゆるひとつの、”杖か義足”ってやつさ」
「…………。えっと、……”通過儀礼”?」
「そうそれ」
そう言ってエルメスは黙った。
キノが呆れ口調で、
「最近かなり無理があるよ、エルメス。音が似てもいない」
「……そうかな? まあキノが分かればいいじゃん。言語なんてそんなものさ」
「でもね、分かるまでにだいぶ時間ががかるんだ。だから───」
「そう? キノの連想能力を高めるという件では、それなりの貢献を───」
ああもうかわいいなあこんちくしょう!(ひい)
見た目は乗り物で機械なのにどこの国に行っても普通に人権を認められるモトラドッてのは一体どんな存在なんだ!? 第3巻になってもまだわかりません。そして寝る。よく寝るエルメス。しかもキノがエルメスに景色を見せたりするシーンがありました。エルメスに見せるって…どこで見てるの!? やっぱりライトの部分? ちゃんと見えるように動かしてやってたってことはキノはエルメスがどこでものを見てるか理解してるってことだよね? モトラドッて何なんだ…!?
今のところまだエルメス以外に喋る乗り物は出て来てません。シズ様の陸以外に喋る動物も出て来てませんけど。あるいはこの先ずっと明かされないのか…!?
ともあれ続刊も楽しみに読ませていただきたいと思います。
20060614
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