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オンライン書店ビーケーワン:ウースター家の掟

『ウースター家の掟』 P・G・ウッドハウス/森村たまき 国書刊行会

 天才執事ジーヴスと間抜けなご主人バーティーのコンビのお話、今回は長編です。『よしきた、ジーヴス』の続編にあたり、ガッシー・フィンク=ノトルとマデライン・バセットのカップルが再登場です。

 ジーヴスがバーティーを世界一周クルーズに連れ出そうとしているある日のこと。バートラム・ウースター氏の日常にまたしても分刻みで厄介事が山積してゆくのです。分刻みというかもはやもうこれは秒刻みじゃないかなあ。一頁ごとに、どころか一行ごとに実にバラエティ豊かな問題が押し寄せてきて、見る間に不幸になってゆくバートラム氏。こんなにたちまち不幸になってゆく主人公を私はこれまで見たことがないよ。

 みんながみんなバーティーに「銀のウシ型クリーマー」を盗めと言ってくるのです。男性陣は間抜けだし、女性陣の言い分はやたらと理不尽です。バートラム氏はそのような馬鹿げたことと何度も断ろうとするのですが、いま一歩のところで断り切れないのです。
 自らを破滅させるような依頼であっても、それが困窮する友の口からもたらされたものであるならバートラム氏はそれをはねつけることが出来ないのです。それが「ウースター家の掟」なのです。

 自らを取り巻く間抜けな友人達に負けず劣らず間抜けな部分が目立ち、毎回毎回ジーヴスの助けがなければこのヒトどうやって生きていくんだろうと思わせるバートラム・ウースター氏ですが、実のところ彼は誇り高き良心の人なのでした。

 もちろん、そうであるからこそ、ジーヴスは何時如何なるときも忠実にバートラム氏に仕え(いや今回も結構酷い仕打ちはしてましたけど)、ダリア叔母さんはバーティーのために最後の決断をしてくれたのでしょうけれど!

 読了して振り返ってみれば、これらが全てトトレイ・タワーズで一晩のうちに起こった出来事であったというのが驚きです。三年ぐらいかかって解決した事件だったんじゃないかと思えるくらいにぎっしりと中身が詰まっておりましたよ!

 今回ももちろんジーヴスの活躍で押し寄せるゴタゴタを一挙に片付け、果てがないかに見えるこの難事件に完全勝利をおさめたバートラム・ウースター氏。
 読んでる間中これから先どうなっちゃうんだろうと手のつけようもなく不安になるお話なのに、おしまいには必ず極上のハッピーエンドを用意してくれているのですから、読み手としてこれほど幸福なこともありませんよね。
 ジーヴスは必ずやってくれると無条件に信頼出来る感覚も含めて、このシリーズは本当に面白いです。オススメなのです。

 それにしてもバーティー、色々と芝居の台詞や詩歌の一部を引用して喋ろうとするのはいいんですが、「何とかが何とかして何とかになったヤツだ」みたいな感じでもはやマトモに引用出来てません。学があるのかないのかよくわからないよバーティー。
 前の巻とかではもうちょっとちゃんと引用してたような気がするんですが…気のせいだったのか…!?
 あと今巻ではバーティーと一緒に戸棚の上に飛び乗るお茶目なジーヴスの姿が見られます。そんな折にも思い出されるのは怒れる白鳥に追い回されてジーヴスに助けてもらった経験があると言うバーティーのこと…白鳥…バーティー…。

 とにかくもう続刊も楽しみに読ませていただきたいと思います!

20060711

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