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『ジーヴスと朝のよろこび』 P・G・ウッドハウス/森村たまき 国書刊行会
うむ、これによって、地平線は目に見えて明るさを増したと言わねばならない。
友人たちのこじれた結婚問題を解決しようと鬼門スティープル・バンプレイに赴いたバーティーは、隣町で開催される仮装舞踏会に出るため《船乗りシンドバッド》のコスチュームを入手する。
その衣装には、シンドバッドには不可欠なジンジャー色をした頬ひげも付いていた!! ……シリーズ第7弾。
冷静に書き写してみたら帯のあらすじ、何がなんだかワケがわかりませんね…これではどんな話なのか皆目見当もつかない。
完璧な執事ジーヴスと、筋金入りのいいひとなのに間抜けなバーティーが活躍する、面白さ保証つきのシリーズです。
色々なことが色々につながって関連しあってバートラム・ウースターやその友人達が見る間に不幸になっていく様子は相変わらずお見事。わざとらしい不幸さ加減ではなく、それぞれがそれぞれのベストを尽くそうとしているのに何故か皆のすることがちょっとずつズレていって、どうしようもないゴタゴタへと発展していったり思いもかけない展開を呼んだり。
文章はぎっしりと詰まっているのに無駄なところはなく、結構分厚い一冊をラストまでテンションを保ったまま読ませてくれます。
スティーブル・バンプレイに来たその日に住まいとなるはずだった建物を見事に爆破され、恋人同士の仲をとりもつために夜盗のごとき振る舞いを強要された挙句深夜の庭で殴り倒される、今回も気の毒極まりないバートラム氏。
読みながら何度も爆笑をこらえねばなりませんでしたが、たまらず噴き出してしまったのは仮装舞踏会を無事に終えた夜バーティーがベッドに戻って来た、そんな何気ないシーンの描写です。
すぐに疲れたまぶたが閉じられて眠れたわけではない。なぜなら誰かしらの見えざる手によってシーツの間にハリネズミが入れられてあったからだ───ほぼ、猛り狂ったポーペンタインに等しいと言ってよい。これはボコの仕業だと理解して、僕はそいつを奴の寝椅子に移そうとの思いに強く傾斜したが、しかし、それは奴にひどく必要な教訓を与えはしようが、ポーペンタインにちょっぴりつらく当たることになると思い直し、僕は後者を庭に連れて行き、草むらに放した。
ポーペンタインというのはヤマアラシのことで、それまでにバーティーとジーヴスの会話中に何度か出て来た単語です。
寝ようとしたらベッドにハリネズミが入っているかわいそうなバートラム氏。でもハリネズミのことを思いやって、親切にもわざわざ庭に出て草むらに放してあげる心やさしいバートラム氏。衝動のままに窓から投げ捨てても良さそうなものなのに。
これはこれとしてギャグの一種で終わるのかと思いきや、このハリネズミが終盤さらに筋に絡んできたりして…ホントに無駄な部分がないのです。
しかしながら今回のジーヴスはほんのちょっぴりだけ冴えない印象でした。
スティーブル・バンプレイとそこに住まう人々に関わるとろくなことがないと知っていたバーティーがそれでもそこに行かざるを得ない状況を作ったのは元を質せばジーヴスで、それも自分がさかな釣りをしたかったため。
まあジーヴスもたまには自分の趣味に没頭することがあっても良いとしても、ラストに少々解決していない問題を残したままだったのがジーヴスらしくないと言うか…もっとすっきり解決してくれるものだとばかり思ってただけに、そこのところが少し残念です。
でも、ジーヴスものこれが初読みだったらこの解決でも十分すごいと思えてたはず。贅沢になってきちゃってるんですね、面白過ぎて…。
続刊も楽しみに読ませていただきたいと思います。
20070920
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