「若さと健康」
第189話 「顎関節症」
『あご』
あごの関節がコキコキ音がする、痛む、口を開けづらい、といった異常を訴える若者が急増している。この顎(がく)関節症の中には受験勉強、塾通い、現代文明のスピードの速さ、それに伴う生活習慣の急激な変化などのストレスが引き金になって発症するものもあるという。
全身症状の誘発も
スポーツ選手は精神的な緊張を緩和しようと、無意識に歯を食いしばる。サラリーマンなども夜眠っている間に昼間のストレスを解消するため歯ぎしりをする。こうした食いしばり、歯ぎしりを繰り返して生理的限界を超えると、あごの筋肉が疲れてきて、口を開けるとき、あごが鳴ったり、痛みを感じたり、口が開かなくなったりするようになる。これが顎関節症です。
歯科大学病院や歯科の開業医を訪れる患者のうち、あごの筋肉痛を訴えるものが約10%、関節雑音が40%もあり、歯科では最も多い疾患の一つになっている。
この病気はまた、首や肩のこり、痛み、頭痛、腰痛、耳鳴り、めまいなど全身症状を現すことも少なくない。中には、あごの位置がずれているのに、あごの異常を訴えず、肩こりや頭痛などの全身症状だけを訴える患者が非常に多い。
食物の軟化も関係
これまでは20代の女性と老人に多かったが、最近10−20代の訴えが増えてきた。
食生活の軟食化、顔の形の変化といった人類学的変化遺伝によって、現代人のあごがとがってきて、歯があごに収まりきれなくなった。その結果、歯並びやかみ合わせが悪くなり、顎関節症を引き起こしていることもあるが、それ以外に環境やストレスが引き金になっていると推測される患者が増えている。
かみ合わせが悪いところに、私たちを取り巻く現代文明のスピードや煩雑さが有形無形のストレスとなって加わる。すると、あごを支える筋肉が過度に緊張して、かみしめ、歯ぎしりなどを招く。このことが発症の原因になっていると考えられるという。
最近、歯科医院を訪れる顎関節症患者の中に、受験生や大学浪人生など若者が多く、ほとんどが精神的緊張による食いしばりが発症の原因と考えられる。また、新しい職場への配転など対人環境の変化、家庭内のごたごた、学校のクラブ活動のプレッシャーが原因とみられる。
アメリカでは理学療法
現在、顎関節症の治療法として、プラスチック製の装具を一定期間装着してかみ合わせ状態を変えて、ずれたあごの位置を修復したり、筋肉の緊張度を下げるというスプリント療法が主に行われ、かみしめや歯ぎしりのくせのある愚者には、くせをなくすよう指導、夜中の歯ぎしり防止のためマウスピースを装着させることもある。
しかし、こうしたストレスから顎関節症になった場合、かみ合わせ治療と並行して、心の治療も必要だ。また、子供の場合は放っておいても自然に治ってしまったり、生活習慣を改めるだけで治ることもある。
一方、アメリカでは顎関節症の治療に理学療法士が活躍している。理学療法士というと、日本では交通事故や脳卒中などで手足が不自由になった患者のリハビリ訓練が主な仕事になっているが、アメリカでは顎関節症のリハビリ治療に当たっている。首を伸ばしたり、あごを左右前後に動かすことで、約半数の患者が治っている。