屍蘭―新宿鮫〈3〉大沢 在昌
*あらすじ*
孤高の新宿署刑事・鮫島―。
犯罪者たちは彼を「新宿鮫」呼びと恐れている。
新宿の高級娼婦の元締め・浜倉が殺された。
女たちを守るため身体をはった浜倉に一体何がおきたのか?
容赦なく目的を遂行していく殺人者。
魔の手は鮫島を取り巻く人物を次々を消してゆく。
そして浮かび上がってきたのが産婦人科医「釜石クリニック」。
そこでは呪われた犯罪が地下で行われていた。
そして綾香、ふみ枝、あかね、三人の女の暗い過去へと繋がる扉が今開かれる。
事件に迫る鮫島には突然、汚職・殺人の容疑がかけられ、さらに敵は完璧な罠で鮫島を追い詰めてゆく。
◇◇◇
刑事小説で重要なのは主役の刑事と犯人となる人物。
前回の毒猿が寡黙な殺人者だったのに対し今回凶悪な犯罪を犯していくのは美しくそして優雅な女性達。
犯罪者が女性ということで血生臭いシーンや格闘シーンは前作に比べかなり少ないです。
しかし逆に派手にシーンがない分、淡々と殺人を犯していく様子はかなり不気味。
綾香とはつ枝には「人を殺す」ことが家の中のゴキブリを殺すのと同じ程度の重さだというのも怖いですね。
今回は事件の進行と共に、三人の女性の過去が明らかなっていきます、そして今までにないくらい鮫島はど
んどん追い詰めらます。
その中で鮫島が何故「手紙」の存在を隠すのか、彼が警察に対して思うことが語られるのが見もの。
ただの一匹狼だけではない「新宿鮫」の魅力が伝わる三巻目です。
次作「無間人形」は直木賞受賞作なのでこれは読むのが楽しみ。
一言■歪んだ心の表れ「屍蘭」。想像するとかなり怖い図ですね。
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製造迷夢 若竹七海
*あらすじ*
渋谷の猿楽町署の刑事・一条風太は、とある事件でリーディング能力のある占い師・井伏美潮と出会います。
人の怨念、悪意、殺意、憎しみなど物体に残留した人の心を読む・美潮。
二人が人の心に隠された部分を覗く時、事件は思わぬ方向に向かいます。
「製造迷夢」
薬でラリっていたところを保護した十二歳の少女・野中亜実が、偶然万引きで署に逮捕されてきた主婦のふくらはぎに
噛みつき、全治二週間の怪我を負わせてしまう。
取り調べで亜実は、かつて主婦が自分を殺したから、転生した自分が復讐したのだと主張。
調べていくうちに万引きの主婦は13年前に迷宮入りした強盗殺人事件の被害者・老女の義理の娘だった。
果たして亜実はその老女の生まれ変わりなのか?
そして主婦は強盗殺人の犯人なのか?
-目次-
天国の花の香り
製造迷夢
逃亡の街
光明凱歌
寵愛
◇◇◇
この中で面白かったのはタイトルの「製造迷夢」と「逃亡の街」でした。
若竹さんの魅力はやっぱりラストの捻り、この二つはラストまで満喫できました。
ただ、今までの作品に比べると少しパワー不足?
主人公の風太と美潮の関係が短編毎に仲が良いのか悪いのか??喧嘩別れしてたのに最後は結婚してるし・・・。
キャラクターとしては面白いのに魅力に欠ける二人なんですよね。何故かしら。
この本は「あとがき」でタイトルについて説明があるのですが私は一編一編の話の中につけられているタイトルも
結構好きでした。
「逃亡の街」 心動 → 心兵 → 心火 → 心魔
物語の流れに凄くマッチしてます。
一言■何だろう・・・この物足りなさは。
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灰色の砦 篠田真由美
*あらすじ*
19歳の冬、桜井京介と栗山深春は「輝額荘」という古い木造下宿で運命的な出会いをする。
カリスマ性のある麻生ハジメが大家をしている家族的な雰囲気に満たされた「輝額荘」。
少し風変わりな住人たちに最初馴染めなかった深春、しかし時間と共に彼らと仲良くなり孤独を感じた大学生活の
心のより所に「輝額荘」はなっていた。
しかし住人の一人・カツが裏庭で変死したことから、若者たちの「砦」に暗い翳が忍び寄る。
続く殺人事件。
その背後には天才建築家・ライトの謎が。
そして砦に住む彼らの隠された過去、事実は・・・。
桜井京介と栗山深春の出会い、そして京介が見せた涙とは。
◇◇◇
建築家探偵シリーズ第四弾。
シリーズ順に読んでいないので京介の過去が少し謎。
第一弾でも思ったのですが、このシリーズは殺伐とした殺人事件というわけではなく背景にちゃんと
殺害の理由と犯人の心の葛藤があることですね。
そして今回は犯人も含めて「悪役」がいません。
ただ誤解が招いた結果の殺人事件だという哀しい結末でした。
そしてこの物語を過去の物語として深春が蒼に語るという形で書かれているのが上手いですね。
そうでないとただ哀しいだけの物語になってしまいそうなので・・・。
一言■今現在、私の中で京介は小野不由美の悪霊シリーズ「ナル」に重なりつつあります。
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原罪の庭 篠田真由美
*あらすじ*
外から施錠され密室化した温室には切り刻まれ腐乱の始った死体が3つ。
そして言葉を失った少年が一人。
また屋敷の中には痴呆の老女の死体が。
ある夏に起きた富豪一家の惨殺。
事件のカギは殻に篭った少年、薬師寺香澄。
本当に少年は惨殺な行為をした犯人なのか?
そして少年の心は癒されるのか?
シリーズ第一部完結!
◇◇◇
建築家探偵シリーズ第五弾でありシリーズ第1部の完結編です。
番外編から香澄こと蒼が幼い頃にある事件に関わっていたことは分かっていたのですが想像以上にヘビィ。
重いですね。
タイトルの「原罪」とはキリスト教で人類の租アダムとイブとが堕落した結果、人間が生まれながら負わされ
ているという罪だそうです。
そして二人の母親に異常と言えども「愛」を受けながらそれに必死で答える香澄。
密室化した温室で起きた事件の真相は結構驚かされました、死体を切り刻む理由は今までミステリ小説では色々
とありましたが、そういう理由もあるのか!て感じでした。
杏樹、香澄、そして蒼と3つの名前で呼ばれた少年が最後に自ら「アオだけでいい」と言う場面は正直胸が痛
くなりました。
完結編らしく最後は彼等それぞれの旅立ちと別離の予感を漂わせてます。
今後の展開に期待大。
一言■うん、このシリーズ本気で好きかも。
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烙印 貫井徳郎
*あらすじ*
愛し合っていた筈の内縁の妻・綺子が突然失踪し、投身自殺をした。
顔の分別もつかないほどに変わり果てた妻の姿。
籍に入れることも拒否し過去も語らない妻・それでも愛があればいいと思っていた迫水。
しかし綺子が最後に残したメッセージは「やはり無理だった」だけ。
妻の自殺の原因は隠された過去にあるのか?
動機を追求したいと願う迫水は警察を辞め真相追求に乗り出した。
しかし妻の影を追ううちに迫水が辿り着いたのは暴力団抗争の渦だった。
◇◇◇
自殺した妻の過去を追う夫。
確かに物語の展開やラストには驚かされたのですがその面白さがあったとしてもこの物語は
かなり無理があるのですよね。
まずそんなに愛してる妻なのに顔も姿も変わり果てた遺体を見て「ほくろ」の位置だけで妻
だと納得するのが不思議、普通それだけなら否定しそうだなぁ。
それに過去を全くしらずに(物語の途中では国籍までアヤフヤ)結婚するかどうかも疑問。
そして妻の過去を調べるのに一番便利な機関である警察を辞めるのが最大の疑問でした。
物語の途中で何度も警察の仲間達の助けを借りているのですが自分が内部にいれば一発で
分かったことなんじゃないの?と思っちゃうのですよね。
うーん、物語にもっと吸引力があればスゴク面白い本。
でも物語の軸が刑事とヤクザの恋っていうのがね、ちょっと・・・。
一言■整形しても分かるんじゃないのかなぁ?そんなに愛していたのなら。
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夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) 麻耶雄嵩
*あらすじ*
歪んだ館がそびえ、たえず地が揺れ、20年前に死んだはずの女性の影がすべてを支配する不思議な島「和音島」。
「和音島」とは女優「真宮和音」を慕い崇めた青年達数名が暮らしていた島。
和音の死後、後を追うように青年・武藤が死んだことにより彼らの共同生活は終わった。
それから20年後、再び彼女の命日に島に集まる彼らと共に第三者として取材に訪れた主人公・鳥有とアシスタント
の桐璃。
真夏に雪が降りつもった朝、島の主の首なし死体が断崖に建つテラスに発見された。
だが殺人者の足跡はない!
ラストに登場するメルカトル鮎の一言で世界はまた・・・・?
◇◇◇
舞台は孤島、そして連続殺人。
これだけだと普通のミステリになるのにこの本はミステリなのかミステリじゃないのかも不明です。
そして謎が沢山出てきて解決しない上に最後にまた大きな謎を問い掛けて終わり。
ある意味スゴイ感動でした。
さて前作を読んでないので私にとって麻耶氏の作品で「メルカトル鮎」が登場したのはこれが初。
一体何しに出てきたの?そしてその姿は何????って感じでした。
不思議だわ〜。
そして物語の中に登場する名前・鳥有とヌル(null)
鳥有の意味は『「鳥」は、いずくんぞ、何か残っているのだろうか。』
ヌル(null)の意味は『(存在)価値のない』
どっちにしても「無」、だから暗いですね〜。
私の中で今まで一番暗いキャラは京極夏彦氏の本に登場する「関口」。
でもそれ以上に暗いし不安定かもしれないですね。
加えてアシスタントで一緒についてきた「桐璃」。
彼女も謎の人物、「うゆ〜」と「うゆう」の呼び方で最初から二人いたと伏線張られてたみたいですがコレ
が分かり難い。
結局どっちがどっちよ!と今でも分かりません。
あまり好きなキャラではなかったのでどっちでもいいのですけどね。(←オイ?)
うん、確かに不思議、読み終わった直後より後からジワジワと面白さがわいてくるのも不思議。
多分この物語の答えは麻耶雄嵩氏の頭の中だけに出来あがっているのでしょうね。
そして物語云々よりも著者21歳の時の作品というのにかなり驚きました。
一言■万人受けはしないけど新天地を求める方にはオススメ。
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天窓のある家 篠田節子
*あらすじ*
9つの女性の物語。
「友と豆腐とベーゼルドンファー」
有子は勝手に退職した夫の代わりに以前の倍の生徒を教えるピアノ教師。
そんな夫が自分がリストラした元同僚の前田に100万円貸したいと言う。
「パラサイト」
祥子にとって奈々美は親に寄生しているだけのワガママ娘。
いつまでも結婚しないで実家でヌクヌクとしている奈々美に腹を立てていたのだが・・・・。
「天窓のある家」
夫に浮気され自分は被害者の筈なのに一人不幸になっている秀子。
不貞の上で家族が成立するはずなんてない!
そんな秀子の隣にある「天窓のある家」で暮らすのは容量よく歯医者と結婚した香。
香の家庭もまた夫の浮気、そして香自身も浮気に走しるのを目の当たりにした秀子が起こした行動とは。
「果実」
40年間連れ添った夫・貞夫。
家族のために身を粉にしてきた澄佳は体調を崩したのと共に離婚を考える。
しかし本当の夫の願いとは・・・・。
他
「手帳」
「世紀頭の病」
「誕生」
「野犬狩り」
「密会」
◇◇◇
仕事や家庭に必死に生きる30代〜60代の女性の姿、身勝手な夫に対して一気に感情が爆発する姿や女友達に
対して嫉妬や苛立ちを感じる姿、また昔の援助交際が祟って奇病になっていく姿や熟年離婚後に知る夫の姿
など実に様々。
篠田さんの作品は女性の心理を巧みに描いているので読んでいるとリアルなんですよね。
身勝手な夫に対しては読むだけで苛立ちがあったり、ストーカー化し壊れていく秀子には怖さと共にこんな
風に変わっていく心理状態に妙に納得したり・・。
全然関係ないですがこの話を読むと「天窓」のある家には住みたくないなぁと思っちゃいました。
「パラサイト」では我が身を振り返って反省、そしてオススメは「果実」貞夫の言葉に少しホロリ。
一言■「誕生」だけは夜読まないことをオススメします。結構怖い。
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隕石誘拐 宮澤賢治の迷宮 鯨統一郎
*あらすじ*
宮澤賢治の名作『銀河鉄道の夜』には、幻の第五次稿が現存していた。
しかも、その原稿には賢治が発見したダイヤモンドの場所が記されていた……。
妻と子供が誘拐!
童話作家修業中の中瀬研二は残された手がかりをもとに、誘拐犯の思惑を探る。
妻・稔美は、宮澤賢治研究家だった父親からダイヤモンドの在処を知らされていたようだ。
誘拐犯たちに先回りして家族を救出するため、研二は賢治童話を読みはじめる。
深淵で謎めいた作品世界の、奥底に隠された暗号とは!?
◇◇◇
物語の設定からしてかなり禁断な感じです。
最初は面白く読んでいたのですが途中から必要以上に性描写が多いのとその必要性が分からずに
ちょっと気分は盛り下がり気味。
物語と関係ないのですが基本的に夢を追いかける少年のような夫・研二みたいなタイプは私嫌いなのですよね。
夢じゃご飯食べれないし・・・・。
そんなわけで私の中ではかなりテンション低く終わった作品。
他に期待。
一言■宮澤賢治ってこういう人だったんだね。
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牛乳アンタッチャブル 戸梶圭太
*あらすじ*
国民的ブランド、雲印牛乳の大阪工場で作られた乳飲料により大規模な食中毒が発生。
苦情が殺到しマスコミの非難の中、経営陣達の殆どがあまり深刻に問題を捉えていなかった。
唯一危機感を感じていた人事担当の柴田は今こそ雲印再建とクビキリチームを発足。
内部調査チームは七名。
窓際族や刑事の娘、冷血漢など変わったメンバー達。
そこで彼らが垣間見た恐るべき大企業の実態、そして怒涛のラスト。
◇◇◇
まず最初に目を疑うのは会社名「雲印牛乳」・・・誰が読んでもまさにあの企業名指しです。
「寝てないんですよ」の発言もしっかり登場してますし。
今まで苦手だった戸梶氏の作品、でもこれは笑わせて頂きました。
やはり一番の魅力はそのメンバーの個性的な部分と役員や工場長の人間性の無さ。
大企業で一度不祥事が起きた時、会社はどう動くのか?それをブラックに描いています。
流石にここまではないでしょうがやはり皆責任逃れに走るだろうなぁ〜と少し納得。
何故この物語がここまで悪意を込めて書かれていたにも関わらず、読む側が違和感なく入れたのかは
やはり実際に存在する例の企業から誠意を感じなかったからだと思います。
さて毎回思うのですが戸梶さんって書きながらテンションかなり高くなっていくタイプなのですかね?
今回もSMを病院から救う場面がテンション高くなり過ぎて私の中では想像粋超えそうでした。
一言■掟破りの1冊ですね。苦情来なかったのかしらとちょっと心配。
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美貌の帳 篠田真由美
*あらすじ*
伝説の女優が三島由紀夫の一幕劇『卒塔婆小町』で復活。
「隠れ処」という名のホテルに設えられた舞台で、彼女は落魄の老婆から鹿鳴館の美女に変身した。
が、対立していた演出家が失踪、パトロンの館は業火に包まれ、女優にも呪詛と脅迫の電話が。
凄絶な美がもたらす罪業に迫る京介。
建築家探偵シリーズ第二部いよいよ開幕。
◇◇◇
今回から第二部スタート。
そのため前作から一気に歳取ってます・・・・ちょっとビックリ。
蒼は高校生に京介達は大学を出ているし皆バラバラに生活を始めちゃってるし。
そしてまだ桜井京介の過去は語られません、一体彼はどんな過去を持っているのかしら???
このシリーズは毎回色々な「愛」故に哀しい事件が起きてます。
今回もすれ違い叶う事のなかった「愛」故の事件。
しかしメインは京介と蒼の関係になっちゃうから不思議ですよね。
多分主役達への期待が大き過ぎて事件や犯人達の存在が薄くなっちゃうのだと思います。
そして読者がこういう気持ちになる事がシリーズもの成功の秘訣なのかしら??
一言■やっぱり蒼が好き(笑)。
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コッペリア 加納朋子
*あらすじ*
人形。人形を作る人形師。人形に恋する青年。人形に扮する少女。
母子家庭で育てられた私・聖子。
父親が名付けたこの名前を嫌い、聖(ひじり)と自ら命名した。
自己顕示欲の大きさだけには自信があり、高校生の時から劇団に所属している。
そんな私に対してストーカのように付き纏う男が現れた。
彼は幼少の頃に両親を強盗に殺され、また両親に愛された記憶すら持たない・了。
彼は偶然出会った人形、《まゆらドール》に魅せられていた。
そしてその、《まゆらドール》展を訪れた私が見たものは、私そっくりの人形の姿だった。
◇◇◇
今回の物語の中心は「まゆらドール」。
複数の人が絡み合っているのですが誰が主人公か?と言われるとやはり人形なのだと思います。
物語の視点が聖子と了の二人から描かれているのと、微妙に誰のことを指しているのかぼかして
あるので良い意味で最後まで騙されました。
毎回思うのですが加納さんのミステリには何故か品があるのですよね。
今回もまるで綺麗な舞台を見ているかのような物語の進行でした。
ただこの本は一気に読まないとラストの展開でちょっと戸惑うかも・・・。(>私だけかしら?)
一言■やはり人形って不思議な力秘めてそうですよね〜。
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ハードボイルド・エッグ 荻原浩
*あらすじ*
フィリップ・マーロウにあこがれ私立探偵になってみたものの、舞い込んでくるのは、行方不明になった
ペットを探してくれという依頼ばかり。
マーロウを気取った発言や行動もことごとく空回りしてしまう。
秘書募集の張り紙を出して届いた履歴書に同封されていたのはダイナマイトボディのお姉ちゃん。
即採用!
ところが翌日事務所に来たのはお婆さん?
そんな彼にもついに念願の刑事事件に関わるチャンスがやってきた。
◇◇◇
笑いました、そして泣きました。
やっぱり上手いです荻原さん。
今回の主役は誰も憧れない私立探偵。
全然格好良くもなく、本人だけがマーロウ気取りで周りから浮いてる存在。
そんな彼の元に来た秘書は片桐綾という名前のダイナマイト・ボディのはずが皺々のお婆さん。
追い出そうとしながらいつしか二人は良きコンビに?
荻原さんの作品に出てくる主人公はどこかダメでそしてどこか輝いてます。
勝ちつづけている人物よりも私は好きだなぁ〜、こういう人。
そして物語の途中まであれだけ笑わせてくれながらラストは思わぬ方向へ。
切ない、かなり切ないです。
しばらく固ゆで玉子を食べる時はこの本思い出すかも、そしてオススメですこの1冊。
一言■やっぱり最後は泣かされるのよね。
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子どもの王様 殊能 将之
*あらすじ*
ショウタの親友トモヤは学校にはほとんど行かず本ばかり読んでいる。
そのせいか途方もない作り話をよくする。
この団地の外側には何もないんだとか団地に住む西の良い魔女と東の悪い魔女の話とか・・・。
そして極め付けが残虐非道な子どもの王様の話。
しかしある日、ショウタはトモヤがいうとおりの姿かたちをした男を目撃。
もしかしてあれが子どもを穴蔵に閉じ込め、召し使いとしてこきつかうという子どもの王様?
怯えるトモヤを救うためショウタがとった行動は・・・・・。
◇◇◇
「ハサミ男」の殊能さんが児童文学??とこの時点でかなり興味深かった1冊。
あのインパクトの強い本が嘘みたいに自然、そして普通。
でも子供が読むとしたら第一回配本の中では一番分かり易いし面白いかもしれないですね。
ショウタが友達想いで良い子なだけにちょっとラストが寂しいですね。
でもこれでトモヤがウキウキしていたら薄ら寒いものがあるし・・・。
と言うわけでこれで丁度良い終わり方なのでしょうね。
ただこのミステリーランド、3冊とも読み終わりましたが子供たちが読んで面白いのかしら。
少し疑問。
一言■物語に登場するお馬鹿な芸人がタイゾー(原田泰造)に思えて仕方ない・・・。
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LAST 石田衣良
*あらすじ*
崖っぷちの人間たち、もう後はない彼らの残されたのは地獄の門かそれとも天国か。
7人のラストに迫った短編集。
借金地獄に陥った修二は残された24時間で自分の命と妻・娘の身売りどちらかを選ばなければならなくなった。(ラストライド)
夫には言えない、家計は火の車、真弓は明日の支払いの事で頭が一杯・・・そんな時に出会った仕事は援助交際と言う名の売春(ラストジョブ)
転々と職を変わり聡が最後に辿り着いたのはホームレスの青いシートだった。(ラストホーム)
借金の末、都築の仕事は一日千円の人間看板。そんな彼の元に命掛けの勝負が・・・・。(ラストバトル)
LAST RIDE(ラストライド)
LAST JOB(ラストジョブ)
LAST CALL(ラストコール)
LAST HOME(ラストホーム)
LAST DRAW(ラストドロー)
LAST SHOOT(ラストシュート)
LAST BATTLE(ラストバトル)
◇◇◇
7人の最終決断を描いているだけに結構重い。
4TEENの爽やかさは何処に消えたの?と思えるくらい違う作風ですね。
今の世の中借金を作ろうと思えば簡単、テレビCMでは明るく楽しそうにお金を借りる生活を紹介してますし、至るところに無人君は
ありますし・・・。
でも借りるのは簡単ですが返すのはかな〜り大変なんだと言う事をもっと表に出していった方がいいですよね。
「貸した金返せよ」と金融業者が言うのは当然なんです、そしてギリギリまで貸してくれるのも当然なんです、だって金融業者は利息で
成り立っているわけだから、全部返済されるより利子分だけ毎月取り立てれば顧客安泰で利益はあるわけだし。
それが分かっていても悪質な金融業者しか借りる場所がなくなってしまった人達。
そんな彼らのラストには自分はなりたくないなぁとしみじみ思った一冊ですね。
一言■借金だけはするまい・・・・。
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イン・ザ・プール 奥田英朗
*あらすじ*
水泳中毒・陰茎強直症・自意識過剰(被害妄想)・携帯依存症・強迫神経症。
心を患った人たちが訪れた先は清潔で立派な病院「伊良部総合病院」。
そこにあった神経科は何故か地下に・・・そして診察室のドアを叩くと甲高い声で「いらっしゃーい」という
旅館の呼び込み並みの明るい声が。
そして診察室にいたのはトドのような色白の太った男・「医学博士・伊良部一郎」。
注射フェチでマザコンで、どうしようもない医者伊良部と肉感的な看護婦マユミ。
このヘンテコな医者に藁にもすがる思いで来た患者達は逃げ腰になりながらいつしか伊良部の言葉に励まされ
癒されていく何とも奇妙な物語。
目次
1.イン・ザ・プール
2.勃ちっ放し
3.コンパニオン
4.フレンズ
5.いてもたっても
◇◇◇
子供みたいで周りから好かれようとも嫌われようとも思わない、良く言っても悪く言っても無邪気な医者・伊良部。
そこに訪れる人々もかなり変わってますがどれも現実にいそうなタイプばかり。
依存症や被害妄想、人に強く言えずにモンモンとしちゃうとか。
それをカウンセリングで治療するのかと思えば出た言葉が「カウンセリングなんて無駄」の一言。
でも「生い立ちや性格も治らないから聞いてもしょうがない」や「気にしちゃいけないって思うこと自体が気にして
ることで、どうせ堂々巡りなのよ」という伊良部の言葉は確かに正しい。
うん私は伊良部が好きかもしれない。
この変態で迷惑な生き物に妙に親近感。
そして訪れる患者と常に同じ行動を取る伊良部。
別に親身になってるわけでもなく単純に思いついたら即行動なだけなのに、何故か患者を癒して治してるのだから凄い。
この作品、続編はないのかしら?
一言■看護婦のマユミさんが妙にカッコイイ。好きだな〜。この人にしてもらえるなら注射嫌がる人少ないかもね。
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ぼくのミステリな日常 若竹七海
*あらすじ*
突然社内報の編集長に任命されたOL若竹七海。
社内報に連載小説を掲載することとなり、大学時代の先輩のつてを頼って、匿名作家に連作ミステリーを依頼する。
隣に越してきた一家酒井家、そこの息子・優介と友人になった新居。優介は新居の姉由紀子に惚れている筈、だが妊娠中の姉に
優介はシクラメン入りのケーキを食べさして・・・・。(内気なクリスマス・ケーキ)
ぼくの友人・滝沢は毎年夏になると「朝顔の女が夢に出てくる」と言う。そして朝顔の幽霊がとりついたかのように痩せていき
ついには・・・・・。(消滅する希望)
目次
桜嫌い
鬼
あっという間に
箱の虫
消滅する希望
吉祥果夢
ラビット・ダンス・イン・オータム
写し絵の景色
内気なクリスマス・ケーキ
お正月探偵
バレンタイン・バレンタイン
吉凶春神籖
◇◇◇
若竹七海さんのデビュー作でありご本人の名前もしっかり登場する短編集。
話の間に毎回ある社内報の目次・・・単に凝っているだけかと思っていたらラストにきちんとその理由が。
そういう細かい部分も好きですね。
私が好きだったのは「内気なクリスマス・ケーキ」と「バレンタイン・バレンタイン」。
どちらも読み終わった後で「ふっ」と微笑んでしまいたくなるような可愛らしいミステリです。
密室あり、ホラーあり、そして殺人事件あり?余韻を残して終わるあたりとてもデビュー作だとは思えません。
若竹さんの本を読む時に読書ペースが少し落ちるのはこういう余韻や伏線がいたるところに張ってあるのを見逃し
たくないからかもしれないです。
一言■こんな社内報があったらいいなぁ〜。
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コンビニ・ララバイ 池永陽
*あらすじ*
東京の郊外にあるコンビニを舞台に繰り広げられるさまざまな人間模様。
息子と妻を続けて失った幹郎は「ミユキマート」というコンビニの店長。
人見知りがちで幼稚園で苛められていた息子にカンケリを教えた幹郎、しかし息子はそのカンケリを練習中に
轢き逃げに合い事故死した、立ち直れない妻を一人にしたくなく二人で始めたのはコンビニ。
「賑やかだけど乾いているから……」
それが妻がコンビニをしたいと言った理由だった・・・ところが、そんな妻は開店2ヶ月後に事故死。
「・・・しあわせでした」という遺書のような文章を残して・・・・。
やる気もなく投げやりな店長・幹郎と開店当時からいる妻の友人でパートの治子。
そんな彼らのコンビニに寄って来るのは数年前に踏み倒した代金を返しにくるホステス、いい配役をもらおうと
懸命に努力する女性劇団員、シナリオ作家になりたいという男の夢を実現するため苦労する女性従業員、彼氏に
言われて援助交際をし万引きに興奮する女子高生など。
彼らは乾いた場所、コンビニで癒されそして励まされていく。
目次
カンを蹴る
向こう側
パントマイム
パンの記憶
あわせ鏡
オヤジ狩りの夜
ベンチに降りた奇跡
◇◇◇
純粋に読めばとても良いお話です。
誰にでも親身になるコンビニの店長としっかり者で気持ちの優しいパート治子。
彼らの店に来る人達は幹郎たちに励まされそして立ち直ってゆく・・・・・。
でもね、私コンビニでバイトしたことがあるだけに嘘っぽさが目についてダメでしたね〜。
それに暗いけど優しい雰囲気を持った幹郎に誰もかもが悩みを告白していくのが不自然です。
この中に出てくる買物に来る人達はみな都会の中で孤独感や焦燥感に溢れていることになっています、
そして愛に飢え、愛を求めています(肉体的に)、確かに現代の世の中は孤独を感じ易いですがそれと
「愛」とを一緒にして物語を展開させていくのに少し無理があるような気がするのですよね。
オヤジ狩りされて笑顔、万引きされても許し、そして代金踏み倒されても無かったことに出来る店長・
・そんなに出来た人を想像できなかったので私にはあまりピンとこなかったです。。
一言■良い話なんですけどね・・・・私好みではなかったです。
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風が吹いたら桶屋がもうかる 井上夢人
[Amazonで詳しく見る]
*あらすじ*
牛丼屋でアルバイトをするシュンペイは区役所勤めで超能力のあるヨーノスケと、本好き推理好き・
パチプロ並の腕を持つイッカクと三人で元倉庫に住んでいる。
ヨーノスケは超能力と言うより「低能力」割り箸一本割るのに30分かかり出前の麺は伸び放題。
日々超能力の向上に励んでいる。
しかしそんなヨースケの噂を聞きつけて、なぜか毎度毎度事件を抱えた美女たちが相談に訪れる。
超能力で事件の真相を解こうと唸るヨースケ、そしてミステリ小説ファンのイッカクは論理的な推
理を語り出す。
そして事件の真相は予想もしない方向へ展開するユーモアミステリー。
目次
風が吹いたらほこりが舞って
目の見えぬ人ばかりふえたなら
あんま志願が数千人
品切れ三味線増産体制
哀れな猫の大量虐殺
ふえたネズミは風呂桶かじり
とどのつまりは桶屋がもうかる
◇◇◇
七話とも同じ展開、同じ結末、なのに七回楽しめる・・・この魅力は素晴らしいですよね。
読者は同じパターンと分かっていも次にどうくるのかを楽しみに頁を捲る、これは力がないと出来
ないワザだと思います。
素直に尊敬。
さて毎回事件を相談に来るのは美女、そして何故だかシュンペイの勤める牛丼屋に現れます。
素直に美女好きで惚れるシュンペイ。
そして事件を語る美女達の目の前には毎度毎度ヘンテコりんな超能力開発にあけくれるヨースケの姿が・・・。
この超能力も笑えるのですよね〜。
物語は「事件⇒推理⇒解決?⇒真相」という順番。
この解決?と言う部分がイッカクの論理的な推理に基づく真相なのですが、これが全然違うのに妙に
真実っぽい。二度事件の真相に辿り着くのがこの本の魅力です。
一言■こういうミステリの展開も珍しくて面白いですね〜。
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とんち探偵一休さん 謎解き道中 鯨統一郎
*あらすじ*
京でも賢才の誉れ高い建仁寺の小坊主・一休。
問注所検使官の新右衛門、建仁寺に奇宿する少女・茜と共に、行方不明となっていた茜の両親を
捜す旅に出た。
難波、大和、伊勢―だが三人を旅路で待ち受けていたのは、不可思議な事件だった。
進入不可能の禅堂で起きた密室殺人、崖の上に建つ屋敷の消失、一人の女に崩壊されてゆく村、
鬼に殺された村人と突然消えた黒い家などなど。
冴え渡る一休のとんち推理!やがて、茜の生まれ故郷・武蔵に迫った時、彼らを待ち受けていた
驚愕の事実。
◇◇◇
これもパターンが決まった短編集。
一休さんが村に立ち寄ると不可思議な事件に遭遇、そして事件の謎を解くために犯人らしき人に
会いに行ったり事件の起きた場所に寄りたいと言うと黒幕から難題を持ち掛けられ、そこで一つ
とんちで一休さんが難題を解き更に事件の真相も解く・・・そして茜の両親の行き先を村人から
聞くという感じです。
何だかこれってドラクエとかFFのゲームみたいな展開ですよね。
(行く先々で解決しては次に進むヒントが出る辺りが。)
この物語はまず一休さんのとんちで楽しみそして事件の真相で楽しめる一つの短編で二度美味し
いかなりお徳な内容です。
一言■読者も一緒にとんちを働かせて難題を解いてみるのもよいかもしれないですね。
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殺人現場は雲の上 東野圭吾
*あらすじ*
日本航空の花のスチュワーデス、通称・エー子とビー子。
同期入社でルームメイトという誰もが知る仲よしコンビ。
ただし性格などは正反対。
東大中退、容姿端麗、そして試験も全てトップで入社した早瀬栄子(エー子)。
彼女とは全く反対で試験は常にギリギリ、容姿は丸々、ただし入社したいという気迫だけは人一倍で
エー子とコンビから名付けられた藤真美子ビー子(ビー子)。
でもこの二人、何故か毎度毎度奇妙な事件に遭遇する。
昼間、乗務中にお世話した男の妻が、自動ロックのホテルの室内で殺害。
飛行機の中には赤ちゃんの忘れ物?落とされた遺書の謎?次から次へと雲をつかむような難事件。
さてその謎に挑む二人の推理はいかに?
目次
ステイの夜は殺人の夜
忘れ物に御注意ください
お見合いシートのシンデレラ
旅は道連れミステリアス
とても大事な落とし物
マボロシの乗客
狙われたエー子
◇◇◇
東野さんの中ではかなり軽めの1冊。
最近の本だと「おれは非情勤」に近いかな。
さてこの本、第一印象が赤川次郎さんの吸血鬼エリカシリーズにちょっと似てるな〜でした。
(あちらは三人組でしたけど)
物語は短いながらに全部綺麗に解決してますし、凸凹コンビも上手い具合にその役目を果たして
るという感じです。こういうサクサクと読める本は通勤のお供に良いですね。
でも呼び方がエー子とビー子というのは何なんだ?と思っていたら東野氏ご自身もいい加減でした
と反省されているみたいですね。(笑)
出版されて時間が経った本を読むとこういう風に作者の感想も聞けるところが楽しいかもしれないです。
一言■殺人の門、手紙などの後に読むとスゴク力抜けます。
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女のとなり 乃南アサ
*あらすじ*
あとがきで著者が述べているように「女へん」のつく漢字に一つ一つと著者が遭遇した
女性達の様子を組み合わせたエッセイ集です。
その漢字は「嬶・姿・嫉・妬・妃・妾・妻・凄・好・始・嬉・妖・媚」など沢山。
妻が夫に対し鼻で「ふん」という、「女へん」に「鼻」でカカア(嬶)など。
◇◇◇
女に関するエッセイなのでどこか怖い人ばかり集まってます。
うーん、正直読んでいて私がここに登場する女性達と遭遇したら逃げるかもしれない・・
そんな人達ばかり。
でも何処か自分にも当てはまる部分もあり反省しちゃうところも。
普段私はあまり周りを気にせずに見てないことが多いのですが、気にして見渡すと意外とこの
「女のとなり」に出てくるような出来事に遭遇するのかもしれないです。
乃南さんの他人考察の鋭さに感心、そして周りからそういう目で見られないよう注意しようと
思った1冊です。
一言■漢字の勉強になりました。
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クール・キャンデー 若竹七海
*あらすじ*
誕生日と夏休みの初日を明日に控え、胸弾ませていた中学生の渚。
だが、愉しみは儚く消えた。
ストーカーに襲われ飛び降り自殺をし奇跡的に助かり重態だった兄嫁が他界。
続けて同じ頃、兄嫁・柚子のストーカーも変死していた。
しかも、警察は動機充分の兄良輔を殺人犯として疑っている。
はたして兄のアリバイは?
渚は人生最悪のシーズンを乗り切れるか。
◇◇◇
1時間程度で読み終えれる薄さ、なのにこの衝撃は何なんでしょう。
大好きな兄の無実を証明するために奔走する妹、これだけだと応援したくなる図なのに
物語の中に出てくる少し冷めた友人達や痴漢騒動など単純に兄の無実を晴らすだけでは
ない予感がヒシヒシと伝わってきます。
乾いた感じに描かれた人間関係、ところが一部では強く繋がってます。
そしてその絆の強さが怖いのですよね。
え?そんな部分で分り合えるの?という怖さ。
物語の真実は2つ。
2つとも毒が強いです。
ネタバレになるので書けませんが、若竹さんらしく最後の1行で私かなり驚きました。
そしてその一言にクギヅケ。
一言■やっぱり兄妹だよ、アンタたち。
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真相 横山秀夫
*あらすじ*
自慢の息子を殺された父親。
10年後、犯人は捕まった。
しかし犯人の口から出てきた自供は父親の思いもしない内容だった。(真相)
ある女性を轢き逃げしてしまい死体を埋めた場所が土地開発で18番ホールになる。
そして太鼓判を押され村長候補に立候補したのはいいが風向きは怪しくなり疑心暗鬼
となっていく男。(18番ホール)
他5編の短編集。
目次
真相
18番ホール
不眠
花輪の海
他人の家
◇◇◇
物語は全て一人称で語られています、その分語り手の視点から事件が見えて感情移入し
易かったですね。
真相の意味は「(世間に発表されたのとは違う)事件などの本当の事情」。
だからどの事件もその主人公の心の中で吹き荒れる事件の内情と葛藤が溢れる内容とな
ってます。
おかげで読みながらハラハラしたりイライラしたり。
全体的に重い内容なだけにちょっぴり読了後は気分が暗くなってしまいました。
さて、一番面白かったのは「真相」。
自慢の息子の意外な一面、死んでしまった息子を美化したままでいたい父親の心も理解で
きるし、妻の「あれも息子の一部だから」と良い面も悪い面も含めて息子を思う母親の気
持ちも何となく分かるのですよね。
ただ妹の気持ちは・・・・理解したくないかな。
一言■重いです、なのに一気に読まされちゃうんですよね。
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彼女が死んだ夜 西澤保彦
*あらすじ*
門限はなんと六時!恐怖の厳格教育で育てられた箱入り娘の女子大生、通称ハコちゃんこ
と浜口美緒。
彼女が両親を説き伏せて1ヶ月間のホームスティ(アメリカ)行きを勝ち取った。
そして出発前夜、葬式に出掛けた両親は一泊の留守に。
キャンパスの仲間たちが壮行会を開いてくれたのは良いものの何と家に帰ると部屋に見知ら
ぬ女性が倒れていた。
撲殺らしい頭部の血。
テーブルの下の指輪。
散切りされた髪の毛。
そして何と切られた髪はパンティストッキングに詰められていた。
ハコちゃんから助けを求められた男性陣、警察に届けようとするとハコちゃんは自分の喉に
ナイフをつきつけて「この死体を捨ててきてくれなければ、わたしは死ぬゥ!」と鬼気迫る勢
いで叫ぶ。
この事件、思わぬ方向へ進んでいき麦酒とともにタックたちの推理も進む。
タック、タカチ、ボアン、ウサコ、キャンパス四人組が挑む第一の事件。
◇◇◇
タックシリーズを読んでいるとすごーく麦酒が飲みたくなるのですよね。
そして毎回思うのは西澤さんの作品は「先が見えない」です。
今回も先が全く見えなかったですね〜。
やっぱりこのシリーズの魅力はタック達四人のキャラ。
私が男ならタカチ大好きだと思います。(笑)
踏んで踏んでって感じかしら。(違うって?)
さて物語の途中まではユーモアミステリ。
おいおいそれは妄想か?それとも真実なのか?そしてハコちゃん怖いと思いつつ、タック
の推理が進みます。
そして寂しい方向で事件が終わったかと思いきや、またまた新たな事件の真相が。
単なるユーモアだけで終わらせないところがまた上手いですね。
それにしてもハコちゃん・・・・そりゃないよなぁ〜。
一言■本当に「彼女が死んだ夜」なんですね。
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ラッシュライフ 伊坂幸太郎
*あらすじ*
やり手の画商の若い女流画家の会話から物語はスタート。
そしてプロの泥棒、神様の「高橋」を崇める信者、互いに配偶者を殺害しようとしている
不倫カップル、そして失業中の中年男+老犬。
彼ら無関係の10数名が次第に絡み合い、最後の最後で・・・・・。
◇◇◇
伊坂氏の物語は読んでいるとジグソーパズルを作っている気分になります。
無関係にみえてどこか繋がり、それが形がおぼろげに見えてくるまでは全く分からないのに
一度形が見えてくると面白いくらい絡みに絡み合っています。
「あ、これとここが・・・」という風に物語の全貌が見え始めると面白いのですがこれに辿
り着くまでに好き・嫌いが分かれそうかなぁ。
そして複数の全然無関係の人物が些細なことから彼らの人生が絡み合い、物語が巨大に膨れ
上がる様は恩田陸氏の
「ドミノ」に近いような・・・・。
この中で私は泥棒の黒澤と老犬が好き。
一言■「オーデュボンの祈り」の未来を予言するカカシさんの話題、ここにも出てきましたね。
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閉ざされた夏 若竹七海
*あらすじ*
昭和初期に彗星のごとく現われ、文壇に旋風を巻きおこした文学者・高岩青十。
そんな彼の業績を展示する「高岩青十記念館」では、秋の特別展をひかえ学芸員たちは、
連日準備に大忙し。
そのさなかに、奇妙な放火未遂事件が連続する。
新人学芸員の才蔵は他の職員の行動に不審を持ちつつ、深く関わり合わないように逃げ
道を探す。
しかし事件は職員の一人が地下室で死体となり発見されるという最悪の事態に。
ややこしい事、どろどろした事や他人の感情に巻き込まれるのが嫌いな才蔵が、好むと好
まざると次第に事件の中心・人間関係の渦へと巻き込まれてゆく。
◇◇◇
本を閉じた後で「うわー」と思うのが私にとって若竹さんの最大の魅力。
なのに今回は本を閉じた後に何も余韻が残らなかったのですよね。
多分若竹さんの本にはピリリとした毒を求めてしまうので毒がないと物足りなくなってるから。
普通に読めば普通に楽しめる、普通のミステリとしてまとまった話です。(普通の連続)
何ていいますか、2時間ドラマ(火曜サスペンスとか)で盛りあがりがなく事件解決しちゃったよ
という感じなんですよ。
才蔵が最初に感じたノンビリしたムードの「高岩青十記念館」、人間のどろどろ・ややこしい部分
から離れた世界に入ったと思っていたけれど、やっぱりそんな世界はない。
どこに行っても人間が集まれば感情の縺れ合いやイザコザあるものなんですよね。
ただ主役の才蔵よりも妹の楓の方が魅力的なのが問題ですね。
いや料理が一番魅力的だったのかも・・・・。
コロッケに負けるな才蔵くん。
一言■物語の中身より楓の作るコロッケや料理の数々が一番印象に残っちゃいました。アララ。
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晩鐘 上・下 乃南アサ
*あらすじ*
殺人事件の被害者家族と加害者家族の苦悩を描いた小説「風紋」の続編。
事件から七年後、彼らは果たしてどんな人生を歩んでいるのか。
母の死から7年、一人暮らしを始めた真裕子は未だに癒えない傷と孤独感を味わっていた。
父は再婚し義弟が出来たばかりか今度は新しい命まで産まれる。
姉は結婚し昔の暴走していた頃が嘘のように二児の母になろうとしていた。
そして真裕子はそんな二人を許せずにいた。
一方加害者、松永の家庭では、長崎の実家で祖父母に育てられていた大輔と絵里。
何故自分たちには父も母もいないのか?そして虐げられて生きていかねばならないのか疑問に思う大輔。
母親は自分のことを二人に叔母さんと呼ばせ東京で逞しく生きていた。
そして事件当時の記者・建部が再び松永の妻と再会したことから運命の連鎖がまた繋がってゆく。
◇◇◇
「風紋」を読んだ後、真裕子の涙壷と孤独感が私の心の中に強く残りました。
そして今回続編の晩鐘を開く時、真裕子が少しでも幸せだったらいいなと思い読み
進めたのですが・・・。
やはり被害者・加害者ともに事件が風化しても元の生活には戻れないのだという現
実を思い知らされた気がします。
ですから読んでいて凄く辛いんですよ、この本。
胸が痛くて痛くて仕方がないのに読んでしまうのです。
被害者の遺族・真裕子の壊れかけている心、誰か真裕子を救って欲しいのに周りに
現れるのは真裕子を傷つける者ばかりで読んでいて腹が立つやら泣きたくなるやら
・・・それでもやっと最後の辺りで義弟や建部の存在によ
り少しずつ真裕子の涙壷が大きくならないようになっていっているので少しだけ安
心しました。
そして加害者の息子・大輔。
最初は何て子供なんだと思っていました。
計算高いし狡猾だし酷い事をして人を傷つけているし・・・・。
それでも彼ら兄妹に罪はなかったんですよね。
夫婦は離婚すれば他人だけど彼らは血が繋がってるから逃げられない。
自分が「殺人者の子供」だと知った後、大輔が出した答えがあまりにも悲しかったです。
1つの事件が起こした悲しみはあまりにも深く広く、だから絶対に殺人はいけないんだと
感じました。
風紋と晩鐘は多分ずっと心の中に残る作品だと思います。
一言■犯罪を犯す前にこの本を一度読んで欲しいです。
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マーブル騒動記 井上剛
*あらすじ*
突如、牛たちが人間並みの知性を獲得した。
ある夜TVプロデューサー御手洗が帰宅すると一頭の牛が庭にいた。
何とその牛はテレパシーで話しかけてきた。
そしてその牛(モー太郎)は、「我々を食べるな」と訴えたいとテレビ出演を希望する。
担当する番組にモー太郎を出演させた後、問題は拡大し日本各地で知能を得た牛たちと人
間の確執が始まった。
世論は動き、やがて「牛権法」が制定されるが…。
第3回日本SF新人賞受賞作。
◇◇◇
牛が突然人並の知能を得る・・・突拍子もない設定なのに素直に牛のモー太郎に馴染んでし
まうのが不思議です。
物語ですが私の中ではロバート・デ・ニーロ主演の映画「レナードの朝」に重なりました。
ですからラストは悲しいんですよね。
牛権法や世論の動き云々も読み応えはあるのですが、私の中ではモー太郎の賢さと優しさが
一番心に残りました。
SFと感動する物語が好きな人は楽しめると思います。
ただ当分牛肉は食べれないかも?
一言■感動した人は「レナードの朝」をビデオで借りて下さいませ。
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エイジ 重松清
*あらすじ*
舞台は東京郊外の桜ヶ丘ニュータウン。
孤高の秀才・タモツくん、お調子者で悪ガキのツカちゃん、ちょっと気になる相沢志穂、
シカトされるバスケ仲間・岡野、ぼくを好きな後輩・本条めぐみ、そして父親は教師、
毎朝レタスとトマトを食べさす専業主婦の母、高校生の姉の優しい家族に囲まれマジメな
ぼく…。
そんな日常のなか、ぼくらの街で起こった連続通り魔事件の犯人は、クラスメートのタカ
やんだった。
事件に揺れる中学校生活のなかでみつめる、ほんとうの自分とは?
14歳、思春期に揺れるいまどきの「中学生」をリアルに描く。
山本周五郎賞受賞作。
◇◇◇
最近は新聞に「中学生」の文字が少年Aや少年Bとして載る事件が増えてきました。
キレる少年達と世間で言われる中で生きていく主人公達の心の動きを巧みに描いた作品です。
かつて中学生だった人や今から中学生になる人、そして今中学生の人。
文中にもありますが「中学生」という時代は誰もが一度は通る時代。
だからとてもリアルにこの本の少年・少女達の感情が伝わります。
14歳の頃って自分でも思うのですが凄く過敏。
学校の先生や大人達の嘘や建前・見栄や「子供の気持ちなんか全然分かってない」部分が目
に凄く映ってました。
でもその時代を過ぎると今度は「子供の気持ちが全然分からない」んですよね。
重松氏の本を読むとかつての自分を少し思い出し、そして自分に子供が出来たときにはもう
一度読み直そうと毎度思います。
一言■主人公と同じ世代(age エイジ)の人に読んで欲しい1冊です。
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クラインの壷 岡嶋二人
*あらすじ*
学生時代に応募したゲームブックの原作募集がきっかけでK2こと「クライン2
(又の呼び名「クラインの壷」)」の制作に関わることになった主人公の青年・上杉。
「クラインの壷」とは常識を遥かに超える擬似体験ゲーム機(ヴァーチャルリアリティ
・システム)。
その最終テストとしてゲームのモニターとなった上杉とアルバイトで雇われた学生・高石梨紗。
二人は謎に包まれた研究所で仮想現実の世界へ入り込んでいくのだが・・・。
上杉が度々聞く「戻れ」の声。
消えた梨紗。
二人がゲームだと信じていたそのシステムの実態とは?
◇◇◇
1989年に書かれた「クラインの壷」。
まずそのことに驚きです。
多分リアルタイムにこの本に出会っていたら感動の嵐だったと思います。
今でも充分面白くて読み始めたら止まらなくなったくらいですので・・・。
物語の展開はある程度読めるのですが、どっちの世界が本当でどっちの世界が壷の中なのか
多分読む度に迷いそうです。
そして読みながらふと「今いる私」の世界は現実の世界?という恐怖も味わっちゃいましたね。
もしこのゲームが本当に作られたとしたら、ゲームをした人は壊れてゆきそうな気がします。
私も面白そうだとは思いますがクラインの壷には入りたくないですね。
途中まではワクワクしながら楽しんで読んでいたのにラストは恐怖で終わりました。
一言■森博嗣の「虚空の逆マトリクス トロイの木馬」を思い出しました。
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