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■2005年2月
「BG、あるいは死せるカイニス」石持浅海 「裸者と裸者 上」打海文三
「ボーナス・トラック」越谷 オサム 「アルファベット・パズラーズ」 大山誠一郎
「裸者と裸者 下」打海文三 「オレたちバブル入行組」池井戸潤
「幽霊人命救助隊」高野和明 「百年の誤読」岡野 宏文 豊崎 由美
「STAR EGG 星の玉子さま」森博嗣 「デルトラ・クエスト〈1〉沈黙の森」エミリー ロッダ
「暗闇を追いかけろ」日本推理作家協会 「バーティミアスT」ジョナサン・ストラウド
「野ブタ。をプロデュース」白岩玄 「バッテリーY」あさのあつこ
「800」川島誠 「コイノカオリ」角田光代他
「佐藤さん」片川優子 「やさしい死神」大倉崇裕
「人のセックスを笑うな」山崎ナオコーラ 「ドスコイ警備保障」室積 光
「デルトラ・クエスト〈2)嘆きの湖」エミリー ロッダ 「EDGE(エッジ)」とみなが貴和
「株価暴落」池井戸潤 「クリスマスのぶたぶた」矢崎存美
「The MANZAI」あさのあつこ 「The MANZAI2」あさのあつこ
「ダレン・シャン12 運命の息子」ダレン・シャン 「」






「BG、あるいは死せるカイニス」石持浅海 東京創元社 1,680円
BG、あるいは死せるカイニス
石持 浅海

東京創元社 2004-11-30
売り上げランキング : 85,749

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*あらすじ*

天文部の合宿の夜、学校で殺害されたわたしの姉。
男性化候補の筆頭で、誰からも慕われていた優等生の姉が、どうして? 
しかも姉は誰かからレイプされかけたような状態で発見されたが、男が
女をレイプするなんて、この世界では滅多にないことなのだ。
捜査の過程で浮かび上がってきた《BG》とは果たして何なのか? 
そして事件は連続殺人へ発展する――。
全人類生まれたときはすべて女性、のちに一部が男性に転換するという特
異な世界を舞台に繰り広げられる奇想の推理。

*感 想*

東京創元社のミステリフロンティアは第一弾の伊坂氏が良過ぎたのか、それ
とも他の作品がイマイチなのか、取敢えず私とは相性が悪くらしく「面白い」
と思う作品が今のところない。
今回の「BG、あるいは死せるカイニス」も設定は今までにない突拍子もない
もので、しかも学園連続殺人ものに仕上げているのに肝心の犯人がその人以外
に考えられないのが残念なんですよね。
しかも女子高生(のちに変わりますが)の推理に警察が劣るというのも何だか
ご都合主義っぽくてダメでしたね。

ミステリ度がかなり低く、展開も短調なので全ては設定が好みかどうかで評価
が決まると思います。
今までにない斬新さは認めるのですが、それにしては今の世界と変わらない女子
高生達の描写なので女から男へ転換するという部分のインパクトが弱いんですよ
ね。しかも結局は女同士が恋人になり子供を産むのだから、「レズ」という言葉
がその世界に当てはまるのがおかしい。
部分部分に設定があやふやになっている箇所が目立つような気がしてしまうので
すよね・・・・。
「月の扉」もSF入っているし独特の世界を作り上げる方なのでしょうが私とは
どうも相性が悪いみたいで、この独特の世界についていけませんでした。

今までないタイプということで評価は普通ですが、ミステリだけで判断すると★
の数は減ります・・・。

一言■設定に凝りすぎちゃってミステリ度は弱かったですね。。
評価 ★★★
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「裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争」 打海 文三 角川書店 1,575円
裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争
打海 文三

角川書店 2004-10
売り上げランキング : 43,109

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*あらすじ*

日本のどこかでいまも戦争がおきてる  
両親を亡くした七歳と十一ヶ月の佐々木海人は妹の恵と、まだ二歳になったばかり
の弟の隆を守るため、手段を選ばず生きていくことを選択した―。  
金融システムの崩壊と経済恐慌と財政破綻があった。打ちのめされた貧しい階層、
社会的弱者、出稼ぎ外国人、市場競争の敗北者の群が路上に放り出された。
海の向こうでも悪夢が現実のものとなる。中国の中央政権が倒されて、各軍管区が
覇を競い、ニ自治区が独立を宣言。またほぼ同時期に、ロシアではサハリン油田の
富を背景に極東シベリア共和国が誕生し、一気に大動乱の時代が到来した。
戦禍に苦しむ大陸の民が、日本を平和で裕福な社会と見なして海を越え始めた。
国軍は領海に入った難民の船をつぎつぎと撃沈した。それでも大量の難民が砲火を
かいくぐって沿岸に漂着した。食糧暴動が頻発して治安の悪化は極限に達した。

応化二年二月十一日未明、〈救国〉をかかげる佐官グループが第一空挺団と第三十
二普通科連隊を率いて首都を制圧。それに呼応して、全国の基地で佐官が率いる部
隊が将官の拘束を試みた。小戦闘、処刑、新しい司令官の擁立があった。
同日正午、首都の反乱軍はTV放送とインターネットを通じて〈救国臨時政府樹立〉
を宣言。国軍は政府軍と反乱軍に二分した。  

ゆるやかに破滅へと向かう、世界と日本を予言する、大問題作!!  

*感 想*

舞台は近未来の日本。
日本人が経験した最後の戦争から既に60年が過ぎ、今の日本人にとって戦争とは
他国の問題としか捉えられなくなっています。そんな私達に戦争と対岸の火事では
なく身近で、ある日突然始るものだとその事実を投げ付けられたかのような衝撃が
ありました。

父親はアメリカ軍の誤爆のため死亡、母親は拉致され行方不明に8歳で戦争孤児と
なった佐々木海人は妹と弟の恵と隆を守るため手段を選ばず生きていくことを選択
します。本文の中に出てくる「戦争孤児の適応のかたちは2つに1つ。自殺するか
悪党になるか。」という一文の通り、生きていくため、いや家族と愛する人達を守
るために悪になることを選んだ海人の人生。
悪と言っても海人はただ生きていくために用意された1本の道を突き進むだけなの
ですけどね・・・そして恐ろしいくらに海人は良い子なんですよ。
ここまで真っ直ぐで優しい子なんているのかしら?と思うくらいに良い子なんです。

15歳になった海人は政府軍から徴兵され、「孤児部隊」と呼ばれる戦争の最前線
の部隊を率いていくようになります。最初の殺人を犯した時の海人と孤児部隊に入
り何度も闘いを繰り返していくようになった海人が別人のようになっているのです
よね。あまりにも人が死にすぎ、そして人を殺すことに躊躇いのない描写に引いて
しまいそうですが、でもその淡々とした部分が逆に「戦争らしく」またその世界に
順応していく姿に「子供らしさ」を感じさせられるのはやはり打海氏の上手さなん
でしょうね。
これだけ濃い物語なのに海人の目線で書いているせいか、物語はすごく淡々と語ら
れているのですよね。海人の感情も母親を探す時や身近な人の時のみ動くだけで後
は揺らぐことが殆どありません。
この本は主人公達に感情移入するのではなく、物語自体に入り込んでしまう怖さが
あるのですよね。
また、主人公の海人の周りの人々が良い味を出しています。
恵や隆もですが双子の月田姉妹、アパートの大家、竹内里里菜など誰もが魅力的な
んですよね。
ただし全体を通して性描写が多すぎる部分はちょっとどうかなと思いますが、これ
もまた戦争になると人間は理性を抜きにして生きるようにならないと生きていけな
くなることを表しているのかもしれません。
確かに理性を保ったまま戦火の中にいるのは難しく、女性・子供という一番の弱者
が被害にあうのは今までの戦争でも繰り返されたことですから避けて通れない道な
のでしょうが・・・。

下巻は月田姉妹の物語らしくこちらも読むのが楽しみです。

一言■本当に問題作ですね・・・。
評価 ★★★★★
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「ボーナス・トラック」 越谷オサム 新潮社 1,575円
ボーナス・トラック
越谷 オサム

新潮社 2004-12-21
売り上げランキング : 54,177

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*あらすじ*

こいつ、なかなかいい奴だ、幽霊であることを除いては。
ハンバーガーショップで働く「僕(草野)」は、ある雨の晩、ひき逃げを目
撃したばかりに、死んだ若者・横井亮太の幽霊にまとわりつかれる羽目に。
でも、こいつ、なかなかいいやつなんだ、アルバイトの美少女にご執心な
のは困りものだけど……。
「僕」と幽霊がタッグを組んだ犯人探しの騒動を描いて絶賛された、ユーモ
アホラーの快作登場! 

第16回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作品に加筆。 

*感 想*

殺された人物が幽霊となり犯人を探す、まるで有栖川有栖の「幽霊刑事」みた
いな設定なのに何故か新鮮で、眩しさを感じた1冊でした。
幽霊になった亮太と偶然轢き逃げを目撃した草野、この二人に加わるのが元々
幽霊が見える体質の南。
ただ単に犯人を追うのではなく、ここに幽霊と草野達との奇妙な友情が加わる
のがすごく良い味を出しています。
幽霊なのに緊張感のない亮太は、何と食事もすればゲームもする、イビキをか
いて寝るし、寝起きも悪い、しかも恋までしてしまうのです。
普通なら幽霊になってしまった亮太に対してやりきれなさが出るのに、彼の持
ち前の底抜けの明るさで周りの空気を和ませてくれるのですよね。
切なくなる場面でもいつしか笑いへと持っていってくれます。
最初から笑いのセンスも光っていて、死んだ後の過ごし方を想像する場面なん
てどこからこんな発想が生まれるんだろうと思うくらい私好みでした。
(閻魔様が「オッオー」という顔をしたら地獄行きなんて思わず想像してしま
いました。)
この方のこういう部分って誉めるしかないセンスの良さです。
また社会人になって仕事以外に余裕がなくなった草野も亮太と出会うことで学生
時代の友達と過ごしたあの開放感を味わい、余暇を楽しもうとする元気を貰いま
す。また一杯一杯だった部分も亮太のアドバイスで周りが見えるようにもなって
いくのですよね。

とにかく登場する人達がすごく良い味を出していて、噛めば噛むほど旨味が出る
そんな1冊なんです。
笑いあり、切なさあり、そしてちょっとホロリとくる、この作品でデビューだな
んて、凄い作家さんが登場したものです。
かなりオススメですので、図書館や本屋さんで見付けた時は迷わず手に取って
下さいまし。


一言■これでデビュー作とは!凄い方が登場しましたね!
評価 ★★★★★
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「アルファベット・パズラーズ」 大山誠一郎 東京創元社 1,575円
アルファベット・パズラーズ
大山 誠一郎

東京創元社 2004-10-28
売り上げランキング : 164,692

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*あらすじ*

東京、三鷹市の井の頭公園の近くに〈AHM〉という四階建てのマンションが
ある。その最上階に住むオーナー・峰原卓の部屋に集まるのは、警視庁捜査一
課の刑事・後藤慎司、翻訳家・奈良井明世、精神科医・竹野理絵の3人。
彼らは紅茶を楽しみながら、慎司が関わった事件の真相を解明すべく推理を競う。

毒殺されるという妄想に駆られていた婦人を巡る殺人事件、「Pの妄想」。
指紋照合システムに守られた部屋の中で発見された死体、「Fの告発」。
そして三転四転する悪魔的な誘拐爆殺事件。「Yの誘拐」。
――鋭利なロジックと精緻なプロット、そして意外な幕切れ。
本格ミステリ界期待の俊英が満を持して放つパズラーの精華!

*感 想*

解けない事件を4人がお茶を楽しみながら議論し、途中一度間違った解答に読者を
導きつつ、ラストは探偵が出てきて真相を解きお終いとなる。
分かり易いといえば分かり易い設定なんですよね。

「Pの妄想」に関してはあまりにも簡単で犯人の目安もつき易く、意外性はゼロで
した、それなのにトリックに関しては多少無理があると思わざるおえない内容なん
ですよね。
「Fの告発」も事件よりトリックにそれはないだろう?と思ってしまったのは私だ
けでしょうか?そんなに簡単に二重生活で人が騙せるものなんですかね?とその部
分にかなり謎が生まれてしまいました。

取敢えず最初の二編は彼ら4人の人間関係を読み手に伝えるだけのもので言わば前
菜やスープみたいなものなんですよね、メインはラストの「Yの誘拐」。
これは短編ではなく中編の長さなので一番楽しめるのではないでしょうか?
しかもこのラスト・・・いや驚かされましたね。
二転・三転するどころか、四転までしましたからね。
意外過ぎるラストに一瞬何が起きたのか分かりませんでした。
そうきたか!という驚きは確かにあったものの、時間を置いて考えるとやはりこの
事件の真相にも無理が出てきてしまうような気がしてしまうんですよね。

こういったアラが見えてしまう理由としてどの事件も人間像があまり深く描かれて
なかったせいかな?と思いました。
肝心の探偵役もあまり光っていません、そのせいで彼の謎解きに魅力が薄いんです
よね。何でそれだけの情報で真相に辿り付けるのか素直に納得が出来ませんでした。
短編集なので仕方がないのですが、もうちょっと深く人間像が入っていればもっと
面白さが増したような気がします。

一言■短編集なので仕方ないのですが人間像が薄かったのが残念。
評価 ★★★☆
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「裸者と裸者〈下〉邪悪な許しがたい異端の」 打海 文三 角川書店 1,575円
裸者と裸者〈下〉邪悪な許しがたい異端の
打海 文三

角川書店 2004-10
売り上げランキング : 55,476

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*あらすじ*

両親の離婚後、月田姉妹は烏山のママの実家に引越し、十一年と数ヶ月、屈託
なく暮らした。父親の不在を思ってふさぎ込むようなことは一度もなかった。
そして応化九年の残酷な夏をむかえる。
東から侵攻してきた武装勢力に、おじいちゃんとおばあちゃんとママを殺され
たのだ。十四歳の姉妹は、偶然出会った脱走兵の佐々木海人の案内で、命から
がら常陸市へ逃げ出した。

おまえが罪を犯すなら わたしも罪を犯そう
戦争を継続させているシステムを破壊するために。
月田桜子と椿子。双子の姉妹は女の子だけのマフィア、パンプキン・ガールス
つくり、世界に混沌に身を投じた。

*感 想*

主役は海人から月田姉妹に代わります。
登場人物の箇所を見て海人たちが最後に書かれているので不思議だったのですが
主役が代わるからだったのですね。
さて月田姉妹の戦争孤児の適応の方法は「邪悪な許しがたい異端」になること。
上巻の海人は幼少時代から語られているのに対し月田姉妹はごく短い期間の物語。
もともと上巻と重なっている部分もあったせいか何となく中弛み気味になってしま
いましたね。
しかも上巻と同じく性描写も多かったのですが、今度は女が男を買ったり襲ったり
するので何だかピンとこなかったのですよね。
全体を通して海人と比べて共感できる部分があまりなかったせいか物語になかなか
入っていけませんでした。
それと語りたいことは全て上巻で語られている感じもしてしまいました。
魅力的な脇役達が沢山いるのに今回はあまりその人たちについて語られてなかった
のも残念な理由かも。

ただこのラストなので続編や番外編がもしかしたらあるのかもしれないですね。


一言■上巻は面白かったのですが下巻はちょっと中弛み気味になりました。
評価 ★★★
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「オレたちバブル入行組」 池井戸潤 文藝春秋  1,750円
オレたちバブル入行組
池井戸 潤

文藝春秋 2004-12-10
売り上げランキング : 5,239

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*あらすじ*

融資課長の半沢直樹は、支店長に無理押しされた五億円の無担保融資が焦げ
付き、窮地に立たされる。支店長に責任を転嫁され、怒りに燃える半沢は何
とか融資を回収しようとする。
調査をするうちに、意外な裏があることが判明し…。

夢描いて銀行に入り十数年。バブルの狂乱が過ぎ去り、いまや銀行不倒神話
は崩壊した。ポストも減り、給料は下がり、逆境にさらされるバブル入行組
の男たちの意地と挑戦、そして友情を描く痛快小説。

*感 想*

「あー、スッキリした」読み終えてまずそう思いました。
実は池井戸さんの本はこれが初めてなんです。
今までもチェックはしていたのですが、何となく小難しそうな雰囲気が漂って
いたので敬遠していましたが、これはタイトルも装丁も入り易い雰囲気があっ
たので手にしてみました。
いやビックリ、何とも読み易く気がつけば一気読みする面白さでした。

著者が過去銀行員だったこともあり人事や融資など銀行内部に関してすごくリ
アルなんですよね。
最初はただのワンマン支店長が成績の為に無理な融資をして焦げ付いてしまい、
主人公の半沢が責任を問われてしまうのかと思っていたら途中から雲行きが怪
しくなっていくのです。おや、何だか臭うぞ、何だか裏がありそうだぞと読者
を本の前から離させない展開の良さなんですよね。

ボロボロと真相が明らかになっていく様子と半沢が銀行内で窮地に立たされて
いく様子が追いつ追われつで本当に面白い、窮地に立たされればハラハラし、
責任転換する上司達の姿に怒りを覚える。
サラリーマンにとって半沢氏の立場はとても他人事とは思えないのではないで
しょうか?身の回りにもこういう上司っていると思うのですよね。
責任を部下になすりつけ、根回しして自分の立場は確保する。
いる、いるんですよ、こういうヤツは社会には沢山。
しかも人事って実は公平なんて全くなく、上司やトップの好き嫌いで左遷や栄
転がありますからね。読んでいて何だかここに登場する上司が自分の会社のあ
いつやこいつに思えてなりませんでした。(笑)
それくらい「会社にいる」人たちばかり、だから尚更面白いのでしょうね。
また嫌な上司達に堂々と立ち向かう半沢氏の言動に読んでいて妙にスッキリ
爽快な気分になりました。

ただ一点もしも読者が難点をみせるとしたら恩情を全く持たない半沢に対して。
これはもしかすると非難が集まりそうな感じもしますね。
でもその部分をあえて恩情をいれないところにこの本の意味があるような気が
します。それと最後に父親と銀行との関係を語ることにより何故ここまで徹底的
にしたのかその理由が分かる部分もいいですよね。
人間なので例え悪いことでもそれを犯すには理由があり、特に家族まで出てき
たら普通は情に流されるのに、そこをあえてバッサリと斬っています。
最初から最後まで揺るがない半沢氏に私は拍手喝采の1冊でした。

気分爽快、痛快です。サラリーマンは読むべし。

一言■スッキリする小説ですね。
評価 ★★★★★
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「幽霊人命救急隊」 高野和明 文藝春秋  1,680円
幽霊人命救助隊
高野 和明

文藝春秋 2004-04-07
売り上げランキング : 17,413

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*あらすじ*

大学受験に失敗し首吊り自殺した裕一は幽霊になり崖の上を登りきった先にいた
のは変な三人組み。元ヤクザの親分で銃で自殺をした八木、20代で飛び降り自殺
をした美女・美晴、元社長で服毒自殺をした市川。
ここはどこ?と思っていると何と上から神様がパラシュートで降りてきた。
彼らに与えられた任務は「自殺者の命を救え!」。
救う命は100人、そして期間は49日。天国行きと引き替えに人名救助隊を結成、地
上に舞い降りた。

ミッションのもと、早速救助活動を開始した四人。
驚いたことに周りでは自殺しようとする人々があふれかえっていた。
怒涛の人命救助エンタテインメント。

*感 想*

年間の自殺者はここ数年3万人以上になっています。
統計で言えば1日に100人近くの人達が今まさに死に急いでいる計算になってしまう
んですよ。しかも日本ってまだメンタルな部分が社会で認められていないので神経
症に対して人々の関心はとても薄い、尚且つ劣等の意識があるような気がします。
でもね、これってすごく身近な問題ですし、今の社会ではいつ誰が陥っても不思議
じゃない問題なんですよね。ですからとても他人事ではないんです。

しかし自殺をテーマにした作品は今まで数多くありますが、自殺した幽霊が今から
自殺しようとしている人達の命を救うという設定は初めてです。
こんなにも重苦しいテーマなのに神様はパラシュートで降りてくるし、レスキュー
隊に選ばれた4人の死んだ時期や生まれ、性格もバラバラなので彼らの会話自体が
かなり笑えるんです。
「話が山手線」とか「なーんちゃっておじさん」とか私でも分からない単語ばかり
出てくるし、逆に携帯電話に驚いたりバブル時代のことも知らなかったり全く話の
噛み合わない4人。しかも初めての人命救助で一体何をどうしたら良いのかさっぱ
り分からない。
幽霊なのにドアが閉じたら中に入れないし、物に触れないから飛び降りそうな人を
力づくで救うことも無理、出来るのは与えられたメガホンで励ましたり怒鳴ったり
することだけなんですよ。
うわー、こんなんで一体どうやって自殺しそうな人達を救うんだろう?とハラハラ
しながら読み進むことに。この救い方は読んでみてのお楽しみです。
4人は救出する度にどんどん道具の使い方が上手くなったり、助ける方法を見付け
たり、また自殺しそうな人達のキャッチまで上達していくのです。
作戦の名付け方もまた面白いんですよね。

そして4人と出会う自殺しそうな人々は様々。
九歳の男の子から主婦、孤独なおじさん、会社員、OL、借金問題を抱えた社長、
そしてか殺人犯までいるのです。
救いたいと思う人もいればこんなヤツ救わなくてもという人まで・・・。
それでも目の前で自殺しそうな人達を救おうと必死になる4人。

数々の自殺しそうな人々を救う中、4人はそれぞれ自分が自殺した時のことを思い
出し、後悔の念に陥ってしまいます。特に自分と似た人と出会うことで、実際に自
分達は死んでしまったのですから後悔しないわけがない。この部分はすごく切ない
んですよね。
そしてこの4人が出会う最後の自殺へ向かう人物は思いもよらない人でした。

この世の中責任感が強ければ強いほど生き難い。
今ちょっと辛い時期だな・・・と思っている人に是非読んでもらいたい1冊ですね。
笑いと重さとの匙加減が絶妙なので楽しみながら後々深く心に残る本でした。

一言■笑いあり、涙あり。切実な問題なのに読んだ後は心が温まります。オススメ。
評価 ★★★★★
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「百年の誤読」 岡野 宏文 豊崎 由美 ぴあ 1,680円
百年の誤読
岡野 宏文 豊崎 由美

ぴあ 2004-10
売り上げランキング : 1,185

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*あらすじ*

ベストセラーに良書なし? 
20世紀の100年間に日本文学史上で話題となったベストセラーを大解剖。
文学的評価や世間の評判は歯牙にもかけずダメなものはダメと断ずる文芸対談。
『ダ・ヴィンチ』連載を大幅加筆し単行本化。 

*感 想*

こんな本が出版されるなんて!
本好きにとっては嬉々として手にとる本であり、作家さん達にとっては自分の作品が
載っていると恐怖のあまり読めない・・・そんな1冊かもしれません。
しかも百年分ですからあの名作もあの有名作家さんも入っているんですよ。
うわーこんなこと書いて大丈夫なの?と読んでいて心配になるくらい言いたい放題。
でもちゃーんと的を得ているからケラケラと笑いながら読めてしまうのです。
しかもこの二人の視点が面白い、あの名作をこんな風に読むのか・・と今までにない
方角から本を紹介されたような気がしました。
確かに本は一冊まるまる読んでみないと分からない。
ですからまず百年分の名作・駄作を含めて全て読んでいるこの二人に拍手です。
ちなみに私が読んでいるものはごく最近のものばかりなので、その中で特に笑いこけた
のがハリー・ポッターと世界の中心で愛をさけぶの部分でした。
ハリーが面白くないのはHP・MPが満タンだから負けようがないだとか朔太郎に関し
ては世界の中心で愛を叫ぶほどアキのことが好きなのに最後まで名前すら覚えられなか
った鶏頭で10分しか記憶が持たない映画の「メメント」呼ばわりする辺りは同感・同感
と読みながら思わず声を出したくらいです。

この本の中で取り上げられているのは各年のベストセラーになった1冊なのですが、確か
に年々ベストセラーになる本の質は落ちているような気がします。
私が参考にするのは自分がよく行くサイトさんのベストだったり本屋大賞やキノベスな
ど本をよく読むひとが選ぶベストなのですが、それと実際に売れる本とは違うんですよね。
一応ここは本のサイトなのでなるべく話題の本は読んでいるのですが、どこが面白いのか
分からないものが多い。しかも何故かそういう本に限って売れまくるのですよね。
もし私が書店員だったら「セカチュー」を買おうとする人を止めてしまうかもしれません。
『あ、それ読むなら「ノルウェイの森」にしなさいよ』と無理矢理交換させるかもしれま
せん(笑)。ニュースにもなりましたが何であれに村上春樹が抜かされるのか納得がいかな
い。また「キッパリ!」を買おうとしている人にもそれは読んでも無駄だとキッパリと言っ
てしまうかもしれません。こんな私ですからまず書店員にはなれないですね。

しかしこうして見ると「ベストセラー=良本」だと単純に思いがちですがそれが間違ってい
ることを再認識させられた1冊でした。
それとこの本を読むときの注意ですが、装丁が渋くタイトルも「百年の誤読」ですからお堅
いイメージがあります、それなのに中身は笑いの宝庫。
ですから電車や会社など他人がいる場所で読むと危険です。真面目な本を読みながら大笑い
する変な人に映る可能性もあるので・・・。
お家で一人で読むことをオススメします。

一言■百年分楽しませて頂きました。
評価 ★★★★★
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「STAR EGG 星の玉子さま」森博嗣 文藝春秋 1,050円
STAR EGG 星の玉子さま
森 博嗣

文藝春秋 2004-11-03
売り上げランキング : 2,910

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*あらすじ*

誰もいない星、ふたごの星、野球少年の星、孤独な少女の星…。
いろいろな星を訪ねて宇宙を旅する玉子さまと愛犬ジュペリの物語。
ミステリィ作家が自ら描いた絵本。親子で、恋人と、4倍楽しめる解説付。 

*感 想*

愛犬のジュペリーと一緒に小さな星の1つに住んでいる玉子さまはおじいさんが造って
くれたロケットで色々な星に出かけてみるのが好きなのです。
まずですね、この玉子さまとジュペリーの絵がすごく可愛いんです。
ページを開いたとたんにメロメロになりそうな可愛らしさなんですよ。
しかもどうやってこんな小さい星からロケットに乗り込むのやら?と不思議な部分もま
た良いです。(ちゃーんとその部分は解説で語ってますのでご安心を)
ページを捲ると左側に1つの星が書かれていて右側がその星について語っています。
全てを語るわけではなく、問い掛けてみたり、謎があったり・・・。
絵本なので「あっ」という間に読み終わってしまうのですが、ここからが普通の絵本と違
います、何と森氏は1つ1つの星に対して解説しているのです。
解説を読んでからもう一度最初から見るとまた違う味わいがありますし、4倍楽しめると
いうのは嘘ではありません、上下左右を変えてページを捲るとあら不思議、今まで見えな
かった部分に目が届くのです。一枚の絵なのに方向によって違う景色が見えてくるから不
思議ですよね。
そして絵本らしく最後の部分はとても深く語りかけています。

絵本なので答えは勿論1つではなく、何度繰り返して読んでもまた違う味わいがあると思
います。また読む人によって解釈は色々だと思います。
無機質な部分は森氏ならではですし、優しいだけでもなく、また寂しいだけでもない、感
想という感想は思い浮かばないのですが取敢えず「ダイスキ!」といいたくなる絵本なん
ですよ。
眺めているだけで幸せになった1冊。

一言■本当に4倍楽しめるんですよ。こんな読み方があったのですね・・・。
評価 ★★★★★
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「デルトラ・クエスト〈1〉沈黙の森」エミリー ロッダ 岩崎書店 840円
デルトラ・クエスト〈1〉沈黙の森
エミリー ロッダ Emily Rodda 岡田 好恵

岩崎書店 2002-08
売り上げランキング : 29,299

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*あらすじ*

ここはデルトラ王国。王家に伝わる七つの宝石の魔力が、国を守っている。
その宝石が影の大王に奪われた! 
国を救うため、少年リーフが一枚の地図を頼りに冒険の旅に出る…。
愛と友情と闘いのファンタジー。

*感 想*

この本を読んでいると「♪タラララララッタッター♪」とドラクエのレベルアップする
音やゲームが始る時の音楽が頭の中をグルグルと流れてきました。
闇の大王に乗っ取られた世界を救う為、地図片手に7つの隠された宝石を捜す旅に出る
主人公のリーフ。旅に出てすぐに出会う仲間、そして行く先々での危険、身体を敵から
守るマントや剣などまさしくRPGの世界なんですね。
少し前ですがニュースの特集で「今、小学生の間では海外ファンタジーがブーム」だと
紹介されてまして、その中でこの本を持っている子供がいたので今回読んでみたのです
が確かに子供受けするのは分かるような気がします。
PRGの世界がそのまま本になっているのですから子供が嫌いなわけがないのですよね。
ただ私が読んで面白いかどうか?となると1巻だけではまだ「おぉ」という部分はない。
闇の大王の強さもその世界もあまり語られていませんし、それぞれの場面に出てくるボス
キャラが以外と弱い。
しかも主人公があまりにも簡単に冒険に出るのも拍子抜けしちゃうんですよね。

おそらく今からもっと色々な仲間と出会い別れて物語が膨らんでいくのでしょうがあまり
にもRPGぽくてイマイチでした。
この物語かなり長いシリーズになっているので最後まで読みきれるかどうかは不安ですが
ボチボチと読んでいく予定です。

一言■まさにこれはドラクエですね。
評価 ★★★☆
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「暗闇を追いかけろ」日本推理作家協会 光文社 1,200円
暗闇を追いかけろ
日本推理作家協会

光文社 2004-11-18
売り上げランキング : 168,484

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*あらすじ*

現実世界の至る所に、闇は口を開けている。
闇と向かい合うために、私達はありとあらゆる想像上の闇を作り上げ、覗き
込んで見るべきなのだ。さあ、ご一緒に闇の中へ! 
闇に迫る短編17編を収録した、ミステリー奇想の競演。 

乙一/石田衣良/西澤保彦/五十嵐貴久/馳星周 他

*感 想*

豪華なメンバーに惹かれて読んだのですが、楽しみにしていた西澤氏、石田氏、
乙一氏に関しては既に読んでいる短編だったのでまずその部分でガッカリ。
そして作品の怖さや闇の部分でもかなり差があったのですよね。
悪意の深さや後味の悪さ、また怖さに関しても背筋のゾッとするものから、ただ
の気持ち悪いものまで様々でした。
中にはあまりにも短くて何だかよくわからなかった作品まであったのですよね。

さてその中で印象が残ったのは「古井戸」。
これは悪意もですが最後の描写が怖かったですね、まさに貞子ですよ、貞子。
あの映画の怖さがそのままこの物語に繋がっしまいました。
それともう1つ「不登校の少女」はホラー度が高かったですね。
また男性にとって一番怖いのは「ポキポキ」だと思います。
ただのエロ話(笑)で終わるのかと思えば恨みはキッチリと晴らす辺りに女性独
特の怖さを感じましたね。でも女性ならこの相手に対しては「ポキポキ」しちゃ
うでしょうね。(笑)

17作もあれば好みもかなり分かれてしまうでしょうが、やはり一番面白いと思っ
たのは西澤氏。既に読んでいたのですが、それでも一番好きでした。
タック&タカチシリーズだからというのもあるのですが、身近で起こり得る悪意
を書いているのでただのホラーよりも怖いんですよ。

基本的にホラーやグロいものが好きではないので評価は普通の星3つです。

一言■豪華なメンバーなのですが既に読んでいるものもあったので・・・。
評価 ★★★
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「バーティミアス-サマルカンドの秘宝」ジョナサン・ストラウド 理論社 1,995円
バーティミアス-サマルカンドの秘宝
ジョナサン・ストラウド 金原 瑞人 松山 美保

理論社 2003-12-13
売り上げランキング : 2,276

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*あらすじ*

舞台は、魔法使いたちが支配する、現代の街ロンドン。
魔法修行中の少年ナサニエルは、泣き虫だけど、負けず嫌いな12歳。
少年は、ベテランの妖霊バーティミアスを呼び出した。
その目的は、邪悪なエリート魔法使いサイモンに復讐をするため、<サマルカンドの
秘宝>を、盗み出すということ。はたして、ヒヨッコ魔法使いのナサニエルと、ちょ
っとまぬけなバーティミアスのコンビは、<秘宝>を手に入れ、強敵サイモンをやっつ
けることができるのか?

*感 想*

冒頭がいきなりバーティミアスから入るので話の流れを掴むのに暫く時間がかかりま
した。児童書で時の流れが順番通りでない作品って珍しいですよね。
さて物語の舞台は現代のロンドン、ナサニエル少年は見習の魔術師です。この街では
家族が子供を政府に売り飛ばし魔術師の家に修行させる仕組みになっているのですが
ナサニエルの師匠となったアンダーウッドは力もなく性格も悪い魔術師でした。
ろくに魔術を教えてくれるわけでもなく、師としても人としても最低なアンダーウッ
ドの元での生活で唯一の支えとなったのが夫人でした。彼女だけは心優しくナサニエ
ルに接し、少年にとって一番大切な人になっていました。
ところがこの師匠と弟子の関係が見事に崩れる出来事が・・・。
冷酷非道な魔術師サイモン・ラヴレースへの復讐を近い、ナサニエルは自力でよわい
5000歳の妖霊バーティミアスを呼び出します。
長く生きてきただけあってバーティミアスは知識も能力もあるのですがやはり悪魔、
性格は捻くれています、そして物語の主人公はタイトルの通りナサニエルではなく悪
魔のバーティミアス。ですから当然バーティミアスの視点で物事は語られるので魔術
師は所詮「人」であり、万能ではなく愚かな生き物として語られているのですよね。
今まで色々なファンタジーを読んできましたが召還された悪魔が主人公なのはこれが
初めてですね。
ただバーティミアスの視点から語られてるため注釈が多い。
最初は丁寧に読んでいたのですが途中からこれが邪魔で邪魔で話の流れがプツッと途
切れてしまうんですよ。(私だけかもしれませんが)
その部分が評価のマイナス☆1つ分です。

ヒヨッコの魔術師が安易に首を突っ込んだのは「命」を脅かす存在の秘宝。
こういう内容って子供が好きそうですよね。
既に映画化が決まっていたり三部作のうちの第一作目だけあって謎は謎のままですし、
ややアクションが多いような気はしますがそれでも小道具は生きているし展開もスピー
ド感にあふれているので飽きることなく読めると思います。

ハリーの対抗馬と書かれていますが「魔法」に対する考え方が全く違うのであまり対抗馬
になってないような気もしました。
FFが好きな人は楽しめるのではないかしら?

一言■現代と異世界が交わる面白さですね。
評価 ★★★★☆
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「野ブタ。をプロデュース」白岩 玄 河出書房新社 1,050円
野ブタ。をプロデュース
白岩 玄

河出書房新社 2004-11-20
売り上げランキング : 947

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*あらすじ*

桐谷修二が人気者になるべくプロデュースするのは転校生の小谷信太。

実は俺の人気は嘘で固めらている。人に好かれるべく毎日学校用の「桐谷修二」という
ぬいぐるみを被っているのだ。
いつもおちゃらけている俺の前に現れたのはいじめられっ子転校生小谷信太(シンタ)。
彼はキモチ悪いほどおどおどしたデブだった。
転校早々イジメに合う信太から弟子にしてくれと頼まれて俺はヤツを人気者にすべく、
プロデューサーを買って出た! 
見かけと名前の信太(シンタ→ノブタ=野ブタ)と命名した俺。
果たして野ブタは人気者になれるのか?

*感 想*

芥川賞候補に上がった本作。前回から芥川賞候補には10代・20代の方が多く候補に上がる
ようになってきましたが、白岩氏も1983年生まれ、20代前半で現在学生さんだそうです。
綿矢氏、金原氏の時も感じましたが、残念なことに彼らの描く10代や学生像が私には馴染
めないのですよ。すごく年代の差を感じてしまうのですよね。
高校生の男の子が主人公で彼らの微妙な人間関係を描いた物語なのに、高校生とはとても思
えないくらい誰も彼もが幼い、一言で言えば「アホっぽい」。
それは会話の中に度々登場する意味不明の「(笑)」が多すぎるからそんな印象を受けるの
かもしれないのですけどね・・・・。

内容ですが、人間関係の難しさや若さ故の悪意など着眼点は面白いのですが、後味が悪い。
クールに決めていた筈の自分「人気者の桐谷修二」は1つの誤解から一気に崩れ人気者の座
から転落してしまう。
傷つき易いのに傷つかないふりをする、こういう部分って分かりますけどやはり自分の高校
時代と比べるとそこまで同級生とベタベタする関係でもなかったし、学校なんて授業を受け
たらさっさと帰る場所でしかなかったですし、何よりクラスで人気者も嫌われ者も特に存在
していなかったのですよね。
ですから桐谷みたいに必死で自分を作り上げる必要もなく、人間関係すら築いていなかった
のでこの辛さや面倒くささ、壊れた時の悲しみは分かりませんでした。
多分私の時代には携帯もなければPCもメールもない、電話だって大抵親が出るからそんな
に頻繁に連絡取れるものでもない、だから学校友達は学校の中だけで終わっていたので今の
子と比べるとそこまで「友達」が必要でもなく楽な時代だったのでしょうね。
今って友達の数が自分の人気度みたいになっていて質より量って感じがするので、面倒臭が
りの私にはとても耐えられないかも・・・。
物語とは全く関係なく最近の若者って大変なのねと感じた1冊でした。

子供特有の陰湿さや悪意を描いている部分は◎ですが、後味悪いし好みではなかったので
評価は低めです。芥川賞関係の作品とは相性が悪いのかもしれません。
だいたい「野ブタ」ですよ「野ブタ」。その部分だけでもダメでしたね。

一言■若者には受けるのかもしれないですけどね・・・。
評価 ★★☆
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「バッテリーY」あさのあつこ 教育画劇 1,680円
バッテリー〈6〉 教育画劇の創作文学
あさの あつこ 佐藤 真紀子

教育画劇 2005-01-07
売り上げランキング : 1,333

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*あらすじ*

「おれは、豪でなくても投げられるだろうか」 自問する巧。

投げられる者でありたい。
なに一つ条件をつけることなく、最高のピッチングを成す者でありたい。
誰からもなにからも、自由でありたい。

それが巧の答えだった…。

新田東は横手との再試合に挑み、強打者・門脇との再対決をむかえる。
そして、巧と豪は・・

シリーズ最終巻。 

*感 想*

巧と豪を主軸にして海音寺・瑞垣、吉貞、青波そして監督の戸村が野球を通して変わっていく
成長していく「バッテリー」の最終巻。
あまりにも伝えたい事や描きたい人が多すぎて6巻は場面の展開がコロコロと変わります。

それぞれが成長していく中、巧は豪と出会うことで人と真正面から向き合うことを経験します。
球のこと、ピッチャーのことしか考えていなかった巧が出した答えは豪とは「キャッチャーだか
ら一緒にいるわけではない」という事なのですが、これに対して豪の反応がイマイチ鈍かったの
が気になるのですよね。最初の頃は人の話を最後まで聞いていた豪が巻が進むにつれて意固地に
なっているような気がするのです。豪にとって巧はやっと出会えた人であり、出会わなければ良
かった人でもある、その部分が壁になっているのか一番大事な巧のこのセリフが軽く流されてし
まった印象を受けました。
いつになるか分からないが別れるその時まで逃げずに巧の前に座っていたいと思う豪に対して、
おそらく巧は野球・バッテリーを超えた二人の強い絆と関係を思っている、その熱の差が少し淋
しく感じてしまいました。
天才と凡人との差、これは門脇と瑞垣の関係でもあるのですがやはり超えられない何かがあるの
かもしれないですね。

ネタバレかなり含みます↓

多分このラストは6巻の途中まで読んでいたら予測出来ると思います。頁数からいってもこの場
面で終わるのだろうな・・・と分かってしまうのですよね。
全員の思いを込めた一球を投げた場面で幕を閉じる、それから以降の展開は読者それぞれの想像
に任せるというラストは美しいですし一番良いのでしょうがあえてその先を書いて欲しかったの
ですよね。
このラストで感動する方は多いのですし結果ではなく、最高の場面がここだと皆さん思うのでし
ょうが、ここまで巧と豪の二人に惹きつけられた私にはやや不完全燃焼でした。

読み返すとこのラストはすごく感動的なのですが、一読目に「え?ここで?」と思ってしまった
のでその時の評価で星4つです。
何度も読み返せばまた違う色が見えてくるのでしょうが・・・。

私の中で「バッテリー」は森絵都さんの「ダイブ」と同じくらい夢中になった本でしたのでどう
しても「ダイブ」と比べてしまったのですよね。
そうなると「ダイブ」は彼らの未来への余韻を残しながら最後までそれぞれの道を語っていたの
に対して「バッテリー」は最後を語らずに余韻だけを大きく残した形になっています。
それと6巻まで読んでみて改めて彼らが中学生だということを考えたのですよ(遅い?)、そう
なるとあまりにも皆さん大人で良い子になっちゃってるなぁという違和感が少々してしまいまし
た。「ダイブ」が全巻一気に読んだのに対して、こちらは1巻〜6巻まで一気に読んでいないの
でそういう部分が出てしまったのかもしれませんが・・・。
また5巻まで読み返して感想が変わったらその時は書き直します。

それと気になった点が青波。
死んでしまった子犬を真夜中に埋めるのですが、私にはここが死を乗り越えた成長の部分には感
じられなかったのですよね。冷たくないですか?
思わずここは「青波、それは違うんじゃないか?」と思ってしまったので・・・。
私のとらえ方が悪いのか6巻はどうもあさのさんの伝えたいことが上手く伝わらなかったですね。
残念。



一言■あさのさんの投げた球を上手く取れなかったみたいです・・・。
評価 ★★★★
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「800」川島誠 角川書店 620円
800
川島 誠

角川書店 2002-06
売り上げランキング : 16,287

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*あらすじ*

なぜ八〇〇メートルを始めたのかって訊かれたなら、雨上がりの日の芝生の匂いのせいだ、
って答えるぜ。思い込んだら一直線、がむしゃらに突進する中沢と、何事も緻密に計算して
理性的な行動をする広瀬。
まったく対照的なふたりのTWO LAP RUNNERSが走って、競い合って、そして恋をする―。
青空とトラック、汗と風、セックスと恋、すべての要素がひとつにまじりあった、型破りに
エネルギッシュなノンストップ青春小説。

*感 想*

自分で図書館に借りておきながら予約本に「800」というタイトルを見て何の本だったかさっ
ぱり思い出せなかったのですよね。
今までいろいろな本を読んできましたがすごくシンプルで尚且つ物語が全く見えないタイトルで
すよね「800」」って。
そんなタイトルなのにこの本はかなり、いやとても面白いんです。

さて何度も繰り返してますがタイトルの「800」とは陸上競技の800メートルの事。
400メートルのトラックを二周(TWO LAPS)する800メートル・ランナー(TWO LAP RUNNERS)
の中沢と広瀬の物語です。
彼ら二人はライバルなのか友達なのかかなり微妙な関係で、しかも性格は正反対、そんな二人が
800メートルを駆け抜ける速さで恋と若さと悩みの全てを出し切った一冊です
テンションの高い中沢に対して天然の広瀬、この二人の静と動の関係や物語のテンポもよく、ま
た彼らの周りにいる女の子たちが良い味を出しているんですよね。
しかも普通ならもっと陰険で泥沼化しそうな距離に皆がいるのにクールで天然過ぎる広瀬が間に
入るとサラリと清いものに感じてしまうから不思議です。
また中沢のアホ丸出しの部分も良いのですよね、女の敵でありながら憎めない軽さ、こういうキ
ャラってなかなか出せないと思います。

しかし陸上競技の中で今まで知らなかった800メートル。
この本を読むと今度から注目してみたくなりましたね。いやもし私が中学か高校時代にこの本と
出会っていたら800メートルを目指したかもしれません。

この本の良さは読書中と読了後の爽快感。
まるで一汗かいてきたかのような清々しさがあるんですよ。
多分それはいろいろなことがあっても全て800メートルで勝負みたいな気持ちよさがあるから
なのでしょうね。そしてこの瞬間を二人がすごく好きなところが伝わってくる部分がまた良い。

そしてこれだけ正反対の二人だと中沢派と広瀬派に分かれそうですね。
脳味噌も筋肉、明るく軽い中沢と坊ちゃんで天然ボケの広瀬、モテルのは中沢みたいですが私の
好みは広瀬ですね。ファンが付きそうなくらいよい味出してる二人なのでその部分だけでも読ん
で楽しいと思います。

小粋でスカッとする青春小説、かなりオススメです。



一言■気持ちの良い青春ものでした。
評価 ★★★★★
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「コイノカオリ」角田光代 角川書店 1,365円
コイノカオリ
角田 光代 島本 理生 栗田 有起 生田 紗代

角川書店 2004-12
売り上げランキング : 2,700

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*あらすじ*

最近、恋のしかた、忘れてませんか?
ひとは、一生のうち何度恋におちるのだろう。
ゆるくつけた香水、彼のタバコや汗の匂い、好きな人に作った特別な料理。
柔らかい恋の匂いをモチーフに繊細に、あるいは大胆に綴る、6つのラブストーリー。 

角田光代「水曜日の恋人」
島本理生「最後の教室」
栗田有起「泣きっつらにハニー」
生田紗代「海のなかには夜」
宮下奈都「日をつなぐ」
井上荒野「犬と椎茸」

*感 想*

毎週水曜日に会うイワナさんは母親の恋人だった。
母とかなり歳の離れたイワナさんと三人でいると母親と息子・娘にしか見えないだろう。
二人の関係はイワナさんの口から聞いたけれど、二人からは一緒の香りがしていた、嘘っぽい
シャンプーの香りが・・・。「水曜日の恋人」

昔はよく読んでいたのですが二十代半ばを過ぎると自然と足が遠のいていたのが恋愛小説。
嘘っぽさや生々しさが面倒で読まなくなっていたのですがこの作品は短編集ですし角田氏・
島本氏の名前があったので借りてみた一冊です。
読んでみてやっぱり恋愛ものはあまり好みではなくなったなぁと再認識してしまいましたね。
甘酸っぱさやもどかしさに共感を覚える歳ではなくなってしまったみたいです。残念。
さてタイトルが「コイノカオリ」だけあってそれぞれ思い出の香りと共に物語が語られています。
恋愛中はあまり感じませんが恋が終わった後、街角や思いもしない場所で昔の相手と同じ香りを
感じたときに懐かしさやその当時のことを強く思い出すことってあると思います。
相手の顔やそのとき交わした会話は忘れているのに香りによって当時の自分の気持ちだけが押し
寄せてくるように胸に突き刺さる・・・そんな六つの短編集なんですよね。

基本的に私は恋愛ものはコメディ以外は好きじゃないんですよね。
映画でもコメディでハッピーなものは見ますが切ないとか泣けるとかドロドロとしたものは俳優
が好みではない限り見ることはありません。疲れるんですよね。
ですからこういうよく分からない切なさを綴っているものはどうも苦手でしてどの作品もイマイ
チでした。わざわざ自分から不幸の道に走る恋愛って支持できないので私のようなタイプには縁
がない本ないのかもしれないですね。
不倫も興味がないですし、歳の離れた相手を好きになったこともないですし、そもそも昔のこと
をすぐに忘れてしまうので懐かしさに悶えることもない。
何で読んだのかが不思議なくらい相性が悪かった本でした。

純粋に恋をしている又はしたい、もしくは終わった人にオススメです。


一言■分かるような分からないような・・・切ない恋愛ものは苦手なんですよね。
評価 ★★★
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「佐藤さん」片川優子 講談社 1,365円
佐藤さん
片川 優子

講談社 2004-07-16
売り上げランキング : 58,638

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*あらすじ*

高校一年の少し気弱な主人公の男の子・佐伯君。
彼が、幽霊に憑かれている「佐藤さん」と出会い、彼女の除霊を引き受けた
ことで彼と彼女のふしぎな関係がはじまった。

現役高校生作家デビュー作。第44回講談社児童文学新人賞佳作受賞。 

*感 想*

「僕は佐藤さんが怖い。」
冒頭のこの一文はかなりのインパクトがありました。何?何が怖いの?と思わず
先が読みたくなるのです。しかも主人公・佐伯君が怖がっていたモノは隣の席の
佐藤さんに憑いている幽霊。何故か昔から幽霊が見える佐伯君にとって毎週入れ
替わり色々なモノを背後につけてくる佐藤さんは怖くてたまらない。
佐伯君の気弱ぶりがあまりにも可笑しくてついついページを捲ってしまうそんな
上手さがあるのですよね。後で知りましたがこの表題「佐藤さん」は著者が中学
生の時に書いた作品だそうです。恐るべし中学生。

さて内容ですが中学時代にパシリ&いじめにあっていた主人公の佐伯君は高校に
入ってからも周りにいつもビクビクしています、しかも同じクラスには元イジメ
ッ子と似た雰囲気のクラスメイトが何故か自分に寄ってくるし、隣の席の佐藤さ
んには恐ろしいくらい幽霊はついている、しかも学校では優しく良い人の佐藤さ
んは二人っきりになるとかなりキツイ性格でいきなり除霊を頼まれてしまう。
気弱な佐伯君は見たくないのに幽霊と向かい合い何と会話までしてしまうのです。
ここまでくるとファンタジー&ユーモアのあるお話で終わるのですが章が進むに
つれて気弱な佐伯君が少しずつ勇気を出していく部分や、イジメ・虐待の克服な
ど思わぬ重さ深さを見せてくれます。

現役高校生が書いたという部分を考慮すれば五つ星でも良かったのでしょうけど
どうもこの主人公達が高校生に思えなくてギャップを感じてしまったのですよね。
会話や行動が小学生に思えてしまうくらい幼い。しかも主人公が気弱というより
情けなさ過ぎて、彼に対して優しい・良い人という周りの評価と私の評価は一致
しなくてダメでした。
しかし今の若い子で聖子泣きとか知っている人いたのですね。そのことに驚きま
した。

大変良いお話なのですが綺麗過ぎるものってダメなので評価は低めです。

一言■主人公が中学生の設定なら良かったのですけどね・・・。
評価 ★★★☆
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「やさしい死神」大倉崇裕 東京創元社 1,680円
やさしい死神
大倉 崇裕

東京創元社 2005-01-08
売り上げランキング : 19,008

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*あらすじ*

落語専門誌の編集部に配属された間宮緑に落語がらみの騒動が持ち込まれる。
“死神にやられた”というメッセージに首をひねる表題作「やさしい死神」を
皮切りに、物足りない芸ゆえに先行きを危ぶまれていた噺家二人が急に上達す
る「無口な噺家」、元名物編集長の安楽椅子探偵譚「幻の婚礼」、携帯事件に
始まり牧&緑コンビ定番の張り込みで決する「へそを曲げた噺家」、ウイリア
ム・アイリッシュ『幻の女』ばりの展開に翻弄される緑の単独探偵行「紙切り
騒動」と、「名探偵」でもある牧大路編集長とのコンビで展開するバラエティ
に富んだ全五編を収録。

落語シリーズ第3弾。 

*感 想*

落語ミステリだけ聞くと遠慮しがちになりそうですがこのシリーズは自信を持って
人に薦められる1冊です。
何が良いかと言うとそれは落語ならではの「人情味あふれる」部分。どの話(噺)
も人間同士の温かみがあって読んだ後は胸がホコホコするくらい気分が良いのです。
実は落語は今まで一度も聞いたことがありません、この本を読むまでは爺さん婆さん
が好む渋い笑いだと思っていたのですが大きな勘違いでしたね。落語が聞きたくてた
まらなくなりました。すごく面白そうなんですよ。
この中に登場する噺は文字で読んでいてもふと笑いが込み上げてくる、大倉氏の書
き方が上手いのか目の前に落語家がいるような気分になっちゃうのですよね。
そして5つの事件・謎と落語のオチが見事にリンクされていて「お見事」と拍手を
したくなるものばかり。
二重に騙されてしまう「無口な噺家」、ラストが感動的な「幻の婚礼」、緑が大活
躍する「紙切り騒動」など全く飽きさせない5つの噺。
どれも人情味あふれるラストに仕上っています。
異色ミステリなのにここまで人を惹きつけるのはやはり日本人はこういう人情モノ
が好きだからでしょうか?

ところで、これだけシリーズが続いてるのに主役の二人の事ってあまり語られてい
ないのですよね。あとがきを読んで改めてそのことに気付かされました。
自然と牧&緑像というのが頭の中に出来あがっていて二人が私に落語の面白さを伝
えてくれていました。

この面白さは読んでみないと分かりません、まずは一読あれ。

一言■久々に噺が聞けて大満足です。
評価 ★★★★★
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「人のセックスを笑うな」山崎ナオコーラ 河出書房新社 1,050円
人のセックスを笑うな
山崎 ナオコーラ

河出書房新社 2004-11-20
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*あらすじ*

主人公のオレこと磯貝が彼女と出会ったのは19歳の時。
油絵が勉強したくて入った美術専門学校の講師として彼女はいた。
彼女の名前は猪熊サユリ、人妻でオレより20歳年上の39歳。
美人でもなく教師として優れているわけでもないのになぜか生徒から人気がありユリ
ちゃんと呼ばれていた。
ある飲み会でユリちゃんに好きだと告白されたオレは彼女のアトリエでモデルをして
いるうちに関係を持ってしまう。年齢のわりに幼い彼女に対して恋とも愛ともつかぬ
いとしさが、オレを駆り立てた。歳の離れたふたりの危うい恋の行方は?

*感 想*

今回芥川賞候補の中で著者名とタイトルがもっとも目立っていた本作「人のセックスを
笑うな」(山崎ナオコーラ)。
このタイトルならば普段本を読まない輩も興味津々で手にとってしまうでしょうね。
もしこのタイトルから判断しその部分(どの部分だ(笑))を期待して読んだ方はかな
りガッカリするでしょう。普通の恋愛小説ですから、これ。

19歳と39歳の歳の差カップルであるオレとユリちゃん。
ユリちゃんに対して本当に恋しているのかよく分からないオレだったのだがユリちゃん
を失った今わかるのは彼女の歳相応のシワやポコンと出た腹、かさかさの肘、だらしな
さや手を抜いた化粧全てがいとおしい・・・そんなことをつらつらと書いてある本なん
ですよね。
自分の好みやタイプとは関係なく誰かを好きになり、好きになった人が全てである。
この部分を強調する為にあえてクールにユリちゃんを客観的に見て判断している主人公。
それはユリちゃんの旦那さんにも当てはまり、想像以上のぶ男だと書かれている。
無神経で自分は優しいと勘違いしているユリなど蹴落とすだけ蹴落としておいて最後は
やっぱり彼女がいとおしいとくる。
相手の悪い部分を全て知っていても好きなバカなオレ。恋をして他人から見たら滑稽な
自分を書ききっている作品なのでしょうが残念なことに肝心の切なさが全く伝わってこ
なかったのですよね。
素直に読めば切々としたものが伝わってくるのでしょうが、タイトルの強烈さの割りに
中身が薄かったような気がどうしてもしてしまったのですよね。
それとタイトルがどこにリンクするのかがサッパリわかりませんでした。
笑う部分なんてないですし、誰も彼らの恋を否定してないわけですから・・・。

インパクトの強いタイトルの作家さんで思い付くのは伊坂幸太郎さんなのですが、彼の
作品の場合、そのタイトルが見事に当てはまっているのです。
そういう部分の喜びも含めて本を読んでいますし、そもそも本のタイトルは中身と合って
ないと意味がないような気もします。
どうしてもその部分が引っ掛かったのと、主人公のオレに感情移入出来なかったので評価
は低めです。

一言■つまり痘痕もえくぼって事ですかね。
評価 ★★☆
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「ドスコイ警備保障」室積 光 アーティストハウスパブリッシャーズ 1,470円
ドスコイ警備保障
室積 光

アーティストハウスパブリッシャーズ 2003-07
売り上げランキング : 69,542

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*あらすじ*

800人の力士のうち、関取になれるのは60人。残りは全部おちこぼれ? 
廃業後の力士のうち、タレントになったり、チャンコ屋さんになって成功する人はほんの
一握り。大半の人は、資格もなければ学歴もなく、転職に苦労する。
この就職問題を解決しようと、相撲協会は廃業後の力士たちを受けいれる会社を設立する
ことにした。その名も「ドスコイ警備保障」。

涙と笑いいっぱいのコメディ。 

*感 想*

私が常々思っていたのがスポーツ選手って現役時代は良いのですが、引退した後で活躍する
場が残っている人はごく僅かなんだろうなぁということです。
野球にしてもサッカーにしても数年前に選手だった人で今テレビに映る人なんて本当一握り
他の人はどうしてるんだろう?と思うことがありました。たまにニュースで元野球選手が自
殺などの悲しい訃報を耳にするとスポーツの世界って長く活躍できる場ではない分、本当に
その後が大変なんだろうなぁと思っていました。
そして今回はそのスポーツの中でも体格だけでも普通のサラリーマンにはなれそうもない
引退した力士の話です。

相撲をしなければただの大飯くらいのデブになってしまうという元横綱南ノ峰の言葉、しか
し相撲取りの身体は普通のデブとは鍛え方が違う、この部分を活かした会社を設立しようと
考えたのが「ドスコイ警備保障」。
この会社を横綱と一緒に設立しようと考えたのがリストラにあった同級生近藤、井上、山本
、そして彼らの頼りの綱が酔うと暴言を吐いてしまうプロダクションの社長をしている敦子。
同郷の彼らのコントのような会話と人の良さでドスコイ警備保障はスタートします。
次々と元力士が集まる中、忘れてはいけない存在が「ただのデブ」である松村。
気弱なのにいつでもポジティブの松村がムードメーカーとなりドスコイ警備保障は瞬く間に
世界へと羽ばたいていくようになる、まさにアメリカンドリームのような話なんですよね。
あまりにもトントン拍子で物事は上手くいくし、自分の責任ではなく周りのせいで仕事を
失った敦子なのに「運」だからとか「彼らは馬鹿だから仕方ない」と誰も恨まずあっさりと
許す人の良さなどあり得ないことばかりなのですが、それでも読了後の気分が良いので許せ
てしまいます。
物語自体は良い意味でも悪い意味でも娯楽本、楽しかったなぁの一言で済んでしまうのです
が、この本を読んで誰かこういう会社を実際に作ってくれればいいなと思いました。

爽やかで、気分の良い話が読みたい人にはオススメです。

一言■読んでて気分の良い一冊。ドスコイって言いたくなりましたね。
評価 ★★★★
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「デルトラ・クエスト〈2〉嘆きの湖」エミリー ロッダ 岩崎書店 840円
デルトラ・クエスト〈2〉嘆きの湖
エミリー ロッダ Emily Rodda 岡田 好恵

岩崎書店 2002-08
売り上げランキング : 21,407

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*あらすじ*

前作「沈黙の森」」でトパーズを手に入れたリーフ、元衛兵のバルダ、森の少女ジャス
ミンは、次の目的地である「嘆きの湖」を目指す。その一帯は、魔女テーガンにより支
配されている恐ろしい魔の地であった。
リーフたちは魔女と影の憲兵に気を取られながら進むうち、影の憲兵に捕まっている不
思議姿をした小さな男を見つける。その男はララド族のマナスだった。マナスを助けた
リーフ達は影の憲兵から逃げきった後、とある看板を目にする。そして近づいた先にあ
ったものは恐ろしい底なし沼だった。その窮地をすっくてくれた老夫婦ニジとドッジ。
しかし彼らの本当の正体は・・・・。そして嘆きの湖で三人が出会うのは? 

次々と襲いくる敵、迫りくる謎で息もつかせぬ展開。

*感 想*

謎解き、逆さ言葉、ふみ石とまさしくドラクエの世界なんですよね。
子供が読めばその箇所で頭を悩まし解決する楽しさがあるでしょう。
ただ今回評価が普通なのは今まで読んできたファンタジーに比べてあまりにもすぐに次
の場所に進むし宝石を握れば解決するなど何となくですが安易な旅に思えて面白さを感
じれなかったのです。
魔法が解けて人々が動き出す場面などはドラクエと重なり過ぎて、ゲームに夢中だった
子供がこの本に夢中になるのは分かりますが、簡単に人の怪我が直り、生き返るという
のはどうなんでしょうね。
他の作品って旅の先々で仲間を失い、悲痛の中旅に再び歩き出すというものなのにこの
楽さは読んでいて拍子抜けしちゃうんですよ。
児童書としては正義は勝つ、悪いものに立ち向かう勇気と知恵が必要なことは語ってい
ますが、ゲーム感覚から抜けきらない部分が気になりました。
まぁシリーズものですからこれから色々な面を見せてくれることに期待します。

一言■やっぱりドラクエなんですよね。
評価 ★★★
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「EDGE(エッジ)」とみなが 貴和 講談社 599円
EDGE(エッジ)
とみなが 貴和

講談社 1999-10
売り上げランキング : 147,515

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*あらすじ*

私には、犯人が見える―!!
プロファイリング―それは、犯行現場に残された遺留品や犯行手口そのものなどから
犯人像を特定していく捜査方法である。
世紀末の東京。超高層建造物ばかりを狙った連続爆破事件が、世間を震撼させていた。
「黄昏の爆弾魔」と名付けられた犯人の狙いはなにか!?
手がかりのつかめぬまま、警察はある民間の心理捜査官に協力を要請した。
若き美貌の天才心理捜査官・大滝錬摩登場。

*感 想*

講談社X文庫(ホワイトハート)らしからぬ意外とズッシリとくる内容なんですよね。
ライトノベルにしてしまうと読者が限定されてしまうのでそういう部分では勿体ない
出版の仕方かな・・・と思ってしまいました。

実は超能力が出てきた時点で雲行きが怪しくなるかと思っていたのですが、その非日常
の世界が浮いてしまわないように実際の土地・建物を舞台にし、錬摩の藤崎に対する心
の葛藤、また犯人の日常生活をいれる事によりなぜ連続爆破事件を犯すようになってし
まったのかが手にとるように伝わってくるので意外とすんなりと超能力という設定を受
けいれられました。
主役である錬摩の魅力は当然のことながらこの作品、犯人が「悪役」だけで終わらない
のがいいですよね。主役が飛び抜けている作品って主役にファンがつくように悪役はと
ことん悪役のイメージがあったのですが、この作品では思わず犯人に対して同情したく
なるくらい彼の生活と過去は重たいものなのです。
そのバランスが良いと思いました。

さて第1巻らしくかなり謎の部分は残されています。
錬摩の秘められた姿や、二人の過去もあまり語られていませんし、藤崎の能力に関しても
殆どが謎のままなんですよね。
シリーズものってこういう隠された部分があればあるほど読みたくなるのでこのシリーズ
は少しずつ読んでいく予定です。

★が4つの理由はネタバレなので未読の方は読まないで下さい。↓


この表紙とこの名前なのに錬摩は女なんですよね。
作品の最初の方にこの部分は語られるのですが、先入観がありまして男性だと思って読んで
いた私はこの部分が固まりましたよ。
ミステリで相棒といえば男同士が原則でしょう。(←私の中ではなんですけどね)
それなのにいきなり女性だなんてガッカリしちゃったんですよ。
1巻を読み終えると錬摩の繊細な部分や藤崎に対する母性など女性ならではの心情が出てく
るのでいいのですが最初にちょっとガッカリしたので★1つ減らしてしまいました。
すみません、趣味の問題なんですね(笑)。


一言■ライトノベルにしておくには勿体ない気が・・・。
評価 ★★★★
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「株価暴落」池井戸潤< 文藝春秋 1,650円
株価暴落
池井戸 潤

文藝春秋 2004-03-26
売り上げランキング : 100,969

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*あらすじ*

巨大スーパー一風堂を襲った連続爆破事件。企業テロを示唆する脅迫状に、一風堂株価
は暴落する。業績不振に喘ぐ一風堂に対し、メーンバンクの白水銀行は既に巨額の債権
放棄をしていたが、更なる緊急追加支援要請を巡って審査部の板東は企画部の二戸と対
立する。
一方、警察へのタレコミで犯人と名指された男の父は、一風堂の強引な出店により、自
殺していた。日本経済の闇に真摯に向き合うバンカーたちの熱き戦いを活写する金融ミ
ステリー。

*感 想*

「オレたちバブル入行組」が面白く著者のほかの作品も読んでみようと手にしたのが「株
価暴落」、この作品を読んで驚きましたなんとまぁ面白いこと面白いこと、今まで小難しそ
うと著者の本に手を出さなかったのを激しく後悔しました。

さて本作、舞台となるのはワンマン社長が取り仕切る大手のスーパー「一風堂」とそのメイン
バンクである白水銀行、主人公の板東は白水銀行の審査部に属する。審査部は通称「病院」と
も呼ばれ、赤字や債務超過など、著しく業績の悪化した企業を担当している。
そんな中起きたのは一風堂に対する企業テロ。死者を含む爆発事故が発生し、尚且つネット上
に脅迫状が出される。犯行理由は一風堂グループの強引な戦略を恨むこと。二度の爆発事故の
ため客足は一風堂から遠のき、また一風堂の株価は急落。

この本の魅力は銀行内部の熾烈な駆け引き・闘いと、警察が追う事件が時に重なり、時に別の
顔を見せるところ。見え隠れする犯人の思いもよらぬ展開と、「一風堂を見殺しにするのか、
それとも緊急追加支援要請するか」この選択に迫られる板東の苦悩が見事にマッチしているの
です。また問題だけを先送りにし続けてきた保守的な銀行内部を鋭く指摘する板東と企画部で
一風堂派の二戸との争いは息をするのも忘れるぐらい緊張感があります。
見事に板東、二戸の二人を書き上げ、更に銀行員だった池井戸氏でしか書けない銀行内部の歪
みを出しきっている上に、爆発事件の真相もミステリとして完成度が高い。
面白くない箇所が見付からないんですよね。

読者は一風堂のあり方や銀行内部の態度に主人公・板東と共に歯軋りし、また犯人として名の
上がる一人の青年の運命にハラハラする。
最後はどこへ行き付くのかと思えばこれまた金融に詳しい池井戸氏ならではの犯行理由、犯行
計画に度肝を抜く。
参りました池井戸さん。
最初から最後まで夢中になって読んだ1冊です。サラリーマン必見。

一言■文句なしに面白い。
評価 ★★★★★
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「クリスマスのぶたぶた」矢崎存美 宙出版 730円
クリスマスのぶたぶた
矢崎 存美

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*あらすじ*

ピンクの彼を見かけたらあなたにも奇跡がおきる。
12月24日と12月25日、2日間にぶたぶたと遭遇した10人の女の子のお話。

*感 想*

「ぶたぶた日記」を読んでからすっかり山崎ぶたぶた氏のファンになった私。
今回は12月24・25日にぶたぶた氏に偶然会えた10人の女の子のお話です。
別れてしまった彼と偶然会い再びやり直したいと思いつつ自分から動けない子、遠距離恋愛
になってしまった彼氏とこのまま疎遠になるのを恐れつつ彼氏に会いに行けない子、旦那さ
んとの仲が冷え切ってしまっていると悲しみにくれている主婦、お局様化しクリスマスイブ
に残業させられた二人のOLなど心にどこか空虚さを抱えた彼女達がぶたぶたと出会い一番
大切なものへと走り出す物語です。

ぶたぶたは主人公なのに表舞台にはあまり出てこないのですよね。
ただ彼と出会った人々に起こる、いや彼と出会えた奇跡が心の中に「ふわっ」と風を巻き起
こして彼女達に最高のクリスマスプレゼントをくれる短編集です。
とにかくこのぶたぶたが可愛らしい。
表紙を見ただけで「くぅぅ」と悶えるくらいに可愛いんです。
好きな人は好き、こういうキャラものは苦手という人には全く受け入れられない本だと思い
ますが一風変わった恋愛小説を読みたい方にオススメします。

一言■季節外れですがクリスマス以外のプレゼントにもオススメ。
評価 ★★★★★
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「The MANZAI」あさのあつこ ジャイブ 651円
The MANZAI
あさの あつこ

ジャイブ 2004-03
売り上げランキング : 9,387

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*あらすじ*

主人公の瀬田歩は家と学校と塾だけを行き来するだけの生活にいつの日か違和感・ズレ
を感じてしまうようになる。学校での生活が困難になってきたある日、教師から言われ
た一言が歩に学校へ行くことを止める決定打となってしまいました。
それが間接的な理由となりある事故が起り、父・母・姉と自分だった家族は父と姉を亡く
してしまうことに。
歩は母に対しても、亡くした父と姉に対しても重い十字架を背負い生きていくことになる。
そんな中、母の故郷に越す事になった歩は転校先して一ヶ月後に人生初の「おつきあい」
を同級生にされてしまった。
しかもその相手は秋本貴史、14歳、男だった。

「おまえ、なんでそんなに漫才好きなの?」
「なんでて、おもろいやつが一番やないか」
「一番て……そうか、そうかなぁ」
「決まってる。勉強できたかて、スポーツできたかて、なんぼのもんや。
たいしたことあらへん。やっぱ、おもろいやつが勝ちやで。絶対や、歩」

 漫才『ロミオとジュリエット』の行方は……? 

*感 想*

高戸さんよりオススメして頂いた本です。これまた良い本をオススメして下さりどうもあり
がとうございます。(^o^)
今まであさのさんといえば「バッテリー」だったのですが、あの主人公達とはまた違った魅
力・味のある中学生達が登場します。どちらかといえばこの本の方が等身大の中学生を書い
た物語です。

冒頭、いきなり告白される主人公・歩。
何だ恋愛ものか?と思わせておいて実は相手は同級生の同性からの「おつきあい」の申し込み
何だいきなり同性愛か?と思わせておいて(誰も思ってないかもしれないけど)実は漫才の
相方の申し込みなんですね。
漫才とくれば笑い、コメディものなのかと読者を安心させておいて見事に良い意味で裏切って
くれるのがあさのあつこさんです。
主人公を含め彼らの背負っているものは大人の私でも重い十字架なんですよね。
大人なら色々逃げ場、はけ口があるものの中学生の彼らには学校以外に行く場所はなく、選ぶ
ことも出来ない。そんな中、秋本が選んだのが人を「笑わそう」という道なのです。
この物語の奥深さは読まないとわからない、感想を書くのもかなり難しく正確にこの本を紹介
できるかどうかも自信がないのですよね。

8月31日のあの日、間接的だけれども自分のせいで家族を壊してしまった罪の意識から再び
学校に通うようになった歩、彼が出会ったのは自分のことを「特別な存在」だと言ってくれる
秋本。彼との出会いが次第に歩を変えていき、また歩自身が知らず知らずに周りを変えていく。
バッテリーの巧と豪コンビは研ぎ澄まされた感じがあったのに比べて、歩と秋本コンビはどち
らかといえば柔らかさを感じさせてくれるのですよね。ガラスのような脆さがありながら子供
ならではの強さを持つ二人。
何だかあさのさんの本を読むと大人って情けない・・と感じてしまいますね。

歩がなぜそこまで「普通」に拘るのか、そもそも「普通」って何なのか?
「普通」で「良い子」に育てることを教育だと勘違いしている学校や教師達、でも「普通」っ
て何を基準にして「普通」なのか?周りの子と同じことをしていれば「普通」なのか?
個性や個人の意見は尊重されず、教師の意見だけが通るのが「中学校」。
また教師自体がイジメを黙認するどころか拍車をかけているのが現実の世界なんですよね。
この本はできれば教職についている人の感想を知りたいですね。

一言■児童書ですが大人が読まないといけない本ですね。
評価 ★★★★★
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「The MANZAI2」あさのあつこ ジャイブ 819円
The MANZAI〈2〉
あさの あつこ

ジャイブ 2004-09
売り上げランキング : 3,908

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*あらすじ*

『漫才ロミオとジュリエット』から半年と少し、ぼく「瀬田歩」中学三年生の初夏事件は起きた! 
懲りずに『おつきあい』を申し込み続けている秋本と、ぼくらに狙いを定めた森口、発光少女の萩
本、学年トップの高原、音楽担当だった蓮田に篠原。
元2-3ロミジュリメンバー集結のきっかけとなった事件とは!? 

*感 想*

一巻から半年後、三年生になった歩達の物語。
今回はある事件が起こります。それは人の「悪意」から発生してしまったもの。
悪意に敏感な歩は今でも周りに対して時にびくつき、時に萎縮してしまうのですが、そんな歩の側
でいつも彼を支えているのが秋本なのです。
ではなぜ秋本がそこまで歩に執着するのか、一体秋本が抱えている重さとは何なのか?
その影の部分が今回わかるのですが、酔っ払いの親父といい何ともやりきれないものが・・・。
タイトルが漫才ですから重いことすらポンポンと漫才口調でやりあったり、女子の情報ネットワー
クや発光少女(スゴイですよね、発光って(笑))のメグのライバル宣言など、あちこちに笑いを
含みながら物語は進んでいくのですが、正直歩の学校へ行くのが辛い朝の気持ちが痛いほど伝わっ
て読んでいて胃がシクシクとなりそうでした。
もう学生時代なんてかなり過去のことなのでその当時の気持ちなんて忘れかけていますが、友達と
ちょっと揉めた翌日などは学校へ近づくだけで気分が滅入っていたものです。
歩の「学校」に対して揺れ動く気持ちは大人になると忘れてしまうのですが、こういう本を読むと
忘れてはいけないものなんだなぁと感じてしまいます。
特に子供のいる方はもう一度自分が中学の頃を思い出すためにも読まれては如何でしょうか。

イジメ、ホームレス狩り、悪意、そういうものを真正面から捉えて自分達で答えを出すロミジュリ
メンバー達。これだけの問題を凝縮しているのに児童書として読み易く書かれている1冊なんです
よね。児童書というより大人のための児童心理学のような仕上りになっています。

しかし、今後歩と秋本の二人は恋愛なしでコンビになるのでしょうかね?(笑)
バッテリーでも感じましたが、あさのさんの本って子供達の会話が本当に生き生きしてるのですよ
ね。MANZAIも文字にするとかなり難しいはずなのに読んでいて会話がポンポンと弾みをつけ
てくるのです。ボケとツッコミが本を読んでいて自然と作られる、そのことにも感動です。

高戸さん、ご紹介ありがとうございました。<(_ _)>

一言■バッテリーと良い勝負をしている作品ですね。オススメ。
評価 ★★★★★
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「ダレン・シャン 12巻 運命の息子」ダレン・シャン 小学館 1,575円
ダレン・シャン 12巻 運命の息子
ダレン・シャン 橋本 恵

小学館 2004-03-31
売り上げランキング : 231,389

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*あらすじ*

いいかい、ダレン、おまえがスティーブをたおすことになったら、おまえは怪物に
なるんだよ。

スティーブのむごい仕打ちを目の当たりにし、心のなかで「もうひとりの自分」凶
暴で、冷酷で、にくしみをたぎらせた「自分」がめざめてしまったダレン。ダレン
は、にくしみに心をむしばまれてしまうのか?エバンナの言うとおり、怪物になっ
てしまうのか?

それとも――。

主人公のダレンと、元は大親友だったスティーブとの最後の戦い、すなわちバンパイア
が勝つか、バンパニーズが勝つかは、この最終巻にゆだねられることとなった。
どちらが勝っても、おぞましい世界になってしまうという運命のいたずらに対して、主
人公はどの道を選択したのだろうか。まさに著者ダレン氏のすばらしさが、いかんなく
発揮されたストーリーとなった。
シリーズ第1巻の前書きにあるこの小説の謎が、みごとに解明されていく・・・。

*感 想*

図書館から12巻が届いたのが先週のこと、しかし当分読む気にはなれませんでした。
というのも9.10.11巻より前に12巻が手元にきてしまったので読むべきかどうか悩んでし
まったのですよね。
やはり物語は順番通り読まないと!と一度図書館へ返す決心をしたものの今から予約した
ら今年中に読めるかどうかわからないし手元にあるのに読まないなんて・・という誘惑に
負けて読んでしまいました。
そんなわけで今までの筋道がわからぬまま感想書いてますのでその辺はご了承下さい。

いや、まず驚きました、クレプスリーが死んじゃっているんです。いつの間に・・・。
そしてハーキャットの正体がカーダだったなんて。

ダレン・シャンシリーズは児童書なので巻ごとにそれまでの冒頭の流れが書いてあるので
この二点に関しても、バンパニーズ大王についてもちゃんと述べられています。
ですから私みたいに順番通りに読んでいなくてもある程度流れはわかるのですよね。
面白さの具合は別として・・・。
そして最終巻ではダレンはバンパニーズ大王に勝っても負けても後に残される世界は人も
バンパイアも全てが殺される恐ろしい世界しか待っておらず、それでもバンパニーズ大王
を倒さねばならない運命・宿命を背負わされます。
十八年ぶりに会うことの出来た妹との別れを哀しむ間もなく最後の闘いに突入し、ダレン
が知ったのは産まれたときから自分達に仕組まれた運命なんですよね。
そしてその運命を変えることができるのもダレンだけ。
クモ好きで悪戯好きのどこにでもいる普通の少年だったダレンが最後に選んだ道はこれま
でダレンと一緒に冒険や闘いをしてきた読者にとってダレンの知恵と勇気に感動しつつあ
まりにも悲しい運命に胸を痛めると思います。

さてこのシリーズはこれで終わりなのですが、実はこのラストを読むと1巻のあの冒頭へ
続いていることに気付かされます。
二度目に読み返すとまた違った面白さや仕組みが仕掛けられているのでこの物語は繰り返
し読む面白さを秘めているのですよね。
上手いですね〜。ダレン氏。

ラストを知りましたが、やはり精霊の湖のことやクレスプリーがなぜ死ぬことになったの
かを読みたいので残り三巻も読む予定です。
でも10巻が一番予約待ちが多いんですよね・・・。シリーズもので順番に来ないって本当
に辛い。

一言■また1巻に戻りたくなるラストです。
評価 ★★★★★
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