
「吐きたいほど愛してる。」新堂冬樹 新潮社 1,470円
*あらすじ*
嫌われてもいい、だって愛しているんだもん!
自己の中心で叫んだ、四つの愛。
逆上妄想男の迷惑な勘違い愛、夫の帰りを正座して待ち続ける壊れた妻、可憐な
美少女が味わう生き地獄、非道の限りを尽くして虐待される寝たきり老人……。
勝手気ままに狼藉の限りを尽くす面々をあなたは愛せるか!
エンターテインメントの旗手・新堂冬樹が想像力のすべてを注いで練り上げた、
残酷なまでに強烈すぎる「過激な愛」。
半蔵の黒子/お鈴が来る/まゆかの恋慕/英吉の部屋
*感 想*
食欲減退、読む意欲も減退してしまうのにページをついつい捲ってしまうグロさ
汚さ、あぁこれぞ新堂氏だなと思わせてくれた1冊でした。
しかし新堂さんって究極の「恋愛もの」を書いたかと思えば次の作品は「外道・
鬼畜・エログロ」と正反対の世界を書かれますよね。
新堂さんにとって好ましいのかどうかはわかりませんが新堂ファンには外道であれ
ばあるほど指示があるので今回の読んでいて吐き気がするくらい生理的不快感があ
る「吐きたいほど愛してる。」はまさに新堂ファン向けの1冊でしょう。
黒子さえなければ完璧だと勘違いしている半蔵、娘を愛しているからこそしていた
行為が娘には通じず、今は虐待を受けている英吉、この二人に関しては周りの者は
最悪で不幸過ぎますが本人自身は案外幸せな人生を過ごしているのでしょうね。
いやここまで自分に都合よく考えれる二人がある意味では羨ましいくらいです。
特に「英吉の部屋」のラストは薄ら寒さを感じるほどブラックなんですよね。
この二作が強烈だったので「お鈴」と「まゆか」はちょっとインパクトが弱いですね。
「お鈴」に関しては妻変わり様がグロ過ぎて、普通ならいや人間ならいくら自分の責
任でももっと早く逃げ出すと思うんですよ。
全体を通して、食事中に読むと思わず吐き出しそうになる描写が多いので注意が必要
です。それと虫嫌いの人は読んでいるだけで身体から力が抜けそうになるのでこれも
注意が必要かも・・・。
基本的にエログロも鬼畜も嫌いなんですが何故か新刊が出ると注目しちゃう作家さん
なんですよね。そして読んだ後で後悔する作家さんだったりします。
一言■新堂冬樹ファンにはオススメ。食事中は読まないように・・・。
評価 ★★★
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「犯人に告ぐ」 雫井 脩介 双葉社 1,680円
*あらすじ*
連続児童殺人事件―姿見えぬ犯人に、警察はテレビ局と手を組んだ。
「犯人よ、今夜は震えて眠れ」
神奈川県下で連続児童殺人事件が発生。特別捜査官・巻島史彦は夜のニュース
番組に出演、公開捜査を敢行する。姿見えぬ犯人との《対話》で事件は解決でき
るのか?史上初の、劇場型捜査が始まる。
*感 想*
警察小説好きの私にはたまらない1冊でした。
主人公は巻島史彦、神奈川県警の警視。
彼の人生を変えた犯人[ワシ]と出会ったのは彼が40代中半の頃。
犯人逮捕は簡単だと思っていた1つの誘拐事件で痛恨のミスを犯してしまった神奈川県警。
決してミスを犯したのは現場の者だけではないはずなのに上司の顔に泥を塗ったと記者会見
に出さされた巻島はマスコミの挑発にのってしまい言ってはいけない言葉を口にしてしまう。
その事件後一線から外された巻島。
不祥事が続く神奈川県警を更に地に落とすことになったのが解決の糸口さえ見えない連続男児
殺人事件。今まで通りの捜査では解決の目途は立たないことから県警は劇場型捜査を行う決心
をした。
「バッドマン」と名乗り、挑発的な犯行声明を出す犯人に対し巻島はマイクの前で言う「犯人
に告ぐ」と・・・。
この本の面白さは劇場型捜査で出てきたのが犯人、観客である世論、マスコミだけでなく、警
察内部の埃も一緒に出てきたところです。
途中からは巻島vs犯人というより、巻島vs植草の闘いになってしまった感じもありますが
この闘いが手に汗握る面白さなんですよ。
いや正直植草の懸想にはイライラしましたし、これだけ捜査の邪魔をしても何もお咎めもない
警察ってどうなんだろう?とも思いました。それでも事件と一緒に植草の物語を巧みに入れて
いる雫井氏の上手さは警察小説を警察小説だけで終わらせない面白さなんです。
登場人物が多いと個性がなかなか生きないことが多いのにこの小説に出てくる者達は誰もがそ
の役を見事に演じている役者のような存在なのです。
ただ肝心の犯人の存在が希薄だったのは残念ですが・・・。
映像化したらかなり面白いと思うので是非とも映画化して欲しい作品です。
絵になる場面があちこちにあるので。
一言■映画化して欲しい作品ですね。
評価 ★★★★☆
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「ライオンボーイ 消えた両親の謎」 ジズー・コーダー PHP研究所 1,995円
*あらすじ*
近未来のロンドン。地球は「帝国」の支配を受けていた。
ガソリンなどの資源は尽き、車に乗れるのは特権階級の人々だけだ。
ある日、チャーリーの両親が忽然と消えた。彼にも敵の魔の手が忍び寄る。
ネコたちの情報を頼りに、チャーリーの両親を探す冒険が始まった。
チャーリーは、ネコ語が話せる男の子。両親は誘拐されたと近所のネコに聞かされた。
これには近所の不良少年ラフィが関わっているらしい。チャーリーは両親を探し始める。
執拗に追うラフィ。
川を進むサーカス団の船に乗り込んだチャーリーは、そこでライオンたちに出あう。
ライオンはアフリカの平原に戻りたがっていた…。
*感 想*
私にとって児童書の中で一番大事にしているのは読んでいてドキドキハラハラさせられる
緊張感なんですよね。物語の展開自体は本を読みなれていればある程度予測できるので、
展開そのものはあまり重要視していないのです。
この物語の主人公チャーリーの持っている力はネコ語を話せるだけで他はごく普通の少年
であり、また敵であるラフィに関してもただの不良少年。
魔法が出てくるわけでも恐ろしい場所に冒険に出るわけでもない・・・。
すみません、私にとってはグイグイと惹かれるものがどこにも存在しなかったのです。
それなのにこの分厚さは正直げんなりしてしまいました。
途中から読む気がすっかりなくなってしまい最後はパラパラと流し読みした程度です。
何が問題かと言えば誘拐された両親も探す旅に出たチャーリーにも緊迫感があまりない。
いや伝わらないのです。
それとネコ語っていうのがあやふやですよね。ネコ科の動物と話せる力なのでしょうが
同じ動物語が話せる児童書であればドリトル先生の方が断然面白い。
比べる方が悪いのでしょうけどね・・・。
そして携帯とか現代の小物が出てくるのもあまり私好みではなかったです。
三部作なので全体を読めば面白いのかもしれませんがこの時点ではイマイチですね。
一言■ハラハラ感が少なかったので・・・。
評価 ★★★
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「空中庭園」 角田 光代 文芸春秋 1,680円
*あらすじ*
あたしはラブホテルで仕込まれた子どもであるらしい。その名も「ホテル野猿」。
「何ごともつつみかくさず」というモットーのもとに、ママが教えてくれた。
あたしはどうしてもそこを見てみたくなって、森崎くんを誘ったのだけれど…。
「ラブリー・ホーム」
郊外のダンチで暮らす京橋家。でも、本当はみんなが秘密を持っている。
目に見えないドアの内側から、「家族」を演じている。
ラブリー・ホーム/チョロQ/空中庭園/キルト/鍵つきドア/光の、闇の
*感 想*
「秘密」を持たず、何でも包み隠さずに話し合う「京橋家」。
最初の「ラブリー・ホーム」では違和感を感じるほど仲睦まじい京橋家が書かれて
いるのに次の「チョロQ」から一気に雲行きが怪しくなっていきます。
まず最初の「ラブリー・ホーム」に登場する京橋家の父親と「チョロQ」の貴史が
重ならない。連作だと知らずに読んでいたので途中まで同一人物だとは気付かなか
ったくらいです。それくらい貴史のイメージが違い、また貴史から見た京橋家も違
っています。
さきほど読んだ京橋家は幻だったのか?と思えるくらいの違い様なのです。
「ラブリー・ホーム」でも京橋家の長女・マナは家族にある秘密を持つのですがこ
れはまだ可愛らしい方ですし、こういう秘密は家族に話せないので恐らく誰もが納
得すると思うのですよね。ところが「チョロQ」以降の短編は予想以上の秘密の大
きさに薄ら寒さを感じるほどなのです。
しかも秘密が秘密を呼び、誰もが自分の「秘密」を守り、家族の前で京橋家の求め
る家族を演じている。しかも最初からこの家族は「嘘」から成り立っているから怖
い。この「嘘」を見破られないために必死で家族の形を作っているのですよ。
「鍵つきドア」で貴史の浮気相手、ミーナが見た京橋家は一言で言うと学芸会のよ
うな家族でした。誰もが家族の一員として演じ、それに違和感を感じていない、そ
れなのに全員が鍵つきのドアを持っていて同じ食卓に並んでいながら本当の顔を見
せていない京橋家。
この「鍵つきドア」までの4編で見事にその部分が語られているのでこの部分を読
んだ時には思わず背筋がゾッとしました。
決してホラー小説ではないのに、仮面の裏に隠されたそれぞれの「秘密」が見え隠
れして読んでいると自分の家族を想像し重ねる怖さがあるのですよね。
実際に家族と言っても「秘密」を持たない家族はない。
誰もが過去なり現在なり何かを「秘密」にし、それを家族に知られないように演じ
ているはず、その当然のことをここまでリアルに書かれると家族とは詮索しない事
壊さないよう人の秘密は暴かないことが大事なのかと悩んでしまいますね。
あなたは家族に「秘密」ありますか?
もし「秘密」を持っているのであれば是非この小説を・・・。
一言■短編の順番も見事です。
評価 ★★★★★
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「都立水商(おみずしょう)!」 室積 光 小学館 1,365円
*あらすじ*
水商売業界に朗報!前代未聞「お水の高校」設立。
平成XX年3月2日東京と教育局は、水商売(風俗営業)に関する専門教育を行う
都立高校を歌舞伎町に設立すると発表。正称「東京都立水商高等学校」。
同校は、ホステス科、ソープ科、ホスト科など七学科で発足する。
またこの発表を行った3月2日を東京都では「お水の日」に指定した。
*感 想*
酒の席でノリのように出来たのが「東京都立水商高等学校」。
商業・農業・工業高校があるのに、水商売へ進みたい子のための学校がないのは
おかしいのではないか?それは水商売への差別だ!と納得するようなしないよう
な議論から作られた略して「都立水商」。
学科は「ホステス科」「ソープ科」「ヘルス科」「マネージャー科」「バーテン
科」「ホスト科」「ゲイバー科」。
集められた教師は元の学校で上司と対立し左遷の意味でこの学校に入れられた者
達、しかし教育に関しては誰よりも熱い。
そんな教師・講師達が四苦八苦の上初めての学生を迎え入れたのは今から10年前。
当時は周囲の反応は冷たく「落ちこぼれが集まる学校」として「水商」の名が語
られていた時代にいよいよ水商第1期生は入学を迎えます。
入学式で会場に入って来たときは死んだ魚のような目をしていた生徒達、しかし
入学式の日に聞いた校長の言葉や憧れの講師を前にして生徒達は「水商」で水商
売へのプロ意識、いや水商売そのものへの偏見を捨て瞬く間に「水商」の生徒と
してのプライド、そして自信を持つようになります。
この作品、コメディだと思っていたら内容は奥深く、子供達への可能性を奪うの
は教師や大人であるという学校教育へ真正面からぶつかっている作品なんですよ。
しかもそのことにこの学校に入るまでは教師達も気付いていない。
また家族も子供の可能性について知らずにいる。落ちこぼれを作るのも大人、偏
見で差別するのも大人なんですよね。
しかもその部分を全く説教臭く語らないのがよい。
しかしソープ科、ヘルス科での抜き打ち実技実習のお陰で生徒達の欠席率がゼロ
に近いとか、水商売のプロの学校ですから入れる側も顔に自信のある者達が入っ
ているため、毎年歌舞伎町の店で行われる女生徒達の研修ではお客様は大喜び、
何せテクニックを持ち顔も抜群な現役高校生がいるわけですから店も大繁盛、そ
れだけでなく、巷で行われていた援助交際も商売が成り立たなくなるというオマ
ケまでついてくる・・・。
こういうちょっとしたエピソードがまたこの本の魅力なんですよね。
よくそこまで思いつくなぁ〜と感心してしまいました。
取敢えず、笑えてちょっと泣けて、かなり良い話が詰まった本がこの「都立水商」。
何かいい話が読みたいなぁ〜という方にオススメです。
一言■気分を明るくさせてくれる1冊です。
評価 ★★★★★
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「刑事ぶたぶた」 矢崎 存美 徳間書店 710円
*あらすじ*
これは、世界で一番すてきな警察署の物語。
だって、ぶたぶたが刑事をやっているのだから・・・・。
銀行強盗が、人質をとってたてこもっている!!配属早々の大事件に、春日署の
新人刑事・立川君はちょっとパニック。しかし大丈夫。こんなときこそ"彼"の出
番。走り、喋り、ほんの隙間からももぐりこめる―薄ピンク色のぬいぐるみ、山
崎ぶたぶた。彼はなにを隠そう立川君の上司、つまり刑事なのだ。
人質事件も誘拐事件も刑事ぶたぶたの手にかかれば即解決…というわけには、多
分いかない。でも、ぶたぶたと出会ったひとは、少しばかり自分を変えることが
できる。そして身動きの取れなくなってしまった心と心が解けて、いつしか事件
は解決していく。まるで最初からそうなることが決まっていたかのように。
宝石窃盗事件や赤ちゃん誘拐事件など事件はぶたぶたを待っている。
いや皆がぶたぶたを待っている?大人気『ぷたぶた』シリーズ文庫版第三弾。
*感 想*
今回のぶたぶたは刑事役、しかも長編です。
新人刑事・立川氏がドキドキしながら所属先に行くと皆がなぜかニヤニヤと・・。
それもそのはず上司はあの「ぶたぶた」さんなのですから。
物語の流れよりもまず空想の世界に入ってしまいましたね、もし私の上司がぶたぶた
さんだったら・・・と、あまりの幸せそうな世界にウットリ。
しかしさすが刑事役、今回はぶたぶたさんが危険な目にも合います。
投げ付けられたり、拳銃で撃たれそうになったり、ある時は針を刺されるぬいぐるみ
役に、ある時は犬の上で追跡捜査、またある時はコインランドリーでくるくる回る。
私が立川君でも「ぶたぶたさん」が心配でたまらないでしょうね。
そしてこの物語の魅力はココなんですよ。
たかがぬいぐるみの空想物語を超えて、私の中でぶたぶたさんは一人の男性として存
在していますし、勿論物語の中でもぶたぶたさんの影響力はスゴイ。
皆がぶたぶたさんを中心に少しずつガチガチになった心を溶かしていくのです。
そして読者もぶたぶたさんと出会うことで肩に入れた力を少し抜いてリラックスでき
てしまうのです。
疲れている人に特にオススメな1冊ですね。
今回はぶたぶたさんの写真もあります。
トンカツ屋さんで、そば屋さんで、街角で・・・そのどれもがキュート。
写真だけでも充分楽しめるかもしれません。
一言■写真にも注目ですね。キュート過ぎます。
評価 ★★★★★
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「白蛇教異端審問」 桐野 夏生 文芸春秋 1,450円
*あらすじ*
「私は女で、1951年生まれで、結婚していて、一児の母親で、なおかつ小説家
である。私は言葉を限りなく大事にする職に就き、言葉と共に生きている。言
葉が私の信仰だ。私は言葉の名誉のために闘い続ける――。」(本文より)
デビュー以来、枠にとらわれない問題作を発表し、周囲の軋轢と闘い続けてき
た作家の10年間の軌跡。桐野作品のエッセンスが凝縮したショート・ストーリ
ー8篇も収録した、初のエッセイ集。
*感 想*
著者初のエッセイ集ということで楽しませて頂きました。
私の場合例え好きな作家でも彼らに関してプロフィールを知りたいとは思わない
ので桐野さんの家族構成や年齢に関しても今回初めて知りました。
今まであまり感じなかったのですが世の中の多くの方は本の中の登場人物と作家
さんを重ねて見るものなのでしょうか?
本は空想の世界なので全く違うものと見ていた私にはそのことに驚きましたね。
「OUT」のお陰で「怖い主婦」だと思われていた桐野さんですが、私は桐野さ
んが主婦であることすら想像もしていませんでした。(笑)
作家さんの作家である故の苦悩みたいなものが知ることが出来てある意味新鮮な
エッセイでした。
ラストの「白蛇教異端審問」を読むとこうしてこんなサイトを開いていることに
かなり引け目を感じてしまったのは私だけでしょうか?
すみません、好き勝手書いていて。(汗)
一言■エッセイなので評価は普通です。。
評価 ★★★
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「夏のこどもたち」 川島誠 マガジンハウス 1,223円
*あらすじ*
主人公の「ぼく」こと朽木は片目が義眼の中学三年生。
転校生で周りに馴染まない中井との微妙な関係。
そして一番の問題はぼくには何かやりたいと思うことがなにもないこと・・・。
中学3年生の少年の目がとらえた時代の空気と生きることの意味。
学校、家族、大人、そしてセックス。少年小説の傑作。
*感 想*
この小説には物語性はほとんどありません。
幼い頃に家族内の事故で片目を失った少年・朽木から見た世界が淡々と語られてい
るだけなのです。
彼の周りにいるのはアルコール依存症の母、滅多に口を聞かない父、何を考えてい
るのか良く分からない教師、周囲から浮いている転校生の中井、そして不良の高橋。
時間の流れも人との関わり合いも濃くなく、どこか全体に漂う空気が薄い。
しかも本自体もとても薄い。
だからと言って中身が薄っぺらなわけではありません。
ただし、ここに登場する15歳は現代の子ではなく一昔前の15歳のような気がします。
淡々と世界を見ながらもちゃんと周りと折り合いをつけている15歳。
彼の片目から見た世界は時に歪んでいたり時にストレートに胸に響いたり・・・。
そして彼にとって一番の焦りは自分が何をしたいのか、いや「何もしたいことがない」
こと。そんな自分に対して怒りや遣るせなさをぶつける場所がないことにまた焦る15歳
の姿が伝わってきます。
少年小説としては面白いのですが、「800」と比べると主人公の朽木の一人称で語ら
れているせいかどこか一線引かれてしまっていて物語にどっぷりつかるほどまでいか
なかったので評価は普通になりました。
一言■あまり胸に響いてこなかったので評価は普通です・・・。
評価 ★★★
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「銀行仕置人」 池井戸 潤 双葉社 1,575円
*あらすじ*
メガバンクに巣食う悪党どもに鉄槌を…巧妙な罠に嵌り黒部一石は出世街道から、
真っ逆さまに落ちた。
罠だ、嵌められたのだと言い訳すれば、自分が惨めになるだけだ。
身内の不正を暴くこと…、それしか復権の道はない!
重役、部長、支店長みんな叩き潰せ!″平成の岩窟王”の至難の復讐劇が始まった。
池井戸潤の金融長編ミステリー第8弾。最高の痛快作!!
*感 想*
銀行員にとって辞令が全て・・・紙一切れで運命が決まってしまう。
今回の主人公黒部は巧みに張られた罠に落ち、出世街道から一気に外されてしまい
ます。再起不能かと思った彼の元に同じく罠の匂いを嗅ぎ付けた英部長より内密に
不正を暴けとの指令が出ます。
不正を暴ければ復権できる、もし暴けなければもう二度と今までの地位には戻れな
い、いや出向させられ銀行員のままでもいられなくなる黒部。
計画的に仕組まれた倒産に巨額の融資、そして今回は闇金融という裏の世界まで絡
んでくるので最後の最後まで黒部に勝利があるのかどうかわからないのですよね。
しかも暴力まで絡み、殺人まで起きる。今までにないこの展開に巨大な「金」が動
く時の汚さを見せられます。
毎回上司陣に歯痒い思いをするのですが今回は更に上、本当に銀行の世界ってこん
なに無情で卑劣なのかとちょっと見る目が変わりそうになっちゃいますね。
確かに融資の件で我が社も銀行には辛酸を舐めさせられたみたいなのでこんなもの
なのでしょうが・・・、ここまで内部のことを書かれていると本当はどうなのか銀
行員の方が読んだ感想を是非とも聞いてみたいですね。
この方の作品は正義は勝つので安心して読めるのですが、たまには正義が負けるも
のも読んでみたいかも?
ラストが予想できてしまうので☆分だけはひきましたが、サラリーマンにとっては
かなり本の世界に浸れると思うので未読の方は是非。
一言■今回は裏の世界も加わり緊張感が増しましたね。
評価 ★★★★☆
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「「ABC」殺人事件」 有栖川有栖他 講談社 660円
*あらすじ*
連続殺人犯vs.名探偵、これぞミステリー!名探偵に送りつけられる挑戦状、
法則性のある連続殺人事件、そして驚くべき真犯人!女王・クリスティの名作
「ABC殺人事件」をモチーフに5人の鬼才が綴る、華麗なる事件簿。「
灰色の脳細胞」ポアロをしのぐ名探偵は果たして誰か。
ミステリーファンに贈る、文庫創刊30周年記念・書き下ろしアンソロジー!!
「ABCキラー」有栖川有栖
「あなたと夜と音楽と」恩田陸
「猫の家のアリス」加納朋子
「連鎖する数字」貫井徳郎
「ABCD包囲網」法月綸太郎
*感 想*
講談社文庫創刊30周年記念アンソロジーだけあって豪華過ぎるくらい豪華な作家
陣が集まった短編集です。
実は肝心のクリスティの作品は未読なのですが、この本を読むと「ABC殺人事
件」を読んでみようという気持ちになりました。
恩田氏の「あなたと夜と音楽と」を読みたくて借りたのですが、この作品が面白
いのは勿論のこと他の4作品も負けてはいません。
どれが一番良かったか?比べるのが難しいくらい全てが面白く楽しめました。
さてまずはやはり恩田氏の作品ですが、これはラジオ番組を通じて、二人の会話だ
けで物語が進みます。
投稿された葉書に書かれていたのは殺された女性の幽霊が頻繁に見られること、そ
して毎週置かれている不可解な置物、彼女の幽霊は本当に出てくるのか?そして殺
した犯人は誰なのか?置物の意味は?
会話だけで進んでいるとは思えない展開に思わず引き込まれていきました。
やはり上手いですよね、恩田氏は。
そして貫井氏の「連鎖する数字」は数字そのものの意味は最後までわかりませんが
(これは犯人以外にはわからないことでしょうし)殺される理由は途中で読者にわ
かるので一番真相に納得できるのではないかな?と思います。
どれも20分程度で読めるので通勤に良い1冊ですね。
一言■豪華な作家陣に大満足です。
評価 ★★★★
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「号泣する準備はできていた」 江國香織 新潮社 1,470円
*あらすじ*
大丈夫、きっと切り抜けるだろう。――体も心も満ち足りていた激しい恋に
突然訪れた破局、その哀しみを乗り越えてゆくよすがを甘美に伝える表題作、
昔の恋人と一つの部屋で過ごす時間の危うさを切り取る「手」、17歳のほろ
苦い恋の思い出を振り返る「じゃこじゃこのビスケット」など、詩のように
美しく、光を帯びた文章が描く、繊細で、透明な12の物語。
*感 想*
どうしても自分と感性があわない作家がいるとすれば私にとって江國氏はその
内の一人なんですよね。
今まで途中で読むのを止めた作品も含め、直木賞を受賞した本作でも感想はた
だ合わない・・・だけでした。
「号泣する準備はできていた」というタイトルなのに心に響くものがなく、ま
た余韻も残らない、印象に残る作品がない。
全てを淡くぼやかして書いてあるのが良いと思う人もいれば直球を好む人もい
る、私の場合恋愛ものは直球を好むので江國氏の作品は何がいいたいのかあま
り伝わってこないのですよね。
確かに独特の観察力で「あぁ、こういう場面はあるかもしれないなぁ」とは思
うものの綺麗過ぎて現実味が薄いと感じてしまうのです。
ほろ苦い恋や今隣にいる人がかつてのあの人ではないと違和感を持つなど誰に
でも当てはまる気持ちですしわかるのですが胸にザワザワとくる感覚が文章を
読んでいるときにこなかったのですよね。
泣けないのに「号泣」というタイトルなので何だかなぁという意味を込めて評
価はかなり低めです。
江國ファンの方には申し訳ないのですが合わない作家さんってやはりいるみた
いですね。
一言■私好みではないんですよね。
評価 ★★☆
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「ぶたぶた」 矢崎存美 徳間デュアル文庫 710円
*あらすじ*
ある朝、ベビーシッター会社から派遣されてきた、ピンク色のぶたのぬいぐるみ
・ぶたぶた。ちょっとナンセンスなんだけど、ハートウォーミングな小説。
ぶたぶたみたいな友だちが欲しくなる。
初恋/最高の贈りもの/しらふの客/ストレンジガーデン/銀色のプール
追う者、追われるもの/殺られ屋/ただいま/桜色を探しに/
*感 想*
風邪をひいていた時に読んだせいか微妙に淋しさを感じてしまった「ぶたぶた」なん
ですよね。
いや「ぶたぶた」自体は相変わらずキュートですし癒してくれるのですが、彼に出会
ったことで「ぶたぶた」をずっと追い求めてしまう人たちのその後がちょっぴり淋し
いかなと感じてしまいました。
私ももし道端で桜色のぶたぶた氏に出会えたとしたら、その後もまた何回も会いたく
てぶたぶたを探してしまうと思うのです。
しかし今回のぶたぶたも初恋の人、行方不明の兄、殺られ屋、興信所に調べられる夫
役と実にさまざまな一面を見せてくれます。
しかも繋がってないように見える短編ですが、少しずつどこかが繋がっているのも良
いですね。
子供の頃にぶたぶたと出会った二人はいつしか大人になり、二人は桜色の思い出を通
して隣にいるようになるなんて究極の恋愛ものに最後は仕上がってます。
このシリーズはどれから読んでも話は通じますが、私は他のものの方が全体的に明る
いので好きかもしれません。
一言■シリーズの中ではちょっと淋しい雰囲気がありました。
評価 ★★★★
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「EDGE〈2〉―三月の誘拐者」 とみなが 貴和 講談社 578円
*あらすじ*
「死」に魅入られて、どこにも行けない──。
美貌の犯罪心理捜査官・大滝錬摩第二の事件簿!
男は恐れていた。「普通」とは違う自分を。耐え難く「死」に惹かれている自分を。
少女は怒っていた。7歳の尊厳すべてをかけて、無理解な両親を。理不尽な運命を。
そしてなにより、無力な自分を。男が少女と出会ったとき──2人は手に手を取って歩き
出していた。灰色のビルに囲まれた街・東京を。
それが「幼女誘拐」と呼ばれる行為であるとは考えずに──。
*感 想*
2巻を読んでやはり思ったのがホワイトハートにしておくのは勿体ないなぁなんですよね。
この装丁だと読む年齢層を狭めてしまいそうなのですが、でも実際に私もこうして手にとっ
て読んでいるので面白い本はいつの間にか話題になって広まっていくものなのかもしれませ
んね。
さて2巻では錬摩の10歳の頃の話が出てきます。
まさかそんなに重い過去があったとは・・・・と彼の身の回りで起きた事件の大きさや傷の
深さに驚かされました。
そして今回の事件も精神面を前面に出しているので妙にリアルなんですよね。
こういう青年っていそうですし、また大人には理解できない子供の気持ちも手に取るように
伝わってきます。
事件を引き起こすつもりではなく、少女は「ゆきちゃん」を青年は「海」を目指していただ
けなのに「少女誘拐事件」へと発展してしまった今回の事件。
愚かという一言で済ましてしまいそうなのですが、犯人の幼少の頃から人と違う自分への嫌
悪感や、また少女の誰もわかってくれないもどかしさが上手く、決して愚かな事件だと思わ
せないのです。
少しずつ明らかになる錬摩の隠された秘密。
そして成長していく宗一郎。
この二人の今後はやはり知りたいのでこのシリーズは読破しちゃいそうですね。
一言■想像以上に重たい過去でした。
評価 ★★★★★
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「ダレン・シャン\ 夜明けの覇者」 ダレン・シャン 小学館 1,575円
*あらすじ*
ダレンたちに「運命の時」がいやおうなくせまっていた。
時計の針が十五分をさした瞬間、バンパニーズとバンペットが地下の迷路に
ときはなされ、血に飢えた猟犬と化しておそってくる。
はたしてダレンたちは、いままでで最大級の危機を脱することができるのか。
バンチャ元帥、クレプスリー、デビー、そしてスティーブの運命は?
バンパニーズ大王との対決は?
ダレン・シャンシリーズの前半をしめくくるクライマックスがついに幕を開ける。
*感 想*
7.8.9巻は時間の流れも「黄昏、真夜中、夜明け」と順を追い、9巻ではいよ
いよ全体の流れの大きなポイントを迎えます。
夜明けにダレンを待っていたのは「裏切り」の中の「裏切り」であり、追い求めて
いたバンパニーズ大王の思いもよらない真実でした。
この巻はバンパニーズとの闘いも山場ですがダレンが迎える試練も一番の山場のよ
うな気がします。
今までこのシリーズは出会いと別れが多く巻毎にダレンは好きな人を失うという辛
い目にあってきましたがこの9巻では予想もしない人物との別れがダレンに襲いか
かるのです。
これは読者にとっても大きな痛手でこの巻を読み終えた後しばらくは大切な人を失
った虚しさと二転三転する事実を目の当たりにしてミステリ小説としての面白さと
の両方味わうことなります。
でもあれだけクレプスリーが疑いを持っていたのに最後の最後まで真実に辿りつか
ないなんて・・・、確かに親友を守るために半バンパイアになり人生の全てが変わ
ってしまったダレンにとっては何年経っても親友は親友のままだったのでしょうね。
そしてクレプスリーが一目で見抜いた汚れきった悪魔の血は何年経っても変わらず
また生れ落ちたその瞬間から流れているものだったという意味の深さが今回よく伝
わりました。
読者が薄々気付いていたバンパニーズ大王の真実は直球そのままだったのに、まさ
か闘いの中半で主役級でありダレンの次にいやダレンを凌ぐくらい人気のある人物
の死をここで持ってくるとは・・・スピード感を失いそうに見えたシリーズの新た
な一面を見た気がしました。
親のような存在の人物の死を「無駄死に」と言わずにいられないような一言を残し
て去って行ったバンパニーズ大王。
育ちで悪魔のような人物が生まれるのではなく、時として産まれついての悪魔がい
る、そしてただその悪魔の存在に周りの者が悲しい運命の渦へと巻き込まれていく。
一体この運命の渦はどこから始っていたのか最後の最後で明かになった事実への伏線
がここにもちゃんと引かれていたのですね。
9巻まで進むと第1巻のことがすごく過去のことのように思えますがこのシリーズ
の一番のスゴイところは第1巻の一行目から物語の結末への伏線が引かれていると
ころです。この9巻への伏線も実は第1巻に登場していた・・・児童書を超えたミ
ステリの奥深さを感じた9巻でした。
一言■終盤に差し掛かる前の落とし穴のような第9巻ですね。
評価 ★★★★☆
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「雨恋」 松尾 由美 新潮社 1,575円
*あらすじ*
ぼくは雨が永遠に止まないことを祈った。静かに深く彼女とつながりながら…。
独身サラリーマンの渉は、叔母から託された都心のマンションで暮らしはじめた。
ある夜、部屋にあらわれた若い女性から、3年前の事件についての調査を依頼される。
なぜか雨の日にだけ来訪する彼女に、やがて思いを抱くようになった彼は……。
「すべてを知った時、君はぼくから去っていく」――
ありえない恋、ラスト2ページの感動。ストレートな切ないラブストーリー。
*感 想*
帯にラブストーリーと書かれているにも関わらず、読み終わるまで恋愛小説だと思わず
に読みきりました。確かに切ないラブストーリーに仕上っているのですが、ただ単に恋
愛小説の枠に収まらずミステリ色、SF色の濃い物語になっています。
そして読み終わった後で少し心の奥底が痛むような切なさの残る本なんです。
この本はできれば雨がシトシトと降っている日に、家の中で静かに読んで欲しい本です
ね、でも逆に晴れて気持ちのよい日に読んでいても何故か周囲の音が消え、静かに雨が
降っているような気分になってしまいます。
偶然済むことになった叔母の家には2匹の子猫がいた、それだけではなく何故か雨の日
になると家の空気が変わっていることに気付く主人公の渉。
最初は声だけの存在だった彼女は渉に三年前の雨の日にこの部屋で起きたある事件につ
いて調査を依頼します。幽霊の彼女・千波はその日自殺をしようと決心し準備を整えて
いましたがひょんな事から自殺を取り止めて生きることを選んだはず・・それなのに、
その部屋にいた誰かによって飲まないはずの毒を飲まされて殺されてしまいました。
しかし遺書もありそれまでの行動から自殺と片付けられてしまった千波。
私を殺した犯人は誰だったのか?犯人さえ分かれば成仏できると思う千波、雨の日だけ
現れる幽霊の依頼を聞く渉。
当時のことを聞くにつれ事件の真相は二転・三転し、少しずつ分かっていく当時の真実
により千波の姿も足から見え始めていくのです。
知らず知らずのうちに彼女のことを知りたいと姿・顔が見たいと思う渉と、知れば知る
ほど意外な真実が分かっていく三年前の千波の周りの姿。
幽霊と人間だから実るはずのない恋、本当のことを知り彼女の顔が見たいと思いつつ、
最後の真実まで突きとめるということは別れを意味することに。
隠されていた千波の過去にいつしか主人公の渉と共に読者は興味を持たされページを捲る
手が止まらなくなってしまいます。また首から下しか姿が見えない千波に対して怖さを感
じず逆にその見える箇所の描き方のせいか幽霊なのに優雅ささえ感じてしまうのですよね。
読み終わった後、気がつくと心の中に優しい雨が降っている・・・寂しいけれども温かさ
のある不思議な読了感のある1冊でした。
一言■ミステリ色の強い恋愛小説ですね。
評価 ★★★★★
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「月読」 太田 忠司 文芸春秋 1,950円
*あらすじ*
「月読」とは、死者の最期の言葉を読みとることのできる異能者のこと。
生まれながらに死者の残留思念 =「月導(つきしるべ)」を読む力を備えていた
朔夜一心(さくやいっしん)は、親元を離れ、一子相伝で力を磨き、能力者として
孤高の道を歩む。彼が、失われた過去を求めてある地方都市を訪れたとき、そこ
では謎の連続婦女暴行事件が……。
従妹を暴行魔に殺され復讐を誓う刑事・河井と一心とが出会ったとき、運命の歯
車は音を立てて廻り始めるのだった。
*感 想*
物語の雰囲気は恩田陸の「月の裏側」みたいで、物語の展開は伊坂幸太郎みたい
な本作「月読」。
全く無関係かのように思えた事件や人物達が少しずつ交差し合い最後には別の絵
が見えてくる展開は大変面白いのですが少々長いのが難点なんですよね。
「月読」という特殊な力を受け入れられるかどうかでこの物語の評価は変わって
くると思います。
何故犯人は大量殺人にしたかったのか?何故連続婦女暴行事件の犯人は今までの
方法を変え殺人に走ったのか?そして何故犯人は写真を盗んだのか?現像された
ばかりの写真に何が写っていたのか?そして死んでいた女性は誰なのか?
物語が進めば進むほど謎だらけになっていく作品なのですが、その謎も伏線が見
事に張られているので無理がないんですよね。
ただ一つ言えば最後に仕掛けられた一心の謎(ネタバレ)双子であるという事実
は必要なのかどうかは疑問ですが、同時進行の物語である以上仕方がなかったの
かもしれないです。
まぁその謎もちゃんと二人分の茶葉という部分で伏線が張られているので問題は
ないのですが・・・ちょっと唐突だったような気もしてしまいました。
物語の内容や事件は何とも後味が悪いものですし冷ややかな部分もあるのですが
全ては月読という神秘的な力のせいでその嫌さは薄らいでいます。
まぁ盛りあがるまでにかなりページ数を読まないといけないのでそこまで辿りつ
けるかどうかか問題かもしれません。
でも太陽に比べて月がテーマになると何故かすごく神秘的で美しい物語になりま
すよね、やはり月ってそういう力を秘めているように思えるからかしら?
人が死ぬときに残す残像が月導となる・・・これが現実だったら死ぬ瞬間まで気
が抜けなくなりそうですけど。(笑)
ミステリというよりSF・ファンタジー色の濃い1冊でした。
長いのでお時間のある時にオススメ。
一言■★★★★。
評価 全く雰囲気は違うのですが恩田陸の「月の裏側」と妙に重なった1冊です。
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「赤い長靴」 江國香織 文芸春秋 1,470円
*あらすじ*
夫の背中に向かってひとり微笑む日和子。
危ういけれどかけがえのない、夫婦というもの。
「私と別れても、逍ちゃんはきっと大丈夫ね」そう言って日和子は笑う、
くすくすと。笑うことと泣くこととは似ている……。
日和子と逍三、結婚して10年、子どもはいない。
定評のある、繊細で透明な文体が切り取る夫婦の情景――ささやかだけど
かけがえのない日常、ふいによぎる影。何かが起こる予感をはらみつつ、
怖いくらいに美しい、14の物語が展開してゆく・・。
*感 想*
江國氏の本とは相性の悪い私ですが今回は期待せずに読んだのが良かった
のか今までの作品に比べると途中で飽きずに最後まで読めました。
ただし好きかどうかと聞かれると正直好きではありません。
多分私がこの方の本に登場するような繊細な人物ではないので主人公達の
気持ちが理解はできても共感できないが好きではない理由です。
結婚して子供がおらず夫婦だけの家は私自身そうですし、私の周りでは多
いのですがやはり周りから見るとどこか異質なんでしょうね、「子供は?」
という言葉はどこへ行ってもかけられますし夫婦二人だけだと認めてもらえ
ない雰囲気が世の中にはあるような気がします。
主人公の日和子がどことなく世間から宙に浮いているような雰囲気はこうい
うところから来るのかもしれないです。また夫に対して結婚して10年経った
今も時に理解できない存在になり見知らぬ人にように感じることがある。
こういう部分も誰もが時に感じることだと思います。
ふと自分はなぜここにいるのか?不満とかではなく唐突に襲う疎外感ってあ
ると思うのです。しかもそういう思いとは逆に家から離れると心細く、夫だ
けが自分を守る者に感じるという部分もわかるのですよね。
結婚して家を出て何年も経つと自分の居場所は実家にはなく、また友達とあ
っていても楽しいけれども居場所ではない、自分が外出していると家のこと
は何もしない夫だけれどもそこは自分を必要としているから安心して帰れる
・・・主人公・日和子の泣いているように笑うその姿に幸せであり不幸な女
性の姿が自然と思い浮かんでくるのですが、やはり好きではない。
幸薄そうな雰囲気や何がしたいのか結局この主人公には何もないんじゃない
のか?という部分に共感できないのですよね。
別れたとしても一人で生きていくタイプでもないですし・・・。
何よりこの作品の中に出てくる逍三が優しい人物だとは感じないので途中で
何度か出てくる「優しい夫」という言葉に違和感もありました。
文章も上手くて感情の揺れも分かるのに何故かイライラとしてしまうのでや
はり相性はよくない作家さんなんですよね。
ファンの方の評価は高いので江國さんが好きな方にはオススメです。
一言■★★★★。
評価 理解できても共感ができないんですよね・・・。
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「義八郎商店街」 東 直己 双葉社 1,785円
*あらすじ*
「義八郎商店街」とは桜台三丁目の別名、とある街のとある商店街。
老人達の多いこの商店街はある種の世界では「武闘派商店街」として知られている。
それはバブル期の地上げ攻勢の最中、警察は後からトラブルの元になると自分たちの力のみ
でヤクザ達を追い払ったからである。
そんな「義八郎商店街」にある公園には「義八」または「義八郎」と呼ばれるホームレスが
住んでいた。
彼は毎日古ぼけた箒で街を綺麗にし、街の人からも好かれるホームレスだった。
そんな幾多の荒波をくぐり抜けてきたこの商店街に今日もまたあちこちで小さな、時に大きな
事件が起きにぎやかに目を覚ます…。心正しき店主たちと心優しきホームレスのものがたり。
義八郎商店街/慰安旅行の夜/座敷童子騒動/公園にて/街角の恋/おれおれ詐欺/義八郎村
ラジオ/桜台タワー/消滅
*感 想*
神様が住んでいるような街、「義八郎商店街」。
ここは何かに守られているかのように悪者から寸前のところで救われる出来事が続いていました。
その「何か」というのとホームレスの「義八郎」が何者なのかは物語が進むうちに自然とわかっ
てくるのですが、実は最後の「消滅」では思いもしない真実がわかってしまうのです。
何を書いてもネタバレになってしまうのですが、ラストを読んでから最初の「義八郎商店街」を
読むと最後の子供たちの会話「神様が守ってくれているような街だね」で全てが語られていたの
ですよね。
途中までは個性溢れるお店の人々たちで笑いながら読めましたが、次第にあまりにも大きな悪が
義八郎商店街を襲い、最後はその街の今まで見えてなかった真実が明らかになります。
それはあまりにも悲しい真実であり、また忘れてはいけない大切な真実でもあって・・・。
正直途中までの楽しさに比べて最後はすごく悲しかったのですよね。
この感覚は宮部氏の「ぼんくら」に似ていました。
読み終わったあとは「寂しい」気分になってしまったので☆分は減らしていますが、本当は★5
つでも良いくらいとてもよい話です。
だから逆にこのラストの寂しい展開は残念でした。明るい話で終わって欲しかったですね。
関係ないのですが、義八郎村ラジオに出てくるような人たち主婦軍団っていますよね。
善意だとか奉仕と言いながら脅しとしか思えない人たち・・・。
こういう団体が一番タチが悪い。
この場面は読んでいて無性にイライラしちゃいました。
良い話が読みたい人にはオススメ。
一言■★★★★☆。
評価 最後が意外でした。
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「約束」 石田衣良 角川書店 1,470円
*あらすじ*
かけがえのない大切なものを失ったとき、人はどのように立ち直ることができるだろう。
例えかけがえのないものを失してたとしても、いつか人生に帰るときがくる。
喪失によって止まった時間が,再びながれだすときを描く、“バック・トゥ・ライフ”
―珠玉のセブン・ストーリーズ。
苦しみから立ちあがり、うつむいていた顔をあげて、まっすぐに歩きだす人々の姿を色鮮
やかに切りとった、絶対泣ける短編集。
親友を突然うしなった男の子、不登校を続ける少年と廃品回収車の老人、モトクロスの練
習に打ち込む少年を遠くから見守る一人の女性、仕事を抱えながら女手ひとつで育てた息
子を襲った思いがけない病、ひきこもりの息子がみた青いエグジット・・・。
約束/青いエグジット/天国のベル/冬のライダー/夕日へ続く道/ひとり桜
ハートストーン
*感 想*
あぁ何だか泣ける本を読みたいなぁ〜とそんな泣きたいときにはオススメの短編集ですね。
いかにも涙腺を刺激する物語ばかりなのですが、意外性がなく直球できているところが逆
に良かったですね。
主題にもなっている「約束」は目の前で親友でもあり憧れだったヨウジを亡くした少年カ
ンタは自分の方が死んでしまえばよかったと自傷事件を起こすようになってしまいます。
その心の闇は誰にも晴らすことができないものでヨウジをこの世界から失わせてしまった
申し訳なさでただただ一杯になってしまうカンタ。
そんなカンタが最後の場所に選んだのはヨウジを失った学校の前でした、そこで彼の前に
現れたのはヨウジ、そしてヨウジがカンタとした約束とは・・・。
この作品はあの池田小事件で生き残った子供たちへ送る著者からのエールだそうです。
目の前で級友を失った後、子供たちの心には何が残るのか、そしてそこから立ち直るまで
に何度闇の底に陥ったのか、悲しくそして温かい物語の最後に泣かずにはいられないそん
な短編でした。
この中で好きだったのは「天国のベル」と「ハートストーン」。
やはり子供が関係する物語はどうしても涙腺が弱くなってしまいますね。
なんていいますか泣かすために書かれた本ですので人前で読むとイマイチその世界に入れ
ないかもしれませんので一人でじっくりと読むことをオススメします。
一言■★★★★。
評価 確かに泣けました。
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「ビッグボーナス」 ハセベ バクシンオー 宝島社 680円
*あらすじ*
一獲千金に命を賭けろ! ギャンブル・バカvs裏情報、攻略情報会社の内幕すべて覗けます!
大手パチスロメーカー・ダッシュ電子の企画開発部門を辞めた東俊哉は、トリプルセブンという
小さ な会社でパチスロの攻略法を売る仕事をしている。攻略法といっても、ほとんどがガセネタ。
それ をパチスロ中毒者に数十万円で売りつけるという仕事だ。そこでは悪徳商法でならした営業
マンな ど一癖もニ癖もある社員たちが、あの手この手で客から大金をふんだくっている。
ダッシュ電子との密かなコネもあり、堅調なビジネスを進めてきたトリプルセブンの周囲で、怪し
い出来事が起こり始めていた。そんな時、ライバル関係にある、業界最大手・東栄企画との間に
攻略情報を巡るトラブルが勃発した。東栄企画はヤクザ直営のヤバイ会社だ。我が身と会社の利
益 を守るため東たちは立ち上がる。はたして彼らは相手を出し抜き生き残ることができるのか!?
*感 想*
新堂冬樹ほどインパクトもなく、裏の世界なのですが闇金融などと違ってパチスロは全く興味が
ないんですよね。それにすることもないので攻略法の話になってもピンとこなかったのが楽しめ
なかった理由です。
物語の展開自体は面白かったのですけどね・・・。
しかし本当にこういう裏情報を流す会社ってあるのでしょうか?それ自体知らなかったのですが
もし存在するとして情報に何万も出すなんてギャンブルに狂うと怖いですね。
勿体ないのは一癖・二癖もあるはずの社員達が微妙に個性が重なってしまっているところといき
なり暴力的な展開になっているのがついていけなかったところですね。
最後に笑うのは誰か、本当に裏切っているのは誰か、その部分も何となく途中から分かってしま
ったのも勿体なかったような気もします。
多分男性には受ける作品でしょうが女性には難しいかも・・・という一冊でした。
一言■★★★。
評価 パチスロに興味があればもっと楽しめたのかもしれませんが・・・。。
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「ぐるりのこと」梨木香歩 新潮社 1,365円
*あらすじ*
もっと深く、ひたひたと考えたい。生きていて出会う、一つ一つを、静かに、丁寧に。
イギリスのセブンシスターズの断崖でドーバー海峡の風に吹かれながら友と交わした会
話、トルコのモスクでのへジャーブをかぶった女たちとの出会い、イラク戦争の衝撃、
少年少女による殺害事件への強い思い――喜びも悲しみも深く自分の内に沈めて、今い
る場所から考える一歩一歩確かめながら考えていく。
著者の回りで起きた“ぐるりのことを静かに、丁寧に綴った、世界と心かよわせるエッ
セイ。
*感 想*
梨木さんの本を読んでいるといつも心の中がシンと静まり返り、梨木さんの言葉
に静かに耳を傾ける・・・そんな気分になります。
今回のエッセイは梨木さんの回りでおきた「ぐるりのこと」が丁寧に綴られてい
ます。それはまるで池や湖に石を投げたときに広がる波紋のようにふとした出来
事から輪になり次第に広がってゆく梨木さんの視点の大きさに驚かされるととも
に何気ない出来事にも「考える」ことの素晴らしさ想像力の凄さを感じさせられ
たエッセイでした。
日々世界では色々な事件や出来事が起きています。
ただ日常の中で話題に出てもそのことに関して一人で深く考えることはあまりあり
ません。でもこのエッセイでは一つ一つの出来事についてまずは自分の中で奥深く
煮詰めてから綴られているので読んでいると梨木さんの伝えたい言葉の渦に埋もれ
ていくような感覚がありました。
決して激しさや押し付けがましさはなく、ただ静かに、ゆったりと広がる梨木さん
の言葉に酔いしれられる1冊でした。
でもこれだけ静かな書かれているにも関わらず梨木さんの物語を作る、物語を書い
ていくという意志の強さに最後は圧倒されるものがあるのですよね。
丁寧に書かれた分、丁寧に読みたい、そう思える1冊でした。オススメです。
一言■★★★★★。
評価 心の中で静かに「ぐるりのこと」ことが広がっていく1冊でした。
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「アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉 」 ダイアナ・ウィン ジョーンズ 徳間書店 1,680円
*あらすじ*
若き絨毯商人アブダラは、ある日、本物の空飛ぶ絨毯を手に入れ、絨毯に
連れて行かれた夜の庭で、謎の姫君と恋に落ちた。
だが二人が駆け落ちしようとした矢先、姫は巨大な魔神にさらわれてしまう。
アダブラは、魔法使いハウルの妻ソフィーの助けを得て、姫の行方を探そう
とするのだが…?
人気作家ジョーンズによる奇想天外、珠玉のファンタジー。
*感 想*
一言■★★★★★。
評価
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