
「半島を出よ 上・下」村上龍 幻冬舎 1,890円
*あらすじ*
舞台は六年後、2011年の日本。
北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠、2時間後、複葉輸送機で484人の
特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。
ちょうどその頃、日本の経済は崩壊している。
アメリカがアフガニスタンやイラクなどの民主化に失敗したことによりドルが急降下、そ
れと共に円も下がり、国債が暴落.国債を大量にもっていた銀行がつぶれる。政府は預金
の閉鎖をし失業率は10%を超えあちこちにホームレスが住むようになっていった。経済崩
壊した日本は世界に見放されてしまう・・。
反乱軍の占領に対し他国からの援助はなく日本の力だけでこの危機を乗り越えなければな
らなくなってしまう。
政府が九州を閉鎖する中、福岡には40代後半の詩人イシハラを頭とする世の中から孤立し
た少年たちのグループがいた。彼らは彼らの意味する闘いに挑む・・・。
財政破綻し、国際的孤立を深める近未来日本に起こった奇蹟とは?
*感 想*
問題作と言われているだけあって近未来というかほんの数年後の日本と世界の姿を描いた
本作は物語とは思えないくらい現実味があり、読んでいて思わず息を呑んでしまう緊迫感
と日本人らしい弱さ、甘さが滲み出ています。
ですから最初はページを捲るのも惜しいくらい物語に没頭していったものの途中から物語
の構成に違和感を感じて醒めてしまったので評価は普通になってしまいました。
まず上・下巻ともに誰か一人に力を入れているわけではなく出てくる人出てくる人の感想
や考え方がツラツラと書かれ、また出来事もその人物に合わせて前後しているので何度も
同じ場面が繰り返されるので読んでも読んでも物語が進まないのが駄目でした。
私の中では緊迫感が薄れてしまったので・・。
朝鮮の反乱軍、日本の政府、そしてイシハラ達、それに加えてマスコミや病院の医者達、
その家族と的を絞らずに物語が広がっていき、そして突然消えているのです。
まるでバトル・ロワイアルみたいなのですが、あの作品でも誰か一人感情移入できる主人
公となるべき者がいるのに対してこの作品では日本という国そのものが主役なため大きす
ぎてぼやけてしまったのですよね。
しかしある日突然他国から侵略された時の政府の対応はあまりにも想像でき、また実際に
この通りに日本という国は動きそうで気分はあまりよくない話でしたね。
ニュースを見ていても日本人は曖昧さを美徳をしているのか考えが薄っぺらいのか、他国
からみると恥ずかしい行為は多々繰り返していますし、自分のその一人なんだなぁと思う
とこれまた嫌な気分になっちゃいますね。
日本という国を辛辣に見た作品ですので一読する価値はあります。
一言■次第に醒めてしまったので・・・。
評価 ★★★
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「象の消滅 短篇選集1980−1991」村上春樹 新潮社 1,365円
*あらすじ*
1993年Knopf 社で編集、出版された短篇選集『The Elephant Vanishes』は英語圏で好評を博し、
ロング・セラーとなっている。その日本語版がついに刊行! 英語版から著者みずから翻訳を試
みた、新バージョンの「レーダーホーゼン」など初期短篇17作品。更にNew Yorkerデビュー当時
を振り返る書下ろしエッセイも収録した話題作。
ニューヨーカーに選ばれ、世界で読まれ、日本に再上陸した初期短篇の数々。アメリカデビュー
当時を語るエッセイなど話題満載の短篇集。
「村上春樹はまずなにを読めばいい?」「短篇をいくつか読みたい。」そんなあなたへ贈る、ニ
ューヨーカーが選んだ村上春樹の初期短篇集。
*感 想*
村上春樹氏の初期短編集なので以前一度読んでいる作品ばかりだったのですが、読み終わってみ
ると久々に読んだと言うのもありますがどれも新鮮でした。
春樹ファンであれば短編のアチコチにワタナベノボルの名前が出てきて思わずニヤリとしてしま
うのではないでしょうか?
春樹さんの本を読んで思うのは、あちらの世界とこちらの世界の狭間にいるような感覚、そして
何かを失うこと、失ってしまったモノに対して諦めとは違い、何と言いますかふと手の平でも眺
めるみたいにそのことが自然な出来事、あるいは選びようのなかった選択肢として自分の中にス
トンと落ちてくる感覚が好きなんですよね。
自分の中で完結していく・・・そういう部分が居心地が良く何年もずっとファンでいるのかもし
れません。
きっとファンの方であれば全て読んだことのある作品ばかりでしょうが、こうして一つの単行本
としてまとめられると不思議なことにまたどれも違う一面を見せてくれるような気がします。
注意点としてこの本、手が濡れていると読んでいて黄色い色がついてしまうので夏場は読まない
方がいいかもしれないですね。お洒落なんですけどね。色が落ちやすいみたいです・・。
一言■村上春樹氏の本をどれから読もうか悩んでいる人にもオススメ。
評価 ★★★★
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「世にも不幸なできごと 1 最悪のはじまり 」レモニー・スニケット 草思社 1,365円
*あらすじ*
ハッピーエンドの物語がお好みの方には、本書はおすすめできない。
ドキドキはらはらが苦手という方も、おやめになるのが身のためだ。なぜなら本書は、ビーチで遊ぶ
三姉弟妹に、世にも恐ろしい知らせが届けられると、あとはみじめでイバラ、不幸のオンパレードだ
からだ。知恵と勇気で悪の魔の手と立ち向かう子供たち。しかし、ああ、なんたること!その結末は…
申し上げるまい。ただしもちろん、ハッピーエンドは、なしだ。アメリカをはじめ、世界中でハリー
・ポッターと並ぶ超人気シリーズ。頁をめくる手を止められないことまちがいなしのベストセラー、
ついに日本上陸。
*感 想*
本当に不幸の連続でハッピーエンドとは程遠い「世にも不幸なできごと」。
最悪のはじまりでは両親の死に呆然としている暇もなく幼き三姉弟妹は悪の根源であるオラフ伯爵の
元へと引き取られていくのです。
周りの大人たちも善人に見えて(実際に善人なのですが)実に頼りなく、融通も利かず三姉弟妹はど
んどん追いやられていきます。
最悪中の最悪の事態が目の前で起きているのに人情ではなく「法の下」で判断する大人たちに三姉弟
妹はどう戦っていくのか、いやどう逃げ延びていくのかが面白さなのですが、あまりにも頼りない大
人たちに読んでいてガッカリする子供達もいそうです。
困難に続く困難なので飽きさせることもなくラストまで一気に読ませてくれますし、次はもっと大き
な不幸が三姉弟妹の元に来る予感が一杯の終り方なんですよね。
魔法もなく夢もない、しかも金狙いという子供のためとは思えない児童書ですし、他人の不幸は蜜の
味という言葉もありますから大人のための児童書かもしれないですね。
ファンタジーが嫌いな人も楽しめると思います。
今まで読んだ児童書とは一味違って面白かったです。
一言■本当に不幸なんですよね。
評価 ★★★★
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「NR(ノーリターン) 」川島 誠 角川書店 1,470円
*あらすじ*
俺、高橋進。らしい。日本でも指折りの素質をもったランナーで、科学の天才。
だったみたい。でもね、俺、記憶がないの。交通事故のせい。しかもヘンテコな
事件に巻き込まれちゃって…。奇想天外でハッピーなパルプストーリー
*感 想*
「800」が好きで注目している作家さんなのですが・・・この作品は途中からついて
いけずに評価は★2コという結果に。
事故に遭い両親を亡くした主人公の高橋進、しかも記憶までも失ってしまったので自
分が今まで何をしていたかも分からない。
そんな高橋の前に現れるのは自分よりの年下の叔母・眉子やマフィアと繋がりのある
店長、風俗の関係者としか思えない女・サリナなど怪しい人物ばかり。
しかもMSUやらKSIという謎のグループまで接触してきて・・・。
一体俺は何を今までしてきてどんな奴だったのだろう????
内容としてはかなり面白いはずなのに途中からバカミスとまではいかないのですがあ
まりにもしょうもない事ばかり出てきてしまい最後は本当ツマラナかったです。
スピード感はあるし主人公の語り口調も良いのですがついていくのは大変かも。
そんな一冊でしたね。
一言■ノリについていけずに評価は低め・・・。
評価 ★★
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「夜夢 」柴田よしき 祥伝社 1,890円
*あらすじ*
日常の普通の事柄が歪み、その本来の形を変化させてしまう。
人々が生活する時間帯「昼」に対しての「夜」の世界を描く幻想的で怪奇な世界を
綴る。
もうあなたは、あたしを絶対に裏切れない。夜の夢に託された9つの恐怖。
女性に圧倒的支持を受ける著者が描く、哀しみの恋愛ホラー
幸せを保証してくれる、その、たった一つの願い。恋をしている女なら、ひとつしか
思いつかないはず。自分が好きなひとが、他の誰よりも自分のことを好きになってく
れて、そしてそれが、永遠に続くこと。だからあたしも、願った。
あたしの好きなひと、愛しているひとが、他の誰よりも、何よりもあたしを愛してく
れるように。「願い」
月夜/フェアリーリング/ウォーターヒヤシンス/つぶつぶ/語りかける愛に/
夕焼け小焼け/顔/毒殺/願い
*感 想*
ホラー小説だと思って読んでいたので正直あまり怖くなくて拍子抜けはしました。
夜の世界に住む何かが朝が来るまでそれぞれの物語を語っていく、語り部が何者なの
かは最後まで明かされずただ夜にすむ者とだけしか分からない。
彼らが語るのは時に切なく時に幻想的な夢のような物語。
「願い」ではロクでもない男を愛してしまった主人公が強く望んだものは彼の側で常
に彼から愛される存在になること。
「顔」では人気アイドルと同じ名前のためいつも嫌な思いをしてきた主人公が手にし
たのは自分を美しく変えてくれる魔法の化粧品。
「語りかける愛に」は三日月に願いをかける主人公が海で出会った謎の生き物と、そ
して夫の過去の女性が全て行方不明になってしまったという奇妙な事実、ある日豹変
した夫は主人公を鎖で繋ぐのだが・・・。
どの短編も基本は普通の女性の願いがある瞬間から歪んでしまったものなんですよね。
ですから女性であればその気持ち分かるなぁと読み進めていけるものばかりなのです
が何分怖さが足りない。
装丁からしてホラー色が漂っているのにここまで怖くないと何だか「あれ?」って感じ
になってしまいました。
この方のホラーは怖くなく何だかSFちっくなものが多いような気がします。
「好きよ」も最後があららという感じでしたし・・・。
怖さがないのでホラーが苦手な人にオススメですね。
一言■怖さではなく人の心の内にあるものを描いた幻想的なものが多かったですね。
評価 ★★★
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「殴られ屋の女神 」池永 陽 徳間書店 1,785円
*あらすじ*
須崎康平は一発千円で山手線恵比寿駅の西口で「殴られ屋」という妙な商売を始めた。
始めた理由は、ノックアウトされる寸前に見える幻の女神の姿をはっきりと見たいから。
仕事を失い、妻を失い、家を失い、全てを失った須崎が出会ったのは美しい顔を持ちリスト
カット癖のある少年・豊。
「死ぬために生まれてきた犬」だと自らのことを悟る少年と須崎の前に現れるのは何か問題
を抱えた人々ばかりだった。
*感 想*
リストラされ妻に離婚を言い渡された須崎は半分やけくそになり一発千円で殴られ屋という
奇妙な商売を始めることに、その理由は今まで三度だけ見たノックアウトされる瞬間に脳裏
に浮かぶ女神の姿をはっきりと見たいからというもの。
打ちのめされることが目的の商売に吸寄せられるかのように都会で迷い子たちが集まってき
ます。
それは一緒に住む美しいけれどリストカット癖のある少年・豊に言わせれば二人とも「死ぬ
ために生まれてきた犬」だから・・・。
これほど悲しく響く言葉が何度もこの本の中では出てきます。
そして「死ぬために生まれてきた犬」という言葉がこの物語のもう一つのテーマなので集ま
る人々が抱えている問題も重く、継母や息子による虐待・DV・いじめ・体罰・不法就労者
の過酷な労働・人身売買など何かによって虐げられた人達が須崎とは逆に相手に「勝つ」た
めに彼の元を訪れてきます。
この問題を抱えた人達が主人公の元を訪れるという部分はまるで石田衣良の「池袋シリーズ」
のような展開ですし、一応パターンも決まっているので短編としてのリズムはとても良いの
ですがどれも短すぎて唐突に終わっているような感じもしてしまいます。
もう少し長く読みたい・・・そう思わせてくれるのでそこが良いのかもしれないのですが最初
はあまりにも突然幕が閉じるのでちょっと物足りなかったですね。
でもそれが人生の一瞬だけ出会う「殴られ屋」と人々の出会いを表現しているのかもしれませ
んが・・。
「負ける」ために殴られ屋になった須崎が最後にした勝負、女神を見るために始めた事が思わ
ぬ方向へ流れていってしまうので一体どんなラストになるのかと思えば最後まで何だか寂しい
終わり方だったのでその部分は残念でした。
結局子供は親をいつまでも待ち、愛をずっと望んでいるものなのですね。
しかし須崎や豊の重たさに比べ、元妻の礼子が何とも嫌な存在なんですよね。
そこまで男を狂わせる魅力があるとは思えないのですが典型的な悪女なんでしょうか?
しかもこの物語に出てくる女性がどれも好感度が低いのも気になるところです。
男は皆マザコンなど男性から見た母親像がかなり出てきますし人を殴るという行為から
しても女性より男性にオススメの一冊です。
一言■今一番注目されている作家さんなんですけどね・・ラストがちょっと。
評価 ★★★
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「別れの後の静かな午後」大崎善生 中央公論新社 1,785円
*あらすじ*
君を想えば、別れすら愛しくなる──痛みと哀しみが去りゆくとき、永遠に消せないぬく
もりが胸に灯る。『パイロットフィッシュ』の作者が贈る〈別れとはじまり〉を描いた至
高の恋愛小説集。
妻・美久の父幸三郎は七十三歳で唯一の趣味の釣りに行き海に落ちて死んだ。
自殺説も流れたのは堤防に小さな鰈が二匹並んでいたからだった・・・。「空っぽのバケツ」
初めての彼女亜希子との別れは僕が初めて経験する恋人との別れでもあり、それは亜希子に
とっても同じだった。付き合い始めた頃、亜希子がふと別れた後どんな風に過ごすのだろう
と口にした。お互いにまだ誰とも別れを経験してなかった僕はただ想像で「凄く静かな午後
が訪れてくるような気がする」と答えていた・・・。「別れの後の静かな午後」
サッポロの光/球運、北へ/別れの後の静かな午後/空っぽのバケツ/ディスカスの記憶
悲しまない時計
*感 想*
人生の中で何度か経験する別れ。
繰り返せば慣れるというものではないのですが、やはり初めての別れというのは強烈でその後
の日々を一体どうやって過ごしていたのか、またいつの間にか自分でも気が付かないうちの相
手のいない生活に慣れていってしまっていたあの感覚が読んでいて懐かしさとほろ苦さととも
に蘇りました。
誰もが感じるあの感覚を言葉で表現出来るのは大崎氏の魅力だと思います。
そして彼の作品は途中までは普通に読めるのですが、途中から急に物語が深みをみせ、優しさ
や愛情の深さを感じ涙が思わずこぼれてしまうのです。
「別れの後の静かな午後」では、主人公は初めてできた恋人亜希子と結婚か仕事かで意見が合
わず、長年付き合ったのにあやふやなまま初めての別れを経験してしまいます。
海外でその別れの痛みに慣れ平穏な日々が訪れた頃、一本の電話が掛かり、思わぬ言葉を聞い
てしまいます。
そしてラストに主人公が選んだ一言・・・これが見事に胸に直球で刺さってきます。
何気ない会話のように思わせておいて最後のここ一番の箇所に繋げ読者の胸を揺さぶるこのテ
クニックは大崎さんならではなんですよね。
他に「空っぽのバケツ」が私は好きで、妻の無口な父が残した無意味に思えたある印が主人公
達にとっては言葉にならない言葉となり、また忘れてはならないある言葉を思い出させてくれ
るのです。
30ページ足らずの短編なのにいつまでも胸に深く残る、そんな6作品でした。
一言■突然胸に苦しさが襲ってくる一冊です。
評価 ★★★★
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「グルーヴ17(セヴンティーン)」戸梶圭太 新潮社 1,575円
*あらすじ*
同じ日に、童貞を捨てる奴もいれば、命を捨てる奴もいる――。
ルックスだけはいい奴らが集まっている峯尾学園高校芸能科。
一方のパンジン科(普通科)で女にもてずサイテーの日々を送る二人の男子が、街で誘われた
パーティー。寒風吹きすさぶ土曜の夜の六本木、17歳の高校生たちがそこに結集した時、運命
が動いた……。
*感 想*
学園ものと言えば爽やか、青春という文字が似合いそうですが、戸梶氏に限ってはそんな綺麗
な言葉は全くと言ってもよいほど似合いません。
そんな戸梶氏が直球の青春ものを書いた時、一体何が起きるのか?
今まで戸梶氏の作品を読んだことがある人には想像出来そうですが、ご想像の通りそこには生
の十七歳の飾らない叫びが本から飛び出してきます。
特に男の子の心の叫びが・・・。
芸能科に通いテクノに没頭する悠伍。
自分の作り出す音に酔いしれる日々を送りながらもやはり十七歳そろそろ初体験を済ませたい
と思うのだが、同じするならいい女としたいと考えている。
一方パンジン科に通う隆弘は頭の中ではいつも誰かに暴力を振るうか女とすることしか考えて
いない、そして友樹は一度だけ女の人と経験できれば自殺しちゃってもいいやと考えているほ
ど鬱状態に陥っている、ともに悠伍と同じ高校の十七歳。
モテナイ最低の日々を過ごす隆弘と友樹の前に現れたのは誰がどうみてもマトモじゃない男・
広野。広野の企みによってパーティに芸能科の女の子を呼ばなくてはいけないことになった日
からそれぞれの運命は分かれていくことに・・・。
基本的には三人の男の子からの視点で物語が進むので十代の男の子の性欲と言いますか欲望の
大きさが本から溢れ出そうな感じです。
笑える人には笑えるのでしょうが、十七歳の年頃の息子を持った方は読まない方がいいかもし
れないですね。それくらいリアルというか生々しい若者の叫びなので。
そして同級生の女の子達がまた彼らに比べると何倍もませているし度胸も人生の渡り方も上手
いところが現実味があっていいんですよね。
戸梶氏の特徴は救われない者は最後まで救われないし、最低の人間は最低のままで終ってしま
うところです。また運命によって大きく分かれた三人の少年達の最後も淡々としていて、そこ
に友情も愛情も美しさも感じないところが逆に良さを引き出しているような気がします。
今までの作品に比べると比較的壊れ具合が柔らかいので著者の作品を初めて読む方にはこの作
品からがオススメですね。
一言■十七歳の生の声を聞いたような気がしました。
評価 ★★★
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「うちのパパが言うことには 」重松清 毎日新聞社 1,575円
*あらすじ*
「生きる」って、ただそれだけで、けっこうすごいじゃん、とぼくは思うのだ…。
家族、友、街、絆をみつめ、自らの歩みを綴った、2001年夏から2004年の
暮れにかけて書いた短文の中から自選したエッセイ集。
*感 想*
大人になると「怖い」とか「できない」という言葉がなかなか口に出せません。
必要以上に力を入れて生きている・・・そんな感じが最近するのですよね。
逃げることは格好悪い、怯えることも格好悪い。
でも子供も大人も怖いものは怖いのだし、生きていくことの不安は歳を重ねる毎に
増えていって当然なんだと重松氏の本は語りかけてくれます。
同じことを書いても書き手によっては偽善者っぽくなりそうなのに、重松氏のエッ
セイは一言一言が本から語りかけてきているかのように胸に真摯に響くのですよね。
それは飾らず、心のまま読者に向けられた言葉だからかなと思います。
今の情報化社会の中では好むと好まざると様々なニュースが目や耳に入り、そして
ほんの数日でどれだけ大きなニュースでも忘れ去られてしまいます。
ただそのニュースの中には本当に知るべき肝心な部分がポッカリと抜け落ちている
そのことを改めて認識させられました。
大事な部分は何だったのか、あの事件、あの出来事は・・・。
あまりにも身近過ぎて意識していなかったことに理由があったり、また事件そのも
のすら毎日流される新しい記事によって翌日には過去の遠い出来事になっていく怖
さを感じてしまいました。
エッセイなのですが、是非教育の場で題材として取り上げて欲しいなと思う一冊です。
一言■教科書のようなものですね。
評価 ★★★★
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「黒笑小説」東野圭吾 集英社 1,680円
*あらすじ*
笑いのマエストロが放つ超ブラックユーモア。
丸い物がすべて巨乳に見えるようになって…「巨乳妄想症候群」。
同情を集めるかわいそうなシンデレラの素顔とは?「シンデレラ白夜行」
メル友に会うには写真と実物のギャップがありすぎて写真と実物の差を埋めようと
する女…「奇跡の一枚」。
苦節30年、売れない作家は初めての選考会へ勇んで望むが…。「選考会」
もうひとつの助走/巨乳妄想症候群/インポグラ/みえすぎ/モテモテ・スプレー
線香花火/過去の人/シンデレラ白夜行/ストーカー入門/臨界家族/笑わない男
奇跡の一枚/選考会
*感 想*
東野圭吾の魅力を知りたいのであればこの「○笑小説」シリーズは必ず読んでおいた方が
いいでしょう。「怪笑」「毒笑」に続き今回は「黒笑」だけあって笑っていいのやら、あ
まりのブラックさにどう反応してよいのか困ってしまうような短編集でした。
雑誌「ダ・ヴィンチ」でこの作品に関しての著者インタビューが載っていましたが、新人
作家デビューの話を書いた時は編集長の方から文壇ネタは止めて下さいと頼まれたそうで
す。確かに今回文壇ものが多くこのネタは作家の方にとってはブラック過ぎる笑いなので
はないかなぁと・・・。ご本人も含めてですが。
そしてファンにとってのプレゼントのような「シンデレラ白行夜」。
こういうブラックものの童話は今まで何度も目にしてますし意外性はゼロにも関わらず、
ファンのために書かれた短編だということを感じさせてくれて嬉しくなりました。
「みえすぎ」は井上夢人氏の「オルファクトグラム」と少し重なりましたが、この短編を
読むとマスクをしたくなる方が多いのではないでしょうか。
日常で実際にありそうなブラックな笑い、「あー分かるなぁ」と頷きながら笑えますし
どれも十分程度で読めるので通勤・通学時のおともにオススメです。
一言■ブラックな笑いが好きな方にオススメ。
評価 ★★★★
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「ギブソン(ミステリ・フロンティア)」藤岡真 東京創元社 1,785円
*あらすじ*
果たして彼が向かったのは右の道か、左の道か、それとも正面の道か?
8月2日午前6時、待ち合わせの場所に高城秀政は現れず、そのまま失踪してしまった。
敬愛する上司の行方を追う日下部の前に次々現れる、奇矯な人びとと不可思議な事実。
町内に出没する謎の消防車、血痕を残して消えた老人、生き別れの娘、正体不明の脅迫者。
それぞれがパズルのピースのように結びつき始めても、杳として知れない高城の行方。
大量のレッド・へリングに翻弄されながら、ついに日下部が直面した驚愕の真実とは?
*感 想*
ある朝、ゴルフ場へ上司と一緒に行くために彼の家の近くまで迎えにきた日下部、しかし上
司・高城は待ち合わせ時間より三十分も前に家を出たまま忽然と消えてしまいます。
警察ではただの家出人としか扱ってもらえず頼りになりません。
尊敬する上司が息子にも誰にも何も告げず失踪するなど考えられない日下部は彼の足跡を辿
っていくことに、近所の人々に話しを聞くうちに次々と不可思議なことに出会っていきます。
同時期に血痕を残して行方不明になった老人、近所で続いているストーカー事件、謎の消防車
、そして失踪当日に聞いた謎の音、高城の残した日記には昔の恋人との間に出来た娘に関する
記事もあり、ついには真相を追う日下部を脅迫してくる者まで現れてくることに・・。
本当に謎が謎を呼んでいますし、どこに何が繋がっているのか見当のつかない展開なのです。
しかも作品中に突然誰なのか分からない謎の人物の視点から物語が語られる箇所もあり物語が
どの方向へ進むのか予測すらつかないのです。
そのため知らず知らずに日下部とともに一体高城に何が起きたのか知らずにはおられない心理
状態になってしまうのです。この「日下部とともに」というのがこの物語の面白さで彼から見
た高城という人物像が読者の頭の中にインプットされているのでラストの思わぬ事実に驚かず
にいられないのですよね。
全てのことに「理由」がある、その言葉通り日下部の周りにいた人々には事件の真相に対して
のめり込む「理由」があります。
それもあまりにも皮肉な「理由」が・・・。
主人公の心境を考えると酔わずにはいられないこのラスト。
知らなくても良いことは世の中に沢山あり、そして今まで見ていた人物像が180度ひっくり返る
面白さ。バラバラだった出来事が一つに繋がったとき完成したものは読者の想像を超える一枚
の絵だった!という感じの一冊でした。
一言■まさかそんなラストになるとは・・・知らない方が幸せなことって多いものですね。
評価 ★★★★
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「孤虫症」真梨幸子 講談社 1,680円
*あらすじ*
やさしい夫と賢い娘に恵まれ、幸せな家庭生活を営む主婦、麻美。だが彼女には妹にも言え
ない秘密があった――。
新興住宅地で全身に紫色の瘤ができて死亡する奇病が発生。失踪した主婦の行方は?
第32回メフィスト賞
*感 想*
携帯サイト「The News」で2005年1月4日〜3月29日に配信され単行本化された本作品。
もし私が携帯で細切れに読んでいたとしたら続きが気になって仕方のない作品だったと思い
ます、ただしそれは嫌悪感を含めてどう収まるのかが気になってしまうからという理由であ
って面白いからという理由ではありませんが・・・。
九月が永遠に続けばといい最近の新人さんの傾向なのでしょうかやけに性描写が多いのが気
になりますね。特にこの本は最初が主婦の乱交日記のようになっているので途中で飽きて読
むのを止めようかと思うほどでした。正直言ってツマラナかったのです。
図書館で借りて読んで文句を言うのも何ですが買っていたら腹が立ったと思います。
それくらい私にはつまらなかった。
ところがです、途中から最初読んでいたものが違う意味を持ち始めるから驚きなのです。
あれ?もしかしてただのポルノ小説じゃなくてちゃんとミステリだったの?と安心させてく
れるのです。(笑)
人間の嫉妬、特に女性間で起こる嫉妬は止めようがなく、親子、姉妹、近隣とまるで身体に
巣食う虫と同じくらいに醜く宿ってしまう、その恐怖を描いています。
文章は上手いですし嫌悪感を抱いていも読ます力はあるのですがリアル感はないですね。
特に最後の報告書は何なんでしょうね。一歩間違えたらバカミスに入りそうです。
メフィスト賞は当たり外れが極端で、感嘆の声をあげるものもあれば壁に本を投げつけたく
なるものもあるので期待はせずに読むのが一番な賞だと思っています。
この本は・・・どちらでもないのですが読み終わった後に何も残らなかったので評価は★
二つです。人には薦められないですね。
ネタばれになりますが人をバラバラにしても観葉植物の鉢には入りきらないと思いますし悪
臭で耐えられないと思うのですが・・・。
パキラってそこまで大きい植物じゃないですし、だいたいその前に腐敗した死体の悪臭で耐
えられないという場面を作っておきながら室内のものはOKなのかい?とその辺りのいい加
減さが妙に気になりました。
一言■最近の流行なんですかね?こういうジャンルって・・・。
評価 ★★
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