
「新本格魔法少女りすか 2 」西尾維新 講談社 924円
*あらすじ*
……なぜ、魔法はあるの?
……なぜ、変身するの?
……なぜ、大人になるの?
……なぜ、少女なの?
心に茨を持った小学5年生・供犠創貴(くぎきずたか)と、“魔法の国”長崎県から
やってきた転入生・水倉りすかが繰り広げる危機また危機の魔法大冒険(ファンタジ
ック・アドベンチャー)!
ついに現れた最強の“天敵”を相手に2人の打つ策は――!?これぞ「いま、そしてか
つて少年と少女だった」きみにむけて放つ、“魔法少女”ものの超最前線、<りすか
シリーズ>第2弾!魔法は、もうはじまっている!
*感 想*
第一弾に比べるとまだ比較的読みやすい物語になってはいるのですがどうも話に魅力
がない・・・と言ってしまうと失礼なのかもしれませんけど。
色々と二人の過去やら背景は分かるものの結局戯言から抜け出てはいないのですよね。
だったら戯言だけでいいんじゃない?と思ってしまうのでした。
魔法の種類とか天敵とか説明されてもさっぱり分かりませんし、ここまで理解できな
いと正直読む気が失せてしまいます。
ここまで面白くないのに3が出たら図書館で借りちゃうんだろうなぁ〜というのが★
3つの理由です。
しかしこれほどまでに魔法という言葉が似合わないシリーズもないですよね。
これがアニメ化になんてなった日には反対運動でもしちゃうかも・・・。
かなーり好き嫌いは分かれると思いますし西尾維新のファンでないと受け入れ難い作
品ですのでオススメはできません。
ちなみに1での設定は既に忘れてしまっているのですが創貴とりすかって何のために
闘っているのでしたっけ?
2巻の最後では今から本当の冒険(旅だったか何だったか忘れましたが)が始まるみ
たいなことが書いてあったのですが・・・りすかの父さん探しでしたっけ?
全く物語を理解しないまま読み終わってしまったかもしれません。
一言■私には理解できない世界だわ・・・・。
評価 ★★★
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「ふしぎな図書館」村上 春樹 佐々木 マキ 講談社 1,500円
*あらすじ*
村上春樹と佐々木マキが贈る 大人のためのストーリー 魅力溢れる絵
ぼくは「図書館」から、脱出できるのだろうか?懐かしい“羊男”も登場!
「いかような本をおさがしになっておられますかな、坊ちゃん?」
「オスマントルコ帝国の税金のあつめ方について知りたいんです」とぼくは言った。
老人の目がきらりと光った。「なあるほど、オスマントルコ帝国の税金のあつめ方、
ですか。それは、ああ、なかなか興味ぶかい」
ある日の夕方訪れた図書館にいたのはちょっと不気味で怖そうな老人。
ちょっとした調べものをして帰るつもりが老人に図書館の地下に連れて行かれた僕
は牢屋に入れられてしまった。
そこには羊男と綺麗な女の子がいて・・・。
*感 想*
カンガルー日和の中に入っていた短編「図書館奇譚」を改稿したのが本作品です。
過去に読んではいるものの既に忘れてしまっていたので家にある村上春樹全集を探し
てみたら年代の違うものを持っていてガックリ。今度図書館でもう一度「図書館奇譚」
を読んでみる予定です。
さてタイトルは「ふしぎな図書館」ですがどちらかと言えば「恐怖の図書館」と言って
もいいくらいブラックですね。何せ主人公の少年は調べものをしに来ただけなのにいき
なり老人に地下の牢屋に連れて行かれてしまうのです、しかも理由は少年に知識を詰め
込ませた後で美味になった少年の脳をチュウチュウと吸うためだというのですから理不
尽極まりない。
それなのに羊男が現れると読者は思わず懐かしい友に会ったみたいにホッとしてしまう
から不思議ですよね。(あ、だから不思議なのかしら)
この本の魅力はやはりこの羊男のイラストがあるということです。
美味しいドーナッツと羊男がいれば不気味な地下牢にいても心が和んでしまいそうです。
春樹さんの物語は人によって受け取り方が全く違いますので他の方の感想を読んでも自
分と重なるものはあまりありません。
ただこの本では、少年が少年ではなくなってしまう日々のことを書いてあるような気が
しました。どこへ忘れてしまったかわからない少年だった時の自分。
ある日を境に子供時代を置き去りにしてしまい、暗闇の中考えるラスト。
これだけ短い文章なのに読む日やその時のタイミングで全く違う感想ができてしまうの
でなかなか春樹さんの本の感想は書きにくいのですよね。
しかし・・・これだけ小さくて短いのでイラストが良くても私にはちょっと割高に思え
た一冊です。
一言■1,500円は高いかなぁ。
評価 ★★★★
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「夜離れ」乃南アサ 新潮社 460円
*あらすじ*
甘えん坊の摩美としっかり者の朋子。摩美の彼氏に一目惚れしてしまった朋子が、摩美
の結婚式で行なった禁断のスピーチとは……「祝辞」。
銀座のホステスから地味なOLに戻り、着実な結婚をめざした〈私〉を襲った突然の不
幸……「夜離れ」。結婚に憧れる女性たちが、ふと思いついた企みとは?
ホントだったら怖いけど、どこか痛快な気分にも。微妙な女心を描く6つのサスペンス。
4℃の恋/ 祝辞/青い夜の底で/髪/枕香/夜離れ
*感 想*
昌世はモノにしたい男(医者)との旅行計画を立てていた。
ところが丁度旅行へ出発する日に祖父が死にそうな状況に陥ってしまう、その時に昌世が
とった行動は祖父を死体が凍らず腐らない程度に保てる4℃の冷蔵庫へといれておくことだ
った。(4℃の恋)
親友の婚約者に会った日から喋れなくなった朋子。しかし挙式前には元に戻り彼女の口から
出た祝辞は親友の隠された過去の暴露話だった。(祝辞)
他、女が欲望、嫉妬、妄想によりその本性を現した時に起きた出来事を描いた短編集。
この本に登場する女性ははっきり言って性格も根性も悪い。
それは加害者も被害者もどっちもどっちの酷さなのだが何故だかそんな彼女達に親近感が沸
くから不思議なのだ。
例えばあなたにも経験はないだろうか?花嫁の席に座っている親友、しかし親友だからこそ
知っている花嫁の裏の顔、今までの悪事。笑顔で祝福しながらも脳裏に浮かぶ色々な思い。
また自分の自慢する部分と重なる目障りな存在、相手を潰したいと思いつつなかなかできな
いイライラ。そんな人間の心の奥底に渦巻くドロドロとした部分を乃南アサは隠さずに「こ
こまで出すか」というくらいに描き出した短編集。
嫌悪感を抱きつつも妙にスッキリとする読了感。
摩訶不思議な魅力の一冊。
一言■いやー、女は怖いですね。
評価 ★★★★
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「となり町戦争」三崎亜記 集英社 1,470円
*あらすじ*
ある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。
だが変わらぬ日常に、僕は戦時下の実感が持てないまま。
それでも“見えない”戦争は着実に進んでいた。
「清澄な悪夢」「傑作」と選考会騒然の衝撃作!
*感 想*
ある日突然町の広報で「となり町との戦争」が始まることを知った主人公の僕こと北原修路。
そもそも彼が今住んでいる舞坂町は通勤に便利だから選んだだけで町の事も知らず、また知
人すらいない。
しかも開戦を迎えた後も今までと変わらず日常を過ごしていた僕は次の広報で「戦死者12人」
という文字に目を奪われてしまう。
自分の気付かぬうちにとなり町との戦争は確実に始まり、今もどこかで戦闘が行われているの
である、目には見えぬどこかで・・・。
そんな僕の元へも「戦争」が形あるものとして表れたのは役場から「戦時特別偵察業務」の任
命を受け、役場の女性・香西さんと擬似結婚までしてとなり町へスパイ業務をすることになっ
た日から・・・。
姿の見えぬ敵、自分の知らぬ場所で行われている戦闘、増える戦死者。そして突然の終戦。
この本が一番他の作品と違っているのは暴力や戦闘の生々しい場面がひとつもないところである。
それなのに「となり町との戦争」が行われていることを読者は肌に感じ怖さを覚える。
それは日常の延長として戦争が始まり、そして戦う意味も分からぬままにその中へと巻き込まれ
ていく恐怖であり、そのことを疑問に思わぬ人々の無関心さの恐怖でもある。
もし私の元にある日同じような広報が届いたとしたら?
きっと眉だけしかめて何事もなかったようにゴミ箱へ捨ててしまうかもしれない。
あるいはこの本の町民と同じく自分の日常への利害にだけ目を向けてしまうであろう。
それはテレビのブラウン管の向こうの世界と同じで電源を切れば忘れてしまう。つまり目の前で起
きてない出来事や自分と親しい人に関わりのない出来事は全て右から左へ流れる情報の一部でしか
ないからである。
この本には全くリアルさはない。それなのに主人公の僕が感じることが妙に生々しく読者の中に滑
り込んでくる。
静まり返った森の中、スパイ行動中に一度だけ味わう身の危険、そして最後に唯一聞いた鉄砲の音。
100%架空の世界であり、想像すれば滑稽な世界なのだがそこに底のない暗さと恐怖を感じてしま
うのがこの本から受ける印象だ。
今までにない不思議な感覚の一冊。
一言■不思議な面白さがありました。新鮮でしたね。
評価 ★★★★
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「HEARTBEAT」小路幸也 東京創元社 1,575円
*あらすじ*
優等生の委員長と不良少女の淡い恋。できすぎたシチュエーションかもしれないけれど、す
べてはそこから始まった。
彼女が自力で自分の人生を立て直すことができたなら、10年後、あるものを渡そう??そして
10年が過ぎ、約束の日がやってきた。しかし彼女は姿を見せず、代わりに彼女の夫と名乗る
人物が現われる。彼女は3年前から行方がわからなくなっていた。
居場所を捜し出そうと考えたとき、協力者として僕の脳裏にひとりの同級生が思い浮かぶ。
かつて僕に、ブックマッチの格好良い火の点け方を教えてくれた男が??。
約束を果たすため、ニューヨークの〈暗闇〉から帰ってきた青年が巡り合う少年少女たち、
そして最高の「相棒」。
期待の俊英が放つ、約束と再会の物語。
*感 想*
[A]
優等生の委員長・原之井は不良少女のヤオとの10年越しの約束を守るためNYのアンダー
グラウンドな世界から日本へ戻ってきた。
しかし約束の場所に来たのはヤオの夫。肝心のヤオは3年前から失踪をしていると言う。
ヤオを探すため、当時の数少ない級友の巡矢と再会した原之井は思わぬ事件に巻き込まれる。
[B]
財閥の五条辻家に産まれ身体の弱いユーリ。
最近になり亡くなった母の幽霊が屋敷に出るという騒ぎが起こる。
友達のエミィとハンマはユーリのために力を合わせてこの幽霊の謎を解こうとする。
AとB、二つの物語が進行していくにつれ次第に重なり1つの絵が見えてくる。
物語は違いますがこの展開とトリックは伊坂幸太郎と西澤保彦氏の「神のマジック、人間のマ
ジック」と重なるものがありました。
読者にある錯覚をさせておいて実は・・・という部分がミステリ・フロンティアならではの
一冊なんですよね。
単調に思えた二つの物語は探偵役であり、ある意味物語の主人公である巡矢の登場によって
一気に面白さを増していきます。しかもこの主人公、ある影があるのにも関わらず妙に爽や
かなんですよ。
タイトルの「ハートビート」とは原之井の特殊能力でもある心音という意味とネット上で相
手に生きているという信号の意味もあるそうです。この話をしたときの巡矢の態度はラスト
を読んだ後、もう一度読むと別に意味が含まれていてちょっと切ないですね。
ラストまで読んでからもう一度最初に戻ると色々な発見があり、また事実を知らなければそ
のまま読み過ごしていた部分が事実を知った後で読むと別の意味を持つという一粒で二度美
味しい一冊です。
一言■ラストから最初に戻ってもう一度読むと新たな発見あり。
評価 ★★★★☆
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「子どもたちは夜と遊ぶ 上・下」辻村深月 講談社 上巻 1,040円 下巻 1,103円
*あらすじ*
[上巻]
優しく触れようとしても壊してしまう、大人になりきれない子どもたちは、暗い恋の闇路へ
と迷い込んでしまった……。同じ大学に通う仲間、浅葱と狐塚、月子と恭司。
彼らを取り巻く一方通行の片想いの歯車は、思わぬ連続殺人事件と絡まり、悲しくも残酷な
方向へと狂い始める。掛け違えた恋のボタンと、絶望の淵に蹲る殺人鬼の影には、どんな結
末が待っているのか!?
[下巻]
暗闇に蹲る僕を救ってくれるのはあなたの手のひらだけ・・・。
孤独で悲しい殺人鬼に潜む真情が明らかに!!
もう、1人の夜には帰りたくない――。残虐非道な事件に潜む、孤独な殺人鬼と彼を操る共犯
者の存在。罪の意識に苛まれながらも、2人の間で繰り返される恐ろしい殺人という名の遊び
(ゲーム)は、一体いつまで続くのか!?
そして傷つけずには愛せない、歪で悲しい恋の行方の結末とは……。
辛い過去を孕んだ事件の真相は少しずつ解き明かされ、漆黒の闇を照らしていく。
*感 想* ネタバレ含みます。
ミステリと言うよりは青春小説、いや乙女チック学園ドラマみたいな内容なんですよね。
しかも一番驚愕させられたのが著者の紹介にある写真。
前作「冷たい校舎の時は止まる」と同じ人物とは思えない、写す角度が違うとか化粧だとか写真
の技術だけとは思えぬ違いっぷりにこれぞミステリと感じてしまったのは私だけでしょうか?
さて内容ですが前回の主人公は著者と同じ名前で今回は月子ときました。
しかもまたまた無理矢理男の子に人気もので女の子からは嫌われる役の月子です。
私にとって学生時代は過去の過去なのでよく分からないのですが最近の大学生ってこんな感じな
のですか?正直この甘ったるさ、ベタベタな人間関係に何じゃこりゃと思ってしまいました。
いやー、恩田陸に出てくる美少年、美少女は憧れるのですが辻村深月に出てくる美少年と美少女
には全く憧れません。この差は凄いですね〜。
上巻だけ読んでいると腹が立つことが多いです。月子も紫乃も真紀ちゃんもヤレヤレという感じ
ですし、一番酷いのが秋山先生、こんな先生がいたら気持ち悪すぎて溜まりません。
そして下巻で判明する孝太君と月子の関係には驚く反面、こんな気持ち悪い家族っていないんじ
ゃないの?と思わずにはいられません。
母娘で「素敵」「可愛い」と褒め合うなんて想像出来ないですし、兄妹のその密な関係も寒すぎ
てしまうのですが・・・。
そして肝心の事件ですがiとθの関係が結局一番簡単な形で終ってしまったのにはちょっと残念。
この物語ってミステリと殺人がメインではなく恋愛がメインだったのですね。
誰が誰を想っているのか私には説明されるまでさっぱり分かりませんでした。
そういう恋愛図だったのかーと驚かされることばかりなのに対して、iとθと名乗る犯人だけが
想像通りだったのもまた印象深いです。
感想と言うよりは文句になってしまったのですが上下巻を一気に読んでしまう力はあるのですよね。
関係ありませんが登場人物で脇役の恭司が一番良い印象だったかも、次が浅葱で後は嫌い(笑)。
一言■著者近影が一番驚きました。別人にしか思えない(笑)。
評価 ★★★★
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「国防」石破 茂 新潮社 1,365円
*あらすじ*
いま、語るときが来た。日本を脅かす「新しい危機」とは――。
起床、朝四時四〇分。就寝中に報告電話で叩き起こされること、数知れず。
長官在任日数七二九日(歴代二位)の著者だからこそ語れる「国防の基本」とは――。
北朝鮮の弾道ミサイルをどう防ぐか? 自衛隊イラク派遣は正しかったか?
徴兵制は憲法違反か?
日本のテロ対策は万全なのか?
第六十五代防衛庁長官だった石破茂が語る、「国民は、すべてを知るべきだ。」
*感 想*
最近出版された話題作、「裸者と裸者」「半島を出よ」に共通するのは崩壊した日本の姿。
こういう本が人々に受け入れられるということは「弱い日本」という姿を国民が認識しているからだと
思うのですよね。
この本だけが日本の本当の姿とも思いませんし、偏っている部分もあるのですが、やはり今国民が知り
たいこと、そして知らなくて良いことまでも含めて語られているこの「国防」は一度は読んでおくべき
一冊だと思います。
日本がおかれている立場、そして自衛隊の姿などニュースでは語られなかった部分や、マスコミによっ
て色をつけられた部分などテレビを観ているだけでは知りえない情報が沢山ありました。
この方の本を読もうと思ったのは「爆笑問題のすすめ」を観たからなのですが実際に手にとって読んで
よかった一冊ですね。
「国防」、これは今後私達国民単位でしっかりと考えていかないといけない問題だと思います。
この本を読んでから前にあげた2冊を読むとまた深く考えさせられるかもしれません。
「亡国のイージス」に関しても書かれていますし、石破の素晴らしいところは難しい言葉を使わずに私
でもよく分かるように優しく今の現状を語ってくれているところだと思います。
しかしこの本を読むと本当に日本という国の弱さを感じてしまった大丈夫なのかしら?と思ってしまい
ましたけど・・・・。
一言■堅苦しそうに見えますが実に面白く興味深い一冊でした。
評価 ★★★★
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「駆けこみ交番」乃南アサ 新潮社 1,680円
*あらすじ*
何故だかお手柄つづきの新米警官・高木聖大。爽快きわまる青春警察小説。
近くのマンションに独り住まいの老婦人・神谷文恵氏が深夜の交番に駆けこんで来たのが
きっかけで新米警官・高木聖大は等々力のシルバーパワー七人衆に可愛がられるようにな
った。
彼らからもたらされる情報で、次々に手柄を挙げる聖大。
ヤル気のない先輩に悩まされながら所轄を駆け回るうち、ある日、十数年来の未決事件解
決の糸口をつかんだ。しかもそれは老婦人・文恵に関わることで・・・。
とどろきセブン/サイコロ/人生の放課後/ワンワン詐欺
*感 想*
若き警察官、聖大の成長ものだけかと思えば謎の老人集団・とどろきセブンが主役の短編集。
最初は単純な警察ものかと思っていたら何だか意外な方向へ物語が進んでいくのです。
必殺仕事人風の老人7人が影であれこれと動く様子と「人生の放課後」で語られる彼らの過去
がとてもいい味を出していて、短編が進むにつれて次第に登場人物が好きになっていくとい
う展開になんですよね。
ここで流石乃南さんと思うのはこの短編の並べ方です。
最初にとどろきセブンの過去、彼らがなぜこういう形になったのかを語らずに聖大という新人
警察官と関わり事件をそれとなく教えることから始めていくことから始まっているので彼らの
謎がずっと残っていたのです。
しかも彼らの主義で正義のためなら手段は選ばないという考えが前面に出た「サイコロ」のそ
の理由も後で語られるという、まさに「やられたなぁ」というこの順番なんですよね。む
実は最初の短編はあまり面白いとは思わなかったのです。
ところが、不眠症が嘘であったり影でイロイロと動くとどろきセブンの本当に姿が見えてきた
頃からすごーく物語に引き込まれていきました。
後から知りましたがこれって「ボクの町」という本の続編だったみたいですね。
これも後で読んでみようと思いました。
一言■物語が進むにつれて面白さの増す一冊。
評価 ★★★★
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「小森課長の優雅な日々」室積 光 双葉社 1,470円
*あらすじ*
小森正一40歳。家庭も仕事もうまくいかずイライラを募らせていた。
周囲に迷惑をかける人間が大嫌いな小森はある日、もちまえの正義感で一人の女を殺す。
するとあら不思議。妻に愛され部下に慕われてしまう。何もかもうまくいき始めた矢先に……。
*感 想*
室積氏と言えば「ドスコイ警備保障」も「都立水商(おみずしょう)!」も笑いあり、感動ありの
味わい深い作品を読んできていたので今回もその心地よさを求めていたら、本作は何ともシュー
ルでブラックな内容なんですよね。
確かに周囲に迷惑をかける人間を機嫌の悪いときやあまりにも酷い時は心の中でその人物を抹殺す
ることを考えちゃったりしますけど、この物語の中では本当に殺人を犯していくのです。
それも「正義」を行ったことでスッキリと爽快な気分になる主人公。
殺人という正義を犯す度に小森の周りには信者のような者たちが集まり、いつしか教祖のような存
在にまでなる小森。
それまで心の通わなかった部下にも不思議なことに尊敬され、家族の中はうまくいくし仕事も順調
悪いことは全くない状態に。
しかも次々と殺人リストはあげられて、いつしか組織のようなものまで出来上がっていく始末。
さて、いつ犯行がバレてどういうオチに持っていくのだろう?と思っていたら最終的に彼らには何
もなくただ殺人を重ねていくだけなんですよね。
正直ちょっと「あれれ」という感じ。
戸梶氏などではこういう物語の展開ってありますけど室積氏の今までの作風から何か「善」に向け
て物語が進むだろうと思っていたのでちょっと驚きでした。
ラッシュアワーでの迷惑な女性や、夜中に騒音で走る暴走族や親父狩りとかする若者を成敗する気
持ちはとても分かりますし、賛成したいのですがこのオチのなさにガックリ。
ちょっと後味悪すぎるかなぁというので評価は低めです。
一言■気持ちはよーく分かるのだけど後味が悪いので★二つ。
評価 ★★
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「再生巨流」楡 周平 新潮社 1,785円
*あらすじ*
脳みそに錐を刺して、血が噴き出るまで考えろ!
それが、俺たちの仕事だ!
このプロジェクト、死んでも成功させてみせる――「失格」の烙印を押された男は再起を
賭けて、壮大な流通革命を仕掛けた!
差し迫った巨額の決済、保身に走る上司、君臨するカリスマ社主……。
業界一位の巨大運輸企業を舞台に、男たちの熱いドラマが弾ける!
実現可能なビジネスモデルを織り込んだ、話題騒然の経済小説。
*感 想*
前職が物流業界だったのでかなり身近なサラリーマン小説として楽しめた一冊です。
ただ同じ業界でも大手の企業の物語なので微妙に違う部分がありましたけど・・・。
トラックに関しては今は小さい運送会社はどんどん潰れていっていますので車は余っている
どころかどこも足りない状態、流通の物語なのに肝心の配送部門に関してはあまり書かれて
いないので「あれれ」という感じはしました。
確かに会社では古い体質というのが生きていて、なかなか新企画、新事業というのは受け入
れてもらえないもの、その部分はよく分かります。
ただ主人公の吉野の性格があまりよくないと言いますか、こういう人に前職で迷惑を受けて
いたので成功してもあまり感情移入できなかったのですよね。
新規事業を立ち上げるだけ立ち上げて、失敗したときの尻拭いはしない、しかも失敗した時
点でその企画を忘れて次の企画にのめりこんでいるタイプの人っていますよね。
企画開発部門にいたのでいつもトップが突然思いついたような新規事業に付き合わされては
その尻拭いをさせられてきた私には吉野が前の会社の上司に思えてなりませんでした。
そのせいか彼が最終的に降格人事から昇格されていく場面では思わず「待った」をかけたく
なりましたもの。
一度の成功で過去の全てが流されるのか〜と、理不尽な思いがしたサラリーマン小説でした。
おそらく主人公・吉野に重なる人物と今まで出会っていない人にとっては面白い経済小説だ
と思います。
一言■物流業界の方は読んでみる価値あり。
評価 ★★★★
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「Θ(シータ)は遊んでくれたよ」森 博嗣 講談社 945円
*あらすじ*
転落死体に印されていたのは謎のマーク「θ」……。
絶好調Gシリーズ第2弾!!
飛び降り自殺とされた男性死体の額には「θ(シータ)」と描かれていた。
半月後には手のひらに同じマークのある女性の死体が。
さらに、その後発見された複数の転落死体に印されていた「θ」。
自殺? 連続殺人? 「θ」の意味するものは? N大病院に勤める旧友、反町愛から
事件の情報を得た西之園萌絵らの推理は……。
好調Gシリーズ第2弾!
*感 想*
自殺した人の身体の一部に印された「θ」の文字。
果たしてこの「θ」にはどのような意味があるのか?
最初の自殺者が語っていた「シータは遊んでくれたよ」の意味は宗教的なものなのか、
それとも自殺に見せかけた連続殺人なのか?
今回もまた海月君と加部谷、そして山吹のコンビが良い味を出しています。
シリーズ読破していないのですが反町愛ことラブちゃんもなかなか良いキャラでして
森博嗣はこのキャラだけでも十分に楽しませてくれる作家さんなのですよね。
彼らが本の中で動き回ってくれるのでスイスイと読み進めていくことができます。
そして今回もまたまた無口な海月くんが最後の謎解きをしてくれます。
しかも謎解きをしながら「これは事実ではなく、想像した仮説である」と言っている
辺りも好感度大です。
うわー、どう解いてくれるのだろうと本の前で正座したくなる口調なんですよね。
事件そのものも犯人の動機、そして「Θ」の文字が選ばれた理由もはっきりとしてい
ましたし、確かに謎解き後に読み返すと怪しい動きをしている人物が一人いました。
何より二作目で一番嬉しいことは例のあの方の名前まで登場しているところです。
うわー、どういう風にこれから展開していくのかしら?と続編に期待せずにはいられ
ない第二弾。
第三弾は「τ(タウ)になるまで待って」だそうです。
流石に年内発売は無理そうなので来年に期待です。
一言■キャラだけでも十分楽しめる第二弾。特にあの方名前の登場に★五つです。
評価 ★★★★★
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「灰色の北壁」真保 裕一 講談社 1,575円
*あらすじ*
すべての謎は、あの山が知っている!
天才クライマーに降りかかった悲運の死。標高7000mの北壁で、彼が見たものは何か。
『ホワイトアウト』から10年。渾身の山岳ミステリー
世界のクライマーから「ホワイト・タワー」と呼ばれ、恐れられた山がある。死と背
中合わせのその北壁を、たった1人で制覇した天才クライマー。その業績に疑問を投じ
る一編のノンフィクションに封印された真実とは……。
黒部の羆/灰色の北壁/雪の慰霊碑
*感 想*
長編かと思っていたら全然色の違う短編が三作。
真保氏は前作「真夜中の神話」がイマイチだったので図書館で借りたもののなかなか
手が伸びず返却日ギリギリでようやく読み始めました。
実は山の話というのもあまり好みではなく、あの有名な「ホワイトアウト」も未読だ
ったりします。(映画は織田さんが好きなので観たのですが佐藤浩一の方が光ってい
たのが残念)
さて、肝心の内容ですがまず驚いたのはどれもラストにどんでん返しが待っていたこ
とです。
「黒部の羆」はラストの交差して場面で一瞬わけがわからなくなりました。あぁ過去
と現在が入り混じっていたのかとここで気付き、残りの二作はちょっと意識して読む
ことに。
そして表題でもある「灰色の北壁」は一体誰が何を隠したかったのか、そしてそこに
意味するものは何なのかに最後まで興味深々で読み進んでいくことに。
疑惑が生まれた理由とその弁解をしなかった理由というのがまた人間らしくて深みが
ありました。
ラストは「雪の慰霊碑」。
これもまた肝心の部分が巧みに隠されていたので私もてっきり息子の死を追って雪山
に入っていったのだと思っていたら、これは山の話でもありまた恋愛の話でもあった
のですね。
意外なこの展開にかなり驚かされましたが、逆に二人の間に恋愛が芽生えていたから
こそ異様なまでの息子の婚約者の態度に納得が。
実はこの婚約者の態度があまりにも図々しくて話の途中で引いてしまっていたのです
がラストでなるほどと。
しかし山をテーマにしてここまで違う物語が書けるとは・・・恐るべし真保裕一と思
った一冊です。
一言■三作全て違う色の作品に驚きました。
評価 ★★★★
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「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸 講談社 1,470円
*あらすじ*
イギリスとアイルランドには、とても行きたい。だが、飛行機には乗りたくない−。
作家・恩田陸は、飛行機恐怖症を克服できるのか?
酩酊混乱のイギリス、アイルランド紀行エッセイ。
『IN・POCKET』連載を単行本化。
*感 想*
飛行機が兎に角怖い恩田さんの海外初旅行エッセイなのですがまず海外初というのも意外
ですし、飛行機に乗る前にこんなにも恐怖に陥るのかとその怖がりぶりも意外でした。
逆に今まで飛行機が怖いとはあまり思ってなかったにこの本を読んでからちょっと恐怖を
感じるようになったくらいすさまじい怖がり方なんですよね。
しかも飛行機の中であれだけお酒を飲んでも酔わない事にも驚いてしまいました。
「小説以外」の時も思いましたが恩田さんのエッセイを読むと読みたい本が増えて困りま
す。それとビールが呑みたくなりますね。
エッセイなので特に感想はないのですがファンの方は意外な恩田さんが見れて面白い一冊
かもしれません。
一言■意外な恩田さんを見た一冊。
評価 ★★★
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