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慢性膵炎と診断されたら

このサイトを訪れられた方の中には、初めて「慢性膵炎」という診断を受けられた方もいらっしゃると思います。私自身の経験からすると診断当初は、「一体この病気は何なんだろう」とか「この先どうなるのだろう」という強い不安を覚えるのではないかと察します。この病気は私のような慢性膵炎疑診の方まで範囲を広げると、症状における個人差が大きいため、治療法や予後について、はっきりこうなる、とは言えない部分が多いと感じます。しかし、大体において今後はこういう治療展開が考えられるとか、こういうことに気をつけるべきである、というようなことはあります。
ここでは、初めて慢性膵炎という診断を受けられた方を想定して、今後のおよその方向性や注意すべきことについてまとめています。

薬について(内科的治療)

膵炎という診断が確定する、あるいは膵炎である可能性が高いという診断がされると、大抵の場合は薬物療法が施されます。蛋白分解酵素阻害剤(代表薬「フォイパン」)や、H2ブロッカーと呼ばれる胃酸の発生を抑制する薬(代表薬「ガスター」)など定番的な薬が処方されます。効果は劇的なものではないかもしれませんが、長期的にみれば着実なものである場合が多いようです。
しかし残念なことに、慢性膵炎の薬はどれも、膵炎そのものを根治させるものではありません。炎症を起こしている細胞そのものを正常に戻したり、炎症を起こすメカニズムを完全に健全なものにする、というわけではないようなのです。(薬の詳しい効果については今なお研究がすすめられています。)薬が行うのは、炎症をかかえて傷んでる膵臓が、あまり仕事をしなくていいように、膵臓そのものを休ませるということです。慢性膵炎が難治性なのはそういうところにも表れていると思います。
もちろん、だからといって薬に意味がないということではありません。膵臓が落ち着きを取り戻すことで、膵機能のさらなる悪化を防いだり、なによりもそれで「痛み」が軽減されることが期待できるのです。

 

外科的治療について

薬だけでは対応できないような場合に、外科的処置が行われます。手術をするというのは体に大変大きな負荷を与えることなので、その前に手術すべきかどうかを調べるための検査が行われますが、その代表的なものがERCPという検査です。これは「内視鏡的逆行性胆道膵管造影」というもので、胃カメラのようなものを膵臓まで入れて調べる、というものです。この器具は胃カメラと違って、レンズが進行方向ではなく横についているのでちょっと操作が難しいようです。慣れた医者ならいいのですが、あまり経験のないドクターであればちょっと遠慮した方がいいかもしれません。ベテランは別として、ドクター自身も手技の失敗や副作用(膵臓の入り口から器具を挿入する際に必ず膵液が膵臓内に逆流するので、炎症を起こすのです)を恐れてあまり軽々には行わないようです。
もし検査の結果手術が必要であるとなると、例えば膵管が狭まって膵液の流れが極端に悪い場合(「膵管狭窄」)には流れを確保するために、膵管にバイパスにあたるプラスチックなどの管(「ステント」)を挿入したり(これはERCPで出来ます。)、膵液の流れがどうしてもうまくいっていないようであれば、膵臓の一部を切りとって腸などの他の臓器と直接つなぐというような処置も行うようです。


日常生活について

医療的対処と同じくらい重要なのが、生活面での対応です。具体的には食生活での節制とストレス対策です。
まず食の節制ですが、この最大なものが禁酒です。男性の場合、慢性膵炎の原因の大半がアルコールによるものらしいのですが、もし慢性膵炎と診断されてしまったら、その日から「定め」だと思ってお酒とは永遠に決別するべきです。(と、どのアドバイスも説いています。)しかし、私もそうですが、現実にはアルコールと決別することは至難の業です。アルコール性慢性膵炎の患者をよく知るお医者さんに以前聞いたのですが、患者のうち9割が酒をやめられないそうです。何度も急患で病院に運ばれて命を縮める人が多かったという話でした。私の職場に来られるお医者さんは、「カオルさん、アルコールは飲んでないですよね。長生きしましょうねぇ。」と定期健診の度に優しく脅してくれます。
食の節制の二つめは、脂質の制限です。普段お酒を飲まない方にとってはこれが一番大きなことかも知れません。脂質の含まれる食品というと肉に付いた油の部分とか天ぷらなどの「油物」という感じですが、実際に脂質を制限して分かることは、実は食べ物のおいしさの中心は脂質だったということです。「おいしい」と感じられる部分は大抵脂質にあたるところです。
私が膵炎になった直後に口にできなくなったものは、まず普通の牛乳でした。脂肪分3%などのものです。飲むとちょうどそれが通過する内臓の部分が痛くなりました。それから肉類。タンパク質はもっぱら魚で摂りました。パンをおいしくしてくれるバターやマーガリンは脂質のかたまりなのでもってのほかでした。代わりにジャムを塗ったり、納豆を乗せました。(納豆トーストは現在でも続けています。)ケーキやクッキー類もバターが多く含まれているので危険です。おやつとして常食であったポテトチップスも実は全体の30〜40%が脂質であることを知り、食べられなくなりました。同様に「揚げせんべい」も禁忌でした。脂質の少ない食品である野菜は大丈夫でしたが、野菜をおいしく食べられるようにしてくれるドレッシングやマヨネーズは脂質でできている(ようなもの)ために使えませんでした。代わりに「ノンオイル」のドレッシングを使いました。カップ麺もフライ麺は高脂質です。
このように、普段何気なく食べていて「おいしい」と感じるものには全て高い脂質が含まれていることがわかりました。脂質を制限するというのはつまり「おいしさを犠牲にする」ということだったのです。そう考えるとこの病気は大変憎たらしいものですが、しかし症状は一定ではなく改善もします。ですから万一診断を受けられたならば数ヶ月はガマンが大事だと思います。悪い状態の時は、低脂質のものをいかにおいしく食べるか、という点で工夫しましょう。
膵炎患者の一日の脂質の限度量としてよく耳にするのは30グラムです。40グラムというお医者さんもおられます。いずれにしてもポテトチップス一袋分の脂質であり、かなりの制限を必要とする量です。
脂質以外の食べ物の制限としては、刺激物が挙げられます。ワサビ、唐辛子、胡椒といった香辛料は膵臓を刺激し、膵液の分泌を促します。カレーもダメな場合が多いようです。(ダメとは自覚的な痛みがあるということです。)コーヒーも危険リストの上位です。中には蛋白質も受け付けない人もおられます。
アルコールや脂質についてはほとんどの方がダメージを受けるようですが、どの食べ物がどう影響するかというのは個人差が大きいようです。いろいろな食べ物を試してみて、自分なりの危険食リストを作ってみられてはいかがでしょうか。
次にストレス対策ですが、実はストレスが膵臓にはとても悪いようです。膵臓の付近にはさまざまな神経が走っていて、脳が感じる緊張にすぐに反応するようです。膵炎の痛みは膵管内の圧力の上昇によるものが大きいそうですが緊張すると圧力の上昇があるのではないか、という感じがします。いろいろな慢性膵炎の方とコミュニケーションをとるなかで、患者さんには几帳面な方が多いという印象を持っていますが、性格からくる緊張しやすさというものも一因なのかも知れません。個人的には緊張を要する仕事が続くとか、他の人との意見の不一致をガマンしながら企画などを進めなければならないような状況の時には、てきめんにダメージが来ます。
そういう場合には(本当にひどい場合には病院に行くわけですが)大抵は我慢して膵臓の痛みが通り過ぎるのを待つのですが、どうしても症状が改善しないような場合にこれまでに実施して効果があったことは、思い切って仕事をサボるというか、手を抜くというか、ひんしゅく覚悟でとにかくストレス要因から一時的に避難するということでした。具体的には有給をとってよく温泉に行きました。平日の昼間の温泉は実に快適でストレスを大いに軽減させてくれました。「仕事をさぼって温泉へ」ということをきっかけに体調が回復するということが数回ありました。
この部分でも具体的な方法についてはいろいろと試されてはいかがでしょうか。
仕事を辞めることができたら一番なのか知れませんがそれはできないので辛いところです。

以上のように、食生活において膵臓にストレスを与える食品を避け、生活面でも心理的緊張を避けることで膵臓へのストレスを減らすということが、慢性膵炎とつきあっていく上では極めて大切だと思います。