「入鹿池」の50上(愛知県)
4月18日午前3時30分。
約束の待ち合わせ時間の予定より30分も早く駐車場に到着できた。早速、昨夜から50上をゴボウぬきしているはずの巨ベラ師の車を捜す。ほどなく、見慣れたシルバー・メタリックのワンボックスを捕獲した。が、中身はカラッポだ。ま、今日は泳いではいないだろう、と思い出し笑いをする。
車を駐車してあるところから推測して、あちこち懐中電灯を照らす。と、ワンドの流れ込みの突端に、長めのウィンド・ブレーカカーを粋にひっかている男を見つけた。顔はまったく分からないが、竿掛けにぶら下がる三点式ナイター浮子は、いつぞやHPで見たものと同じだ、と思った。
「おはようございます。」自信はなかったが、思い切って声をかけてもみる。
「やっぱり、クワマンさん!? 体型と歩き方でそうかな、と思ったんだ。」
「どうです?」勿論、釣果のことである。
「尺上が1枚。あと、バラシ。これが大きかったんだ!!」
ここ「入鹿池」は、愛知県と岐阜県の県境犬山にある、中部地区で「巨べら」を狙うことのできる絶好のダム湖である。多くの雑誌にも紹介されていて、このノッコミの季節になると、昨日は、どこそこで45cm、今日はあそこで50cmが釣れた、などという情報が入り乱れている。「池」と言っても、中規模のダム湖ほどあり、新緑の季節の景観は絶景である。近くにレジャーランドもあることから、休日ともなると観光客が周辺の道路を渋滞させる。もちろん、釣り師も。
と、向こう岸から「こっちなら並べるよ。」聞いたことのある声だ。
「たふまん さん!!」二人とも同じ言葉を吐く。パソコン通信仲間の京都のたふまんさんだ。知る人ぞ知る「巨べら」狙いの釣り人である。そう言えば、今日は、試釣に来るとボードに書いてあった。
「よし、あっちに行こう。」飄助さんの行動は、すばやい。前夜から徹夜で釣っているとは思えない馬力だ。
駐車場で再会の挨拶を交わし、水面とまだ明けぬ空を見ながら異口同音に「今日はいただきや〜〜。」と勝鬨をあげる。
水面では、あちこちで ゴボッ、ガバッ、という音がする。ヘラのもじりだ。
バシャッ、とか、ポチャッ ではない。ゴボッ、ガバッ である。
「クワマンさん!!」駐車場に入ってくる濃紺のマークUの中から声がした。「??」なんと、名古屋のGさんだ。
たふまん さんとそのお友達。名古屋のGさん。ナイターの飄助さん。そして、先週壮絶なボーズを食らったクワマン。役者が揃った。
午前5時25分。
目の前のもじりに向かって第1投。と、いきなりGさんの16尺が弧を描いている。
「2投目です。いい引きですね。でも、ちょっと半ベラっぽいかな。」
余裕の発言である。
飄助さんもニコニコしている。「早いですねぇ。尺はありますね。」「クワマンさん。是非、野のヘラの40上を上げてね。体が震えるから、間違いなく。」
暫くすると たふまんさんが浮子ケースを持って来た。「これ、使いなさい。」と3本の浮子をケースから取り出した。ボディは見事な孔雀の羽だ。野釣りの底釣り用だという。「すんません。じゃぁ お借りします。」「ちゃう。持っていき。」「え?え〜??そ、そんなぁ。」「ええから。」
夜が明ける前に、「関東では管理しかやったことがないから、まともな野釣り用の浮子ってないんですよ。」とのボヤイていたのを気にとめてくれたのだ。これで勇気百倍だ。今日は、何がなんでも50上を釣る、と仕掛けを作る。道糸2.5号、ハリス1号、グラン8号をセットした。浮子はもちろん、たった今、永代使用を許されたものを使う。尺上なんて、いらない。狙うは50上だ。志だけは、富士山より高い。
午前10時。
「あかん、眠い。突然、睡魔が襲ってきた。」と、突然 飄助さんが立ち上がる。4時間半もまともに動かない浮子に、TKOされてしまったようだ。
「どや?」たふまんさんが声をかけてくれる。「アタリは、3回こっきりです。で、バラシが1回。ブルーギルが1匹。思い付きで麩系のバラケを打ったら、ご覧のとおりです。ははは。」浮子は、激しく上下する。が、釣れてくるのはハヤばかりである。それでも、先週のノー・アタリを思い起こせば まだマシだ、と自らを慰め、ジャミの中にこそ、50上がいるんだぞ、と言い聞かせる。そんな簡単には釣れないことは、百も承知である。
午前11時。
「ギブです。」Gさんが手仕舞した。「また、お会いしましょう。」それでもボーズを免れた余裕がありありだ。そしてこれが合図のように、周りの竿も次々と消えてゆく。
午後12時。
「今日は、あかん。」と、たふまんさん。「釣れたぁ?」寝ぼけ顔で分かりきっていることを飄助さんが聞く。「やっぱり、水位がありすぎだね。釣れる雰囲気がまったく、ないね。」と、また、飄助さん。
返事が出来ない。これ以上やっても、手の打ちようがないことは、なんとなくわかる。わかるが、隣りで後片付けをしてる飄助さんを横目に、未練がましくなおも打つ。
と、なじみ際に鋭いアタリ!!!!!
竿から手を放している時に限って、こんなことがある。まだ、あきらめ切れない。落ち込みを狙ってみる。ボードの書き込みが脳裏をかすめる。「いきなり行って釣れるほど、野の釣りはあまくないんだ。特に巨ベラは。」
ボクにとって50上のヘラブナは、春の夢になるのか。
GWには二泊三日で、三方湖の巨ベラを狙う。