寝袋にくるまって寝たせいか、あまり寒くはなかったが、まだ喉は痛い。
外は相変わらず濃い霧に包まれている。
昨晩マネージャから聞いたところによると今はベストシーズンではなく、一番いいのは3~4月だそうだ。
気温も丁度いいし、花が咲き乱れているとのこと。
『VISAがあるから5月にまたインドに来るよ』というと『また、ここにこい。車で案内してあげる』と言っていた。
なんか、信じられそうないいおやじだった。
昨日のオートリキシャーでアグラ・フォート(アグラ城)に向かう。
やはり霧がひどくて全景が見えない
リキシャーを降りるとすかさず目の前にフィルムの入った箱を突きつけられる。
「フィルム?バッテリー?」
「いらないよ。もってる」
ポカラでのチベット人もそうだったが、こう至近距離に近づけられるとちょっとむかつく。
しっ、しっと手でおい払う。
今度は『ムチ、いいムチ。ノー・高くない』とあやしげな日本を話す、皮製の鞭を手にしたじじいが寄ってきた。
「40?」
どうやら、USDらしい。そんなもの買ってどうすんだよ。SMじゃあるまいし。
「20?いいムチな」
なんかいい方がおかしくて笑ってしまう。
「10?」
いくら安くしたって買わないよ。
アグラ・フォートの外国人の入場料は55Rsになったようだ。
昨日の505Rsといい、この街は金がかかる。
地元の人間はそれぞれ15Rsなのに。
霧に包まれ赤い壁のアグラ城は神秘的で、なんとなくカリオストロの城を連想した。
天気がよければここからタージマハールが見れるらしいが残念ながら下のほうからわき上がってくる濃い霧で今は視界を遮られている。
敷地内はひろく城壁の上には猿が歩いていたりする。
ロールプレイングゲームにも使えそうな雰囲気。
できれば霧が晴れていた昨日の夕方に来たかったなぁ。
ちなみにここにも『ガイド?』といってくる奴がいるが『要らない』というとあっさり引き下がる。
堀にかかっている橋を渡り外に出ると、先程のフィルム売りと鞭売りがやってきた。
フィルム売りはうっとうしいだけだが鞭売りのじじいは面白い。
むこうは必死なんだろうが、なんか言うたびにおかしくて笑ってしまう。
「どこでそんな日本語覚えたんだよ」といっても当然通じない。
「OK、500Rs」
ほぉ、そこまで落ちるか。でも要らないよ。
「いらない、いらない」
「100Rs!いいムチな」
へぇ、やぶれかぶれだな。最初の1/20かよ、原価はいくらなんだよ。
おかしくて笑いながらリキシャーに乗り込む。
ホテルに戻り、チェックアウト後リキシャードライバーに急かされ、昨日の土産物屋に向かう。
時間の無駄だからあんまり行きたくないんだけどなぁ。
店内に入ると昨日のジキジキおやじが昼間からまた、『ジキジキ、ジキジキ』と騒いでいる。
まったく、いい年こいてしょうがない奴だ。
口を開くとすぐこれだ。その口に自慢のXXXでも突っ込んどけ。
『彼はアグラで一番でかいものを持っている。コンテストで優勝して賞金をもらった』と、やはりタイガージェットシンの兄弟という年かさの男が話しかけてきた。
「宝石はいらないか」
「興味ない」
「友達や両親にはどうだ」
「宝石をあげるような友達はいないし、両親とは離れて暮らしている」
なにか考えている様子。
せっかくだから、オムレツとパンの朝食をごちそうになりながら話を聞く。
「来週、はじめて日本にいく。Exibitionだ。シェラトンでやる」
「宝石の持ち出しに制限があるから、運び屋をやってくれないか」
だんだんと核心に触れてきた。
「いやだ」
「どうして?」
「そういうのは好きじゃない」
「もうかるぞ」
「いや、いい」
「なんで?恐れているのか?」
「そんな話はデリーやカルカッタなどあちこちで聞いた。だからいやだ」
もうそれ以上は言ってこなかった。たった20分ほどのやり取りだった。
来る前はもっとしつこいかと思って腹を括っていたのだが、インド人は意外とあっさりしていると毎回感じる。
![]() |
タイガー・ジェット・シンの兄弟? |
証拠写真の意味も込めて、最後にその兄弟の写真をとらせてもらってから再度オートリキシャーに乗り込む。
昨日切符代を払った駅前の旅行代理店に向かう。
リキシャーを降りると
「ここで金を払ってくれ」
「いくら?」
「二日で40USD」
おぉおぉ、これまたふっかけてきたな。
「400Rsでどう」
「安い。それに列車の中ではルピーが必要だからお前のためにもドルで払ってくれ」
本当にこいつはこっちのためを思っていってくれてるんだろうか。
じゃあ、と財布を開くが、こういうこともあるかと財布の中には小額のドル紙幣とタイバーツしか入れていない。
ドル紙幣は1ドル札が6枚のみ。それを渡すと、
「全部一ドル札じゃないか。10ドル札とかはないのか」と受け取らない。
「うん、これだけ」
「それはどこの金だ」タイバーツを指さす。
「タイ」
運ちゃん、渋い顔。
円だと思ったようだが、さすがにタイバーツは使いづらいらしい。
結構持ってるんだけどねぇ。
ポケットに入っていた50ルピー札を4枚渡す。
昨日のホテルマネージャの話によると、こんなもんだろう。
「あと100Rsくれ」
なけなしの50Rs札を2枚渡す。
やり取りをずっと見ていた旅行代理店の人が、
「2日で600Rsはミニマムプライスだ」
旅行者にとってはだろう?地元の奴だったらもっと安いはずだ。
さて行こうかとしていると、例の2A、3Aの問題でリキシャードライバーと代理店の人間がやりあっている。
概してインドでは誰が敵で誰が味方なのか、判断が非常に難しい。
一番信頼できるのは富裕階級であるホテルのマネージャだけど、このリキシャマンもこっちの身になっていろいろとやってくれる。
土産物屋回りには閉口したが、それでも最初の印象通りやっぱりいい奴なんだろう。
痩せ身で長身・口髭、毛糸の帽子に皮ジャン、スラックス。
英語はある程度できる。
タージマハールのあたりで、もしこういう奴を見かけたら付きあってやってもいいだろう。
最後に『日本の土産がないか』というので言ってきたのでウエストバッグの中を探すが昨日ジキジキおやじにボールペンをあげてしまったのでろくなものがない。
JLの機内でもらったアイマスクを渡す。
「これはなんだ」
「アイマスク」
「こんな物は要らない。他にないのか」
というのでひきとろうかと思ったがしっかりつかんで離さない。
だったらいうなよな。
もうそろそろ駅に行かなきゃ。
代理店の人に付いてアグラ・カント駅に向かう。
さっきリキシャーマンが言っていたように、列車はどうやら30分ほど遅れているらしい。
「デリー行きはあっちのホームだ。ついてこい」
と、どんどん歩いていく。
3番ホームで列車を待っているといろんな連中がやってくる。
乞食のばあさん、靴磨きなど。
時には疲れるけど、ここらへんがインドの楽しいところだ。
乞食のばあさんは哀れみを乞うように弱々しい声で右手を差し出してぶつぶつ、つぶやいている。
そのしぐさがあまりにもおおげさなので思わず笑ってしまった。
するとばあさんもニカッと笑いながら右手は忘れない。
何度かノーと言い続けるとあきらめて去っていった。
乞食の次は靴磨きだ。片腕に仕事道具をぶら下げて寄ってきた。
隣りにいた金持ちそうなインド人は靴を磨かせていたが、だいたいトレッキングシューズをどうやって磨くつもりなんだよ。
「オンリー・ポリッシュ」とは言ってるけど脱ぐの面倒なんだからいやだよ。
インドを個人旅行するのに皮靴をはいてくる人はまずいないと思うけど、靴磨きを避けるにはサンダルやスニーカなどがいいだろう。
そうこうしているうちに列車が入ってきた。
本当にこのキップで2Aに乗れるんだろうか。
「本当にこのチケットで2Aに乗れるの?2Aじゃなかったら500Rs返せよ」
「ノー・プロブレム」
ほんと〜かぁ〜?
そいつに付いて列車沿いに歩くと、車掌となにかやりあってチケットを返してくれた。
チケットには39とシートナンバーが書き込まれている。
『急げ』と急かされて列車に乗り込むが、案の定3Aだった。
やっぱり、やりやがったな。
駅からまっすぐに伸びている道の、駅を背後にして右側に長屋がある。
その先のほうに食堂を挟んで2つの代理店があり、そのうちの手前のほうが今回利用した代理店だ。
今回は被害は500Rsですんだが、ここを使うときは注意しよう。
最初話したときは『インドでは誰も信じるな。寄ってきた奴が何かしても必要なければ一切払う必要はない』と親切っぽいアドバイスをいってたのに。
これだから、インドは難しい。
3Aの車内は広いほうのシートが3段になっていて一番上の寝台は固定らしいことを除けば2Aとそれほど変わらない。
途中の駅で戦車を積んだ停車中の列車とすれ違う。ぼろい戦車だ。
砲塔の下に天幕をはって兵士たちが食事を作っている。
こんなところでやるものなのかね。
車窓には広々としたインド亜大陸が広がっている。
菜の花だろうか、黄色い花が一面に咲いている。
そして果てしなく広がる畑&田んぼ。
そしてそこをのそのそと歩く水牛たちと羊のむれ。
リクライニングせず直立に近いシートだけど、少なくとも車窓の風景はバスより楽しい。
デリーに再び帰ってきた。
ニューデリー駅はインド各地からやって来た列車がずらーっと並んでいる。
どれもこれも編成が長い。
大きな荷物を抱えたインド人でごった返す通路を抜ける。
駅前のロータリーに出るとホテルだとかタクシーだとかといろいろとうざったい男たちが言い寄ってくるが、もはやこんな状況は慣れた。
軽くいなしてメイン・バザールへ向かう。
今日は日曜なので銀行はやってないはず。
でも街中の両替商ならきっとやってるだろう。
『歩き方』を手がかりにGolden Regency Hotelに行くと予想通り、両替カウンターが営業していた。
最後の日だけど手持ちのルピーが心細くなってきたのでで10USDを両替。
周りを見渡すと本来ロビーとなるべきスペースは細かく区切られてインターネットブースになっており、8割がた白人で埋まっている。
いまや旅行者がインターネットを利用するという傾向は世界的になっているようだ。
両替を済ましホテルから出ようとすると出口のところにレストランがあった。
『Chilled Beer』という看板に視線が釘付け!
ゴクッ。
重い荷物を背負ってこれからビールを飲めるところを探すのも面倒なので、ここで晩飯を食べてしまえ。
店に入ると、さすがに中級ホテルのレストラン、小ぎれいで生演奏にでも使うのかステージまである。
SAND PIPER (グリーンのボトル) デリー限定ビール 70Rs
Ghost-Do-Piaza(タマネギ入りのマトンカレー) 90Rs
Hara Salad 20Rs
Rice
=============
230Rs
Sand Piperはビアシンにちょっと似た苦みのあるビール。なかなかうまい。
インドビールの中ではベストかも。
Ghost-Do-Piazaは油がちょっとしつこい感じはするがまあまあの味。
Hara Saladはトマト、タマネギ、赤い果物のスライス、キュウリ。
キャベツがないのがちょっと物足りない。
時間もあることだし、食後はメイン・バザールを散策する。
ここはメインバザールという名の通り、もともとは市民のための生活用品の市場らしく、種々雑多な物が売られている。
フィルムやアクセサリーなどは旅行者向けだろうが、子供服、靴、貴金属、台所用品などなど。
きょろきょろしていると金物屋のおっさんが声をかけてきた。
おいおい、旅行者に鍋を売りつけてどうするんだよ!
さて、そろそろ時間だ。
駅前のプリペイドタクシーカウンターで109Rsを払いオートリキシャーに乗り込む。
空港は思ったより遠く、50分ほどでかかって、霧にすっぽり包まれたインディラガンジー国際空港へ。
この霧で本当に飛ぶんだろうか。
まさかILSはあるだろうから大丈夫だとは思うが。
でもディレイで明日の朝あるいは昼発になるとうれしいな。ホテル付きで。
空港ビルの入り口でボーディングパスを提示してチェックインカウンターへ。
案の定、出発案内の掲示盤には『Flight Cancel』の表示がちらほら並んでいる。
が、TGはしっかり『ON TIME』だ。TGは軍隊あがりが多いだろうからな。
フライトの3時間ほど前だがカウンターは開いていた。
ラウンジでゆっくりしたいのですかさずチェックイン。
(ちなみにボーディングパスはSKのものだった)
Taj Roungeとやらのクーポンをもらう。
おっとその前に再両替だ。手持ちのルピーをすべて渡す。
274Rs=6USDになった。9Rsほど損をしたが、ま、いいだろう。
イミグレもカスタムも非常に簡単に通過。
カスタムを抜けてすぐ右のラウンジに向かう。
なんかファミレスのようなラウンジだ。
調度品は煉瓦色で統一されているが、椅子もテーブルも高さがあり『これからお食事』という感じ。
あまりリラックスできる感じはないがなかなか書き進まなかった旅行記を書くにはいい。
また飲み物などはセルフサービスではなくフルサービス。
ビールはさっき飲んでいるので(オートリキシャが寒くてすっかり冷めてしまったが)、コーヒーを注文。
これを書いていると『シンガポールエアラインは悪天候のためにデリーに降りれずムンバイに降りました。パッセンジャーはハイアットリージェンシーホテルに案内しますのでついてきてください』
とトランシーバを手にした係員が叫んでいる。
ほぉ、ハイアットかぁ。だったら明日の昼のフライトになってもいいぞ > TG
待つこと30分、デリー空港は霧のためクローズになった。
TGのオネーさんが『フライトはキャンセルになりました。これからTaj Palace Hotelに案内します』と伝えに来た。
おぉ、いいぞいいぞ。
これでドンムアンで夜が明けるのを待つ必要もなくなった。
しかもTaj Palace Hotelといえば空港に来る途中にあった立派なホテルじゃないか。
荷物を持って通路を通るのが難しいくらいの狭いバスに乗り込み、ホテルに向かう。
相変わらずの濃い霧とひどい渋滞のため30分以上かかってホテルに到着。
TGの乗客のためのカウンターが設置され列ができている。
(ちなみにYクラスもCクラスもみんな一緒)
なかなか進まない手続きにインド人がいらだって係員に大声で抗議している。
どうやら、さっきまで一緒だった某日系テレビ局のクルーが列に並ばずに部屋をもらっていることに腹を立てたらしい。
『同じビジネスクラスなのになんでおれたちは並んであいつらは並ばないんだ。マネージャを呼べ』
相変わらず自己主張の強いインド人。
これならタイでインド人が嫌われるのがわかる気がする。
マネージャが来ると彼は散々文句を言いマネージャはひたすら頭を下げている。
でも一通りいい終わると後は何事もなかったようにけろっとしている。
熱しやすくさめやすい、ほんと、鉄のような奴等だ。
やっぱり文化の違いなんだろうな。
カードキーをもらって部屋に行くとロックが外れない。
レセプションに戻り鍵を再設定してもらいまた部屋に行くと、ドアは開いたけど今度はチェーンロックがしてある。
どうやら他の人がいるようだ。
エレベータで戻ろうとすると同じ状況の人が4人ほどエレベータを待っていた。
皆、まったく同じだという。
レセプションでできるだけむっとした表情で文句を言って部屋を換えてもらう。
4Fに行くと同じように鍵が合わずに困っているインド人家族がいたので『みんな同じ問題だ。レセプションに行ったほうがいい』と教えてあげる。
その後も廊下のあちこちで問題が起こっていた。
ある日本人などは気の毒に3回も使用中の部屋のキーを渡された。
200USDクラスで設備はしっかりしているのに空き室の管理ができないとは一流ホテル失格だな。
点数をつけるとすれば、
設備:90点(部屋にセキュリティーボックスがないのが減点理由)
管理:20点(だいたい部屋を間違えてキーを作るか!)
応対:60点(部屋割り作業で列を作って並んでいるのに担当は一人。もっと増やせばいいのに)
食事:70点(ブッフェはなかなかうまかったが、ビールが260Rsもした)
てなところだろう。
レセプションのきれいなおねぇさんもあちこち引っ張りまわされて大変そうだった。
レストランで軽く飲んだ後、久しぶりのバスタブを堪能する。
あぁ、お湯が豊富にあるのがこんなにありがたいなんて。
9:30にモーニングコールを頼んで就寝。
今日はいろんなことがあって楽しかったけど明日はちゃんとバンコクに帰れるんだろうか。
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