夜のあいだずっと扇風機をまわしていたおかげで洗濯ものはすっかり乾いていた。
ホテルのレストランで朝食を済ませ、チェックアウト。
「タクシーはどこで捕まえればいい?」
「どこでも」
不親切だな。カルカッタのときは最後まで言い終わる前に呼んできてくれたのに。
ホテルの前に出てアンバサダーを待つが一向に現れない。
この街にはアンバサダーのタクシーはないのか?
空港まで何キロあるかわからないが、オートリキシャじゃきついかなと思っていたが、来ないんじゃしかたない、ここにたむろしているオートリキシャにしようかと思っていると、
「どこまで行くんだ」とヘルメットを片手にしたニイチャン。
「空港」
「今日はタクシーはストライキで休みだ」
ストライキ?本当かよ。
料金が決められているわけじゃないのにストライキをやる意味があるのかよ。
「空港までどのくらい?」
「30分」
「遠いよ」荷物を背負ったまま、バイクで30分はいやだ。
どうもうさん臭いから近くのオートリキシャに近づき、
「空港までいくら」と聞くと
「今日はストライキだから行かない」
と同じことを言っている。
どうりでここに立っていても声をかけてこなったわけだ。
しょうがない、バイクにするか。
振り返るとさっきのニイチャンが勝ち誇ったように待ち構えている。
「じゃ、空港までいくら」
「200Rs」
たしか昨晩ホテルで確かめたらタクシーでそれくらいだと言ってたっけ。
「OK」リアシートにまたがる。
バグドグラの空港に通じる道は田園地帯をつっきる一本道。
タクシーのストのせいか、交通量は少ない。
時折流れてくるニイチャンの汗の匂いに閉口しながらも、30分のはずが20分少々で到着。
まだ完成していない新しいビルの裏にまわり平屋だてのターミナルに入る。
相変わらずチェックインカウンターはせっそうなく混雑しているが、Cクラスのチェックインカウンターはがらがら。
ICのCもこれだけはメリットだな。
レストランのクーポンを渡されたので行ってみる。
全シートの1/3くらいが『Reserved』になっていてそれ以外のシートはほぼ満席に近い。
ここでも日本人の15人くらいの団体がいる。おやじが多い。
カメラマンベストを着ているやつがいるってことはおそらく、ダージリンで見かけた連中だろう。
ただのペプシ1本で粘っていると『IC722
カルカッタ行きはディレイで13:30の出発予定』というアナウンス。
またか。
ICってまともに飛ぶことあるのかねぇ。定時運行率は?
少なくとも今までに4回乗ったうちではすべてディレイだった。
これだからICからの同日乗り継ぎなんてあぶなっかしくてできたもんじゃない。
1時ごろにセキュリティチェックが始まる。
X線検査器の前に進むと制服を来たおっさんが、
「手荷物は一個だけ許されている。一つを預けてこい」
そんなこと言ったって、またこの列に並ぶのいやだよ。
「チェックインカウンターでは何にも言われなかったよ」
「手荷物は一つだ」あくまでも頑固なおやじ。くそ〜。
大体荷物の個数なんてセキュリティがとやかく言うことじゃないだろう。
「OK、じゃあ一つにするよ」
ウエストバッグのベルトを使ってリュックに無理矢理括りつける。
これで文句は言えまい、インド人。どうだ参ったか。わっはっは。
X線検査器とボディチェックを無事通過すると、今度はおばちゃんとおねぇさんの中間くらい(?)の女性係員が、荷物が多いから開けろと立ちふさがっている。
「どっち?こっちそれともこっち?」
「両方。先にこっち」ウェストバッグを指し示す。
「バッテリーはある?」
「ないよ」うそ。
カメラを引っ張り出し、「バッテリーを取り出して」
めんどくせぇ〜な。「返してくれるんだろうね」
「カルカッタに着いたら返す」
「これは?バッテリーは入ってる?」
このHPCを見つけてしまった。
「入ってるけどバッテリーを取り出したらメモリーが消えちゃうよ」半分うそ。
「じゃ、スイッチを入れてみて」
スイッチOn。WinCEのデスクトップが立ち上がる。
「OK」
どうやらこれは免れたようだ。
「これはウォークマンか?」
今度はMD。Li-ion電池を取り出してみせると、「OK」
うん?乾電池じゃなけりゃいいのか。判断基準がよくわからんな。
「こっちの荷物にバッテリはある?」
「ないよ。衣類だけ」またうそ。
「開けて」
本当にしつこいな。
あっさりヘッドランプが見つかってしまった。
おねえさんはしてやったりの笑顔。こっちはにが笑い。
予備も含めて乾電池を素直に指し出す。
もういいでしょ、これくらいで。
「OK」
ここまでしつこいのは始めてだった。電池、本当に返せよ。
IC722はCクラスは予約状況通りほぼ満席。
(一週間前 ^^;に予約を入れたときには行きも帰りもYはフル。Cも復路はキャンセル待ちだった)
相変わらず前の乗客の新聞がシートポケットに挿したまんま。
掃除してないんだろうな。
定刻より1時間40分遅れの2時25分テイクオフ。
離陸して10分ほどで機内食。これだけは感心する。
チキンマサラ+ライス+アルー?(ジャガイモカレー)をメインで、サラダ(キュウリのぶつぎり)、洋なしのチョコレートムース掛け、パン、と味はともかくとして一通りの機内食。
約50分でカルカッタに到着。
バッゲージクレイムの脇にあるカウンターでボーディングパスを見せて電池を返してもらう。
いちおう、ここら辺はしっかりしているみたい。
でも面倒くさいことに変わりはない。
これなら荷物を預けても預けなくても出る時間に変わりはないし。
国際線でもこんなことやってるの?> IC
セキュリティチェックのときに知りあった関西系の女性とプリペイドタクシーをシェアする。
ここのカウンターはしっかり仕事をしていて、サダルストリートまで145+4.5Rs。
道中彼女から聞いたところによると、シリグリのタクシーストライキは、選挙が行われてタクシー組合の団体が支援していた候補者が当選した後に、たぶん負けたほうの関係者に殺されたことに対する抗議のストライキだそうだ。
政治がらみだったのか、賃上げ要求にしておかしいと思ったぜ。
その団体による検問とかもあったそうだったが、バイクに乗ってる分にはまったく気付かなかった。
話が前後するが、この彼女、ほぼ同じ日程でダージリンに行っていたそうだが、今日の朝、ダージリンから乗り合いジープでシリグリまでやって来たそう。
で、11時にシリグリに着いてタクシーのストライキを聞いてドキドキものだったらしい。
それでも警官に頼み込み医療関係の車に乗せてもらって空港まで来たとのこと。
なかなかのツワモノではある。
さて、サダルストリートに戻って来たわけだが、とりあえずShiltonを目指す。
「Welcome Back!」と白人ぽい顔をしたマネージャらしき人に挨拶されたが、あいにく今日は満室とのこと。ここは人気あるよなぁ。
そんなにきれいでもないし水シャワーしかないけど部屋の広さが人気の元か。
声をかけてくる客引きやタクシー、リキシャ。ああ、サダルだなぁ、と思う。
Shiltonじゃなければ他にあてはないのだが、サダルストリートを消防署のほうに向かって歩いていると、Astoriaの前で守衛に声をかけられる。
「今日、部屋空いてる?」
「受付へどうぞ」
レセプションに行くと部屋は空いているそうなので見せてもらう。
A/C TV 電話 Fan ホットシャワー 付き。
壁がはがれていたりしてちょっときたないが、暑いカルカッタ(この時点で36度!)でA/Cはありがたい。
レセプションに戻り値段を確認すると、600Rsだということでルピーが大量にあまっているのもあり、ここに決める。
難点は3Fなのに当然のようにエレベータがないことか。
いちおう、中級ホテルの証としてルームサービスがあることを誇りにしているみたいなのでミネラルウォータを頼む。市価の5割り増しの15Rs。
あまり腹が減ってなかったので9時くらいまで部屋でブラブラしてから晩飯を食べに出かける。
サダルストリートに出ると手具すねを引いていた怪しい奴が近づいて来た。
「サー、おんな、ジキジキ」
「いいよ、いらないよ」
「ハッシッシ?」
「いらない、いらない」
ステーキが有名なLytton Hotelのレストランに向かう。
Lytton HotelはAstoriaからみるとサダルストリートのほぼ反対側。
サダルストリートを8,9割がた歩くことになる。
当然、普段は楽しいが体調によってはうっとうしいだけの出会いがたくさんあるわけだ。
今度は、赤ん坊を抱いたやせぎすのおかあちゃん。
「お帰り、ジャパニ。この子のために恵んでおくれ」
さっき宿を探していたときに見かけた奴だ。
「ミルクが欲しいんだよ」哀れみを乞うようにしているが顔は笑っている。
芝居が下手だな。「だめだめ、あげないよ」
「ジャパーニ!」
「あはは、だめだめ」
リキシャーワーラーも声をかける。
「どこへ行くんだ」
「すぐそこ」
「乗らないか、ジャパニ」
「いいよ、近いから歩いて行くよ」
「ジャパニー」
なんか、蔵前仁一の世界だ。
次は日本語を操る怪しい奴。
「こんばんは。私なんでもあります。ハッシッシ?チョコ?」
「いらないよ」
「どこへ行きますか?」
「ここだよ」もうLyttonの目の前。
「おんな、どうですか。どこか行きますか?」
「行かないよ」
外国人が集まる安宿街はこういう奴が多くて本当にたのしい。
そいつを置きざりにしてLytton Hotelのドアを開ける。
ロビーは狭いがなかなかちゃんとしたホテルだ。
目指すレストランは奥の左側。
席に着くとさっとドリンクと食事のメニューを差し出す蝶ネクタイのボーイ。
メニューすらなかなか持ってこなかったシリグリのホテルと違って気持ちいい。
ドリンクメニューにブラックラベルを発見。さっそく注文。
すかさずきりりと冷えたビールが出てくる。
ぐび、ぐび、ぐび。あ〜、うめ〜。やっぱり暑いときに冷えたビールは効くねぇ。
さてここに来たからにはステーキを頼まねば。
フードメニューにはステーキだけで5種類ほどある。
迷いながらシャトーブリオンを注文。
それとミネストローネ、ロシアンサラダも。
最初に出て来たミネストローネは味付けはそれっぽいのだが、期待したものより野菜が少なくてちょっといまいち。
なぜか素麺のような細めの麺が入っている。
ロシアンサラダはパイナップルやトマトなどのマヨネーズ合え。
こっちは悪くないが皿からぼたぼたこぼれまくり。
そして期待していた、シャトーブリオン。
肉は脂みのない赤身で硬めの肉。でも硬すぎるわけではなく、アメリカ人には好まれる硬さ。
ちょっとスパイシーなソースが美味。これで120Rsは安い。
食事をしながらHPCでこれを書いているとボーイたちが興味深そうに覗き込む。
「コンピュータだよ。旅行記を書いているんだ」
「中国語?」
「ちがうよ、日本語」
「いくらするんだ?」
「う〜ん、800USDくらいかな」
頭のはげあがった、年かさのボーイは瞬時にどのくらいなのかわかったらしく、驚きの表情に変わるのが見て取れたが、若いほうは目の前のキャッシャーで紙に書いて計算している。
きっとルピーに換算しているんだろう。
結果が出ると信じられないという表情でもう一人の若いボーイと顔を見あわせている。
本当の値段を言うのはやっぱりちょっと毒だったか。
ここの食事は全部で422Rs。さすがにいい値段だった。
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