11/10 バンコク - トン・パー・プム

サンクラブリーへは?

バンコクからのA/Cバスがカンチャナブリーに到着すると「カンチャナブリーにようこそ。どこへ行くんだ」と英語で話すやつがよってきた。
こんな奴は嫌いだ。関わるとろくなことがない。

そいつを無視してバスのホームに進むとさっき停まっていたと思ったサンクラブリー行きのバスはそこにいなかった。
気のせいだったのか、それともちょうど出発してしまったのか。
ということは今日はカンチャナブリー泊か、とたばこに火をつけて周りを見回しているとそこに新たなバスが入ってきた。
「どこに行くんだ」と別な男が声をかける。
「サンクラブリー」
「このバスだ」とちょうどやってきたバスを指し示す。
降りようとしていた車掌にサンクラブリーに行くか確認するとトン・パー・プム行きだという。
奥で運転手もうなずき「サンクラブリーに行くならあっちだと」と後ろの方を指さした。
あっちだというなら何かあるのだろう。
そっちをみるとなにかのオフィスがあった。
バスが駐車している間を抜けてその建物に向かってみる。
スモークのガラスで中は見えないが、そのガラス扉にはたしかに『サンクラブリー』とタイ文字で書かれている。
ふむ。
やはり旅行会社のようだ。

先日のバーンペーでボートチケットをぼられたのを思い出しちょっと躊躇しながらもその中に入ると壁際にプラスチック製の椅子が並びちょっとした待合室のようになっていた。
全員がタイ人で外国人の姿は見えない。
奥の方にブースがあり女性が2人座っている。
ロット・トゥー(ミニバス)の写真がセルロイドの板の下に置かれていた。
「サンクラブリーに行きたい」
「テムレーオ(いっぱいです)」と椅子に座ったまま背伸びをしながら彼女が応える。
そうか、ならしかたないな。
「明日は何時のバスがあるの」
「7:30」
「それ以外は?」
「9:00、10:30、11:30」
(あとで時刻表を確認するとその後も1時間おきに16:30まである模様:データ編参照のこと)

さてどうするか。
この街に泊まって明日バスでサンクラブリーに向かうか、それとも今日中にさっきのバスでトン・パー・プムあるいは別な街までいってそこで泊まるか。
(ところでトン・パー・プムってどこだ?)
でもはたしてその街に宿があるのかどうか。
さっきの車掌に聞いてみようか。

ホームに戻ると運転手の妻と思われる車掌がまだバスの周りにいた。
いつものミシュランの地図を広げながら「サンクラブリーに行きたいんだけどこのバスはトン・パー・プム行きだよね」
「はい」
「トン・パー・プムにはサンクラブリー行きのソンテウか、泊まるところがある?」
「泊まるところ?あります」
「泊まるならトン・パー・プムとサイヨークのどっちがいい?」
「トン・パー・プムです」
うむ、だったら今日のところはそこどまりかな。
「トン・パー・プムまでは何時間?」
「2時間半」
「このバスは何時に出発するの?」
「15:45」
ということは3時間かかったとして18:45か。
ならサンクラブリーまで行くのは無理だな。
じゃ、これでトン・パー・プムまで行って今日はそこに泊まるか。


トン・パー・プムへ

売店でハナミ(タイ版かっぱえびせん)を買ってバスに乗り込む。
このバスはタイ国内の地方都市どうしを結んでいる典型的なローカルバス。
A/Cはもちろんなく窓は全開で天井では扇風機ががたがたと音を立てながらぎこちなく回っている。
狭い座席は1列に5人掛けだがこれでも屋台椅子に座らなければならないこともあるラオスよりはずっとましだ。
乗客は当然のように100%タイ人。
カンチャナブリーに買い物に来たらしいそういう人たちで出発予定時刻になるとほぼ満席となった。

市内を抜けスピードを上げ始めたかと思ったら乗降客もいないのに突如バスが停まった。
なんだ?
後ろのドアから降りていった車掌が道ばたの店にプアンマイを買いにいく。
それを運転手に渡すとすでにいくつかぶら下がっているミラーにさらに新しいものをぶら下げる。
道中安全祈願ということだろうか。

車窓の両側にはトウモロコシ畑が広がっておりその向こうには低い山が姿を見せている。
山が見えてきたということは国土全般がほとんど平野のタイにあっては国境付近に近づいたことを意味している。
列車の旅に比べてバスは風景がいまいちなのだがこういうローカルバスが走っているような路線はA/Cバスが走るようなハイウェーよりはずっとまとも。
全開の窓から吹き込んでくる風も心地よくしばしその風景を楽しむ。
考えてみると日本国内をバイクでツーリングしていた頃から自分は目的地にたどり着くことが目的ではなく途中の風景を眺めながら走るのが好きだったように思う。
だからタイ国内の移動でもA/Cバスは快適で早いけど景色があまりよく見えないので好きでなかったのだ。

1時間ほど走ると見覚えのある場所にたどり着いた。
鉄道の最終地点、ナムトクである。
バスはここで小休止。
運転手や乗客の一部も買い物やトイレに向かう。
そして列車と同じようにバスの中にはビニール袋に入れたジュース類やちょっとした食べ物を手にした売り子たちが乗り込んできた。
帰りには列車にも乗ってみたいからここでバスを降りるのもいいかも。
列車の時刻はよくわからないけどたしか昼頃に折り返すのがあったはずだ。
うまい具合に列車がなかったとしてもまたバスに乗ればいいし。

トン・パー・プムには暗くなってから到着した。
3時間くらいはかかるかと踏んでいたが後半は降りる人も少なかったため2時間45分ほどで町中に入った。
途中の集落よりはだいぶましだがそれでも薄暗い小さな街だった。
ちょっと心配だったけどローンレーム(ホテル)の看板もいくつか目に付く。
ほっ、これで一安心。

右側が少々広くなった場所でバスが停車した。
乗客のほとんどが降りようとしているところからしてたぶんここが街の中心なのだろう。
とりあえずここで降りてみよう。

ザックを担いで降りたにも関わらず他の観光地にはありがちな客引きやトゥクトゥク、モーターサイは全く寄って来ない。
観光客が滅多に来ない証拠だ。
それでもバスを降りた場所の近くにはなんと7-11がある。
こんなに小さな街なのに。。。
ナーンやメーホンソンにあるくらいではもはや驚いてはいられないのかもしれない。


今夜の宿

ひとまずその周辺を歩き回ってみるがホテルはなさそうなのでバスでやってきた道をもどり先ほど見かけた看板のあたりまで歩いてみることにする。
やはり通りは薄暗い。
軒先に衣類をぶら下げた雑貨屋や薬屋、金物屋がまばらに並んでいる。
市場から5分ほど歩いたところにそのホテルはあった。
ソムジャイ・ヌックと看板にはタイ語で書かれている。
本当に営業しているのか不安になるほど照明の少ない敷地内に入ると両側に長屋形式の粗末な部屋(まさかラブホじゃないよな?)が並んでいた。
そしてその中央に小屋が一軒建っていてテーブルを出して女性が一人座っていた。
「ここ、ホテルだよね?」
「そう」
「部屋空いてる?」
「はい。A/C付きそれともファン?」
「先に部屋を見てみたい」
と見せてもらった部屋はチェンコンの宿よりはましだが『う〜ん』とうなるほどの安宿。
当然のようにシャワーは水。
この時期、水シャワーは辛かろう。
「お湯シャワーの部屋はないの?」
「400THB」
値段はいいから部屋をみせとくれ。

敷地の奥の方に連れて行かれると右奥に2階建ての建物が見えた。
なかに一応レセプションのようなものもある。
ふ〜ん、こっちはけっこうまともじゃん。
建物の前まで来ると「400THBの部屋」とひとこと言い残してその女性は戻っていってしまった。
こっちはどうやら担当が違うようだった。

レセプションには太ったおばちゃんと度のきつそうな眼鏡をかけた寄り目の女性がいた。
その眼鏡の方がどちらを見ているのかわからない表情でだまって鍵を差し出す。
なんだ、部屋まで案内しないのか?
ならばと鍵を掴もうとすると「400THB」とひとことそれだけ言う。
ま、いいや、どうせ選択肢は少なさそうだし。

金を払うと2階に案内された。
A/C、ホットシャワー、TV付きのツインベッドルーム。
照明が薄暗いし、バスルームの天井には蜘蛛の巣が張っていたりするが400THBならこんなもんだろう。
コ・サメットの宿よりはコストパフォーマンスはいい。


田舎町での晩飯

開けっ放しの窓から入ってきた埃と汗でべとべとになった体をさっそくシャワーでさっぱりさせ、晩飯を食べにいく。
まず市場の周りに行ってみると数少ない店は屋台かそれに毛の生えたような店しかなくビールが置いてありそうな店は見あたらない。
晩飯にビールがないのは、ビールを飲みながらゆっくりとちょびちょびおかずをつまむスタイルの自分にとってはちょっと寂しい。
市場の周辺をぐるりと回ってみると裏手の方に『食事・飲み物』の看板が目に入った。
どうやらソイをちょっと入ったところにあるようだ。

薄暗いそのソイを入ってみると左手に3段になったテラス風の広い店が現れた。
客はいない。
店員というよりこの店の子供が椅子に座って漫画を読んでいる。
う〜む、客がいないというのはちょっと気が引けるがここ以外に選択肢はなさそうなので入ってみることにする。
渡されたメニューをパラパラとめくると当然のようにタイ語オンリーで読むのに時間がかかる。
面倒なのでパット・パック・ルアミットとサイクローク、ビアチャーンを注文。
ウェイター(というよりこのうちの子供)が注文を伝えに奥に引っ込んでからさらにメニューを眺めていると後ろの方に英語併記のメニューが載っていた。
なぁんだ、こんなところにも英語メニューがあるんだ!
(スペルはだいぶ間違ってはいるけれど、、、)
サイクロークと言えばふだんの生活から勝手にサイクローク・イーサーンを想像してはいたが単に普通のソーセージを炒めたものだった。
しかしパット・パック・ルアミットはまともな味。
それになんといっても全部で75THBとめちゃくちゃ安い。
ビアチャーンの大瓶が30THBなんてバンコクでならまず考えられないことだ。
店の名前はクルア・トンナーム
店の名前そして作りからいって裏には川が流れているのかもしれないと少年に尋ねてみると、やはりそうらしくメナーム・クエー・ノーイが流れているとのことだった。

この店は昼に来ればまた雰囲気が違うかもしれないが、わざわざこの街に昼にいるような旅行者はいないだろうな、きっと。



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