昨夜の羽虫の残骸が床一面に散らばっている。
人を刺すわけではなさそうなのにいったいこいつらなんのためにわざわざ命を落としに来るんだろうか。
そんなに蛍光灯が好きなのか。
勝手に入り込んできてばたばたと死んでいくのはそっちの自由だけど、歩くたびに足の裏にくっつく羽は勘弁してほしいぞ。
空はどんよりと曇っていて洗濯物はまだ乾かない。
以前、チェーンセンに来たときもそうだったけど、メコン川沿いはいつもこんな天気なのだろうか。
とりあえず、洗濯物はここにおいといてケーンクックーとやらに行ってみよう。
もしかするとその間に少しは乾いているかもしれない。
昨晩マッサージに行って揉んでもらったにも関わらず、両太腿はバキバキに張っていて階段を下りるのも一苦労。
登りの時は足は全然痛くならなかったのに、手すりに捕まりながら『いてて、いてて』とうめきながら階段を下りていくと、宿のおばちゃんたちが
「日本人、足が痛いんだってよ」と笑ってる。
「昨日、プーカドゥンから帰ってきたんだよ」
「それで脚が痛いのか。プーカドゥンは雨が降ってたかい?」
「ああ、降ってたね」
「そんなに痛いんなら、もう一泊していったらどうだい」
いや〜、ここにもう一泊してもなにもないでしょ。
昨日はひどく無愛想に感じていた宿の人たちも、痛い脚を引きずりながら歩いている様を見て急に口数が多くなった。
「今日はケーンクックーに行きたいんだけど、サムローはどこで乗ればいいの?」
「サムローは大通りの交差点で乗れるけど、今日は泊まるんだね。」
だ・か・ら、泊まらないって。
「ケーンクックーに行って帰ってくるよ」
「半泊分、100THBもらうけどいいかい」
「いや、13時までには帰ってくるよ」
「そうならいいわ」
久しぶりの客をどうしても離したくないらしい。
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| ケーンクックーへの分岐 |
雨がひどくなってきたので市場で傘(80THB)を買って、サムローでケーンクックーへ向かう。
昨晩マッサージのおかぁちゃんに『バイクを貸してあげる(レンタル)からバイクで行ったら』と声をかけられたが、さすがにこの雨じゃバイクはいやだ。
ケーンクックーはノーンカイ方面に向かう国道を街外れまでしばらく行ってから、標識に従って左折。
そこからも普通の住宅街をしばらく走る。
こりゃ、帰りは歩いて帰ろうかとも思ってたけどちょと無理だな。
「ソイ9に帰りたいから10分くらいここで待っていてくれる?」
と降りるときに運ちゃんに聞いてみる。
「いいよ、そこら辺を見て来るんだな」
これで帰りの心配はないと。
ケーンクックーはちゃんとした観光地。
幅50mくらいの駐車場の両側に土産物屋だか飯屋だかがずらっと並んでいる。
観光案内所なのか、それとも警察なのかコンクリート作りの事務所も建っている。
川へは石段が続いており、その先の河原には休憩所のような草葺きの東屋もぽつぽつとある。
メコン川は逆『く』の字に曲がりながら狭くなり、流速も早くなっていて難所といわれるのもわかる。
背景には緑豊かな山が控えていて、ここだけを切り取ると成都のなんとか江のようだ。
『歩き方』によると、ここではクン・テンというエビの躍り食いが有名らしいのだが、サムローを待たせている関係で食べている時間はちょっとない。
晴れていればバイクで来てのんびりできたんだけど、ちょっと残念だ。
「ソイ9に戻って」
サムロー(往復100THB)の運ちゃんに声をかける。
この街はノーンカイに通じる国道とメコン川沿いの道が平行しており、その間をいくつかのソイが結んでいる。
バンコクとかだと片側が偶数、反対側が奇数になっているが、ここでは奇数も偶数もなく片側にずっと並んでいる。
川沿いの道にはG.Hが点在しており、皆一様に川側に展望レストラン(そんなたいそうなものじゃないが)を備えている。
今回泊まった宿もその中の一つだ。
荷物をまとめて階段を降りていくと
「今日泊まらないのかい。こんなに雨が降ってるのに」
と女主人。
「時間がないんだよ」
「いつ帰るんだい?」
「5日」
「ああ、それじゃ時間がないねぇ」
本当は5/5はバンコクに戻り日であって日本に帰るのは5/6なんだけど、勝手に勘違いしているらしいからこうしておいた方がいいだろう。
土砂降りの中、バキバキに張ってしまった脚のためにロボットのような歩き方で国道に向かう。
昨晩のマッサージ屋の前を通りかかると、やはり同じように2Fから子供が顔を出して『あ、日本人だ』と言っている。
手を振ってほほえむ。
じゃあな、ぼうず、母ちゃんによろしくな。バイク借りに来なくてごめんって。
大通りにでてサムローでもつかまえようかと思っていると、ちょうど道の反対側に『ルーイ (タイ語表記)』とボディーにかかれたトラックソンテウが停まっている。
しめた。うまくいくとここから乗せてもらえるかもしれない。
「運転手はどこ?」
雑貨屋の前にいたおっさん二人に声をかける。
「こいつだよ」もう一方のおっさんを指している。
「このバス、ルーイに行くよね」
「行くけど、バスターミナルからだ。でも乗っててもいいよ」
といかにもタイらしい答え。
やった、やった。これでサムローをつかまえる手間が省けた。
バスの運ちゃんがそこら辺の店の前に車を停めて買い物したり食事をしたりするのも日本じゃあり得ないけど、ルート外でタクシーのように客を乗せるのもきっとないだろう。
いい加減といってしまえばそれまでだが、でもタイはこういうところは融通が利いていて大変よろしい。◎
その車に乗ってソンテウターミナル(って言い方でいいのか)へ到着すると、運ちゃんに他の車に乗り換えろと言われる。
ということは、この運ちゃんは本当に無料でここまで乗せてきてくれただけだったんだ!
ここは奮発してハナマルをつけてあげたいが、あいにくフォントにないので◎◎にしておこう。
サイドのシートが最初から下ろしてあったため、今回は雨に濡れることもなくルーイへ到着。
声をかけてくるサムローを『めし、めし』と追い払いつつ、コーンケン行きのバスの発車時刻をにいちゃんに確認してから飯屋へ向かう。
店先のゲーンを指さして遅めの昼食。
だから料理名は解らないが、皮付き豚肉とゆで卵を煮込んだ茶色いゲーンのぶっかけ飯。
だいぶ前、まだバンコクのカオサンに出入りしていたときは、裏通りのゲーン屋でよくこうやって飯を食べていたものだ。
このやり方はタイ語が全くできなくても問題ないという気軽さあるが、その反面、料理名は全く覚えないというデメリットもある。
もっとも、長ったらしい料理は聞いてもすぐに忘れてしまうのがオチだけど。
ルーイからコーンケンへは、途中、プーカドゥンやチュムペーを経由して、来たときと全く同じルートを一気に走り抜ける。
再度車窓から眺めていてイサーンの他の地域との植生の違いに気がついた。
ルーイからプーカドゥンにかけては、さすがに緑の多いルーイ県だけあって雑木林が多く、国道201号線はその中をまっすぐに貫いている。
日本だと信州あたりの雰囲気で、ここをバイクで走ったらさぞかし気持ちのいいことだろう。
ところがチュムペーの手前で12号線に合流すると大きな木はまばらになり、所々赤土が目に付くようになる。
よく聞くイサーンの風景だ。
途中でチュムペーのバスターミナルに寄りながら、18:20にコーンケンのバスターミナルに到着。
改めて見るとコーンケンのバスターミナルは規模が大きく、ひっきりなしにバスが出たり入ったりしている。
このバスターミナル以外にも高速バス専用ターミナルがあるらしい。
さすがにイサーン地方有数の都市だけのことはある。
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| Rusesukhorn Hotel |
次々と声をかけてくる商売熱心なおっさんたちを振り切り、ロボットのような歩きでバスターミナル近くのRusesukhorn Hotelにチェックイン。
歩いてくる途中でコンピュータスクールを兼ねたインターネット屋を発見したので、ひとまずシャワーを浴びた後でそこに行ってみる。
バンコクではほとんどの店で日本語対応のGlobal IMEが入っていたのにここはタイ語対応のものしか入っていない。
ダウンロードしようにも回線が遅くする気になれない。
バンコクではADSLが入っていたというのに、ここはたぶん28.8kぐらいじゃないだろうか。
それともプロバイダの回線が細いのか。
イサーン地方唯一の総合大学のある街だというのに。
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