【6/30 成都】

《なぞの電話》

昨晩は女性の声で2時間おきくらいにわけのわからない電話で起こされた。
まったくの中国語なので話していることはさっぱりわからない。
最初のうちは日本語で『わかんないよ』と応えていたがあまりにも頻繁なので『うるせぇ』と叫んだら意味が通じたのかどうか、それっきりかかってこなくなった。
いったいなんなんだ、このホテルは。

朝食付きなのでレストランに食べに行こうと、散らかった荷物をまとめているとまた電話が鳴りだした。
例の電話じゃないだろうな、こんな朝っぱらから。
「ハロー」
「昨日の旅行代理店なんだけど」
たぶんホテルまで送ってきてくれた男性だ。ちょっとわかりづらい英語。
「明日のツアーがキャンセルになってしまったので3泊4日のツアーになるけどどうする?」
なんだよ、せっかく安いと喜んでいたのに。
「それでもいいよ」
「じゃ、あと550はらってくれ」
550ってドルか?だったらすげー高い。
昨日のおねぇちゃんと違って話している英語がひどくなまっていて聞きとりづらい。
「じゃ、今日オフィスに行くよ」
電話じゃよくわからんがしょうがない、散歩がてら代理店に行ってみよう。

《成都の街》

宿泊費に付いている中華バイキングをすまし、歩いて代理店に向かう。
成都の街は予想していたよりもずっと近代的な大都会
10階建以上の立派なホテルやデパートが建ち並ぶ。
街路樹に挟まれた大通りには車道とは別に自転車専用道路もある。
たしかに自転車は多いが、四輪車も東京並み。
でもインドの大都会のようにむやみやたらにクラクションを鳴らすわけではなく、いたって順調に流れている。
バンコクのヤワラーを勝手にイメージしていただけに、ここまで整然としているのは意外だった。

声をかけてくる怪しげな奴もいるにはいるが無視しているとあっさり引き下がる。
だいたい中国語で話しかけられたってさっぱりわからないもん。
彼らも英語ができる奴はほとんどいないみたいだし。
その点では聞き取りづらい英語でたたみ込んでくるインドより楽。
それにバンコクよりあっさりしてるかも。

街行く一般人は日本の感覚からいうとどことなく野暮ったいけど、みんなこぎれいな格好をしているし、ここが台北だといわれても信じてしまうだろう
カルカッタのように道端にいきなりウンコが落ちていることもないし、中国も都市部はもはや先進国並みだ。
これは実際に見てみないことにはわからんものだな。
一応断っておくが日本で和服を着て街を歩いている人がいない以上に人民服なんて絶対にいやしない

《再び代理店へ》

途中多少道に迷いながらも30分もかからずに代理店(成都旅游公司)に到着。
入っていくと昨日のおねぇちゃんがカウンターに座っていた。
「昨日、ラサ行きを申しこんだんだけど」
「ああ、ガイドから連絡が行ったでしょ。ツアーがキャンセルになってしまって明日のツアーはなくなったんですよ」ほんとかな〜
「で、あと550って聞いたんだけど550元?」
「そう、3泊4日でホテルとガイド、車がついてプラス550元の2500元。食事は別ね。出発は7/2」
「帰りのエアーはついてんの?」
「それは別で1200。帰りのチケットも欲しい?」
「いや、いらない。じゃ、このツアーが終わったらチベット内は自由に歩ける?」
「もちろん。帰りの日が決まっているのならエアーチケットも発券できるけど」
「いや、いいや。じゃ、プラス550元ね。迎えは同じ時間?」
「そう、7/2の朝4:40」
「OK」
いちおう、USDっていわれた時のために途中で70,000JPYほど中国元に両替して来たんだけど、USDじゃなくてよかった。
電話では『もしかしてぼったくりか』とちょっとは警戒したけど良心的でよかった。今のところは。

「ところで一日空くから、明日一日ツアーに参加しない?」
おねぇちゃん、商売うまいね。
「どんなツアー?」
「市内は今日タクシーで動けばいいから青城・都江堰はどう?」
「いくら?」
「220RMB。車とガイド、ロープウェーと食事代、保険料込み。このパンフに書いてあるわ」
こういうふうにきちんとしていると多少高かろうが安心するのが日本人。
220RMBということは3,000JPYくらいか、あんまり興味はわかないけどここまで来たんだし、ま、いいだろ。
それにしても商売上図だね。英語も完璧だし。
「OK、いいよ」
「じゃ、明日の朝7:20ごろ迎えに行くから」
つーことはホテルを変えるわけには行かないのか。

《タクシーバトル!?》

「武候祠にいくならタクシーで8RMBくらいよ」
旅行社のおねぇちゃんに背中に声を受けながら近所のタクシーが溜まっているところに向かう。
『歩き方』を指差し「武候祠まで」。
「●※▽□」やっぱりさっぱりわからん。
すると運ちゃん、100RMB札を折りたたんで『半分の50だ』みたいなことを言う。
えっ、そりゃ、高いでしょ。
「メーター?」
ガソリンも高くなったんでメーターじゃ行けない』みたいなことを言ってる。ほら、始まった。
こうなったらいったん引くふりをしたほうがいいな。
「じゃ、いいや」
そいつから離れてちょうど目の前で客を降ろしたタクシーに乗り込もうとすると、意外にもそいつが、
「武候祠まで」
みたいなことをタクシーの運ちゃんに伝えてる。
おっと、こういう展開は初めてだ。
「メーター」といいながら乗り込むと素直にメーターを動かし始める。
あれれ、こりゃ、楽だわ
人民との戦いを覚悟して来たのに拍子抜けだ。

《武候祠》

劉備

ということでタクシー(8RMB)で武候祠に向かう。
ここは三国史で有名な孔明と劉備を奉ってある寺。
ふだん、名刹とかにはほとんど興味ないけど三国史は面白くて何度も読んでいるのでここだけは興味がわく。
入り口で入場券(30RMB)を払って中に入ると草木の追い茂る庭園が続いている。
真正面の建物には中央に劉備の像が奉られている。
その両翼を固めるように関羽、張飛、張雲は言うに及ばず、右側には文官、左には武官の見覚えのある像がずら〜っと並んでいてそれぞれに説明が書いてある。
そういえばどこかの国で関羽を奉ってある寺があったけどあれは台湾だったかなぁ。
三国史は中国系には人気あるよなぁ。

肝心の孔明の像はこの列にはなく別格として後ろに控える別棟に子・孫ともに奉られている。
忘れていたけど蜀の都がこの成都にあったこともあり、成都の人はこの劉備と孔明はよほど誇りにしているんだろう。
この気合の入れようは歴史に興味がなくても一見の価値がある。
それらの像のみならず、なんといってもこの広い敷地いっぱいに広がる中国式庭園。
池あり、竹林あり、橋ありで水墨画に描かれるような世界。
盆栽館みたいのまであってひととおりまわるだけでも2,3時間はかかる。

《茶店にて》

歩いていると突然大粒の雨が降り出した。
茶店を見つけたので急いで中に入ると、すぐに大雨。
ここら辺は熱帯の気候に近い。
雨が止むまでここでお茶を飲んで時間をつぶすことにする。
周りには中国人が同じくお茶を飲んで歓談している。
敷地内は全面禁煙のようだがここだけはOK。これはありがたい。
HPCを開いてこれを書きながらゆっくりとお茶を飲む。
すると従業員が周りに集まって来た。やっぱりHPCは珍しいんだろう。
なんやかんや言いながら液晶を覗き込む。
「コンピュータ」というと
「電(字は違う)脳」とメモに書くおねぇちゃん。
「そうそう」
でも、インドと違ってひととおり騒いだ後は値段を聞くこともなく従業員席に戻っていった。
なんかあっさりしている中国人。
なんにでも興味を示すインド・バングラ系とは好対象。
やっぱり宗教の違いかな。

茶店で1時間ほど時間をつぶした後、腹が減ってきたので武候祠を出てすぐに左側にあったレストランに入る。
テーブルにメニューが立ててあるけどよくわからない。
料理の名前がいくつか書いてあって15元とある。
まさかこれ全部で15RMBってことはないよな。
やっぱり、一つ15RMBなんだろう。
と思い、餃子のような料理とたぶん麺類だと思われるメニューを指して頼むと、ウエイトレスが怪訝な顔をしている。
なんか言ってるけどさっぱりわからんし

ちょっと偉そうなウエイトレス頭のきれいなおねぇさんが出て来たけどやっぱり中国語。
全然わからないよ。英語もまったく通じないし。お互い困る
こうなったらメモに書いてもらおう。
これでやっと判明。どうやら最初思った通り全部で15RMBらしい。
注文するとすぐに小鉢がならべられた。
麻婆豆腐や辛いスープの麺もあったけどこれも飲茶っていうんだろうか。
いずれにしてもみんなちょっとずつなので一人でいろんなものを食べてみたい時にはこれはいい。
ちなみにこの中ではやっぱりの麻婆豆腐とラー油で食べる餃子がうまかった。

《青羊堂》

さて腹も落ち着いたことだし、次は青羊堂にでも行こう。
タクシー(8RMB)を捕まえ青羊堂(入場料1RMB)に向かう。
ここは国内でも有名な道教の寺らしいが、単なる時間つぶしなのでそんなことはどうでもいい。
ここの境内も広く、奥へ奥へと続いている。
ずんずん歩いていくと、左手に屋根だけはあるけどオープンエアーの休憩所が目に入った。
ここにわんさと人民がお茶を飲んでいる。やっぱり好きなんだねぇ〜、お茶

《中国式トイレ発見!》

その脇を通りぬけトイレに向かうと
そこで見つけたのは、本とかで読んで知ってはいたけど、初めてお目にかかったドアなし個室。
おお、これは!
隣とはいちおう80cm位の壁でしきられているけど通路側からは丸見え。
つまりしゃがむとけつが丸見え状態になるはず。(それとも力んだ顔かな)
下痢や痔の人は恥ずかしいだろう。
今は別に大はしないけど、ここでするのはよほど羞恥心を捨てないとできない。
ここでできる外国人は尊敬してしまうよ。
なるべくごやっかいにはなりたくないものだ。

《寺で麻雀?》

さて、その青羊堂を奥まで進むと、木立に囲まれてテーブルと椅子が並んでいる休憩所があった。
ここには売店らしきものはないけどみんな銘々に木陰で休んでいる。
空いているテーブルに就いて何気なく前のテーブルを見るとおばちゃん達4人が麻雀をやっている。
こんなところまで来てやるもんかなぁ。
日本でも海辺でやっている奴がいるけどそんなのりか。
面白そうだから話しの種に後ろで見ることにする。

日本の麻雀との違い:
・パイがやたらとでかい。
・捨て牌は並べずぐちゃぐちゃに捨てる。(ふりてんはないらしい)
・三元牌もないらしい。
・ドラもリーチもない模様。
・鳴きピンフでもあがれるようだ。
日本に来ていろんなルールができたみたいだけどそれよりずっとシンプルに見える。
たしか七対子もないんじゃなかったっけ。

さ〜て、本題じゃないところで興味深いものを見せてもらったところで、次はどうしようか。
まだ晩飯には時間があるし。『歩き方 四川・雲南編』をぱらぱらとめくる。
そうだ、四川といえばパンダだ。動物園に行こう。

《大熊猫》

青羊堂を出たところでタクシー(28RMB)を拾い、動物園へ向かう。
ガイドブックによるとここでは多数のパンダが見れるとのこと。
そういえばいろんな国で動物園は見てきたけどジャイアントパンダって見たことがないような気がする。
まっしぐらに大熊猫館に向かう、つもりが道が複雑でちょっと迷う。
ずんずん進んでいくと、池に囲まれてひとつだけ立派な建物が建っていた。
白い壁にはパンダの絵。これが大熊猫館か。

正面のガラス張りの半円形の部屋には一匹のパンダ。
暑いのか、だら〜と横になっている。おい、動けよ、つまんねぇな
しょうがない、他にもいるだろうからぐるっと廻ってみよう。
すると、隣の長細い部屋でもおなじように、だら〜っ。
おい、おい、こっちはおまえたちを見るためにわざわざ日本からやってきたんだぞ。(違うけど)
今日は客が少ないと思って手を抜いているのか。

さらに廻り込む。
すると、ガラス際にペタンと座ってささの葉をむしゃむしゃと食べているパンダ。
か、かわいい。おっと、年甲斐もないことをつぶやいてしまった。
でもこれだけかわいくて動作ものんびりしているなら乱獲されて絶滅の危機に瀕していてもおかしくないな。
ましてはここは中国。
もしかすると漢方薬の原料や料理に使われていたのかもしれないし。

《陳麻婆豆腐店》

ホテルへ戻り一休みした後に食事に出かける。
今日こそは陳麻婆豆腐店だ。ホテルの前でタクシーを捕まえ『陳麻婆豆腐点』と書いたメモを見せる。
「OK。●△□☆○」
わかんないけど、「そうそう。陳麻婆豆腐店」
タクシーに乗り込む。

ここで、陳麻婆豆腐店を知らない人のために書いておくが、代表的な四川料理として日本でも有名な麻婆豆腐(MS-IMEでも”まーぼーどうふ”で変換すれば一発で出てくる)は、実はこの『陳麻婆豆腐点』が発祥の地なのである。
噂によると、ここの麻婆豆腐は、ものすごく辛く、舌が痺れるほどらしい。
辛いものには目のない私としてはぜひとも食べてみたいところだ。

さて、その陳麻婆豆腐店であるが、市の中心部からやや北のほうにある。
2号店らしきものも青羊宮の目の前にあったが、そっちは味が落ちるらしいので、あえて本店に向かう。
こ汚い豆腐屋の軒先でやってるのかと勝手に想像していたけど、さにあらん、『陳麻婆豆腐店』と書かれた、金ぴかの看板を堂々と掲げたなかなかに立派な店構えである。
開けっ放しで天井の高い店内には店の由来と思われるものが、吉野家のように、でもそれ以上に堂々と掲げられている。

入り口付近にたむろしている無愛想なおばちゃんがメニューを持ってきた。
豆腐店という店名からてっきり、豆腐料理ばかりかと思い込んでいたけどそうじゃなく、漢字ばかりのメニューにはずらーっと料理名が並んでいる。
まずは何をともあれ、名物”麻婆豆腐”だろう。
それと、やはり四川名物”棒棒鶏"。それに青島ビール。
これで完璧、たぶん。

棒棒鶏を肴にビールを飲みながら麻婆豆腐が出てくるのを待つ。
ちなみに四川の味を言葉に表すなら、
麻(マー):びりびりする花椒(ホアジャオ)の辛さ
辛(ラー):唐辛子の辛さ
らしい。これがないと四川とはいえないそうだ。
麻とはどんなものか、本当に食べれるのだろうかという若干の恐れと期待を胸に麻婆豆腐を待つ。

と、どんぶりよりちょっと大きめで、ラーメンどんぶりよりはちょっと小さめのボールに入った真っ赤というより赤黒い麻婆豆腐が運ばれてきた。
ラー油の中に豆腐がぷかぷか浮いていてその上には花椒がこれでもか、というくらいかけられている。
見るからに辛そう。
でもタイでプリッキーヌーとさんざん戦った私からみれば、相手として不足はない。
さっそく、戦闘開始。
まずはレンゲで一口。
た、確かに辛い
しかもインド系の香辛料の辛さと韓国系の唐辛子の辛さのダブルパンチ。
だがその辛さをひき肉と豆腐、ねぎのみじん切りがうまくまとめ上げている。
さすが、本家本元だけのことはあるぞ。
よく行く神田の四川料理屋の麻婆豆腐もビリ辛でうまいが、これは甲乙つけがたい。
かきこむように一気に食べ終えると体温が2度ほど上がったような気がした。