昨晩も夜中に2度も怪しげな電話で起こされ、ほとんど寝れなかった。
たぶん、宿泊者名簿が夜総会のほうに流れているのだろう。
ひどいホテルだ。
もし成都に泊まることがあってもそういうつもりがないのなら男性一人でこの民航大厦には泊まらないほうがいい。
ほとんど寝れないことになる。
やっと、うとうとした状態で4時に起床。
カーテンを明けると当然外はまだ真っ暗。
昨晩買っておいた包子をお茶で流し込みレセプションに降りていく。
唯一英語が話せる -といってもそこそこだが-
わりとかわいい女性が一人でぽつんとレセプションにすわっていた。
「昨晩は夜中に2度も電話で起こされてよく眠れなかった。たぶんナイトクラブからじゃないか。いったいこのホテルはどうなってるんだ!」
努めて憮然とした表情で切り出す。
「ごめんなさい」
ほんとは『1泊分の金返せ!』とまで言いたかったが細面のかわいい顔で申し訳なさそうに謝ったのでそれ以上は言えなかった。弱いなぁ。
夜明け前の誰もいないロビーで待っていると約束より10分遅れの4:50ごろ、例の軽のワンボックスが迎えに来た。
先客は日本人らしい女性が一人、中列シートに座っているだけ。
助手席に乗り込み暗闇の中を走り始める。
まだ真っ暗なのに道には自転車を漕いでいる人民達。
歩道には歩いている人もちらほら。
いったいこんな時間にどこに向かっているのか、それとも飲んだ帰りでもあるのだろうか。
途中でマイクロバスに乗り換え。
中国系やら日本人もどき、西洋人で満員になる。
みんな大きな荷物を持ち込んでいるが、そのなかでもとりわけ大きい荷物は先ほどの女性。
「Where do you come from ?」向こうから話し掛けてきたがやはり日本人だった。
話し始めてみると彼女はチベットは初めてだけどチベット語を週一回のペースで勉強しているらしい。
しばらくチベットに滞在してネパールに抜けることを考えているそうだ。
大きな荷物といい、いったい、何者なんだろう。プーかな〜。
昨日の下山時に痛めた膝が痛いのでチェックイン時にExit Rowをリクエストしてみようと思ったが、ガイドの男性がまとめてチェックインをしてしまったのでそれはかなわなかった。
チェックインしたのになぜか意味もなくカウンター前で待たされている間に、
「おまえらはラッキーだ。昨日のカトマンズ経由のラサ行きはキャンセルになってしまってこの列だ」
とガイドと親しく話していたおっさん。多分同業者なのだろうが隣のカウンターを指している。
昨日起こったことが今日起こらないとも限らない。
そうはならないことを祈る。
セキュリティ(ここでパーミッションリストの照合も行う)を通過し待合いロビーへ向かう途中、
『ラサ行きSZ4401便はラサの天候不良により7:30にディレイします』
のアナウンス。ガクッ。
天候なら1時間くらいはしかたないかな。搭乗待合い室に向かう。
先ほどの女性を含めてチェックインの時に知りあった日本人達と話して時間をつぶしていると、
『4401便は8:30にディレイ』
と再アナウンス。えぇ〜。
前後の4403便、4405便も同じように遅れているらしく、5番ロビーはラサ行きの人たちであふれかえっている。
う〜ん、2時間のディレイかぁ。今日中に飛んでくれればいいけど大丈夫かなぁ。
1月のデリーを思い出す。
あの時は国際線だったので5つ星ホテルが用意されたけど国内線だからそれは期待できそうにないし、ここまで日数もかかっているのでこれ以上遅れるのは嫌だなぁ。
と時間をつぶしているとまたアナウンスが。
『4405便はラサでの天候不良のため10:30にディレイになります』
えっ、でも別な便だからいいか、と多少安心していると、
『4401便はラサでの天候不良のため10:30にディレイになります』
『4403便はラサでの天候不良のため10:30にディレイになります』
と3便同時にディレイになってしまった。
えぇ〜〜〜〜〜、10:30〜〜〜〜〜。本当に今日飛んでくれるんかいな。
全便キャンセルになったら、他の便はいざ知らず、昨日からの振り替え便の乗客は暴れるだろうな。
それに機材繰りが間にあいそうにもないし。
オーバブックと違ってこればかりはゴネてもどうしようもない。
腹も減ってきたから人民を見習ってカップヌードルでも食べるか。
中国らしく給湯器はここにも用意されている。
腹をくくって売店にカップヌードルを買いに行くも時すでに遅し。
売店のカップヌードルはすべて人民の腹の中に納まってしまっていた。
仕方ないから食堂まで行ってむちゃ高いのにうまくない坦々面を食べて離陸を待つ。
それでも先ほどまでの不安をよそに10時過ぎに再アナウンス。
『4401便のお客様は3番ゲートにお進みください』
やった〜、やっといけるぜ、チベット。
3便ほぼ同時に搭乗し、離陸を待つ。
われらが4401便はA340。
やたらと長い機体のほぼ最後尾に近い一帯がわれわれFITツアーご一行さまだ。
![]() |
|
ラサ クンガ空港 |
さて、SZ4401便は定刻より4時間遅れでクンガ空港にやっと到着。
今朝の名残りのどんよりした雲に覆われているが、ところどころ日がさし始めている。
現地ガイドに促されマイクロバスに乗り込む。
機内で前の席に座っていた台湾人若者グループや一人旅初めて香港女性も一緒だ。
ここら辺の国々の連中は見た目では判断が難しい。
日本人ぽいなぁと思っても違ったりする。
そこらへんの事情は相手も一緒だろうがやはり白人よりは親近感をお互い感じるらしい。
台湾人は香港人とも現地人とも中国語で会話できているし、われわれを含むその他外国人とは英語で話をしている。
この2つの言語ができるなら世界のかなりの地域をカバーできそうでうらやましい。
![]() |
|
空港からのバス |
思ったよりきれいで近代的な空港を後にバスは当面の目的地ラサへと向かう。
車窓には岩だらけや潅木だらけの山に囲まれた盆地が広がっている。
そしてその中央には川とも沼ともつかない水地が横たわっている。
雲も切れてきて真っ青な空が見えて来た。
やっと来れたことと、この風景にうれしくてうれしくて顔がほころび、目にはうっすらと涙まで浮かんできた。
こんな感動はブータン以来だろうか。
ところどころにダルシン、ここではタルチョだったかな、がはためいている。
ブータン、ネパール、シッキムでもみかけたがここがなんといってもチベット仏教の本家。
きっとポタラ宮には竹林の如くはためいていることだろう。
あ〜、早く見てみたい。
そんな感動的な行程を経て2時間ほどでラサ市内のSnowLandホテルに到着すると、チェックインもせずに有無を言わさずドミに通される。
そっか、ホテルというのはこういうことだったのか。道理で安いはずだ。
男女混合で同室にはデンマーク人のカップルと台湾人の3人グループ。
ひとつの部屋でいろんな国の人がいっしょになるというのも悪くない。
昨晩洗ったシャツが生渇きだったので匂いをかいでからロープに干すと白人男性にからかわれた。
このホテルは典型的な安宿。設備は良くないが情報交換にはよさそう。
レセプションのとなりの掲示板にはツアー同行者を求める貼り紙がところ狭しとはられているし、2Fには旅行代理店も入っている。
さっそくヤムドク湖へのツアーでも申し込んでみるか。
「ヤムドク湖に行きたいんだけど。それともしできればシガツェ、ギャンツェへも」
「シガツェ・ギャンツェに一人で行くなら3500RMB。でも今、2人がちょうどそのルートの同行者を求めてるからどう?」
「OK、どうすればいいの?」
「そこに書いといて。4人になったら行けるから」
「でも8日には上海に戻りたいんだけど」
「7/5~7の日程なら問題ないよ。それまでにもう一人探しておいて」
今日は一日フリーだとのことなので食事がてら街を歩いてみる。
ちょっと歩くだけですぐに息が切れ、心臓もばくばくしてくる。
足どりも重く高山病の初期症状だ。これはマイペースを守らねば。
ブータンの首都、ティンプーほどの規模の街を予想&期待していたのにラサは思いのほか大きな街。
中国語の看板の多さが『中国人のチベットへのこれ以上の流入を許すな』というシッキムにあった貼り紙を思い出させる。
頭痛と息切れと心臓バクバクに耐えながら歩いていると小腹がすいてきた。
今日は朝が早かったからなぁ。
時間的には中途半端だけどちょっと何か食べておこう。
でもチベット料理に味は期待できないしぃ、やっぱり四川だなぁ、とぶらぶら歩いているとホテルの近くに川菜料理の店を発見。
(川菜料理とは四川料理のこと。川味とも)
メニューをざっと見て紅油餃を注文(3RMB)
予想通り、ラー油の中に茹で餃子がぷかぷかと浮いている。
モモと違って味はいい。ほとんど似たようなものなのにねぇ〜。
でもどんぶり一杯分はさすがに多く、1/3ほど残してしまった。
ラサでもインターネットカフェがあり、これは驚き。
インターネットは今や全世界的だ。
なんとこのスノーランドホテルにもインターネットコーナーがある。
食事の後、日本人の女の子に誘われてそこにお茶をのみに行くと、ここの人のよさそうなおじさん、- といっても同じ年くらいか -、は『チャイニーズテレコムはバッドだ』としかめ面をしながらHotmailを開いている。
バックボーン回線の速度の問題だろうが、1つのメールを見るだけで何分もかかっていて、こりゃ、たしかにバッドだ。
「ダライラマの誕生日が近いのでおそらく内容のチェックをしているんだろう。電話もつながりにくくなっているし」
国際電話をかけて最初に『ハロー』と言った途端にこちらの声が伝わらなくなるそうだ。
と、こんな話やチベット対中央政府の話をしていたらこのおっさんに地元の酒である、チャンを勧められた。
「お酒なんか飲んで大丈夫?」と日本人の女の子に気を使ってもらいながらも、勧められた酒は断れない性分。
お猪口ほどのグラスで一口飲んでみる。
ちょっと酸っぱいけどあっさりしていて飲みやすい。
「どうだ」
「うん、うまいよ。飲みやすいし」
「そうか、じゃ、もういっぱい」とにこにこしながらついでくれる。
う〜ん、ちょっと頭が痛いんだけどなぁ、でも断れないし。
そんな感じでグビグビいってしまった。
大丈夫かなぁ、明日。
結局、飲みっぷりを気に入られて、この後毎晩誘われることになった。^^;