【7/7 ナムツォ - ラサ】

今日もどんよりと曇っている。
チベットに来てから毎日こうだ。
朝からあのカーンとした青空は見たことがない。
やっぱり雨季の影響なんだろうか。
それでもずっと曇っているわけじゃなくて、昼頃になると強烈な日差しが襲ってくる。

これがヤク

頭痛はひとまず落ち着いた。
それでも依然として動けない体に鞭打って、荷物をまとめて8時に出発。
まだ肌寒い。たぶん気温は12,3度といったところだろうか。

一昨日通った草原を前後左右に激しくゆられる。
脳みそも腹の中もぐちゃぐちゃになりがら、一路ダムシュンを目指す。
運ちゃんは相変わらず鼻歌交じり。気楽なもんだ。
でも、それって、まさか『オプメニペムフム』(チベット仏教のお経)じゃないよな。
なんかそう聞こえなくもないけど。

《羊の群れ》

ちょっと小雨がふっている。
峠の標高は5150m、雪になってなければいいけど。
ところが峠へ登り始めると山肌に白い点々が見え始めた。
岩かなぁ、まさか雪じゃないよな。
右側は急な崖だし、こんな道で雪にでもなったら生きた心地がしない。
でも近づいていくとそれらが蠢いているのがなんとなくわかってきた。
あ、羊の集団だ。
多数の羊が牧童に追われ移動している。
おっと、こっちに迫ってきたぞ。おいおい、それ以上来るな、こら。
おい、来るなって。
という言葉も当然通じず、道をふさぐ羊たち。
鼻歌を中断した運ちゃんがしきりにクラクションを鳴らしても驚いて駆け足になるだけでどんどん目の前を横切っていく。
ちょっとは道を譲るということを知らないのか。
しかしこうなってしまってはお手上げ。
数百頭と思われる羊たちが通り過ぎるのを待つしかすべはない。
なかにはまだ生まれて間もないのだろう、よちよち歩きの子羊たちも混じっている。
みんな必死になって、斜面をずり落ちたりしながらもどんどん横断していく。。
TVでみたヌーの大移動をふと思い出した。

そういう羊たちの移動を眺めていると空腹を感じてきた。
腹減ったなぁ〜。そういえば、今日は朝飯抜きだった。
カップ麺はもう一食余っていたけどもう飽きてしまった。
かといってあの食堂の飯も食べる気にはならなかった。
というわけで、今日の朝飯兼昼飯は、運ちゃんお勧めの例のダムシュンの食堂。
出掛けに、『あそこの食堂は高くてまずいから来た時に寄った食堂で食べようね』と言っていたらしい。
運ちゃんもよくわかっている。そう、それがいい。
そのドライブインには11時に到着。
こんな田舎でもなかなかいける。やっぱり食は四川だよなぁ。

《人民解放軍のトラック》

しっかり1時間の休憩の後、再びラサに向けて走り始めると、まもなく軍の施設からトラックが続々と湧いてきている場面に遭遇。
カーキ色の列が延々と続いている。
あちゃ〜、こりゃだめだ。
1,2,3,4,,,,,15台ほど数えてあきらめた。
たぶん20台は優に越えているだろう。
運ちゃんもあきらめたかようにその列の最後尾に着くが、思ったとおりトラックはのろのろ運転。
このペースじゃラサに何時につくんだろう。
『今日中にラサにつけることを望むよ』
うらなりアメリカ人がそう言ってるけどしゃれにならない。
まさか、人民解放軍を追い越すわけにはいかないよなぁ。

と思いきや二車線ほどの道になると突然、運ちゃんが前のトラックを抜き始めた。
う〜ん、でも2,3台抜いても変わらんよな〜。
どうせ抜くなら全部行かなきゃ。
地道に3台、4台と抜いていく。
ほぉ、やるな。
そこで、留学生の女の子、「このトラックってちゃんと番号順に並んでいるんじゃない」
そういえば、さっき抜いたのは28から26だし、目の前のは25。
ということはあと25台ってこと?
先は長いな。
それでも果敢に追い越しにかかる運ちゃん。

1時間ほど時間はかかったけど、とうとうあと4台というところまでこぎつけた。
道が2股に分かれている。
トラックは左。
運ちゃん右を選択。
おいおい、そっちは工事中じゃないのかい。大丈夫かよ。
先頭まで抜いたつもりでいると、やっぱりその先の道がない。
やっぱり〜。だから違うって言ったじゃん。
「え〜、また振り出し〜。ダリ、もう、しっかりしてよ」
運ちゃん、『しっぱい、しっぱい』と子供のような照れ笑い。
憎めないなぁ、こいつ。
せっかく20数台も抜いたのにまた20番台からリスタート。
F1で大スピンをしてピット作業が手間取ってしまったような感じ。
はぁ〜あ。
今度はトラックにクラクションを鳴らされながも強引に抜いていく。
あと4台になったところで先頭を走るジープが停車。
わざわざ道を明けてくれたのかと思いきや、そうじゃない。
お偉いさんのトイレタイム。それに従って後続もすべて停車。
そうか、さっき30分以上動かなかったのもこのせいなのか。
ここでスパートをかけて一気に抜き去る。

そんなこともあってラサには10時間半後の6時半に到着。
新たにホテルを探すのも面倒なのでまたSnowLand Hotelに連れて行ってもらう。
ここのところず〜っとドミ続きだったので、今日くらいは贅沢したい。
と、ツインを希望したけどトイレ・バスつきのほうもない方も空いてなく、またもドミ。(25RMB)
ま、金はかからないからいいんだけど。

《中国人化》

例の留学生たちとSnowLand Restaurantで晩飯。
2人それぞれ立場は違うけど、留学も終わりそろそろ日本に帰るとのこと。
「わたし、インドにも行ってみたいんですよ」
と、元気な方。
「インド、きついけど面白いよ」
「でも大変じゃないですか。なんか怖そう」
「中国になれているなら全然平気。世界中どこに行っても大丈夫なんじゃないかな」
「そんなことないですよ。言葉が通じるから文句だけは言えますけど」
「でもそれが普通の日本人にはできないんだな。文句が言えるってことは強いよ」

「そういえば、本で読んで知ってたけど、何か聞き返す時、『あ゛〜』ってやってるでしょ。それ、見たとき、ああこれだ!って思った」
「え、やってます〜?」
「あ、そういえばやってる、やってる」おとなしい方。
「え、うそ〜」
「やってるよ、『あ』にてんてんが付いてた」
「え〜〜〜、あ、でもやってるかも」
「それ日本に帰ったらやらないほうがいいと思うよ。絶対変な奴に思われるから」
「そうですね。気をつけます。でもやってるかな、やっぱりやってるか」
と、すっかり中国人化している留学生であった。