女王号泣
2001.01.18 up
女王はエンターテインメント好きである。
「映画を見よう」といわれ、有楽町に出かけたのは土曜日である。
30分前にたどりついたのに、
「席の保証はできかねます」と係員が叫んでいる。
をいをい、女王に立ち見をせよというのか。
いやぢゃ、いやぢゃ。座って見るのぢゃ。
仕方ない。次の回にしよう。割と素直な女王である。
なんだか知らないが、妙にこの映画は人気のようである。
暗い画面。手ぶれの映像。
おや、突然出演者が歌い出す。踊り出す。
これは女王の苦手な「ミュージカル映画」であったのか。
まぁよい。
下調べをしていない女王が悪い。
やはり素直な女王である。
ところでミュージカル映画の醸し出す違和感というものは、
日常からの逸脱を「歌と踊り」で鮮烈につきつけられるからではないか、
と女王は思う。
満員電車で隣の人が突然歌い出したらあなたはどうするか。
女王は違う車両へ移る。だってなんかこわいもん。
だが、この映画での違和感は、
人々がミュージカル映画に対して抱く違和感を、
もうひとつ別の違和感でつつんでいる。
あるいは最初の違和感に鋭いナイフをつきつけ、
皮をきりさいているといってもよい。
ヒロインが思い描く白昼夢を、ミュージカルシーンと等記号で
結びつける手法は、違和感を抱かせないための手法かもしれないが
さらなる違和感を生み出すための手法ともいえる。
ぜひあなた自身で確認してほしい。
生きぬいていくために、
そして息子を生かすためだけにヒロインがとった手段が、
すべて悪いほうへ悪いほうへとつながっていくさま。
それをあなたは、椅子に座ってただ見ているしかない。
そうじゃないのに、本当はちがうのに、と画面に向かって叫んでも、
ヒロインは歌い踊り、終局へむかっていく。
あなたはコピーの枚数をまちがえたことがあるか。
女王はある。
あなたは見積もりの桁をまちがえた企画書をつくったことがあるか。
女王はある。
薬剤のかわりに、消毒液を点滴した看護婦もいるという。
ならばなぜ、人を裁く人に、まちがいはないといえるのか。
女王号泣。
あなたにこれ以上の予備知識はいらない。
「映画」という表現方法でしか、
そして「ミュージカル」という表現方法でしかあらわせない
すごい世界がそこにある。劇場へいそげ。
【ビョーク主演:ダンサー・イン・ザ・ダーク】
■N村H子さんのおすすめで見に行きました。おすすめありがとう。
■この文章も根津愛さんの掲示板に投稿させていただきました。
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