たての未散コラム 「特産物は『農家の長男』!」その52


2001.09.29 up




「おねーち、なにかやってない?」

「え?(内心、ぎく)」

「あのねあのね、おねーち、翔ちゃんはね、この間アパートでコロッケを作ったの。

それからね、自分のためにきゅうりも刻むようになったし、

コンソメにゅうめんも上手に作れるようになったのよ」

「……それは何かな、翔ちゃん、ひょっとして『特農』での記載を訂正しろ、と言うことか?」

「ううん、違うの」

「じゃあ、何なの」

「『お詫びして訂正しろ』に決まってるでしょうが」

あああああああ。

「それにねそれにね、学校のぱそぱそで『女王の庭』を覗いてみたのよ。

そしたらもぉ、翔ちゃんそのまんまじゃないの。

後ろから友達に覗かれて……慌てて落ちたんだからね。まったくもう、おねーち、キライ」

きらわれちゃ困るのである。何しろ貴重なネタの宝庫……。



「それで、おねーちにどうしろというの」

「んとねー、翔ちゃんはね、ケイタイをアイモードにしようっかなーと考えているのね」

「……すれば?」

「ンでね、ポイント数で換算しても、あとちょーっと足りないんだなあ」

……なんだかいやーんな雲行きの会話だなあ……。

そんな姉の心中を知ってか知らずか、きっと見透かしているんだろうが、

そんなことなどおくびにも出さない明るい声で、翔ちゃんはこう言い放ってくれたのだ。

「まあ、給料日前だろーから、諭吉1人で手を打ってあぎよう!」

うわぁぁぁぁん!!..・ヾ(。><)シ翔ちゃんのオニ!!!



……とゆーことで、翔ちゃんのケイタイはめでたくアイモードになったのである。

(ちょっとばかし時間の経過があったのですね。

まあ、いろいろと忙しかったりしたので……二年目は大変なのですよ。

手枷足枷首枷の他に、気が付いたら両足首にじゃーらじゃーらと鎖の付いたでっかい鉄の球なんか、

付いちゃってるし……)

最悪な姉妹だと思うでしょう? 本人たちもそう思ってるから余計救いがないんですけどね……。





近くにいるとあんまり有難味もわかないが、遠くに離れていると

「うーん、あたしたちっていい姉妹だねえ」

「ホントだねえ、おねーち」

と言うばかな会話ができるドクダミ姉妹である。

気が付けば姉は番茶も出がらしなお年頃であり、

妹の方はぐらぐら煮立っているお年頃であるが、

ほれっぽくてしじゅう玉砕している姉に対して、

翔ちゃんに色気のある話題というのがとっても少ない。



もてないわけではないらしいのだが(はっきり言って、たてのなんかよりよっぽど美人さんである)、

短大大学研修所の同期たちがわきゃわきゃとデートだ婚約だ結婚だ、と色めき立っている中、

しょっちゅう実家に帰ってきては

「ぱぱち〜、うりゃ〜♪」

と鬼瓦にまとわりついてごろごろ言っている。

「何か疑問を感じないのか、お前さんの青春とゆーものに」

「だって、近寄ってくるのはろくでもない男ばっかりで、

翔ちゃんのお眼鏡にかなうようなのは(へっ、と鼻で笑って)とてもとても」

そう言って、ひろぉい肩をすくめてみせる。

「それでもさぁ、『あ、いいかなあ』とか思うような人はいないの?」

それが次男三男でおムコおっけー(なんだったらマスオサンでも可)、

両親と同居もばっちりよ、とかいう条件の

(コレは「そうすりゃあ好き勝手できる……」という姉の魂胆による)、

みめ麗しく優しくて気の利く(コレはたての母の「理想の義理の息子」像による)

物好きな(たての父の暴言)男は、いないものなのか。



「いるわけないでしょう、そんなもん。まったく、奢るわが身を省みず……」

「なんであなたがこんなトコに出てくるんですか、待田先生」

「ゐやゐや、今回は出番がないのかなあ、と……」

「そんなにあちらの学校は暇なんですか」

「……(珍しく墓穴を掘ったらしく、黙って退散)」

ったく、どこから沸いて出たんだあの人は。やっぱり宇宙人だったのか……。



「なんなの、おねーち!? 今の妙なおじさんは???」

「……まあ、どうでもいいから……で、いないわけ?」

「なーんか、まがまがしい雰囲気がしたけど……まあ、いいか。いないよ。今のトコロ」

あんたあんた(゜o゜)ヾ(--;。何もそんなに明るく即答してくんなくても……。

ンでまた、なんで塩なんか撒いてるんだ。やめなさいって。

「だいたいね、おねーち、翔ちゃんは医療関係者なのよ!」

「まあ、ねえ」

「そりゃあ、まだタマゴだけどね、

それでも、感染症なんか患った日にゃあそっこー失業の憂き目に遭うんだからね」

そうか、そう言うこともあるわけね。

そういやあ、保健室で「性感染症の拡大」だーの

「HIV感染予防」だーのと言う冊子を見ながら、性教育に関する研修も、

受けたりしたっけなあ、去年……。

文系の人間には計り知れない事情というものがあるものよ

……とか、この愚かな姉が感心していたら……

翔ちゃんの次の言葉で、思いっきり卒倒してしまった。

「もし! 翔ちゃんとどーーーーっしてもおつきあいがしたいとゆー殿方がいらっさるのなら、

半年間精進潔斎、キヨラカな生活を送った上で、

保健所なり医療関係機関に赴いてHIVをはじめとする性感染症の厳密なる検査を受けた上で、

まったく異常なし、と言う結果が出ないかぎり、

指一本触れさせるモンか( ̄^ ̄)!!!!」



……余りにもステキにオトコマエな翔ちゃんに、思わずめまいを感じた姉であった。

あのう、こんな妹でよかったら、どなたかおステキでちゃれんじゃーな男性、

おムコに立候補してくれませんかね。

今ならもれなく、とってもいかつくてデカくてストロングな父親と、

小柄で可愛い爆裂な母親と、

やっぱり小柄で本人に(顔と性格が)よく似た過激な姉も付いてくるんですが。



「そんなこと言ってる間に、あんたがとっとと嫁に行く算段をつけなさいよ、おねーちゃん」

「いいんですかい、おかーさま」

「言いたかないけどねえ、学生時代の同期生で、孫がいないのはあたしだけなのよ!! 

なんだったら、孫先にこさえたってかまわないから!!!」

「あ、そうですか」

「それだけの度胸があって、相当に物好きな(実の母親が言うことか!?)

相手がいりゃあの話だけどね」

そう言い放って、たての母は台所に照農のナシをむきに立ってしまった。

きっとこないだの同窓会で、「羨ましい病」が発病したんだな……

などと思いながら、新聞を読もうとしたたてのに、父が言った。

「おねえちゃん、まあ、座れ」

「座ってますが」

「ちゃんと座り直すの!」

「はいはい」

ちょん、と正座をしたたてのに、鬼瓦はこう言った。

「……孫なんてつくんなくていいんだからねっ!!!」

──涙目で言うことだろうか? コレは……??









●つづきをお楽しみに♪

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