1、相続人
配偶者相続人・・・夫婦の一方が死亡したとき、生存配偶者は常に相続人となる(民法890条)。血族相続人がいるときはそれらと同順位で相続し、いないときは単独で相続人となります。配偶者として相続権が与えられるためには、法律上の婚姻(戸籍法の定めにより、婚姻届が戸籍吏に受理されること)がなされていることが必要であり、内縁では相続権は発生しません。つまり、どんなに長い間、苦楽をともにしてきた男女であっても内縁関係では互いに相続権は主張できません。逆に法律上の婚姻関係があれば、別居中で破たんをきたしていても相続権は認められます。
血族相続人・・・被相続人と血縁関係があることによって相続権が与えられる者
第一順位・・・被相続人の子(及びその代襲相続人である直系卑属、つまり被相続人の孫、ひ孫・・・)
第二順位・・・直系尊属(親等の近い者が優先)
第三順位・・・兄弟姉妹(及びその代襲相続人であるその兄弟姉妹の子、つまり被相続人の甥姪)
*代襲相続・・・相続開始以前に、相続人となるべき者が死亡その他の事由(相続欠格(民法891条)、相続人の廃除(民法892条〜895条))で相続権を失った場合に、その者の直系卑属がその者に代わって同一順位で相続人となることをいいます。なお、相続放棄(民法938条以下)は、代襲原因とはなりません。
相続分には、被相続人が遺言によって指定する場合及び被相続人の遺言によって指定を委託された第三者が指定する場合(指定相続分)と、上記の遺言がない場合に民法の定めるところにより決定される場合(法定相続分)があります。
法定相続分
- 配偶者と子・・・それぞれ各2分の1。この場合子が数人あるときは、各自の相続分は均等となり、また、摘出子と非嫡出子とがあれば、後者の相続分は前者の2分の1となります。
- 配偶者と直系尊属・・・配偶者は3分の2、直系尊属は3分の1
- 配偶者と兄弟姉妹・・・配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1。兄弟姉妹については、父母の双方を同じくする者と父母の一方だけを同じくする者(例えば、腹違いの兄弟)とがあれば、後者の相続分は前者の2分の1となります。
特別受益者の相続分
- 共同相続人中に、被相続人から遺贈を受け、又は婚姻・養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなして算定した相続分からその遺贈又は贈与の価額を控除し、その残額を以ってその者の相続分とします。(民法903条)
- 特別受益としての生前贈与については、価額評価の基準時が問題となるが、相続開始の時が基準となる(通説、東京家審昭33.7.4)。金銭の贈与については、贈与当時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算した価額で評価する(最判昭51.3.18)。そして贈与の目的財産が受贈者の行為によって滅失し、又はその価額に増減があった場合には、相続開始の当時なお現状のままであるものとして評価します(民法904条)。
寄与分
- 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始のときにおいて有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして算定した相続分に寄与分を加えた額を以ってその者の相続分とします(民法904条の2)。
- 寄与の程度については、通常の寄与と特別の寄与に分け、寄与分をうけられるのは、特別の寄与をした場合に限られます。何をもって特別の寄与とするかは、明確な判断基準は定められていませんが、法定相続分では不公平と考えられる程度の寄与があれば「特別の寄与」になるということが一つの判断基準とされています。
2、遺産分割
3、相続の承認・放棄
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければなりません。但し、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において、これを伸長せることができます(民法915条)。この期間内に限定承認又は放棄をしないときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。
*「自己のために相続があったことを知った時」とは、相続人が被相続人の死亡を知ったというだけでなく、自分がこれによって相続人になったことを知った時を意味します(大決大15.8.3)。なお、被相続人に相続財産がまったく存在しないと信ずるにつき正当な理由がある場合は、この考慮期間は、相続財産の全部又は一部の存在を認識した時または通常認識することができるであろう時から進行します(最判昭59.4.27)。
- 法定単純承認(民法921条)
- 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。但し、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りではない。
- 相続財産の処分によって単純承認をしたものとみなされるためには、相続人が自己のために相続が開始したという事実をしるか、又は少なくとも相続人が被相続人の死亡した事実を確実に予想しながら、あえてその処分をしたことを要する(最判昭42.4.27)。
- 単純承認をしたものとみなされる相続財産の処分は、限定承認若しくは放棄をしない前の処分に限られ、限定承認若しくは放棄をした後の処分は、含まれない(大判昭5.4.26)。
- 相続人が、限定承認又は放棄をした後でも、相続財産の全部又は一部の隠匿、私に消費し、または、悪意でこれを財産目録中に記載しなかったとき。但し、その相続人が放棄をしたことによって相続人となった者が承認をした後は、この限りではない。
4、遺留分
- 加算される贈与
- 相続開始前1年間にした贈与は、すべて算入されます。
- 当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前にしたものでも算入されます。
- 負担付贈与は、その目的の価額から負担の価額を控除したものについて算入します。
- 相続人が被相続人から受けた特別受益分は、贈与の時期にかかわりなく、すべて算入されます。
- 受遺者に対する意思表示によってなせば足り、必ずしも裁判上の請求による必要はない(最判昭41.7.14)。裁判外の意思表示の場合、方式に特別の定めはないが、相手に到達することが必要なので、内容証明によることが望ましいと思われる。
- 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間これを行わないときは、時効によって消滅する。相続開始のときから10年間を経過したときも同様である(民法1042条)。「減殺すべき贈与又は遺贈のあったことを知ったとき」とは、たんに贈与や遺贈があったことを知っただけでは足りず、減殺できるものであることを知ったときです(大判明38.4.26)。
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