手形のこと

形の種類・・・約束手形と為替手形
法律上の手形はこの2種類であるが、実務上は手形を使用する目的により様々な名称が用いられている。
例)商業手形(商取引に基づき振出された手形)、回し手形、マル専手形(個人が車等を分割購入するときに振出す専用用紙による手形)等

束手形の意義・・・約束手形とは、その振出人が受取人あるいは、所持人に対して満期(支払日)に一定の金額を支払うことを約束する証券です。支払確保や代金支払い等のために振り出します。

替手形の意義・・・為替手形とは、振出人が支払人にあてて、受取人その他の手形所持人に対して一定金額を支払うべきことを委託する証券です。主として、国際取引の決済のための送金および取立の手段として用いられる。また、印紙税の関係で約束手形の代用として用いられることもある。

形の性質

1.文言証券・・・証券上の権利の内容が証券上の記載によって決まる証券
2.設権証券・・・証券を作成交付すること自体によって権利を創設する証券
3.無因証券・・・証券の作成交付によって、その原因となった債務とは別個の債務が成立する証券

形行為独立の原則・・・同一手形上になされた各個の行為はそれぞれ独立してその効力を生じ、論理的に前提となっている他の行為の実質的効力の有無によって影響を受けないとする原則(手形7条、32条2項参照)。これは手形行為の文言性に基づく当然の原則である(当然説)と解されている。したがって、例えば、手形が法定の形式を具備している以上その手形の裏書人は被裏書人が振出人の代表者名義が真実に反することを知っていたとしても、裏書人としての手形上の責任を免れない(最判昭33.3.20)ことになる。

思表示

1.民法により権利能力を有する者はすべて手形権利能力を有する。
2.意志無能力者の手形行為は当然無効であり行為無能力者の手形行為が取消されたときは初めから無効なものとみなされ何人に対しても手形上の義務を負わない(物的抗弁)。
3.手形行為は転々流通すべき証券上の行為であるため善意の手形取得者の保護が強く要請される結果、意志の欠缺または瑕疵ある意思表示に関する民法の規定を手形行為に全面的に適用することは妥当ではない(多数の説がある)。

人による手形行為

  1. 代理方式・・・他人によってされることが手形上に表示される場合
    法人の手形行為の方式は代理方式に限られる(最判昭41.9.13)。代理関係の表示としては、署名者が自己のためではなく、本人の代理人(代表者)として本人のためにするものであることを認識できるような記載があればよい(大判明40.3.27)。手形上の記載からは法人のため振出したのか、代表者個人のために振出したのかが不明確(A合資会社Bと記載した場合)なときは手形所持人は法人および代表者個人のどちらに対しても手形金の請求ができ、請求を受けた者は、その振出が真実いずれの趣旨でなされたかを知っていた直接の相手方に対してはその旨の人的抗弁を主張できる(最判昭47.2.10)。
    実質的要件として代理人に代理権があることを要する。代理権限を有することは手形行為の効果が本人に帰属することを主張する者が立証しなければならない。無権代理の場合には本人が追認せず、また表見代理が成立しない限り、本人は無権代理を物的抗弁として対抗できる。また、手形取引の安全を図るため、権限なしに手形上に代理関係を記載し署名した者には、本人が負担したであろう手形責任を負わせ、その責任を履行したときは本人と同一の権利を取得する(手形8条)。

参考判例
.代理人が自己または第三者の利益を図る目的で約束手形を振出した場合において、権限濫用の事実を知りまたは知りうべかりし状態で手形の交付を受けた受取人が、これを他に裏書譲渡したときは本人は手形17条但書の規定により第三取得者が受取人の右知情について悪意であることを立証した場合に限り第三取得者に対する責任を免れることができる(最判昭44.4.3)。
.手形行為も原則として商法265条にいう利益相反行為にあたるとし、取締役会の承認を得ていない場合は、会社は当該取締役に対して手形行為の無効を主張できるが、裏書譲渡を受けた第三者に対しては取締役会の承認がないことおよびその第三者の悪意を主張・立証しなければ会社は手形上の責任を免れない(相対的無効説、最判昭46.10.13)。
.民法108条に違反して約束手形が振出された場合において、右手形が第三者に裏書譲渡されたときは右第三者に対して、本人は、その手形が双方代理行為によって振出されたものであることについて第三者が悪意であったことを主張・立証しない限り、振出人としての責任を免れない(最判昭47.4.4)。
.実在しない法人の代表者名義で約束手形を振出した者は手形法8条の類推適用により、右手形の振出人としての責任を負う(最判昭38.11.19)。
.約束手形が代理人の権限を越えて振出された場合、手形受取人にその権限があると信ずべき正当の理由を有しないときは、その後の手形所持人は、たとえこのような正当理由を有していても表見代理の成立は認められない(最判昭36.12.12)。なお、直接の相手が表見代理によって保護される場合には、受取人から裏書譲渡を受けた者に対しても、その者の善意悪意を問わず振出人としての責任を免れない(最判昭52.12.9)

  1. 機関方式・・・本人自らなしたように手形上に表示される場合

形の偽造

形の変造

参考判例
1.手形の満期の記載が変造された場合には、変造前の原文言については手形所持人が立証責任を負う(最判昭42.3.14)。
2.裏書の連続は、裏書の形式によりこれを判定すれば足り、約束手形の受取人欄の記載が変造された場合であっても手形面上変造後の受取人から現在の手形所持人へ連続した裏書の記載があるときは振出人に対する関係でも、右所持人は適法な所持人と推定される(最判昭49.12.24)。

束手形の振出

  1. 必要的記載事項
    @約束手形という表示A一定の金額(手形に金額が複数記載された場合・・手形6条参照)B支払約束文句C満期日(支払期日)D支払地の表示E受取人の名称F振出地の表示G振出日の表示H振出人の署名
    なお、@BDは初めから印刷されています。また、記載方法として、金額欄をアラビア数字で記載するときはチェックライターで記入しなければなりません(ペン書きすると銀行では支払ってもらえません)。また、当座勘定規定で振出日の記載がなくても支払ってもらえることになっています。振出人の署名には押印(銀行へ届けている印鑑)も必要です(当座勘定規定14条)。
    Aについて・・・手形6条によれば、金額の記載が重複する場合に金額欄に記載した金額が優先するわけではないが、銀行取引においては、手形を受け入れまたは支払う場合には、複記のいかんにかかわらず所定の金額欄記載の金額によって扱われることとされている(当座勘定規定6条)。
    Cについて・・・確定日払(特定の日を満期とするもの)、日付後定期払(手形記載の振出日から手形記載の一定期間を経過した日を満期とするもの)、一覧払(支払呈示の日を満期とするもの)、一覧後定期払(支払呈示の日から手形記載の一定期間を経過した日を満期とするもの)があります。なお、満期の記載がない約束手形は一覧払のものとみなされている(手形76条2項)。
    Dについて・・・支払地の記載を欠くときは、振出地の記載があれば、そこが支払地とみなされ、振出地の記載が欠けていても、振出人の肩書地があれば、そこが振出地とみなされる(手形76条3,4項)
  2. 有益的記載事項
    第三者方払文句、肩書地、利息文句、裏書禁止文句等
    利息文句(手形5条)・・・一覧払および一覧後定期払の手形だけに認められ、確定日払およ日付後定期払の手形に利息文句を記載しても、これを記載しないものとみなされる(1項)。利息には利率を記載しないと利息文句自体が無効となる(2項)。利息はその起算日を別段定めないときは、手形に記載された振出日から発生する(3項)。
  3. 無益的記載事項
    記載しても法定事項の反復であるものと手形法で記載しても記載しないものとみなされるものがある
  4. 有害的記載事項
    記載すると手形自体が無効となるもので、法定の態様と異なる満期や分割払いの記載(手形33条)のように法が定めているもののほかに、手形の効力を原因関係にかからしめること、振出人が支払責任を負わないこと、支払に条件を付すこと、支払を反対給付にかからしめること等がある。

参考判例
1.白地手形とは後日他人に手形の要件の全部または一部補充させる意志(主観説)で、故意にこれを記載しない紙片に署名して発行するものを指称する(大判大10.10.1)。しかしながら、最高裁になってからは主観説の立場をとったか否かは明確でない。
2.満期白地の手形の補充権の消滅時効については商法522条の規定が準用され、右補充権はこれを行使しうべきときから5年の経過により時効消滅する(
最判昭44.2.20)
3.白地手形の満期が補充された場合、その他の手形要件の白地補充権は別個独立に時効によって消滅することなく、手形上の権利が消滅しない限り行使できる(最判平5.7.20)。
4.手形法10条の規定は、既に合意と異なる補充のされている手形を悪意または重大な過失なくして取得した所持人に対する場合のみならず、悪意または重大な過失なくして白地手形を取得した上、予めなされている合意と異なる補充を自らした所持人に対する場合にも適用があると解する(最判昭41.11.10)。

参考判例
1.約束手形の受取人甲が乙からその手形の割引を受け、裏書をしないでこれを乙に交付したときは、甲は指名債権譲渡の方法によって乙に手形債権を譲渡したものと解し、乙は振出人と甲間の売買契約が解除されたという抗弁の対抗を受ける(最判昭49.2.28)。
2.約束手形の振出人のために手形金債務の支払につき受取人との間で手形外保証契約が締結されている場合には裏書によって手形債権を取得した者は、これとともに保証債権を取得し、かつ、その保証債権の取得につき対抗要件を具備することなく、保証人に対し保証債務の履行を求めることができる(最判昭45.4.21、参考大判大1.12.27)。

参考判例
1.手形の裏書が抹消された場合には、これを抹消する権利を有する者がしたかどうかを問わず、右裏書は記載されなかったものとみなすべきである(最判昭36.11.10)。
2.約束手形の裏書のうち被裏書人の記載のみが抹消された場合、当該裏書は裏書の連続の関係においては白地式裏書となる(最判昭61.7.18)。

参考判例
1.甲会社取締役所長として約束手形を裏書譲渡した乙が、甲会社を代理する権限を有しなかった場合でも、裏書が形式的に連続しており、被裏書人に悪意または重大な過失がなかったときは、被裏書人は振出人に対してその手形上の権利を行使することができる(最判昭35.1.12)。これは一般に無権代理人からの善意取得を認めたものと評価されている。

参考判例
1.甲が乙に対する木材代金債務確保のため交付した手形を丙は同売買が乙の不履行により解除されるに至るべきことを熟知しながら乙より債務の弁済のために裏書譲渡を受けた場合には、丙の取得行為は手形法17条但書にあたる(最判昭30.5.31)。
2.融通手形の振出人は、直接の被融通者以外の手形所持人に対しては振出人に何ら手形上の責任を負わせないなど特段の合意があり所持人がこれを知って手形を取得した場合のたほか、所持人が融通手形であることを知っていたかどうかに関係なく、その支払を拒絶できない(最判昭34.7.14)。
3.甲および乙が交換的に同一金額の融通手形を振出し、もし乙がその振出した約束手形の支払をしなければ、甲も自己が振出した約束手形の支払をしない旨の約定をした場合において、乙がその約束手形の支払をしなかったときは、甲は、右約定および乙振出の約束手形の不渡り、あるいは不渡りになるべきことを知りながら甲振出の約束手形を取得した者に対し、いわゆる悪意の抗弁をもって対抗することができる(最判昭42.4.27)。
4.自己の債権の支払確保のために約束手形の裏書譲渡を受けた所持人が右債権の完済を受け原因関係が消滅したにもかかわらず、たまたま自己の手元にある手形をもって振出人に対し手形金の支払を求めることは権利濫用に該当する(最判昭43.12.25)。

参考判例
1.隠れた取立委任裏書は、手形債権の取立のため手形上の権利を信託的に移転するものである(最判昭44.3.27)。
2.隠れた取立委任裏書の当事者間では、手形上の権利は実質的には被裏書人に移転せず裏書人に帰属しているから、手形債務者は裏書人に対する人的抗弁事由を被裏書人に対抗することができる(最判昭39.10.16)。

6.質入裏書(手形19条)・・・質入文句を記載して裏書するもの。隠れた質入裏書をすることもできる(実際はこれがほとんど)。

 

形の支払呈示

参考判例
1.為替手形の支払呈示期間経過後における支払のための呈示は支払地内にある手形の主たる債務者の住所(営業所)においてすることを要し支払場所に呈示しても手形債務者を遅滞に付する効力を有しない(最判昭42.11.8)。

参考判例

  1. 40条3項は満期後の支払についても適用され、「悪意」とは所持人が無権利であることを容易かつ確実に立証しうる証拠方法があることを知っていることを意味する(大阪高判昭57.12.17)。
  2. 支払銀行としては、白地手形を支払うにあたっては、振出人に対し電話その他の方法でその手形についての支払委託の有無を確認すべき義務がある(最判昭46.6.10)。

参考判例
1.振出人に対する訴訟提起は、遡及権行使要件である支払呈示としての効力を有せず、このことは満期前に提起し弁論終結前に満期が到来した場合も同じである(最判平5.10.22)。

参考判例
1.約束手形の振出人がした拒絶証書作成免除は無意義であり全く手形上の効力を生じない(大判大13.3.7)

形債権の消滅時効

1.振出人に対する債権・・・満期から3年間(手形70条1項)
2.所持人の前者に対する遡及権・・・拒絶証書作成日(作成免除のときは満期)から1年間
3.償還をした裏書人、保証人、参加引受人の前者に対する再遡及権・・・手形受戻日または償還の訴えを受けた日(訴状送達日)から6ヶ月間(なお、手形86条1項参照)

なお、手形債権は各々独立しているから、特定の遡及権が時効消滅しても振出人対する権利に影響はないが振出人に対する権利が時効消滅した場合は遡及権も消滅する。

参考判例
1.白地手形であっても時効は手形記載の満期から進行する(大判大9.12.27)。
2.手形債権について支払命令が確定して手形債権の時効期間が10年に延長されたときは原因債権の時効期間もその時から10年に延長される(最判昭53.1.23)。
3.約束手形の裏書人が所持人に対して自己の償還義務について消滅時効の利益放棄をした上、自己固有の債務として手形金の支払をする旨を約したときは振出人の手形債務の時効消滅を理由に自己の償還義務の消滅を主張することは信義則に反し許されない(最判昭57.7.15)。
4.満期が変造された場合は変造前の満期が時効起算日となる(最判昭55.11.27)
5.共同振出人の1人に対する請求(時効中断効)は他の共同振出人の時効を中断しない(最判昭36.7.31)。但し反対の判例(大判昭8.5.9)がある。

得償還請求権

参考判例
1.利益を受けた場合とは約束手形の振出しにあたり積極的に金員の交付を受けた場合だけでなく、消極的に既存債務の支払を免れた場合も含む(大判大5.10.4)。
2.利得償還請求権を裁判上行使する場合には除権判決取得を要しない(東京地判平6.3.10)。

形保証

参考判例
1.約束手形に振出人の署名があり振出人以外の者の契印をした補箋の表面に振出人以外の者の単なる署名捺印がなされている場合は、たとえ保証等の表示がなくても手形保証とみなされる(最判昭35.4.12)
2.何人のために手形保証をしたかは、手形以外に存する事実または証拠により判定することはできない(大判大15.12.16)。

参考判例
1.手形保証人は、手形保証という手形行為をすることによって独立に手形上の債務を負担するものであり、振出人のために手形保証をした者は振出人が受取人に対して有する人的抗弁をもって受取人に対抗することはできない(手形保証独立性、最判昭30.9.22)。
2.主たる債務者の手形債務が時効消滅したときは手形保証債務も消滅する(最判昭45.6.18)
3.手形振出の原因関係上の債務の不発生が確定した場合に受取人が振出人のための保証人に対し手形金の支払を請求することは権利濫用であり許されない(最判昭45.3.31)。
4.被保証人は所持人に対して有する人的抗弁をもって害意のない保証人に対抗できない(高松高判昭29.5.6)。

示催告と除権判決

参考判例
1.白地手形を喪失した者は手形について除権判決を得た場合でも手形債務者に対し喪失手形と同一内容の手形の再発行を請求する権利を有しない(最判昭51.4.8)。
2.約束手形に振出人として署名したが、これを流通に置く前に盗取されまたは紛失した者の得た除権判決は、右振出署名者において除権判決後その手形を取得した者に対し支払を拒絶しうる効力を有するにとどまり、除権判決前に手形を悪意または重大な過失なく取得し、振出署名者に対し振出人としての責任を追及しえた者の有する実質的権利までも消滅させる効力を有するものではない。したがって、無効となった手形を所持する実質的権利者は、除権判決前すでに手形上の権利を取得し、除権判決当時手形の適法な所持人であったことを主張・立証することにより、その権利を行使することができる(最判昭47.4.6)。

払猶予

参考判例
1.手形の書替は通常支払延期のためにされるものであり、旧手形取得の際、人的抗弁事由の存在を知らない所持人は、書替の際、抗弁事由を知っていても悪意の取得者とはいえない(最判昭35.2.11)。

の他

 

 

 


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