『噂の眞相』様からの罵詈雑言

《「戦後民主主義」の不滅を熱く語る者は絶えない。〔中略〕現在、「戦後民主主義」の幻影を操り、その延命にいそしんでいるのは、「戦後民主主義」を憎悪し、否定する者たちである。
『偽善系〜やつらはヘンだ!』(文藝春秋)の著者である日垣隆もそのひとりである。日垣は、三島由紀夫の言葉を借りて、「戦後民主主義」という偽善がこの社会を覆っていると憤っている。それが本書を貫くモチーフだという。しかし日垣が相手にしているものは虚妄に過ぎない。虚妄と格闘せざるを得ない彼の思想的立脚点もまた虚妄である。そんなことは弾劾の対象とされる「ヘンなやつら」の面子を見れば一目瞭然となる。
〔中略〕とにかく、日常で気に障ることを羅列して、それを倫理性の問題に回収し、「戦後民主主義と結びつけているだけなのだ。
 こんな単なる知的怠慢に「戦後民主主義」の凄みもくだらなさもわかるわけがない。こいつらは「戦後民主主義」の告発者をきどりながら、実は「戦後民主主義」にすがっているだけではないか。(歪)》(『噂の眞相』2000年12月号)

→まさか『噂の眞相』の人たちに、《知的怠慢》って言われるとは思わなかった(笑)。
 上記の(歪)さんは、内部情報によれば佐高信氏の熱烈ファンにしてその担当者なのだそうです。私が『諸君!』に佐高信論を書いたのは2000年10月号ですから、同誌お得意の報復を兼ねた、佐高先生への忠誠心といったところでしょう。この雑誌は、いまだ敵と味方の単純二分法によって誉めたり斬ったりする1960年代的編集方針で知られており、貧乏くさい雑誌であるにもかかわらず、安定した読者層を確保してきました。一見過激な雰囲気をもちながら、とても安心して読める雑誌だからでしょう。執筆者もテーマにもオチにも意外性はありません。
 さて―。
《「戦後民主主義」という偽善がこの社会を覆っていると憤っている。それが本書を貫くモチーフだという》なんてことを私は一言も書いていないし、そんなモチーフを抱いたこともありません。だいたい、私は戦後民主主義を全否定したことなど一度もない。偽善を憎むといったのであり、一見威勢のいい偽善的な無責任を批評の対象に据えたのです。
 (歪)さん=以下では歪曲さんと表記することにしましょう=は同書を最初の2ページと、本文を全部とばして「あとがき」だけ斜め読みしているので無理もないと思いますが、同書の冒頭で確かに私は、三島由紀夫が戦後民主主義を全否定したことに触れています。しかし、そのことに新鮮な驚きを感じたのは、あくまで私が中学一年生のときであることも明記しておきました。当然に肯定すべきもの、と教えられてきた概念に、正面から疑問を呈するのもアリだということを私は知った、という意味です。そして同書9ページにハッキリ書いておいたとおり、《これからの日本に大して希望をつなぐことができない》といって悲観を極めた三島とは違って、私は《楽観的》であることを敢えて宣言しています。
 歪曲さんによれば、私は《「戦後民主主義」を憎悪し、否定する者たち》のひとりだ、と罵倒しておられる。で、知的に怠慢である日垣には、《「戦後民主主義」の凄みもくだらなさもわかるわけがない》と。
 私は、「戦後民主主義」に対して何か特別な感情を抱いたことはありません。対照的に、歪曲さんまたは『噂の眞相』誌は、どうしてこんなに「戦後民主主義」を巨大なものとして想定してしまえるのだろう。頭の中が未だに1960年代のまんまだから無理もないですけど、それこそ《虚妄》というに相応しいのではないでしょうか。
 まあ、今回の私に対する罵詈雑言は、佐高信論への意趣返しでしかないわけですが、そうすると私が扱った「佐高信」も虚妄ってことになっちゃっていいのかな。虚妄に連載を頼んでいるわけですか。
 私がこの本で扱っているのは、年金制度であり、地方自治や私学の歪んだ在り方であり、検察審査会であり、少年法その他である。これらのどこが《虚妄に過ぎない》のか。
 ちゃんと本を読んでから罵倒しようね。



『噂の眞相』様からの罵詈雑言
追記


『噂の眞相』誌を《貧乏くさい》と表記したのは、もちらん他意があります。
 同誌94年3月号には、こんな記事が載っていたからです。
《なつかしの本誌創刊号をめくってみるとトップ記事「出版社が危ない!」を執筆しているのは売り出す前の猪瀬直樹。〔中略、猪瀬氏が所有しているのは西麻布二丁目の〕自社ビルだけではない。東京都下・町田市の郊外には豪華な新築一戸建の自宅まで購入しているのだ。》
 だから、どうしたっていうの?
 ライターが取材費や生活費を汗して稼ぎ、仕事場をもち、自宅を購入するのがいけないことだと君たちは考えているのかな。『噂の眞相』は、常連のフリーランサーや編集者を応援するってこととは無縁なわけですね。しかもこれって、ただの妬みでしょ。だから敢えて、貧乏くさい、といったのです。原稿料もめちゃくちゃ安いらしいし、編集部の乱雑さは精神的頽廃を感じさせるほどスゴイ(写真で見た)。にもかかわらず、ちゃっかり編集発行人はバブリーな自宅をお建てになったみたい。おめでたいかぎりでございます。
 先ほどの引用に続けて、こんな一文も続いていました。
《大宅賞作家がそんなに儲かる商売でないことは実力派の沢木耕太郎を見れば一目瞭然。他の吉田司、杉山隆男、橋本克彦、井田真木子クラスに至ってはビンボー人に近いのではないか。》
 ね、下品な断定。確かに吉田さんはそうみたいだけど(失礼)、例えば沢木さんの『深夜特急』を100万部とすればそれだけで1億5000万円前後の印税が入っているわけだから、儲からないのが《一目瞭然》ってことないでしょ。きっちり収支を合わせることに自覚的な書き手を貶めるのは、みっともないと思う。『噂の眞相』はまさに、フリーランスの書き手によってページを埋めているわけだから、こういう露骨な卑下は執筆協力者に失礼ではないでしょうか。

 


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