ダニエル・ピンク著(玄田有史解説、池村千秋訳)『フリーエージェント社会の到来 「雇われない生き方」は何を変えるか』をAMAZONで購入!



ダニエル・ピンク著(玄田有史解説、池村千秋訳) 『フリーエージェント社会の到来                             「雇われない生き方」は何を変えるか』
                                    (ダイヤモンド社、2,200円)


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 私(日垣)が理想とする社会は、一言でいえば、オーガニゼーションマン(会社員や公務員)とフリーエージェント(FA)が、お互い必要に応じてスムーズに移動でき、また相互に尊敬しあえる社会形態である。両者の違いは、「雇われている」か「雇われていない」か。それぞれに長所と短所があり、向き不向きもあると思う。

 だが、この日本で大いに悩ましいのは、圧倒的に多くの国(先進国では日本以外すべて)でFAが増大しているのに、日本だけはFAどころか、そもそも自営業が減り続けている事実である。FA概念は、日本では野球選手くらいにしか適用されていない。しかし、米国では全労働人口のすでに4人に1人がFA宣言を発し、これを実践している。

 私自身、再就職を絶って(というか実際にはあきらめて)FAになったのは15年前のことだ。当時、そんな私を大いに励まし背中を押してくれたのはジョン・アップルガス著『ワーキング・フリー』(有斐閣、1,500円)という書物だった(原著は1982年、邦訳は1985年)。そこにあった一文《安全で確実だと思えることよりは、自ら挑戦して成功したり失敗したりするほうが、実に多くを学ぶことができる》に、賭けてみることにした。9時―5時(+残業)という勤務など《たかだか二〇〇年の歴史しかもたぬ労働形態に、なぜしがみついているのであろうか》に、なるほどそういう見方もあったか、と妙な感慨を抱いたのは、つい昨日のことのようだ。

 『ワーキング・フリー』から『フリー・エージェント・ネーション』(『フリーエージェント社会の到来』の原題)に至る約20年間で、何が変わったのか。インターネットの隆盛とネットワーク社会の浸透である。

 本書によればフリーエージェント(FA)とは、《インターネットを使って、自宅で働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵と体験を頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築く人々》のことだ。本書では、いたずらに独立を奨励しているのではない。交渉力の肝要さを抜きに自立を煽ってもいない。

 さらに私が思わず膝を打ったのは、《ジャストインタイム》と《弱い絆の力》という概念である。

 前者の有効性は、例えば政治の世界を見てもよくわかる。自民党や民主党などという既成の枠組みを超えて、拉致問題や税制問題などなど政治的課題のそれぞれに応じてそのつど《ジャストインタイム》に共同していくスタイルは、ますます主流となってゆくだろう。他方、《弱い絆の力》とは、会社での同僚上司や主たる取引先というような強い絆ではなく、否むしろ、そうでないからこそ自分の狭い殻を打ち破ってくれる発想や情報に出合える、そのような繋がりである。「いざ」というときに最優先で集結する、という一点のみが《弱い絆の力》の掟だ(この一点は非常に重要だと私も体験的に思う)。

 本書は、個人の自由とチームの力を、いかに有効に結びつけてゆくか。そのことに多少でも関心のある読者に、勇気を与えてくれる一書だと思う。もちろんそれは、会社員であるかフリーであるか失業中であるか、に関わらない。日本でもFAの育成に成功すれば、最大の政治経済問題であるはずの「失業」という概念も霧散していく可能性がある。

 公的資金は、そこにこそ投じられなければならない。




(「ガッキィファイター」2002年10月14日号に掲載)






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